5号館を出て

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2005年 11月 03日 ( 1 )

5年間の日曜日

 大学院生の頃、よく外国の大学の現役の先生が長期にこちらの研究室に来られて、悠々と実験やセミナーや旅行をしていることを目にして驚いたことがあります。

 聞けばサバティカル・イヤーといって、大学のすべての義務から解放された1年間の有給研修期間だということだということで、7年に一度(7年働いたら1年間?)は誰にでも与えられる権利なのだそうです。アメリカの大学の先生などは、普段でも大学からは10ヶ月しか給料をもらっていない人が多いらしく、2ヶ月分の給料は自分で獲得した外部からの研究費でまかなわなければならないので、サバティカルの時には年俸で見ると給料は下がるらしいのですが、復職を完全保障された上での1年間の自由時間は、研究者としてのキャリアアップに大きな貢献をして、その後の研究生活が一回り大きくなるものだと聞かされました。さすがに、次々にオリジナルな研究が出てくる欧米の大学は、研究者に対する待遇が違うと感心したことを思い出します。

 北海道大学でも、法人化してからようやくサバティカル・イヤーについての検討が始まったのですが、教員・事務員の数をギリギリにまで削減しているところでもあり、どうも現実的な話としては聞こえてきません。

 それはさておき、もしもあなたがサバティカルをもらえるとしたら、しかも5年間もらえるとしたらそれをどう使うか考えてみて欲しいというリクエストがありました。

 すごいですね。たとえ有給は最初の1年だけとしても、あるいは最初からまったく有給ではないとしても、復職を保障された5年間の休職期間は魅力的です。もちろん、今でも病気などの理由があれば復職できる休職制度はあるのですが、病気が理由ではその間に自分のキャリアアップにつながる研修などは望めません。あくまでも、現状のままの気力・体力を維持したままのサバティカルが与えられるとしたら、やはりそれはすごいことです。

 もちろん、今の日本でそのようなことがあり得るとはとても思えないのですが、そこを敢えて思考実験として考えてみたらどうなるのかというのが、ヤマグさんからの宿題なのだと思いました。同時に、今日本のポスドクの人たちがおかれた状況を考えると、彼らは戻るべき元の職というものがないままサバティカルの状態に置かれているようなものであると考えることもでき、そう考えるならば彼らが今現在どういうキャリアを研けば、今後の幸せにつながるのかというヒントになるかもしれない。だから、ちょっと考えてみてくれないか、ということなのかもしれません。

 考えてみます。

 5年間あれば、かなりいろいろな職業に就くための訓練ができます。まずは、どんな職種があり得るのかを考えてみましょう。ヤマグさんは工学系ということですが、我々のような理学部生物学系は、最近でこそバイオテクノロジーや先端医療関係と近い分野になってきておりますので、そういう分野へのスピンアウトはあまりにも普通すぎますし、個人的にはそんなに興味がある分野というわけでもなく、あまり触手が伸びません。

 自分に何ができるかというより、何がしたいかという夢を語っても良いということなら、実は私は小学生の頃から「動物園の飼育係」になりたいと思っていました。今でもその気持ちがなくなったわけではなく、引き受けてくれるところがあるならば一から飼育係の修行をしてみたいという気持ちは、まだあります。もちろん、動物園でなくとも水族館(実はこっちの方がいいかも?)や、あるいは植物園の管理人もいいですね。そういうふうに想像を発展させることを許していただけるのならば、栽培漁業や酪農や牧畜、農業も気持ちとしては守備範囲にあります。そうそう、ペット屋さんも悪くないですね。

 つまり、研究職ではなくとも、生き物を扱うことができる職業ならば、なんでもやってみたい気持ちはあります。

 研究者や教員としていままで蓄積したものにこだわると、できることは非常に限られてしまいます。自分の専門性を生かし続けるとしたら、研究者や教員を続けるか、あるいはサイエンス・ライターや解説者くらいしか、なれる職業は思いつきません。我々がこれから何をするかとか、ポスドクの人が何をするのかということを考えるときに、あまりに今持っている専門性にこだわることは得策とは想えません。それは、同じ状況に置かれたたくさんの人に共有されている状況であり、そこで競争しても一握りの勝者と残りほとんどの敗者を生むという悲惨な結果しか想像することはできません。

 そうそう、それから小学生を相手に理科を教えてみたいという気持ちもあります。受験などを意識せざるを得ない中学生や高校生ではなく小学生がいいですね。あるいは、カルチャースクールみたいなところで趣味として理科を学んでみたいという大人の方と一緒に理科を学ぶ場を作ることならやってみたい気もします。

 結局、今キャリアをやり直すのだとしたら、子どもの時に持っていた夢あるいは希望を思い出すこととか、今自分が好きなこと(趣味)を職業にできないかと考えることから始めてもいいのではないかと思っています。

 もちろん現実の私は、いろんなものを抱えてしまっておりますので、現在の職をリセットして新しいキャリアへ向かうという選択がにわかに現実となるということにはならないのですが、正直を言うと折に触れて退職後の生活を考える年齢になってきております。そう考えるとサバティカルがあろうとなかろうと、今後どうするのかということについては否応なしに考えざるを得ないところに置かれているわけで、その時には上に書いたようなことを空想したりしているということは事実です。

 何ができるのではなく、何をしたいのか、したいことの中で実現できそうなことはなんなのか。そういう順番でものを考えるようにしています。

 宿題のレポートとしては情けないものになってしまいましたが、サバティカルをもらったらというより、今度は何をしますかという課題に対する回答のようなつぶやきになってしまいました。

 あなたなら、次には何をやりますかという問いにどう答えますか。
by stochinai | 2005-11-03 23:14 | つぶやき | Comments(25)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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