5号館を出て

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2006年 08月 30日 ( 1 )

 科学コミュニケーションブログ、K_Tachibana さんのところで教えてもらいました。国立大学の博士課程定員が、なんと51年ぶりに定員減となったとのことです。
 文科省によると、国立大の博士課程入学定員は56年度の2304人から年々増え続け、96年度には1万人を突破。2003年度以降は年100人前後の「微増」が続いていた。
 これは定員で見ているので、来年から博士課程の入学者が減少が始まるように思われるかもしれませんが、実は全国の大学院での博士課程への進学者数は2003年度をピークにすでに減少に転じているという事実があります。数字で見る博士課程修了後という「博士の行き方」サイトから引用させていただきます。このデータは国立大学のものだけではないと思いますが、博士課程定員の大多数は国立大学にありますので、傾向はそれほど違わないと思います。
 平成15年度の進学者数が18232人をピークにして、平成16年度は17944人、平成17年度17553人と徐々にではありますが、減少する傾向にはあるようです。

 理学に関しては一度、平成13年度に減少に転じておりますが、工学・理学とも、平成15年以降、再度、減少に転じているのが理解できると思います。
 ということで、実は学生が数年前から博士課程への進学を避けるようになっているという現実があるのです。私のまわりを見てみてもこの傾向は極めてはっきりと感じられるようになっており、さすがに定員割れとまではいかなくても、10年くらい前には定員の2倍もの進学者がいたことを考えると隔世の感があります。

 つまり、この数年のギャップの間には、博士課程の定員割れがあちこちの大学や研究科で起こっていたということを意味しています。大学教員として大学院に籍を置いてみると良くわかるのですが、大学院の定員割れというものは文科省から最低の評価を受けることとして、大学内でもっとも忌み嫌われていることのひとつです。

 私は何かというと、博士課程の定員を減らすべきだという意見を発してしまうのですが、大学の経営にたずさわっていらっしゃる方々には、定員減あるいは定員の不充足ということは、そのまま文科省からの運営交付金の減少すなわち大学経営の危機につながることに見えてしまうようで、いつも即座に却下されてしまいます。

 そういう状況であるにもかかわらず自ら定員減を選んだ大学院があるということは、もはやいかなる手を尽くしても定員を充足することはかなわないという敗北宣言だと思います。それが表に出てきたということは、全国のかなりの国立大学でも同様のことが起こり始めていると見るべきでしょう。

 しかし、博士課程に進学するということを選ぶ学生が減ったことを受けて、それを追認するように定員を削減するというのでは遅すぎるのです。

 ここは、思い切って希望者をはるかに下回るところまで定員を下げて、ある意味でのシビアな競争を課し、そのかわり博士課程に入学することができた者には、しっかりとした研究者になる訓練を行い、それに応えてくれた学生には少なくとも10年間くらいは安定して勤められる研究職を与えるというような状況になったら、状況は大きく変わると思います。

 前にも書いたと思いますが、もはや国立大学の理学部などでは修士は義務教育化しています。それはそれで良いと思いますが、その中から大学や研究所の後継者を育てるのが博士課程というふうに発想を変えてはどうでしょう。

 このまま進学希望学生の減少に引きずられるように、徐々に定員を減らしていくようなことを続けていくのでは、ただただ疲弊して死をまつのみだと思います。大学経営を考える皆さまには、ここらで発想を転換して、攻めの制度作りをお願いしたいと思います。
by stochinai | 2006-08-30 21:25 | 大学・高等教育 | Comments(8)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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