5号館を出て

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2007年 04月 21日 ( 1 )

33個目の石

 朝日新聞の隅っこに写真があり、説明に「石は33個」と書いてあったのが目にとまりました。朝日コムにも写真と記事がありました。叱られるかもしれませんが、うれしかったので転載しちゃいます。事件の第一報を書いた時とは、ずいぶん状況が変わってきています。
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 記事
には、「AP通信によると、学校の広場に死者をしのんで33個の石が半円状に置かれ、星条旗などが供えられた。置かれた石は前日までは32個だったが、チョ・スンヒ容疑者(23)の分が加えられたようだ」と書いてありました。

 犯人の学生も、多くの被害者と同じくバージニア工科大学の学生でした。彼は小学生の頃に家族と一緒にアメリカに移住してきたということですが、彼の英語はさなえさんがおっしゃるように、かなり訛も強くアメリカ社会にとけ込んでいたとはとても思えないものだったようです。自分の言っていることが相手に通じないと、だんだんと無口になっていく気持ちは、アメリカ人に囲まれて暮らしたことのある日本人なら誰でもがわかることですね。

 おまけに、あのアメリカ人のまわりにも強制する「明るい」社交性についていけなければ、あの国で暮らすのはかなりのストレスになったのかもしれません。ニューヨークやカリフォルニアなどの大都会ならばいろいろなコミュニティがあって、逃げ込むところもありそうですが、バージニアではそれが難しかったのかもしれません。

 しかし、どんな不幸な状態に置かれていたとしてもこのような犯罪を正当化する理由にはなりません。同じような事件が日本で起こったとしたら、マスコミは総力を挙げて犯人バッシング報道をするでしょうし、犯人の家族も生きていくことが困難な状況に追い込まれることは想像に難くありません。

 アメリカでも、どうやら両親は現地を去ったようですし、似たような対応をされることもあるのでしょうが、報道を見る限り、国を挙げての犯人バッシングや韓国バッシング、アジア人バッシングは起こっていないようです。日本で、もし同じような事件が起こったら、韓国人たたき、来日アジア人たたきが起こるような気がしてなりません。

 どこまで信じて良いのかわかりませんが、移民が集まって作られた彼の国では、永住権(グリーンカード)を得た人は「アメリカ国民」として受け入れられるという雰囲気があるのかもしれません。

 たとえ憎むべき犯人であったとしても、バージニア大学の一員として一緒に追悼してもらえるのだということを犯行の前に知ることができていたら、この事件は起こらなかったと思います。そして、たとえニューカマーだとしても、アメリカ人としてこの家族が受け入れられているということを知ることができたら、そこに「愛国心」というものが生まれるような気もします。

 事件のすぐあとに、大統領までもが駆けつけて犠牲者に対して最大級の追悼式ができてしまうこの国を見た時には、この国が常に臨戦態勢にあるという感慨も湧くのですが、それと同時に犯人も被害者の一人であるという認識を持った人がある程度存在して、その人達による追悼の石の追加に対しても目に見えた反発が起こっていないところを見ると、いろんな意味で日本という国の未熟さとアメリカという国の懐の深さのようなものを感じてしまいます。

 確かに刀狩りのように完全に銃を取り上げてしまうことができるのであればこのような事件を防ぐことはできるのでしょうが、そんなことではなく太陽の光のように人の心を温めることで犯罪をなくしていくほうが間違いなく有効だし、ベターな方法なのだということを再確認させてくれるエピソードだったと思います。

 事件が起こるたびに、少しずつ賢くなれるならば、犠牲になった方々の死も人類の歴史から見ると決して無駄にはならなかったと言えるのですが、我々は後生の人達にそういって胸を張ることができるでしょうか。
by stochinai | 2007-04-21 23:59 | 大学・高等教育 | Comments(1)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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