-
[ 2008-07 -13 23:27 ]
2008年 07月 13日 ( 1 )
1
2008年 07月 13日
モクレン由来の制がん物質
Science Daily におもしろい記事を発見しました。
Magnolia Compound Hits Elusive Target In Cancer Cells
マグノリアというのは、モクレンやコブシ、ホオノキの総称ですが、その実から抽出された化合物を使うと、化学療法が効かないとされていたがん細胞に化学療法が効くようになることが発見されたようです。
モクレンは、春の私のお気に入りのひとつです。1,2,3,4・・・・。
アメリカ・ジョージア州にあるエモリー大学の研究グループが2003年に、日本や中国で使われている漢方薬の有効成分であるhonokiolという物質にがん細胞の分裂を抑制する効果があるということを発見していたのですが、この程その物質がRasという遺伝子が活性化されたがん細胞に効果があるということを見つけました。
honokiol(ホノキオール?)という物質のことは知らなかったのですが、モクレンの実に含まれるということなので、その近縁のホホオノキと関係のある名前だと推測し、ホオノキオールで検索してみたところバッチリでした。
Google検索 ホオノキ
ホオノキは漢方では有名なもののようで、厚朴(コウボク)と呼ばれる樹皮に中枢抑制作用、抗ストレス潰瘍作用、胃液分布抑制作用、筋弛緩作用を持ち、柴朴湯(サイボクトウ)、半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)、平胃散(ヘイイサン)という漢方薬の成分として処方されているとのことです。
モクレンの仲間のマグノリアには、このホオノキオールとそれにきわめてよく似たマグノロールという物質が含まれています。
Rasはたくさん(ヒトのにおいて約3分の1)のがんにおいて変異を受け、活性化されていることが知られているのですが、この変異を持ったがんは制がん剤による化学療法がなかなか効かないということが知られてもいるのだそうです。
そこで制がん剤と一緒にホオノキオールを使うと、Rasの活性化がブロックされて制がん作用がみられるようになるというのが、今回の発見です。
Rasが活性化されていると、がん細胞が制がん剤を排出してしまうのですが、Rasグループの遺伝子が活性化されている乳がん細胞にホオノキオールを与えると、RasがフォスフォリパーゼDという酵素を活性化する過程が阻害されるようです。肺がんや膀胱がんの細胞でも同じ効果が得られるとのことです。
これは7月1日に出版されたClinical Cancer Researchという雑誌に報告されました。
Avalon Garcia, Yang Zheng, Chen Zhao, Alfredo Toschi, Judy Fan, Natalie Shraibman, H. Alex Brown, Dafna Bar-Sagi, David A. Foster and Jack L. Arbiser. Honokiol Suppresses Survival Signals Mediated by Ras-Dependent Phospholipase D Activity in Human Cancer Cells. Clinical Cancer Research, 4, 4267-4274, July 1, 2008 DOI: 10.1158/1078-0432.CCR-08-0102
しかし、ちょっと気になるのが以下の文章です。
Emory University is in the process of licensing honokiol and related compounds so that they can be tested in people in cooperation with industry partners.
エモリー大学は製薬会社と共同で、ホオノキオールと関連物質(マグノロールなど)を治験を行うライセンスを申請中である、ということです。
漢方薬の中から発見された有効物質が薬として認可されたら、漢方薬はどうなるのでしょうね。ちょっと心配になります。
Magnolia Compound Hits Elusive Target In Cancer Cells
マグノリアというのは、モクレンやコブシ、ホオノキの総称ですが、その実から抽出された化合物を使うと、化学療法が効かないとされていたがん細胞に化学療法が効くようになることが発見されたようです。
モクレンは、春の私のお気に入りのひとつです。1,2,3,4・・・・。
アメリカ・ジョージア州にあるエモリー大学の研究グループが2003年に、日本や中国で使われている漢方薬の有効成分であるhonokiolという物質にがん細胞の分裂を抑制する効果があるということを発見していたのですが、この程その物質がRasという遺伝子が活性化されたがん細胞に効果があるということを見つけました。
honokiol(ホノキオール?)という物質のことは知らなかったのですが、モクレンの実に含まれるということなので、その近縁のホホオノキと関係のある名前だと推測し、ホオノキオールで検索してみたところバッチリでした。
Google検索 ホオノキ
ホオノキは漢方では有名なもののようで、厚朴(コウボク)と呼ばれる樹皮に中枢抑制作用、抗ストレス潰瘍作用、胃液分布抑制作用、筋弛緩作用を持ち、柴朴湯(サイボクトウ)、半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)、平胃散(ヘイイサン)という漢方薬の成分として処方されているとのことです。
モクレンの仲間のマグノリアには、このホオノキオールとそれにきわめてよく似たマグノロールという物質が含まれています。
Rasはたくさん(ヒトのにおいて約3分の1)のがんにおいて変異を受け、活性化されていることが知られているのですが、この変異を持ったがんは制がん剤による化学療法がなかなか効かないということが知られてもいるのだそうです。
そこで制がん剤と一緒にホオノキオールを使うと、Rasの活性化がブロックされて制がん作用がみられるようになるというのが、今回の発見です。
Rasが活性化されていると、がん細胞が制がん剤を排出してしまうのですが、Rasグループの遺伝子が活性化されている乳がん細胞にホオノキオールを与えると、RasがフォスフォリパーゼDという酵素を活性化する過程が阻害されるようです。肺がんや膀胱がんの細胞でも同じ効果が得られるとのことです。
これは7月1日に出版されたClinical Cancer Researchという雑誌に報告されました。
Avalon Garcia, Yang Zheng, Chen Zhao, Alfredo Toschi, Judy Fan, Natalie Shraibman, H. Alex Brown, Dafna Bar-Sagi, David A. Foster and Jack L. Arbiser. Honokiol Suppresses Survival Signals Mediated by Ras-Dependent Phospholipase D Activity in Human Cancer Cells. Clinical Cancer Research, 4, 4267-4274, July 1, 2008 DOI: 10.1158/1078-0432.CCR-08-0102
しかし、ちょっと気になるのが以下の文章です。
Emory University is in the process of licensing honokiol and related compounds so that they can be tested in people in cooperation with industry partners.
エモリー大学は製薬会社と共同で、ホオノキオールと関連物質(マグノロールなど)を治験を行うライセンスを申請中である、ということです。
漢方薬の中から発見された有効物質が薬として認可されたら、漢方薬はどうなるのでしょうね。ちょっと心配になります。
▲
by stochinai
| 2008-07-13 23:27
| 生物学
|
Comments(2)
1