5号館を出て

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2006年 01月 29日 ( 1 )

春の匂い

 まだまだ朝起きて除雪をしなければ日々が続いていますが、作業をしていても何となく気分が違ってくるようになりました。すぐに汗ばむこともそう感じさせられる一因ではあるのでしょうが、12月頃の暖かい日の感覚とはずいぶん違う感覚があります。ひょっとすると自分にも動物的に日長などで季節を感じる動物的な勘があるのではないかと感じる瞬間でもあります。

 そうなのです。雪の中で作業をしていて春を感じるのです。雪はほとんど融けておらず、まだまだ暗い空と猛吹雪の日もあるのですが、明らかに心は冬の底は過ぎたということを実感しています。

 北国では冬季になると「鬱」になる人が多いといいますが、そういう人でもそろそろ気分が戻り始める時期になってきました。去年も書いたような気がしますが、今までは北国に住んでいることを呪う気分だった人も、北国に住んでいることを感謝する時期が始まったのです。

 雪祭りはこれからなのですが、良く考えてみると雪祭りは札幌の冬を終わりを告げるお祭りなのかもしれません。

 さて話変わって、私のとっている朝日新聞で確認しただけですが、今朝の新聞ではブルーバックス「新しい高校生物の教科書」の広告が大々的に出ていました。最新刊2冊ということで「新しい化学」と並んで出ているのを見ると、なんとなく気恥ずかしい気がしないでもないのですが、同時にそれが自分と関係したものであるという実感があまりわかないのもまた実感です。

#名前にルビをふられているのにもなんだか違和感がありましたけれども、同じページの他の本でも読み間違われそうな著者にはルビが入っています。無名人の証明でもあるのでしょうが、読み間違われることを考えるとルビはありがたい配慮です。

 「発売忽ち大増刷」のポップが入っています。初刷が1万5千部とずいぶん思い切った部数を出すということで、我々としては(講談社としても)本当にそんなに出しても大丈夫なのかと心配だったのですが、幸いなことに書店レベルで支持があり、緊急重版ということで、もう1万5千部を刷ることになったようです。

 3万部といえば、ちょっとしたベストセラーの数ではないかとドキドキものなのですが、ブルーバックス広告のすぐ下に「生協の白石さん」が87万部突破と出ていますので、3万なんて売れたうちにははいらないと気を取り直しました。

 それにしても、私が今までに関係した本で専門書と言われるものは3千冊くらいも売れればせいぜいだという世界です。専門書や同人誌というものは数百からせいぜいが数千しか売れないものだと聞きます。

 大学教科書や実習書の執筆に関係したこともあります。教科書は毎年コンスタントに出ることが期待されるものですが、それとて公式教科書に採用されたとしても数百が良いところで、毎年売れたとしても何年か後には年に数十部ということになることも良くあります。実際、私が関係した大学生物学の実習書は今でも毎年数十冊ずつ増刷されているようですが、シャレのように年に2000円とか3000円とかの印税が送られて来ます。

 ところがこのブルーバックスの前に出た中学生向けの「新しい科学の教科書」は1年から3年までの3分冊ではありますが、合計で15万から20万部出ているとのことで改めて初等・中等教育の「教科書」という出版の威力に驚かされました。日本では高校進学率もほぼ100%に近いと思いますので、「高校生物の教科書」が中学の「科学の教科書」に近いポピュラリティを獲得する可能性はなきにしもあらずなのかもしれません。

 逆に言うと、「教科書」と銘打たれている本は、いわゆる普通の読み物の本とは異なる基準で購入されている可能性が高く、たくさん売れたからと言ってその内容が受け入れられたということとは違うのだということは肝に銘じております。

 とは言うものの、学校で普通に使われる普通の検定教科書とは違い、教室で使われることよりも個人レベルでの生物学読本として利用されるということを前提に売れたのだとしたら、日本人の「生物学教養」あるいは「生物学リテラシー」に対する関心の高さを評価したい気分にもなります。それと同時に、続編とでもいうべきリテラシー本を要求する層がいることも確信できる気になってきます。

 しかし考えてみると、ブルーバックスの諸作品こそがこの「教科書」の続編というべきものなのですね。
by stochinai | 2006-01-29 23:04 | 教育 | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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