5号館を出て

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2008年 03月 07日 ( 2 )

良い人は悪い人

 退職する方々を送る最終講義や送別会のシーズンです。

 北海道大学の定年は63歳ですから、今年辞められる方はまさに終戦の年昭和20年(1945年)前後に生まれた方ということになります。大学や研究所では65歳定年のところもありますので、そういうところだと終戦の直前に生まれた方が定年を迎えているわけです。

 そうした方々は、終戦のどさくさで非常に苦労された少年時代を送られるとともに、大学の進学率が高くなり始めたといってもせいぜい20%の頃で、大学院進学率となると5%くらいで、大学院へ進学したひとのほとんどが大学教員または国立研究所の研究員になった時代です。

 ですから、そういう方の話を聞いていても、助手や助教授やさらには教授になる時でさえ、たとえ3倍でも競争相手がいると、競争があるということ自体が話題になったというのどかな時代だったようです。私はそのちょっと後になるのですが、それでも公募によって選抜されるということが、まだほとんどない時代でした。

 そういう時代に職を得るということは、その職場の権力者(多くは教授)の一存で決められることが多かったので、採用された側からみると「就職活動」なしに選ばれるわけですから、理由もわからずにありがたいという感覚で感謝の気持ちが述べられることが多いようです。つまり、教授は「とても良い人」になります。

 採用された人はありがたいと思うしかない一方では、自由参加の競争があるわけではありませんので、採用される可能性がある位置にいながらまったく無視されてしまった人もまた存在したわけで、そういう人で現在に至るまでアカデミアに残っている人というのは珍しいでしょうから、退職時期に聞く話としては「**先生のおかげで」とか「**先生に拾われて、今日の私があるのです」という、一見感動の物語に聞こえる話が多いものです。

 しかし、冷静に考えてみると、その人が採用された時点で理不尽に振り落とされた人がいた可能性もまたあるわけで、30年も40年も前のことになってしまうのですが、その時の人事に応募したくてもできなかった人からみると、その教授は「とても悪い人」ということになるでしょう。

 まあ、そうやって選ばれた教員ですから、とんでもない人材が入り込んでしまうこともあったようですが、それと同じくらい優秀な人が紛れ込んでいたのもまた事実でした。

 こうした人事は、大学院重点化・ポスドク1万人計画が出てくるちょっと前あたりから、強い指導のもとに禁止されるようになり、公募であつまった候補者を人事委員会で決定するという人事が普通になって今日に至っているのですが、この方式で選抜された人材が昔の「主観的人事」によるものと比べて、圧倒的に客観的優位性を持っているかと言われると、これもまた首をかしげざるをえないものも、ままあるようです。

 公募であろうがなかろうが、人事委員会があろうがなかろうが、優秀な人材を選ぶことは可能であり、一方で不適切な人事が行われうることもまたどちらも可能だというのが、そこから導き出される結論かも知れません。

 要するに、制度を作ってもうまく使いこなせないし、場合によってはその制度を骨抜きにしてしまう伝統的やり方も持っている我々日本人は、欧米から直輸入した人事考査制度ではダメなのかもしれません。逆にいうと、人あるいは文化を変えることなしに制度だけをいくらいじっても何も変わらないのがこの国の現実なのかもしれません。

 このあたりのことを考えはじめると、もうこの国はダメなのかもしれないと暗くなる今日この頃なのでありました。
by stochinai | 2008-03-07 22:49 | つぶやき | Comments(25)
 毎日jpからです。

 北大准教授:知人女性宅から現金盗み、逮捕
 知人女性方から現金15万円を盗んだとして札幌北署は6日、札幌市********、北大*****准教授、*****容疑者(51)を窃盗容疑で逮捕したと発表した。先物取引の失敗で消費者金融に借金があり「金に困ってやった」と容疑を認めている。
 ちょっと信じがたいニュースですが、おそらく本当なのでしょう。

  (と書いてしまいましたが、ご本人からのコメントが届き、警察の勇み足だった可能性があります。)

 しかも***系とは!
 ***容疑者は****が専門で、************する研究などを行っていた。
 新たな情報もあるので北海道新聞の記事も追加しておきます。
 調べでは、*****容疑者は三日午前十一時半ごろ、インターネットのチャットを通じて知り合った*****の女性(56)が住む同区内のマンションで、居間にあった現金約十五万円を盗んだ疑い。女性は外出中で、部屋の玄関は無施錠だった。

 同署によると、*****容疑者は、五年ほど前に石油の先物取引に失敗、約一千万円の損失を出し、女性から約五百万円の借金があったという。


 (上にも書いたように、ご本人からというコメントをいただき、検察は「嫌疑なし」と判断し、ご本人も職場に復帰されているとのことです。こういう時に、報道した毎日新聞や北海道新聞が名誉回復の記事を書いてくれるかというと、そのようなことはほとんど期待できず、裁判に訴えるしかないのが現実だと思います。ご本人はこの記事の削除を希望しておられますが、私は逆に名誉回復のために新聞記事が間違っていたということを示すために、伏せ字を多用した記事にして残しておきたいと思います。マスコミはしたい放題をやりますけれども、個人というものはそういう横暴の前にまったく無力であることを感じさせられます。)
by stochinai | 2008-03-07 00:24 | 大学・高等教育 | Comments(1)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai