5号館を出て

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2007年 04月 30日 ( 2 )

 今朝の朝日新聞に、教育再生会議の提言についての特集記事が載っていました。しばらく前から、あちこちで報道されていたことなので内容的には特にニュースというほどのことでもないのですが、朝日の記事によると旧7帝大(いまだにこの呼び方が残っているということが、いかに文部科学省の大学政策が旧制度を温存しながらの、形ばかりのものであるかの証明みたいなものです)と、東工大や一橋大など「90年代に大学院の定員を増やした大学」(いわゆる大学院重点化されたところという意味だと思います)では、この方針を数値目標として「外科手術」すると言っているようです。

 こういう重点化された大学院では、すでにある数の大学院生は外部から入学してきております。東大などは、学部定員より大学院定員が1割ほど多いので、すでに何割かの学生は他大学出身者によって占められているものと思われます。こういう大学にとっては、身内からの大学院進学を3割以下にするということは、痛くもかゆくもないかもしれません。逆に、選ぶ大学院側が学生に対してより優位に立って「選抜」することを可能にさせるという意味において、今でさえも弱い立場にいる大学院生をより弱い立場に置くのではないかという危惧を抱かせます。

 今は、卒業研究で入った研究室でそのまま大学院へと進学する学生が大多数なのですが、大学院の入試というものはどこでも大学入試ほど「厳正」に行われているわけではないという事情もあって、「情」というものもありますから特に大きな理由がない限り、大学院進学を断られるというケースは少ないのではないかと思います。それが、内部からの進学者は3割以内ということに制限されると、3人に1人しか同じ研究室で進学することはできなくなり、そこに大きな競争が生じることになるかもしれません。

 また大学院生も、学術振興会の研究員に採用されて有給になるという道もあるのですが、その選考過程において、かなり「研究業績」が評価されるという事情(噂?)もあって、4年生の卒業研究からひとつの研究室で同じ研究を続けた場合と、途中でそれが変わる場合とでは、大きなハンディが生じるという事情もありますので、同じ研究室で進学できる人と、他大学へ移ってまったく新しい研究を開始した人では、大きな格差が生じてしまう可能性があります。

 そうなってくると、同じ研究室の大学院へ進学できるかできないかということは、その先の研究者としてのキャリアにとって、最初のセレクションとして機能する恐れが出てくると思います。大学院入試を大学入試並みに厳格にしない限り、この段階で同じ研究室に残れるかどうかが、指導教員の「判断」というようなあいまいなもので決まることになると、それは新たなアカハラの火種になるとともに、研究室に残れるか残れないかのサバイバルゲームが、学生同士の無用な軋轢を生みそうで不安にもなります。

 さらには、研究室の教員の力の差によって、自校出身者を入学させることのできる研究室と、それができない研究室などという悲劇も出てくるかもしれません。

 そうした現場での混乱というものを、きっちりと調査・想定して、混乱なく実施するためのインフラを整えた上で提案していただくのならば、基本的に学生がいろいろな研究室で学ぶということは良いことなので原則的には歓迎したい気分がないわけではありません。もし、本気でやるのであれば、「例外なしに」他校に進学した学生には返還免除の奨学金を与えるとか、自校で進学した学生は博士課程の学振研究員にはなれないとか、誰の目にもはっきりとわかるルールが必要だと思います。

 今でも、研究室を変わらないと学振PDは与えないと言いながらも、特別に優秀で特別な理由がある場合には認められる「例外」もあるなどということがあると聞きます。文部行政の下でこのようなことが起こっているということがあると、結局今回の提案も一部の「有力教員」の研究室は制約から逃れられるなどということになるのではないかという不信感も感じます。

 それとともに、有力大学はこの制度を「活用」して、一人勝ちの状況をさらに先へ進めて、格差がどんどん広がっていくような危惧が感じられるのですが、実は今回の提案も大学院を整理・再編するための政府の方針のひとつとして、はじめからそのつもりだということならばこうした危惧や反対意見はすれ違いということになりそうですね。
by stochinai | 2007-04-30 23:59 | 大学・高等教育 | Comments(12)
 我がビデオ師匠であるkumaさんのサジェスチョン「ところで2倍速の加工のとこで、もう1,2回おなじ加工の操作をやると、4倍速8倍速のスローモーションになりますよ」に従って、作ってみました。

 2倍、8倍、32倍のスピードダウンをしたロケット打ち上げの動画です。



 このくらいスピードを落とすと、打ち上がる時にまっすぐに進んでいないことも良くわかり、なんとなく「科学的解析」になってくるのが、おもしろいですね。だんだん、はまりそうです。
by stochinai | 2007-04-30 23:40 | 教育 | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai