5号館を出て

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2005年 11月 27日 ( 1 )

 今朝の朝日新聞に「学生のバイト学業犠牲憂う」という北九州の大学非常勤講師の方の投書が出ていました。

 タイトルを見ると、今の学生はバイトばっかりして勉強していないということに対するお小言かと思いますし、実際「車の購入や遊ぶためのアルバイトはつつしむべきだ」などとも書いてあり、学生に対する警鐘の投書ではあるのですが、その中になかなか秀逸な経済解析(?)があってなるほどと思いました。

 「学生アルバイトは雇用主に買いたたかれている」という一言はバイトしている学生にとってもかなり響く一言ではないのでしょうか。「どのような状況にあっても、学業を犠牲にして、そのような安働きをすべきではない」という一文は、学生に対して労働者としての自覚を持てという檄文のようにも聞こえます。

 本来、学生時代というのは将来に備えて自分を作るための時間であり、そうした自己鍛錬というものはとても貴重なもののはずです。その貴重な時間のうち、たとえ1時間でもたった700円で売り渡してしまうことが本当にいいのか、という問いかけを学生は真剣に受け止めるべきではないでしょうか。

 自分を1時間研くことができるならば、それは700円もらって捨てることのできるようなものではなく、逆に1500円払っても惜しくないと言うべきものではないでしょうか。

 そもそも、学生は大学にとんでもない高い授業料を払っています。国立大学も含めて年間50万円から100万円払っている人が多いと思いますが、例えば月に5万円払っているとすると月25日のウィークディの一日に2000円払っていることになります。一日に3講受けるとすると1講あたり700円くらい払っていることになります。大学の講義は1単位1時間の講義に対して2時間の予習・復習をすることを義務づけています。大学では1講が2単位の2時間分になっているところが多いと思いますので、そうすると1講あたり4時間の自学・自習をしてはじめて大学の講義1講(2時間)分の知識の伝達がされるということになっています。

 そうだとすると、毎日の3講に対しては12時間の自学をしないと大学での教育を受けたことになりません。大学における学問というものはそのくらい困難で時間のかかるものであると想定されているのです。

 普通の生活時間があるとして、大学での3講(4時間半から6時間)に12時間の自習を含めると、1日24時間のうち16時間半から18時間を勉学に費やすとすると、土日の時間を考えても大学が提供する学問を身に付けようと思うなら、大学生はとてもアルバイトなどすることはできないという「理屈」になります。つまり、アルバイトをすることによって大学時代に身につけることが期待される「学問」を身につけることが困難になるという計算が成り立つのです。

 学問というものはそのくらい身につけるのが大変なものなのです。これは本当だと思います。バイトなどせずに4年間学業に打ち込んだとしても、必ずしも全員が学問を身に付けることができないことの方が普通でしょう。

 そういうふうに考えると、大学時代の貴重な時間を、時給たった700円のために売り渡して良いのかという投書の主の意見はとても重いものだと思います。

 もちろん、様々な理由でアルバイトをせざるをしない人がいることは理解できますが、そのアルバイトをすることが勉学に打ち込める時間を売り渡すことにペイするかどうかをいつも考えていなければならないということはしっかりと受け止めていただきたいところです。
by stochinai | 2005-11-27 23:35 | 大学・高等教育 | Comments(34)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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