5号館を出て

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2007年 09月 28日 ( 1 )

大学院生の就職活動

 早いところではもう大学院修士課程の学生の就職活動(就活)が始まっているそうです。最も早い製薬系では9月から採用活動が始まるとのことですが、もちろんこれは来年の春に卒業する人に対するものではなく、再来年春に卒業予定の大学院生の話です。首都圏から遠く、比較的スタートが遅いと言われている我が大学でも、ほとんどの学生が年内には就活を開始します。

 ちょっと前までは、年明けに活動を開始する学生も珍しくなかったのですが、年々早まってきており、12月11月と手前に繰り上がってきて、最近は10月に動き始める学生も珍しくありません。もちろん採用側が9月に開始すれば、学生も9月に動き出すのは当然と言えましょう。

 修士の1年生が入学したのは、この春です。日本の大学では、4年生の卒業研究を行った研究室でそのまま大学院に進学して研究テーマも継続するというケースが多いので、その場合ならば、研究を始めてから1年半くらいで就職活動をすることになるのですが、大学院にはいって研究テーマを変える場合や、さらには教育再生会議が推奨するように他大学の大学院へ進学した場合には、研究を開始してからわずか半年で就職活動をすることになります。東京工業大の三木千寿副学長がおっしゃるように「半年で何を身につけたと判断するのか」という批判も当たっていると思います。

 学生の一生にかかわることですから、就職活動は学生の自由意志に任せるケースが多く、その間講義の欠席や研究の停止は許される、あるいは暗黙裏に見逃され、就活が原因で単位不足や修士論文研究の内容不足で卒業不許可になるということは、あまり聞きません。修士2年間のうち、半年から1年間休んでも卒業させざるを得ないというのが今の大学院修士課程の現実ということになります。学卒ではなく、修士卒を採る企業側としては、自ら採用者の能力アップを阻害してしまっていることは明らかに損失になることだと思うのですが、より優秀な大学院生を採りたいと競争する企業としては、たとえその点がわかっていたとしても、採用競争を加熱させざるを得ないという現実があるのだと思います。

 そこで、このままでは自分で自分の首を絞めることになると気が付いた「日本経団連が27日、会員企業に対し、修士1年時に広がる大学院生の採用活動の自粛を呼びかける方針を決めた」というニュースが流れました。

 読売オンライン:大学院修士1年の採用活動、経団連が自粛呼びかけへ

 選考のルールがあいまいなため、採用活動が1年時の秋から、半年近く続くこともあり、「浮足立って研究に集中できない」などと大学から批判が出ていた。経団連は、倫理憲章に大学院生の新卒採用についても、「学事日程の尊重」を明記して、各企業に適正化を求める。

 経団連の今春の調査によると、技術系新卒採用の7割以上が修士。かつては修士2年時に、学校推薦など就職先が決まるケースが多かったが、最近は、学生自らが企業のホームページに登録して選考を受けるのが主流。製薬系の9月を先頭に、各企業も優秀な学生を確保しようと、採用活動が早期化、長期化していた。
 この「長期化」というのが問題なのだと思います。例えば、修士1年生の10月頃に卒業後の就職が決まってしまっていれば、その後1年半ゆっくりと修士論文研究に打ち込めますので、それならば学生にとっても企業にとってもメリットがあるように思えます。

 ところが、ほんの一握りの「売れっ子」学生を除く普通の学生にとっては、たとえ11月から活動を始めても早くて翌春、悪くすると翌秋まで就職活動が続くことになります。また、たとえ「売れっ子」だとしても1社が決まった時点で就活を終える学生はほとんどおらず、より希望ランクの高い会社の内定をいくつか取るまで、なかなか活動を終わりにできない心理もわかります。さらには、就活そのものが楽しくなって、研究室に戻ってこない学生もいると聞きます。

 このような状況の中で、企業に紳士協定にすぎない自粛を呼びかけてもほとんど効果はないでしょう。では、どうすれば良いのでしょう。

 一つの解決策としては、修士で卒業する学生は就職活動も含めて3年のコースを作ったら良いのかもしれません。博士課程に進学する場合には、修士は2年でも3年でも変わりはないと思いますが、就職活動で半年から1年間のブランクがあったとしても、3年という時間があれば最低限でも2年間研究に打ち込めると思いますので、これは企業にとっても学生にとってもメリットになるのではないでしょうか。

 文科省では「大学院の博士課程の年限を弾力化できるよう、年内にも大学院設置基準を改正することを決めた」そうですので、私としては珍しくこれは充分に考慮に値する現実的な提案になったと思います。
 今回の改正ではこの年限を各大学院の判断で変更、延長できることを明確化。例えば、「前期2年、後期3年」を「前期3年、後期3年」といった前期を重視したコースに組み替えることが容易になる。
 これを、博士後期課程に進学しない学生にも適用するだけですから、あまり問題はないと思いますがどうでしょうか。>文科省の方々
by stochinai | 2007-09-28 22:33 | 教育 | Comments(26)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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