5号館を出て

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2005年 09月 13日 ( 2 )

女の子が亡くなりました

  2005年 07月 19日 脳死女性が出産しようとしている
  2005年 08月 03日 無事に女の子が生まれた

 元村さんのところの「気になるニュース」で知りました。ドラマチックな展開で無事に出産されたはずの女の子スーザンちゃんが12日、ワシントンの病院で心不全のため死亡したそうです。生後40日余りだったということですが、ほんとうに残念です。

 母親からがんが転移したというようなことではないようですが、帝王切開をした時から心配されていた感染症が原因かもしれないとのこと。820グラムの未熟児が育つのは難しいのでしょう。

 ご冥福をお祈りいたします。
by stochinai | 2005-09-13 21:50 | つぶやき | Comments(0)
 自然科学の研究の成果は論文というかたちにまとめられて、専門雑誌(有名なところではNatureやScience)に投稿し、審査され、受理され、印刷されてはじめて「科学的事実」であると認知されることになっています。

 しかし、その雑誌というのがとても高価なものが多く、人類の共通財産である科学の成果がお金を持った人だけにアクセス可能になっている現状に疑問を持っている人は多いのです。

 そんな中で、コンピューター関係の世界で言うところのパブリック・ドメインとよく似たオープン・アクセスという思想のもとに発行されている無料の科学雑誌 Plos BIOLOGY があります。オンラインでも冊子体でも手に入れることができます。誰でもが自由にアクセスできると言っても著作権が放棄されているというわけではなく、クリエイティブ・コモンズというライセンスの下で管理されています。

Copyright: © 2005 Lacroix et al. This is an open-access article distributed under the terms of the Creative Commons Attribution License, which permits unrestricted use, distribution, and reproduction in any medium, provided the original work is properly cited.

 著作権表示には、この論文のオリジナリティがきちんと表示されている限り、自由に使い、配布し、どんな媒体にでも複製することを許可するとなっています。その美しさに涙が出ます。

 この「雑誌」は2003年の10月に創刊されたのですが、日増しに内容が充実してきており、インパクト・ファクターという(掲載された論文が、他の論文にどのくらい引用されているかを示す)数値が現在13.9と超一流雑誌なみに上がっています。その雑誌が、世界中の人に無料公開されているということは、ほんとうに素晴らしいことだと思います。

 前置きはこのくらいにして、今日から読めるようになったその雑誌の9月号にとてもおもしろい論文が載っています。

Malaria Infection Increases Attractiveness of Humans to Mosquitoes
Renaud Lacroix, Wolfgang R. Mukabana, Louis Clement Gouagna, Jacob C. Koella

 「マラリアに感染した人には、感染していない人よりもたくさん蚊が寄って来る」というものです。

 マラリアにかかった人が寝ている箱の中の空気と比較対照になる人が寝ている箱の中の空気を蚊に嗅がせて、蚊がどちらに引き寄せられるかという装置を使って実験したところ、明らかにマラリアにかかった人に蚊が引き寄せられることが証明されました。

 マラリアの病原体(マラリア原虫)は、蚊の唾液から人の体内にはいり、まず肝臓で増えた後に、赤血球の中に侵入し増殖した後赤血球から飛び出し、さらにまた他の赤血球に入るということを繰り返した後、生殖細胞が作られます。

 この生殖細胞は人のからだの中に長いこととどまっていると死んでしまうのですが、蚊の消化管内にはいると卵と精子のような細胞を作って受精し、新しいマラリア原虫になることができます。

 つまり蚊がヒトの血を吸う時に、この生殖細胞が一緒に吸われて蚊の体内に入らなければ、マラリア原虫は増えることはおろか生き続けることすらできません。

 つまりマラリア原虫は、ヒトの血液中で生殖細胞が作られた時に蚊に吸い取られ、また蚊の体内でヒトに感染する時期の原虫が作られたタイミングに合わせて、蚊からヒトの体内に移行する必要があるのです。これはチャンスだけに頼っていては、ほとんど実現不可能に思われることです。

 もしも、蚊がマラリア原虫の生殖細胞を持っているヒトを見分けることができたらどうでしょう。この論文では、マラリアにかかっていないヒトや、感染していてもマラリア原虫がまだ赤血球で増殖している時期のヒトに比べると、生殖細胞になったマラリア原虫を持っているヒトが2倍の強さで蚊を引きつけることを示しています。同じヒトでもマラリアから回復して体内に原虫がいなくなったら蚊を引きつけなくなります。

 ちょっと前の論文で、同じマラリア原虫を持った蚊でもヒトに感染する時期の原虫を持っている蚊と、まだ卵の段階の原虫を持っている蚊では、感染性原虫を持っている蚊のほうが明らかに高い頻度でヒトの血を吸いまくるということも示されています(Behavioral Ecology Vol. 13 No. 6: 816-820)。逆に、まだ感染できない時期のマラリア原虫を持っている蚊は「小食」なのだそうです。

 これらの結果は、マラリア原虫がヒトの体内にいて蚊の体内に移動する時期が来たら、ヒトの身体から何らかの物質を放出させて蚊を引き寄せ、うまく蚊の身体の中で生殖することができたら今度はヒトに移動できるように蚊の吸血行動が活発になるようにコントロールしていることを示唆しています。

 おそらく蚊やヒトは自分たちがマラリアのために変えられてしまったとは気がついていないでしょうから、この戦略は宿主の無意識あるいは自発的行動によって寄生生物が利益を得るというとてつもない進化が起こったことになります。

 今回の選挙で小泉自民党に投票した人は、すべての方が自分の「意志」で投票したという自信を持っておられることと思いますが、ひょっとするとなんらかの方法によって無意識あるいは自発的に小泉さんに投票するように、行動をコントロールされていた結果なのかもしれないという思いが、この論文を読んでいるうちに浮かんできました。

 国民の投票なしには政権を取ることができない政党が、選挙民の行動をなんとしてでも変えたいと思うであろうことを考えると、マラリアと蚊の話は寄生生物である政党と宿主である選挙民の姿に重なって見えてきます。もしそうならば、小泉自民党という存在はとてつもない進化を遂げた政党ということになります。

 小泉自民党の支配下におかれた選挙民は、政党の進化に負けない進化を遂げない限り滅んでしまうかもしれません。
by stochinai | 2005-09-13 21:20 | つぶやき | Comments(3)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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