5号館を出て

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2006年 01月 24日 ( 1 )

 5号館へ帰ってきました。

 なんと途中で通った理学部ローンでは雪で壁を作り、ジンギスカンをやっている学生とおぼしき人間がいました。長年札幌で暮らしていますが、氷点下4℃くらいの露天でジンギスカンをやっているところは初めて見ました。意外と今後、はやるかもしれません。いつの時代もバカなことをやる学生は微笑ましいものです。かまくらを作ってその中でやらなかったのは、技術力のなさが原因とは思われますが、酸欠事故で死なないためには正解だと思いました。

 さて今日は、昨日の続きのサイエンスコミュニケーション・ワークショップ in Sapporo2日目「サイエンス・カフェ ~イギリスと日本の経験~」でした。その後に、札幌駅のガード下の居酒屋で行われた懇親会にも参加させてもらっていました。

 残念ながら、トム・シェークスピアさんがイギリスのサイエンス・カフェの現状を紹介し、我がCoSTEPの岡橋タキーがサイエンス・カフェ札幌の紹介をしたところまでは聞き逃してしまいましたが、その後の東北大学サイエンスカフェ、サイエンスカフェ神戸、くらしとバイオプラザ21のバイオ-カフェ、そしてカフェシアンティフィック東京からの報告は全部聞くことができました(とは、言っても時々隣に座ったCoSTEPの佐藤君と私語を交わしたりしていたのですが、、、)。

 いろいろな意図のもとに、様々なサイエンス・カフェの試みが行われていることに、正直な感動を覚えました。理科離れしていると言われる高校生をメイン・ターゲットに科学の面白さを伝え研究者へのリクルートを考えるものから、大学受験で目指す学問分野への進学に失敗し中年を越える頃になってからリベンジとして自然科学へチャレンジしてきたおじさん・おばさんに研究活動を提供しようというものまで、今後出て来るであろうものを考えるとまさにプロデューサーの数だけ多様なカフェがありうると感じました。

 そんなお話の中でいくつか印象に残ったことを書き留めておきたいと思います。

 トムさんがコメントされていたこと。カフェは講義(レクチャー)とは違うものでなくてはならない。質問に答えるのではなく議論するというスタイルにならなければ意味がない、という言葉はサイエンス・カフェ(イギリス人のトムさんはフランス語でカフェ・シアンティフィクと呼びます)の本質をズバリと突いていると思います。ミニレクチャーになりがちなカフェに対する警鐘です。

 これに関連して、バイオ-カフェの紹介をしてくれた佐々さんのお話の中に出てきた「おしゃべりの勧め」は、ずっと私の中でもやもやしていたサイエンス・カフェとミニ講演会のどこが違うのかということに解答への道筋をつけてくれる強烈なイメージを与えてくれました。

 日本人は講演をしてくれた人にあまり質問しないとか、議論が下手だとかよく言いますけれども、そんな人達でも隣の人と「ねえねえ、今の話わかった?」というような雑談や私語は活発に行います。佐々さんは、それこそが普通の市民が苦手と言われている議論や演者への質問への突破口になるのだというようなことをおっしゃっていたと思います。

 講演会での質問と回答でもなく、さらには最近サイエンス・カフェで良く見られるテーブル談話でもなく、普通の人がもっとも得意とするこの私語・雑談を積極的に利用していくことで、今までは想像もできなかった幅広いコミュニケーションができるはずだというお話に、私はカフェという世界の光が見えてきたような気がしました。

 講義や講演会ではタブーとされている、私語や雑談にポジティブな意味を付与する意見には生まれて初めて出会いました。佐々さんとは、懇親会でも隣に座らせていただき、3月に「ホンモノのサイエンス・カフェ」をやるぞと意気込んでいるSalsaさんと3人でかなり盛り上がってしまいました。

 もう一つの収穫は、サイエンスカフェ神戸がすごいという発見でした。実に自然体でカフェを運営しておられる伊藤さんは、特に意識して所属する神戸大学を背負っておられるわけでもなさそうで、数人の仲間と市民のネットワーク作りとしてのサイエンスカフェを運営しておられます。特に今後の展開に対する展望が素晴らしく、市民とのネットワークができたら、彼らが調査・研究活動するところまでサポートしようということを想定しているのは、本当にすごいと思いました。

 もう一つ、神戸のお話で共感できたのは、その柔軟な姿勢です。普通、サイエンス・カフェなどをやろうとする時にはついついターゲットとする対象の年齢や社会的位置などのことを考えるものですが、伊藤さんは中高年が多い現状に対しても淡々とそれを受け入れて問題視する気配すらありません。これもまた、カフェを運営するにあたって大切な姿勢だと思い知らされたものです。

 バイオ-カフェもカフェ神戸も基本的に小さな催しであり、参加者同士が横の方向に打ち解けやすいという共通点があるように思いました。カフェのコミュニケーションのポイントにひとつはこの「参加者同士が仲良くなる」ということなのかもしれないと思ったのも、今日の収穫でした。

 サイエンスという接頭語が付こうが付くまいが、良いコミュニケーションが行われるためには良い人間関係が前提になります。冷製に考えると、そんなことは当たり前のことなのですが、ついついサイエンスという言葉の魔力にだまされて忘れがちになっていることを反省しました。サイエンス・カフェは規模が大きすぎたらダメなのかもしれません。

 そんなこんなで、今回のワークショップでも実にいろいろなことを学んだのでした。

【追記】
 科学コミュニケーションブログさんからの情報で、くらしとバイオプラザ21ワークショップの詳細な報告がアップされたことを知りました。すごく詳細ですので、是非ともご覧下さい。
by stochinai | 2006-01-24 23:57 | CoSTEP | Comments(6)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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