5号館を出て

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2008年 02月 26日 ( 2 )

 日本で使われているポリオ(小児マヒ)のワクチンは、生ワクチンといって生きたウイルスをシロップに溶いたものを飲む方式で投与されています。もちろん生きたウイルスといっても、毒性が弱く投与されてからからだの中で増殖したとしても、脊髄に損傷を起こすことはほとんどない「弱毒株」ですから、そんなに心配することはないのですが、それでも「副作用として約四百五十万回に一回程度、まひが出現するとされ」ているようで、今回もその宝くじのような確率で不幸にあった赤ちゃんが出てしまいました。北海道のことですので、北海道新聞を引用しておきます。

 ワクチンでポリオ発症 男の子の乳児 下肢にまひ、治療 上川

 たとえ弱毒株といっても、生きたウイルスですので投与された子ともの体内で増殖し、免疫ができて体内から排除される前に突然変異を起こして毒性を増したり、さらに子供の母親に感染してそちらを発症させたりという事故がまれに起こってしまうのでしょう。

 ウイルスの進化速度はヒトの数百万倍という計算がされているほど、急速に遺伝子が変化するので、やはり「生きた」状態で扱うと危険が伴うことを意識している必要があります。

 今回の男の子は、1歳未満だった昨年の11月中旬にワクチン投与を受けて、12月に発熱や下肢のマヒが出て、入院していたところ、今年の2月に便からポリオウイルスが確認されたということです。野生株の危険なポリオならば、感染から数日でマヒが出るそうなので、この場合は子供のからだの中で排除されずにじわじわと毒性を増してきたのかもしれません。注意はする必要がありますが、日本人の多くはワクチン投与によりポリオに免疫になっていますので、この子の中で突然変異が起こったウイルスが外へ出たとしても、それほど脅威になるものではないと思われます。

 欧米では「生きた」ウイルスの生ワクチンではなく、遺伝子の複製作用を失った「不活化ワクチン」が主流になっているのだそうですが、複数回生ワクチンよりも多数回投与しなければならないとか、免疫の確立が遅いとかいろいろと面倒なことが多いので、日本では未だに不活化ワクチンへの移行が進んでいないというのが現状のようです。

 投与された人の大多数が感染するというわけでもないので、薬害というのはどうかと思いますが、ワクチン投与が原因で発症してしまったことはほぼ確実なのですから、不運な事故にあったということで国がケアしてしかるべきケースだと思います。

 病気というのは、患者さんの数が少なすぎるとなかなか対応されないのがお気の毒ですね。
by stochinai | 2008-02-26 23:13 | つぶやき | Comments(9)
 「日々の戯言~研究とか薬とかST250とか~」ikettieさんのところで知りました。

 第四回・「博士の生き方」アンケート実施中!だそうですので、私も勝手に応援の情報転載をさせていただきます。

 第4回アンケート調査の実施
    回答受付期間:2008年2月25日~2008年3月12日

 「今回の調査では、博士課程の学生の職業選択がどのような「きっかけ」でなされるのかをみたいと考えております」ということで、アンケートの対象者は博士課程修了者(中退者含む)と今年度、博士課程修了予定の方(中退予定も含む)だそうですので、該当者のご協力をお願いいたします。

 アンケート調査は数が命です。1人でも多くの方が参加されるほど、データが力になります。

 どうぞよろしくお願いいたします。
by stochinai | 2008-02-26 21:33 | 科学一般 | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai