5号館を出て

shinka3.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

2005年 11月 02日 ( 3 )

博士研究員に朗報か

 毎日新聞のニュースでちょっと気になる記事が出ました。「博士研究員:就職支援に5億円 文科、経産省が来年度から」とのことです。

 「研究現場を支える若手研究者「ポストドクター(ポスドク)」の就職支援に、文部科学省と経済産業省が来年度から乗り出す」とのニュースは素直に歓迎したいと思いますが、どういうふうにするんだろうとすぐに思いました。「新規事業に計約5億6000万円を支出し、『博士の就職氷河期』の解消を目指す」のは素晴らしいのですが、約1万2500人と言われるポスドクの就職に5億6千万円って、ひとりあたり5万円くらいですか。

 そこで両省は、博士たちと研究機関以外の就職先との出合いの場を作ることにした。

 あ~、そういうことですか。博士のハローワークですか。

 文科省は、大学や企業を対象にモデル事業を募集し、支援する。人材派遣会社などが、ポスドクに研究機関以外の就職情報を提供し、企業に出す研究企画書の作成方法を指導するといった事業が考えられる。経産省は、ポスドク向けにベンチャー企業などの求人情報をデータベース化したり就職セミナーを開く。

 ほんとうに出会いの場を作るだけで、一万人以上のポスドクに就職を世話できるんでしょうか。

 大丈夫かな~。
by stochinai | 2005-11-02 22:24 | つぶやき | Comments(4)
 K_Tachibana さんの科学コミュニケーションブログで、おもしろい記事を見つけましたというエントリーを見つけました(^^;)。

 研究者でもある市民記者からの投稿によるインターネット新聞JANJANの記事をリンクしています。

 再掲します。突然の1億円~研究現場における高額な機器購入に対する疑問~

 漫画「動物のお医者さん」の中にあるエピソード「獣医学部に突然文部省(当時)から1億円の予算がついたことによる大騒動」を引用しながら、実はそれが現実にも起こっていることなのだと警鐘を鳴らしています。私も特に付け足したり、コメントしたりする必要を感じないほど、この記者さん(山田ともみ)の経験は私が見聞きしたものとまったく同じようなものなので、そのまま引用させてもらいます。

 大学が独立行政法人化した現在、事情は漫画が描かれたころとは同じではない可能性があるが、少なくとも筆者の知る時代には、漫画の世界そのままに、ある日突然1億円のお金を1~2週間以内に何らかの研究用の備品に使いたい、という話が、現場の研究者にとっては本当に突然に持ち上がる、ということは、例えば旧帝大系の医学・生物学系の学部などに数年いれば1度や2度は経験される話であった。

 もちろん予算が付くというのは要求をしているから付くのであって、要求していたものは欲しいものですから、それが買えるということは研究者にとってうれしいことに違いありません。たとえ1~2週間以内に機種を選定せよと言われても、要求額が満額通っていれば困ることはないのですが、要求の60%しか付かなくて希望していた機器が買えないというような時には上のような騒ぎが起こることはあるようです。(残念ながら、私はそのようなうれしい悲鳴を出すような目にあったことはありません。)

 大きな予算がついて、備品の購入ができることは研究にとってうれしいことなのですが、山田さんが書いているように「最新の設備であればあるほど、その機械を常によい状態で使うために安定した高い技術が要求される。・・・・・ハイレベルの研究を支える上で、研究補助者・技官の役割はきわめて高い。・・・・・そういう高額機器をよい状態で長く使用するために必要な技官のいるところなど殆ど無いだろう」という現実は、日本中のあらゆるところが共有している悩みです。

 北海道大学では、そうした状況を克服するために「オープンファシリティ」という、機器を集中管理するとともに学内外の研究者に貸し出すという制度を開始しました。こうした動きは我々のような貧乏研究室にとっては福音ですし、窮して出てきた苦肉の策という側面はありそうですが、税金の無駄遣いをなくするという意味でも有用なものだと思います。

 文科省の側でも「おそらく文部科学省などの役人はお金を使って機器設備を整えれば研究が進むと思っているのではないかと思われる」と言われるような予算の配分を吟味して、本当に日本全体の科学の発展のためにはどうやって貴重な税金を使うべきかを国民の声も聞きながら、常に見直しを繰り返していただければ、と思います。

 さらには、予算の申請から採択まで時間のかかる研究費なども多いわけですので、世の中の変化のスピードが早い今の時代ですから、申請の時とは異なる使用方法が必要になることもままあります。そうしたことに対しても柔軟に再検討をしていただけることが、結局は税金も有効に利用できることになると思いますので、そうしたことについても「改革の継続」をお願いしたいと思います。

 そうでなければなれば、K_Tachibana さんのブログのコメント欄にあったような「某研究会に行ったら、『日本学術振興会21世紀COEの金が入ったが、全然こんな大金(一億数千万)を使う研究じゃないし、出すほうも何を考えているんだか。困ったあげくにごちゃごちゃパソコン類を買い込んでなんとかしたけど、パソコンもこんなにたくさんあってもしょうがないしなぁ』などと主催者がおっしゃっていた」という話など出てこなくなると思います。

 科学者だって、税金は大切にしたいと思っているのです。
by stochinai | 2005-11-02 20:41 | 大学・高等教育 | Comments(8)
 エキサイト・ニュースに毎日新聞から「<花粉症>遺伝子組み換え米を食べて緩和 マウス実験」というニュースが提供されています。

 「スギ花粉のたんぱく質を作るよう遺伝子組み換え操作をした米をマウスに食べさせたところ、花粉症のアレルギー症状を緩和できた」という内容で、「10月31日付の米国科学アカデミー紀要に発表した」と書いてあります。科学アカデミー紀要というと、おそらく Proceedings of National Academy of Sciences of the United States of America (通称、PNAS)のことだと思うのですが、最新版はNovember 1, 2005で、31日付というのは見あたりません。その前はOctober 25, 2005なのですが、この2つの号をしらべても、allergyやTakaiwaというキーワードを含んだ論文は見つかりません。

 まあ、雑誌の巻号を間違えることなどは良くあるので、それはどうでも良いのですが、この研究の意義は何なのだろうと考え込んでしまいました。

 花粉症のアレルギーの緩和について次のように書いてあります。

花粉症は、体内の免疫システムが花粉を異物と認識し、くしゃみなどで排出しようとするために起きる。花粉の小型たんぱく質を日常的に食べることで体が慣れ、アレルギー反応が弱まる。

 経口免疫によって寛容性が誘導されて、アレルギーに対抗するという話は良く聞きますので、正しい情報だと思います。しかし、その目的のために米に遺伝子組み換え操作をしてスギ花粉のたんぱく質を作らせる必然性はあるのでしょうか。

 実験は「花粉症の症状を起こす約20匹のマウスを使って実験。開発した「スギ花粉症緩和米」と、普通の米を投与する2グループに分け、1日10粒を1カ月与えて両グループの差を調べた」とのことです。その結果、「緩和米を投与したグループは、アレルギー反応を起こすたんぱく質の分泌量が普通米グループに比べて約85%も減少した。スギ花粉を吸わせて出るくしゃみの回数も、普通米グループの約3分の1になった」という結果も、私は信用できます。

 しかし、この目的のためにどうして遺伝子組み換え米が必要なのか理解できません。

 毎日、スギ花粉あるいはスギ花粉のタンパク質をふりかけたご飯を食べるのとどこが違うのでしょう。

 実験としてはおもしろいし、発想も理解はできるのですが、実用化することを考えたらコストがかかりすぎますし、倫理問題や社会問題も生む可能性があります。企業の開発チームならば絶対にやらない研究と言えないでしょうか。

 チーム長の談話「注射などによる療法とは異なり、食べるだけで効果がある。早期に実用化を進めたい」は本当なのでしょうか。私がコメントするなら、「1日も早いスギ花粉ふりかけの実用化が求められる」になります。
by stochinai | 2005-11-02 20:02 | 生物学 | Comments(11)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai