5号館を出て

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2006年 06月 04日 ( 1 )

 Freelancerさんのご紹介により、タイトルにある西宮冷蔵の水谷洋一社長を追ったドキュメンタリー『ハダカの城』“プレビュー版”のテープを、なんと制作者ご自身である柴田誠さんから送っていただきました。

 私は柴田さんのことはまったく存じ上げなかったのですが、大阪の写真・映像・音響の専門校「ビジュアルアーツ専門学校大阪」の先生もやっておられる映像作家さんのようです。

 今日、広島から札幌へ帰ってきてみるとテープが届いており、プレビュー版(Ver.060409)で132分と書いてあったので、長いので気分が落ち着いてからゆっくり見ようと思っていたのですが、見始めてみるとやめられず一気に見通してしまいました。

 つまり、おもしろかったということです。

 まだ、未完成品なのでいろいろと批評をするのはフェアではないとも思うのですが、柴田さんへのお礼という意味も込めて、現時点のバージョンについての感想を書かせていただきます。

 この作品はすでに半公開の試写が行われております。その時に配布された(?)資料と思われるものがこれです。ご覧になれば(ならなくても)わかるように、「雪印食品・牛肉偽装事件」の内部告発をしたことで、廃業に追い込まれた冷蔵会社社長の孤独な闘いの記録です。

 事件の概要や、会社の再建などについては、マスコミでも報道され、マスメディアによるドキュメンタリーも放送されているので、私もある程度は知っていたつもりでしたが、柴田さんが水谷社長に密着して4年間余りも取材を続け、まさに社長の内側からの報告である本作品を見せていただき、また新たな目でこの「事件」を見ることができました。つまり、この事件が社長の人生観そのものを変えていく様がみごとに映像に記録されていることを感じました。それが、この作品の最大の成果ではないかというのが総合的な感想です。

 私がこういう長尺のドキュメンタリーに慣れていないせいもあるのでしょうが、最初しばらくは正直言って遅い展開のテンポに付いていけなかった気がします。それが、社長と並んで陸橋の上の隣で本を売っている少女が本を買ってくれるシーンを境に、ぐいぐいと引き込まれていきました。

 モーニングショーによる報道を契機として、寄付などが集まりまたたく間に営業再開に漕ぎ着けていくシーンは、社会的には感動を呼んだところである程度マスコミにも報道されているところですが、そこでは柴田さんはマスコミの報道の外側から事実を記録し続けています。それによって、マスメディアの滑稽さや嘘くささを含めて、我々が報道によって知らされているものは何なのかということまで教えてくれる、価値ある映像になっていると思います。

 マスコミ的には営業再開で、ある意味での勝利を勝ち得たところでドキュメンタリーとしては完結しても良いところなのでしょうが、社長がその後も陸橋に戻っていったというところが非常に興味深く思えました。

 社長にとっては当初、営業再開のための闘いの場として出かけていった陸橋の上で、彼は何かを発見したのだと思います。そこで、本当の意味で人と人とが出会い、コミュニケートするとはどういうことなのかを発見したのではないでしょうか。

 「できれば、陸橋に住みたい」と語る社長は、ひょっとするとこの事件で失った物よりも得た物のほうが多かったのかもしれません。

 佳作だと思います。

 なお、この映画が完成へと向かう様子が柴田さんのブログでリアルタイムで報告されているというのもこの作品のおもしろいところだと思います。

 本格公開の暁には、是非ともご覧になられることをお勧めします。

#素人からのテクニカルなコメントは失礼かとも思いますが、敢えて書かせていただきますと、字幕の使い方にはもう一工夫していただけると、流れに乗りやすいと思いました。具体的には、タイトル的な字幕は今のままの音声なしでも問題ないと思うのですが、説明的な文章になっている字幕に関しては、ナレーションあるいは字幕とナレーションを併用したほうが良いのではないかと感じました。ただ、これはビデオ画面の解像度がわるいせいでそう感じられたたのかもしれませんが、視覚的に文字を追うのがつらい人も多いと思いますので、ご検討いただけると幸いです。
by stochinai | 2006-06-04 23:59 | つぶやき | Comments(6)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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