5号館を出て

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2006年 01月 26日 ( 1 )

 tsurezure-diaryさんのところで知ったのですが、日本の論文ねつ造疑惑の中心人物のひとりである東京大学の多比良教授に2000年度から2005年度の間に国から支給された研究費の総額が約14億4千万円になっているそうです(たとえば中日新聞)。

 中日新聞によると、研究費は経済産業省、NEDO,文科省などから出ていますが、同じ人に重複して研究費が投下される現状はなんとかならないものかと思います。

経産省関連では〇三-〇五年度に、教授がジーンファンクション研究センター長を兼任する産総研がセンターへの研究費として九億千四百万円、NEDOはプロジェクト予算として四億二千二百万円。文科省は二〇〇〇-〇五年度に、三件の研究課題に科学研究費補助金で計一億千八十八万円。いずれも多比良教授を研究代表者として支給、合計額は十四億四千六百八十八万円に上る。

 教授に論文データねつ造の責任をなすりつけられている助手の方にも2001年から2005年までの間に、文科省の科研費が5180万円支給されているとのことです。研究は共同で行っているでしょうから、2人分を合わせると、15億円ということになります。

 まあ、最近の遺伝子やタンパク質、糖、脂質がらみの研究で、産業化も視野に入れるような巨大プロジェクトになってくると、数億円から数十億円というのもわからない額ではないのですが、そういう大きなお金をもらって研究を始めると途中でやめるわけにも行かなくなり、研究費の継続を考えるとNatureやScience、Cellクラスの雑誌に論文が出続けないと難しいということが言われてますので、データねつ造の動機は理解できないわけではありません。

 しかし、そういうプレッシャーがある中でもお金を出した側がしっかりとした監視体制を持っていれば、そうそう簡単にねつ造などできるものではありません。この事件の背景には、研究費配分の審査体制と監査体制の不備があることはまちがいありませんので、お金を出した側の責任も問う必要があると思います。

 今の事後審査体制と言えば、もらった研究費でどのくらい論文を書いたかを問うものが多いですが、それではねつ造を後押しするという逆の力になってしまいそうな気もします。それから、審査した人あるいは組織を審査するシステムが絶対に必要です。情実で研究費配分が行われているというような噂を払拭するためにも、真剣に検討すべき段階に来ていると思います。

 この件に関しては、国際的に評価される決着をつけておかないと、日本の科学界が世界から相手にされなくなるというくらいの危機感が欲しいです。

 inoue0さんからの情報によると「多比良教授の学生は全員が移籍した」そうです(毎日新聞)。研究費ももらえなくなっていたので、学生も研究できないと困るので別の研究室へ移るということなのでしょうが、大学院の途中で研究室を変わる(多くの場合はは研究テーマも変わるでしょう)というのは、かなりダメージが大きいです。単に研究室を変わるだけではなく、授業料の返還や場合によっては慰謝料なども含めて学生に対しては大学として責任を取るべきこともあると思います。

 東大と並ぶ日本の頭脳である京大でもアホな事件が起こっています。

 「集団強姦容疑で京大生3人逮捕 名門の元アメフット部員」です。京大のアメリカンフットボール部「ギャングスターズ」といえば、最近はそうでもないのかもしれませんが国立大学としては異例の日本一を争うレベルにあった名門チームです。

 あえて失礼を承知で書かせていただくと、某私立大学のアメリカンフットボール部で同じような事件が起こったとしたら、それほどの驚きがないかもしれない集団強姦事件ですが、東大に並ぶあるいはそれ以上の頭脳集団である京大の学生が、こんなアホなことをするようになるほど日本全国の大学生のレベルが下がっているのかもしれません。

 来年からは大学全入時代になるとも言われていますので、もはや東大や京大も普通の大学になってしまったということなのかもしれませんが、いくつかは特別の大学というのも必要ではないかという気がします。

 悪くいうとエリート大学になってしまいますが、教員も学生も禁欲的に学問・研究に邁進する大学がひとつくらいあってもいいのではないかと思ったりさせられるような憂鬱な事件です。

【追記】
 本日東大工学部で調査委員会の報告書が発表されたそうです。産経ウェブによると結果は限りなく黒に近いものになったようで、「多比良教授と主執筆者の川崎広明(かわさき・ひろあき)助手(37)の処分を懲戒免職も含めて検討している」とのことです。

 ニュースには書いていないのですが、メールニュースBTJ /HEADLINE/NEWS 2006/01/27 THE PRIME MAIL 第790号にこの記者会見の様子が書かれています。Biotechnology Japan Webmaster の宮田満さんの個人的意見だと思いますが、私も共感できる意見です。

 1月27日に東大工学部の調査委員会の記者会見で配られた資料には、そのため、匿名の外部研究者が、多比良研究室が提出した再試の結果を微に入り細にわたり、個人的推測も交え検証していますが、こんな議論は匿名ではなく、学会の場で、実名を明かして堂々とやりとりすべきです。まるで推理小説のような面白さですが、学問の府である東大工学部が匿名の資料として配布するのは大いなる勘違いであると思います。調査委員会は、この匿名の調査報告配布を撤回するか、誰が評価したか、実名を公表すべきだと思います。

 私も公平性や透明性を確保するために、調査や検証を行った人の実名は公開されるべきだと思います。そうでなければ、「被告」が正当に反論する機会を失うことになり、逆の不公正が行われる可能性が出てきます。宮田さんはそういう科学的検証は「学会」(この場合はRNA学会)が行うべきであると主張し、大学の仕事は以下のことであろうとおっしゃっています。私はこれにも共感します。

 これは研究プロセスに不正行為がなかったかどうかの吟味です。大学や研究機関で、不正行為が行われたのか、という判断です。大阪大学や東京大学の論文捏造事件では、トランスジェニックマウスがいなかったり、実験ノートがなかったり、明らかな研究不正行為がなされています。この不正行為と研究責任者の管理責任こそ、所属機関の調査委員会は判断すべきなのです。

 再現性に拘泥する余り、不正行為の吟味が曖昧になってはいけません。むしろ、実験ノートも生データもない論文を公表したという不正行為を確認し、果断に処分することが重要です。


 京大の事件も続報が出ています。逮捕された3人のうち1人が京都府警の調べに「数日前も鍋パーティーを開き、酒に酔った別の女性と関係を持った」と供述しているのだそうです。こんな連中は、鴨川の河原に裸で2-3日さらしものにしたら良いのではないでしょうか。
by stochinai | 2006-01-26 21:32 | 大学・高等教育 | Comments(22)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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