5号館を出て

shinka3.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

2008年 02月 09日 ( 1 )

 diggからの情報です。

 Proof That Evolution Works Faster Than Genetic Engineering

 元記事はこちらです。

 First Proof that Evolution Can Work Faster Than Genetic Engineering

 タイトルを直訳すると「遺伝子組み換えよりも素早く起こる進化の最初の証拠が発見された」とでもなると思います。

 モンサント社の遺伝子組み換え綿花には bollworm moth (ワタキバガ)と呼ばれるガの幼虫を殺す、『バチルス・チューリンゲンシス』という細菌(Btと呼ばれる)から取り出した物質の遺伝子が組み込まれています。

 この物質はヒトには害を与えないので、安全な生物農薬として散布されることもあるのですが、それよりは綿花に遺伝子を組み込んでしまえば農薬を撒く手間が省けるということで、1996年以降使われ始め、アリゾナ大学の調査によると、今では1億6千200万ヘクタール(4億エーカー)に作付けされているということです。Bt耐性ガは、その7年後に出現が記録されています。

 ところがこのBt毒を食べても死なないワタキバガがBt綿花畑で出現(進化)してきたというのが、この記事の内容です。アリゾナ大学の研究者 Bruce Tabashnik さんは「我々が目にしているのは、起こりつつある進化だ。これは広範に作付けされているBt遺伝子組み込み作物畑で、Btに対して耐性を獲得した害虫が進化したという最初の報告になるだろう」と言っています。(しかし、プレスリリースを読むと、Bt耐性のガは1996年にBt綿花の作付けが始まる前にもすでに発見されていたとも書いてあります。そうすると、新たな「進化」というよりは、大量のBt綿花の作付けによる、「選択」と考えるべきかもしれません。)

 *アリゾナ大学のプレスリリースはこちらにあります。近いうちに Nature Biotechnology に載るそうですので、専門的な内容はそちらを参照されるよう、お願いします。
 First documented case of pest resistance to biotech cotton

 幸いなことにまだほとんどのワタキバガはBtに対する耐性を獲得してはいません。しかし、恐ろしいことにこのBt耐性突然変異は優性に遺伝するそうです。

 この記事の最後に、進化というものが意外と素早く起こる例として、象牙を取るために盛んにゾウ狩り(アフリカゾウだと思います)が行われた頃に、象牙のないゾウが急速に増えたという現象が報告されているのだそうです。1930年には象牙のないゾウは1%しか産まれなかったのに、1998年にはなんと雌ゾウの15%、雄ゾウの9%に牙がなくなっていたというエピソードが述べられていますが、これは本当の話でしょうか。全然、知りませんでした。

 この記事では、ゾウとガのいずれにも「自然選択」によって素早い進化が起こっていると述べられていますが、農薬を撒いたり、綿花に遺伝子を組み込んだり、ゾウ狩りをするのはすべてヒトの営みですので、どちらかというとこれは「人為選択」の結果起こった進化と言えるのではないでしょうか。

 ダーウィンの「種の起源」の中にも、育種という「人為選択」によって、たくさんの品種を作り出すことは「人為選択」によって進化が起こっている例だと書いてありますので、そう考えて良いと思います。

 抗生物質耐性菌やタミフル耐性インフルエンザウイルスの例は、人為選択の例としてすでに有名ですが、細菌やウイルスではなく、昆虫や脊椎動物でさえも意外と簡単に、驚くほど素早く「進化」が起こるということを意識しながら、病気や害虫に対する対策を考えていかなければ取り返しのつかないことになるという警告として、謙虚に受け止めるべきニュースだと思います。

 (急いで書いたので、誤読しているところがあるかもしれません。もしありましたら、ご指摘願えると幸いです。)
by stochinai | 2008-02-09 17:19 | 生物学 | Comments(8)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai