5号館を出て

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2007年 01月 28日 ( 1 )

 今朝の朝日新聞の「声」欄に、「給食費は無償にすべし」という投書がありました。私は給食費をタダにすることに必ずしも賛成ではありませんが、その中に書いてあった、給食費の滞納が児童生徒の1%、給食費全体の0.5%であることに対して、「私には、そんな程度かと思えた」という文章に膝を打ちました。私も、ずっとそう思っていました。投書の文はさらに続きます。
 長いこと水道行政に携わっていたが、水道料金でさえ未納者を給水停止にしても毎年1、2%程度は徴収不能だったからだ。企業経理は、売り上げのうち数%ぐらいが未収金になることを念頭に置いていると思われるし、銀行だって、そのぐらいの貸し倒れ引当金を覚悟しているのではないだろうか。
 最近の日本では、「なんでもバッシング」が流行しています。今回の学校給食費滞納問題は、教育問題の中で起こった「教師たたき」に続く「親たたき」に思えてならないのです。

 文科省のサイトにある「学校給食費の徴収状況に関する調査の結果について(PDF:272KB)」を見ても、給食費の未払いが急に増えているという印象もそれほどのものではないようですし(下の図参照)、私が子供の頃を思い出してもクラスに1人や2人(それで2~4%になってしまいます)は給食費が払えない子がいた記憶があります。そして、最近の所得格差から低所得層が増えていることを考えると、たとえ未納者が増えたとしても不思議はないと思われます。
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 ただ、この表で気になるのは、その下にある未納が増えた原因についての回答のうち、「経済的な問題」が原因と思う学校(校長?)が約38%なのに対して「保護者としての責任感や規範意識」が約70%と圧倒的に多いことです。そもそも、選択肢が2つしかないようなことも問題ですが、この回答には何かしらの誘導的な臭いが感じられます。

 そして、まさに最近の報道がこの点(携帯料金は払っているのに給食費を払わない親、義務教育だから給食費はタダにすべきだと主張する親)に集中して、右へならえの姿勢をとっているところにとても気持ちの悪いものが感じられます。

 これこそがまさに、文科省あるいは政府が誘導している親バッシングの根にある思想であるように思えます。もちろん、バカな親もいるでしょうし、とんでもない主張をする親もいるでしょう。それは、教師バッシングの時と同じで、バカな教師もいるでしょうし、買春する教師もいるでしょう。生徒と一緒にいじめをやるガキ教師もいるでしょうし、教室運営の下手な「指導力不足」の教師もいるでしょう。しかし、残りの大多数の教師は普通の教師で、ダメ教師と同じくらいあるいはそれよりもはるかに多くの素晴らしい教師がいるという事実もあるはずです。

 払える経済力があるにもかかわらず給食費を払わない親が、0.数%いることは事実でしょう。しかし、それをもって「今の小中学生の親は、ダメ親である」という結論がまったく論理的でないことは小学生でもわかることです。

 それにもかかわらず、新聞やテレビなどで大々的に「給食費を払わないトンデモ親」を報道することで、世の親のすべてがダメであるかのような印象を与えようとする情報操作をしていることをとても強く感じます。

 では、この情報操作の効果はなんなのでしょう。教育基本法改正の議論の時に、教師バッシングをすることで教師による基本法改正の声を抑え込む効果は確かにあったのではないかと思います。今度の国会でも、子どもたちの学校が変わってしまうかもしれない教育関連の法律改正が数多く予定されています。今、小中学校に通う子どもを持つ親にとっては人ごとではない心配があるはずです。

 私には、何十年も前から続いている給食費未納問題を、いま急に社会問題化することによって、この親たちの発言を封じこめようという意図が感じられてなりません。

 バッシングには、常に相手の発言を封じ込めようという力が感じられます。議論はおおいに結構だと思いますが、バッシングは思考停止・判断停止の愚かな行動です。新聞やテレビという、いまだに大きな力を持っている報道機関がバッシングに荷担するのは、自分が死んでいることを表明すること以外のなにものでないと思います。

追記:ここに佐藤清文さんが書かれた「給食費滞納と報道」という、素晴らしい評論を見つけました。是非、ご参照ください。
by stochinai | 2007-01-28 22:55 | 教育 | Comments(21)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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