5号館を出て

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2006年 08月 08日 ( 1 )

 私が小学生の頃から、そうだったような気がします。交通事故で子供の死者が出ると交通信号や横断歩道、歩道橋が驚くほどのスピードで整備されるのです。

 子供心にも、誰かが犠牲にならなければ信号はできないものだとわかっていたような気がします。PTAなどでも、半分冗談めかして「誰かが事故にでも遭えば、ここに信号器が付くんだけれどね」などと話されることがあると、何度も聞きました。

 その「伝統」は今も受け継がれているようで、埼玉県の市営プールで女の子がプールの流れを作る装置の吸水口に吸い込まれてなくなった事件をうけて、日本中の公立学校や公営プールの緊急調査が行われました。今までさぼっていた証拠に、全国で約1600カ所ものプールの給排水口に問題があることが発覚しました。つまり、今回の事故がなければ危険を放置していたところがそんなにあったということです。

 危険があることがわかったということで、速やかな使用中止や改善が行われていることは結構なことだと思いますが、どうして人が死ぬまでほったらかしていたのでしょうか。

 ほとんどのケースでは、「この程度の不備ならば、大きな事故にはつながらない」という判断があったものと考えられます。では、なぜそんないい加減な判断をしてしまったのでしょう。

 たとえ、小規模な不具合でも専門の業者に修理を委託した場合にはお金がかかります。公立学校や公営プールでは、プールが設置される時には、一時的に大きな予算がつきますが、その後の運用に関しての予算がつくことはほとんど考えられません。つまり、プールを作ってもらうのはうれしいとしても、それがあることによって必要となる維持管理費は、プールがなかった時と同じ予算から捻出しなければならなくなるわけです。

 ただでさえ、潤沢なお金などあるはずもない公共機関がプールを所有することによって、経済的に苦しくなるという状況に追い込まれていたとしたら、管理する側としてはプールの保守管理にはなるべくお金を回したくないという気持ちになっても不思議はありません。大丈夫だろうという判断は貧乏から出てきているという側面も大きいのではないでしょうか。

 そもそも、プールという水死事故の原因になる設備を作って、その維持管理費がつかないなどという予算配分方式が間違っているのではないでしょうか。あるいは、安全に関する保守点検の費用は通常の運営予算と別枠で交付されるしくみというものが必要ではないでしょうか。

 税金の使い方として、今後は箱ものを作ったらそれが廃棄されるまで、運営あるいは保守点検のための費用を補償するシステムにできないものでしょうか。

 大学では高価な機械が購入されても、保守点検の費用が別途用意されないことが多いので、最新鋭機が数年のうちにがらくたになって放置されるというようなことが、しばしば起こります。たとえば、1億円の機械を購入しても、維持費が毎年数百万円というようなことであるならば、運営交付金が貧困な環境では維持は無理なのです。

 研究機器だと、多くの場合人命にかかわる事故につながるものではないことが多いか、危険ならば使用を中止すればすむので、放置されるだけですが、プールのような場合には今回のような事故が生まれる原因になります。

 箱ものに投資するならば、ぜひとも永続的な維持管理費の交付もお願いいたします。それが、結局税金を効率よく使うことになるのです。
by stochinai | 2006-08-08 21:16 | つぶやき | Comments(20)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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