5号館を出て

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2006年 06月 15日 ( 1 )

博士の就職活動

 いつも貴重な情報をいただいているvikingさんのところ(大「脳」洋航海記)で、「博士の就活って大変みたいですね」というエントリーが、昨日書かれています。その前に、まずはvikingさんのサイトに「ドクター(問題)関係のリンクを大幅に追加」されていることに感謝したいと思います。興味のある方は、そこから各ブログへ飛んでください。

 さて、vikingさんのところで引用されている「うすっぺら日記」さんのブログには、大学院生、ポスドクおよびその周辺にいる方々には是非とも一度は目を通していただきたい、「博士課程の就職活動について」というカテゴリーのエントリーがあります。

 管理人の分子生物学系博士課程在学中の大学院生lanzentraegerさんが、悩み抜いたあげくに就職活動を開始してから、おめでたいことに今年の3月に内定を取るまでの就職活動のドキュメントは、直接の関係者にとって有益な資料になっているだけではなく「民間に就職するとはどういうことなのか」ということを実体験に基づいて教えてくれる貴重な教科書になっています。(トラックバックはできないようなので、勝手にリンクを張らせていただきます。)

 大学院で博士課程まで進学する人の多くは、できるならば研究職、さらにできるならば大学教員になりたいと思っている人が多いと思います。修士での就職活動に失敗して博士課程に進学するという例がないわけではありませんが、そういう人を除くと一般的な就職活動とはどういうものかというイメージすら持っていない博士課程の大学院生が多いのかもしれません。

 確かに大学教員や国公立研究所の研究員などの公募に応募することも広い意味では「就職活動」ということになるのかもしれませんが、民間企業のしかも場合によっては研究職ですらない部門への就職を希望するというようなことになってくると、公募への応募などという世界からは想像もできないくらいの別世界へ乗り出して行く覚悟が必要になるくらい「常識」というものが違うのです。

 lanzentraegerさんの「就活日記」を読んでみると、確かに頭の切り替えには大変な苦労があったようではありますが、結果的には「就職活動」というものはきわめてあたりまえの「自分の売り込み活動」にすぎないのだということがわかります。

 そういう目で読むと、やはりおかしいのは大学や大学院・研究所のほうなのだと感じられます。つまり、たとえ大学院を出た人間であろうとも、就職活動というものは企業に自分を売り込むということですから、相手企業にとって自分がどのくらい役にたつ人材であるかということを説得する作業にほかなりません。つまり、就職活動が成功するかどうかは、そういう売り込みができるかどうかということがポイントになります。

 つまり、大学教員や研究所の研究員の公募の時のように、学歴と業績リストを送りつければ何とかなると考えるほうが異常だということが理解できるかどうかが、就職活動成功の鍵を握っているということでしょう。

 冷静に考えると、業績つまり研究能力だけで決めることが多い大学の教員の採用基準というものが明らかにおかしいのです。先日、某大学で新しく採用した助教授がほとんど学生に講義をする能力がないことがわかって困っているという話を聞きましたが、これなどは採用側が人事というものをまったく理解していないことを示しているエピソードだと思います。

 国立大学も法人化して、大学経営ということを真剣に考えなければならないところにきているはずです。もしも、それが額面通りそういうことであるならば、大学教員の採用も企業と同様の基準で行われるべきだということにならないでしょうか。営利主義ということではなく、「大学という企業」の経営にとって有益な人材を採用するということです。そうなってくると、単に研究ができるだけというような人材ではなく、学生の教育や指導さらには生活指導や就職の世話などができる人材が大学にとって必要だということになるはずです。

 もしも本当にそうなってくると、大学へ就職したいと思っても、民間企業に就職したいと思っても、志望する大学院生やポスドクには同じような能力が求められるということになってくるはずではないかという気もします。

 そうなってくると、大学にとっても学生・ポスドクにとっても楽になるのではないかと思いました。民間企業へ勤めるのと、大学で教員になるのが全然違うというのは、やっぱり異常なことですよね。
by stochinai | 2006-06-15 22:39 | 大学・高等教育 | Comments(4)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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