5号館を出て

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2007年 10月 06日 ( 1 )

 vikingさんが、ひさびさにポスドク問題について書かれています。さすがに彼の筆は鋭く、今までの議論が要領よくまとめられておりますので、感心のある方は是非ともお読み下さい。

 ドクター・ポスドク問題への奇策(1):日本から「博士」→アカポスというキャリアパスをなくしてしまえばいい

 このエントリーでまとめられている、ポスドク問題が「結局抜本的な解決に至らない理由」を再掲させてもらいます。
 一つ目は、「そもそも余剰博士の絶対数が多すぎること」。
 二つ目は、 「博士という層に対する一般社会からの理解に乏しいこと」。
 三つ目は、「博士を含めたアカデミアの側の覚悟が足りないこと」。
 四つ目は「博士のキャリアパスに対するコンセンサスが旧態依然であること」。
 五つ目は「日本の伝統的な年功序列のシステムに博士課程修了者や進路転換を目指すポスドクがそぐわないこと」。
 六つ目は「博士課程が就職できなかった修士の溜まり場と化してきていること」。
 そして、日本の博士課程は「アカデミア=ごく少数の成功者と大多数の食いっぱぐれ」を生む「アリ地獄」であると結論されています。そこで、その解決策として日本の大学の博士課程を出た人間が研究職に就けなくしまうための「奇策」を提言されています。その奇策については、是非とも原文をお読みください。この方策が実現したら将来ポスドク問題は起こらなくなるだろうと私も思いますが、残念ながらその施策を実施する機関は、日本には現れることはないだろうという気もします。

 また、これは将来のポスドク問題に対する対策であって、現在いるポスドクには何の助けにもならないので、「今の問題はどうするんだ?」ということについては続編が書かれると予告されているので、楽しみにしたいと思います。

 さて、vikingさんが考えてくれたアイディアを実行するまでもなく、私は今後ポスドク問題はだんだんと自然消滅して行くと思います。

 (ここから、vikingさんの記事のパロディ風になりますが、他意はありませんのでお許し下さい>vikingさん) m(_ _)m

 その理由の一つ目は、「博士(後期)過程に進学する学生がだんだんと減っていること」。大学院定員そのものを減らしているところはまだそれほど多くはないのですが、自分のところを含めて明らかに進学者が減っています。そして、その状況の中で博士後期課程に進学する学生が、昔と違って「自己責任」を意識しているケースが多くなっているように感じられます。つまり、この先へ進むということは、今ここにある「ポスドク問題」の渦中に自分も入っていく可能性があるという自覚を持っている人が多くなっているということです。

 二つ目は、 「博士という層が悲惨な状況に置かれているという、一般社会の理解が出てきたこと」。最近、マスコミで取り上げられることが多くなってきて、「博士になると悲惨なんでしょ」という認識を持った人が多くなってきており、特に大学院生の親御さんにそういう認識が広がってきていることで、子供が大学院に進学することを無批判に受け入れることが減ってきているのではないかと思われます。

 三つ目は、「博士を含めたアカデミアの側の覚悟が少しずつ芽生えてきたこと」。これも「漂流博士」や「博士残酷物語」といったマスコミの扱いによって、文科省も真剣に考えて対策を打たざるを得ないところに追い込まれていることが大きいと思います。法人化によってはっきりしたことですが、大学と言うところは文科省からの圧力にとても弱いのです。

 四つ目は「博士のキャリアパスに対する考え方が変わってきていること」。上に書いたことと関係あるのですが、最近の学生は大学院に行ったからといって簡単に研究職に就けるとは思わなくなってきています。また、誠実な教員は学生に対してそのようなキャリア・アドバイスをするようになってきていますので、多くの大学院生は「自分が研究者にはなれない可能性は高い」と思っているはずです。

 五つ目は「学生に、日本の伝統的な年功序列のシステムに博士課程修了者や進路転換を目指すポスドクがそぐわないことが理解されてきたこと」。そのため、年功序列制度を持った安定企業に就職したいと考える学生は、大学院は修士まででやめるのが常識になってきています。

 六つ目は上にも書いたように「博士課程に進学する学生そのものが減ってきおり、博士課程は就職できなかった修士の溜まり場から、指導教員などにだまされた学生以外は自覚して進学するものだけになってきていること」。

 東大などでは、こうした事実に危機感を持っているからこそ、大学院博士後期課程に入る学生に奨学金を出したり、授業料をタダにしたりしているのだと思いますが、実はこの状況は目の前にお金をちらつかせることで解決するような甘い問題ではないと思います。逆に、そんなニンジンに惹かれて博士課程に進学するような長期的展望の欠けた学生を増やして、いったい何を期待しているのか不思議でなりません。

 つまり、ポスドク問題を引き起こした責任者である政府・文科省とそれを(嬉々として?)受け入れた大学が今、今後の研究者養成・研究の継続、そして更なる発展を期待するための人材不足というしっぺ返しを喰らい始めているのではないか、というのが私の現状認識です。

 もちろん、ポスドク問題の最大の被害者はポスドク自身なのですが、それとともに大学も国家も研究の将来も大きな打撃を受けつつあるという自覚がない限り、この先も場当たり的な愚策が繰り返されそうな気がします。

(vikingさんの記事から、多少不謹慎なやり方で「引用」をさせていただきましたが、vikingさんにはご理解いただき、お許し願いたいと思います。)
by stochinai | 2007-10-06 17:39 | 科学一般 | Comments(94)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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