5号館を出て

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2005年 11月 25日 ( 2 )

なんとR30さん

 私のブログで1時間に100以上のページビューがあるなどということは結構めずらしく、たいていの場合は、時事ネタのエントリーを書いた後に一過性に起こることです。

 しかし今日は昨日のスロー・ブログ宣言以降エントリーも書いておらず、それにもかかわらずオーバー100PV状態が、4時から7時まで4時間も津波のように続いているものですから、なんだこれとちょっと心配しておりましたら、原因はR30さんのところにあったようです。

 それほど会心のものではなかったこんなエントリーなのですが、R30さんが戯れに引用などされるものですから、どっと押し寄せた方が約500人。

 せっかく来てくださっても、がっかりされたのではないかと、そればかりが心配です。

 田舎芝居が全国紙の評論家に「こんなのもあるよ」って取り上げられたような気分で、もちろん光栄の行ったり来たりではあるのですが、なんとも気恥ずかしい思いでもあります。

 なんだかうかつなことは書けなくなるような緊張感が漂ってきます(ウソ、^^;)。

 というわけで、今後もスロー・ブログで行きますね。
by stochinai | 2005-11-25 21:54 | つぶやき | Comments(0)
 nature (24 November 2005) Volume 438 Number 7067 に免疫の進化に関する久々のヒット論文が載っていました。

 群体ボヤの一種のウスイタボヤ(Botryllus schlosseriが主人公です。このホヤは、写真で見るとわかるように、放射状に見えるかたまりにある一枚一枚の花びらのようなものが個虫と呼ばれる一匹で、それが群体を作っているので群体ボヤと呼ばれます。

 このホヤの群体は植物が芽を出すように殖えていくのですが、海の中で隣の群体とぶつかりあった時、その二つの群体が癒合したりしなかったりすることを、私も公私ともにとてもお世話になった渡邊浩さんという方が、40年くらいも前に伊豆下田の臨海実験所で発見しました。彼が使ったホヤは同じ群体ボヤですが別種のミダレキクイタボヤ(Botryllus primigenusでしたが、癒合と非癒合が遺伝子で支配されており、2倍体の個体が同じ遺伝子をひとつでも持っていれば癒合し、両方とも違う場合には癒合しないということを見つけたのです。つまり、AAとAAおよびABは癒合するが、AAとBBは癒合しないということです。

 しかも、その後の研究から癒合しない時にはホヤの血液細胞がお互いの組織を攻撃しあうという、まさに脊椎動物で見られるような細胞性の「免疫反応」のようなことが起こるということもわかり、脊椎動物の祖先の姿を現代に残しているこの原索動物に脊椎動物の原始的な姿が残されているのではないかと、内外から注目を集めたのです。

 しかし、残念ながらこの仕事の分子生物学的解析はアメリカのWeisimanらを中心とするグループにさらわれて今日に至っています。渡邊先生のお弟子さんのひとりである齊藤さんが下田でがんばっておられるのですが、機関銃に竹槍ではやはり大変です。

 で、アメリカのグループは地道に研究を続け、分子生物学と遺伝学を組み合わせた実験を10数年続け、ついにこの癒合・非癒合を支配している遺伝子をクローニングした結果、それが脊椎動物で臓器の拒絶反応を支配しているMHCという遺伝子に相当するものであるという論文が出たというわけです。

 その遺伝子が、予想通りというべきか驚いたことにというべきか、MHCと同じように免疫グロブリンと相同な構造を持っている細胞膜上に飛び出た分子だということですから、これはnatureに出ないわけはありません。

 同じ号のnatureには、この方面(比較免疫学、免疫の進化学)の大御所のLitmanによる解説も載っていますので、興味のある方は是非とも読んでいただきたいのですが、残念なことにやはりそこにもこの研究の起源となる群体ボヤの癒合・非癒合現象を発見したのは日本人であるとのクレジットは見あたりませんでした。

 確かに、Weissman達はこの現象の重大さに気がつき、遺伝学と分子生物学を地道に10数年かけてやり遂げたことはとても偉いと思います。しかし、これはやはりオリジナリティの高い研究を評価してサポートを続けてくれるアメリカという国の研究支援システムと、世界的にはやっている研究を輸入して最先端の研究をしている研究室を手厚くサポートする日本の研究支援システムの違いが根にあり、その結果として日本で始められた研究がアメリカで決着を見るという今日の姿につながったような気がして残念に思います。

 Weissmanと言えば、医学系の幹細胞研究でも第一線の人ですが、そういう人がホヤの研究に手を出すところに日米の違いを感じます。お金がある程度ふんだんにある日本の医学系の最先端研究室のようなところで、ホヤの飼育に10数年もかかるような研究をやらせてくれるところがあるでしょうか。

 研究というものに対する歴史だけではなく、何か越えがたい差を感じるエピソードだと思いませんか。
by stochinai | 2005-11-25 21:27 | 生物学 | Comments(16)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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