5号館を出て

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2008年 01月 31日 ( 1 )

 中学生の頃、学校へ行く時には家を出てすぐに東に向かって歩き出すのですが、その方角にはたまねぎ畑が広がっており、正面から朝日をまともに浴びることが多かったものです。そして、その頃なぜか家を出てまぶしいと思った瞬間に毎朝くしゃみをしていたことを思い出しました。

 1月10日の記事として Scientific American のサイトに、Looking at the Sun Can Trigger a Sneeze (そのまんま「太陽を見るとくしゃみが出る」です。) という記事が出ていたのです。副題として For some people, bright lights mean big sneezes と書いてあるので、必ずしも誰でもそうなるというものではなく、どうやらこの現象は遺伝する性質として古くから有名なことだったようです。

 私は初めて知ったのですが、photic sneeze reflex 光くしゃみ反射と呼ばれるこの現象は、医学的にもいろいろと研究されており、欧米人では10-35%の人が、日本では25%の人だけがこの反応を示すらしいのです。

 家族間の遺伝的解析から、この性質は性染色体ではない常染色体に乗っている優性の遺伝子によって支配されているということは、「医学界の定説」になっているようなのですが、このゲノム時代にそれ以上の解析が進んでいないというのが不思議です。

 古くはアリストテレスもこの現象を認識していたらしく、太陽の熱のせいだと言っていたらしいのですが、その2000年後にベーコンが「目を閉じているとこの反射は起こらない」ことを「実験的に」証明して、アリストテレスの熱説を否定したことになっています。ベーコンは太陽がまぶしくて出た涙が鼻を刺激するのだろうと推測していたそうですが、今でもまぶしさが瞳孔収縮反射を引き起こす際に、鼻も刺激することが原因でくしゃみが出るのだと考えられているようですので、ベーコンの仮説はなかなかのものだったと言えるのではないでしょうか。

 ほとんどの人には無害とも言えるこの反射ですが、ジェット戦闘機のパイロットではかなり深刻な事態を起こす可能性があるということでアメリカ軍ではかなりまじめに研究しているという話もあります。

 とは言え、やはりどこかしら滑稽さのただようこの現象を扱う時には、どうしてもオチが笑い話になるようで、1978年に出た論文ではそれまでphotic sneeze reflex (PSR) と呼ばれていたこの現象を Autosomal-dominant Compelling Helio-Ophthalmic Outburst syndrome 「常染色体上にある優性遺伝子が引き起こす突発性太陽視覚症候群」という長ったらしい呼び名に変えようと提唱しているのですが、その略語はなんとACHOOなのです。

 辞書を引いてみると、achoo は擬音語ahchoo の別綴り(achoo, atishoo, choo, hachoo, kerchoo とも) で、achoo アチューはなんと「ハックション」のことだと知ると、本気で研究しようとしているのか、受けを狙っているのかわからない話になってしまうのでした。

 楽しい現象は、楽しく科学するというのも大切なことなのでしょう、きっと。
by stochinai | 2008-01-31 21:19 | 生物学 | Comments(1)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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