5号館を出て

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2007年 10月 15日 ( 1 )

 いつも勉強させてもらっている[EP:end-point 科学に佇む心と身体 Pt.2]に気になる記事がありました。

 科学の演芸化、科学の品格
 このところ、ぼんやりひっかかっていることがある。
 なんかさ、科学に「ショー」としての面白さを期待するのがアタリマエになっているような、そんな。
 某でんじろうさんをはじめとする「科学ショー」が一定のポピュラリティを得て、巷では「ショー化された科学」だけではなく、「『科学』をネタにしたショー」があふれていることに対する不快感は、良くわかります。テレビなどで科学を装いながらもただのバラエティショーに、「科学者」が引っ張り出されて笑いものにされているのを見ると、さすがに最近は私も心が痛んでチャンネルを変えてしまうことが多くなりました。

 「科学コミュニケーション」を目指しているといいながらも、まずは人の心をつかむことが大切とばかりに、おもわずつかみの方に力がはいりすぎてしまうことがままあることは、我々も日常的に経験することです。科学に対する関心の低い人を引き込むための単なる方便として使っていたはずのショー的要素が主になって、ややもするといつのまにか科学がなくなってしまう、あるいは科学が添え物になってしまうことの危険性は常に口を開けて我々の前に横たわっているのです。

 では、どうしたら良いのでしょうか。まずは、聴衆を見極めることが大事なのではないかと思います。ショーの部分で「ん?」と思ってこちらを振り向いてくれた人のうち、ほんとうの科学の面白さの語りに入ったとたんにきびすを返して去る人と、ほんの一握りかもしれませんが、我々と一緒になって日々の研究活動をおもしろがってくれる人がいます。その時に、去る人を快く送り出してあげることが、科学を「演芸」の一歩手前で引き留めてくれる「品格」なのだと思います。

 テレビ・ラジオや出版の世界が危険なのは、たとえ演芸になろうと嘘が入ろうと、経済的価値に置き換えられる視聴率や発行部数だけが評価基準になるからです。つまり、そこではいったんつかまえたら、いかにして立ち去ることを阻止するかということだけが重要課題になるわけで、その時点で「科学」はお客さんの欲求に応えるだけの「演芸」になってしまうのでしょう。

 昔から、科学を愛する人などというものは総人口のうちのほんの一握りだったのだと思います。そして、理科離れと言われる今の時代でも、同じように一握りの人は科学を愛好してくれています。

 サイエンスカフェやサイエンス居酒屋というかたちで、一時的な「はやり」として人が集まることがあったとしても、そこは科学を語る場でありショーを見せる場ではありません。たとえショーを見せたとしても、ショーそのものの魅力にひかれて集まった人は、次にはもっと刺激の強いショーを見せてもらわなければ去っていきます。最近のテレビの「科学ショー・バラエティ」を見ていると、その刺激をどんどん強くする方向へと加速度がついているようなものも多く、科学ショーは近いうちにテレビから消滅することを強く予感させられます。

 成功したサイエンスカフェとは、観客がちょっともの足りなく感じるもので、もっと知りたいという気持ちをおみやげに持って帰ってもらうものだ、というCoSTEP関係者の間ではすでに共通の認識になっているセオリーがあります。カフェの後で、お客さんがその不満を解消するために、勉強を始めてくれることが、我々の最大の目標でもあります。

 そして、それはサイエンスカフェだけではなく、私などは学校での講義などでも狙っているところです。最初は、ちょっとおもしろい話で惹きつけておいて、気がついたらいろいろな情報が与えられ、でも現在の科学ではまだまだわからないことがこんなにたくさんある。調べてみたらわかることもあるけれども、実はその先のことは世界中の誰もがしらない謎のままなんだ、科学の最大のおもしろさというのは「実はこれはこうなっているんだ」ではなくて、「実はここはまだ全然わかっていないんだ」ではないでしょうか。

 雨崎さんがおっしゃるように、確かに「『ショー化』しなくても『おもしろい授業』はあ」ります。しかし、一方では「なんで、そんなにおもしろいことを、つまらなく話す授業をするんだ」というようなものが多いのも事実です。

 私としては、授業はやっぱりショーの一種だと思いますし、人の心をつかむということでは長い歴史のあるショーの要素を入れて聴衆を飽きさせないようにしながらも、科学の神髄を相手の心に残す。こうした教育技術も大切なのだと思います。
by stochinai | 2007-10-15 22:24 | CoSTEP | Comments(3)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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