5号館を出て

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2008年 07月 29日 ( 1 )

 昨夜の記事だと思いますが、決して喜ぶべきニュースではないと思います。

 毎日jp: 大学人件費:05年度比6.8%減 目標超える削減ペース

 先日も書いたように、法人化以降、国立大学の運営交付金は毎年1%ずつ削減されています。運営交付金には人件費も含まれていますので、1%ずつ運営交付金が削減されても、従来どおりの運営(教育と研究)を続けようとすると、人件費の削減がもっとも効果的ということになります。北海道大学の場合だと教職員が約4000名いますので、あまりにも雑な計算ではありますが、毎年40人ずつ辞めても補充しなければ、それは達成されます。

 しかし、10年で1割400名の人員削減というのは、想像しただけでも寒くなります。

 平成19年度に出た北海道大学の報告書によると、18年度の教員数が2144名で。職員数が1954名となっています。16年度は教員数2166名、職員数1888名となっているので、教員は22名減っていますが、職員は大量に増えてすらいます。しかし、ここでは常勤と非常勤(あるいは任期付き)が区別されていませんので、常勤が非常勤に置き換わっている可能性があります。

 上記の記事では、「国立大学法人と四つの大学共同利用機関法人の常勤職員の07年度人件費は9361億8000万円で、05年度人件費の予算額(9967億9000万円)を6.8%(606億1000万円)下回ったことが、文部科学省のまとめでわかった」となっています。「06年度比では1.3%減」とも書かれていますので、05年から06年に5%以上の削減が達成されたことになります。

 一方、非常勤職員などの人件費は、なんと06年度比で「16.8%(308億9000万円)の大幅増」ということですので、常勤職員を減らして非常勤で置き換えている実態が露骨にわかります。となると、北大の場合も職員は常勤が非常勤になることで増員を達成しているのかもしれないと思えてきます。(実際、まわりを見渡してみると、そういう感じはあります。)

 しかし、こんなふうに運営交付金を減らされても、それを上回る節約ができてしまうのだとしたら、たとえそれが血のにじむような努力と、常勤教職員の首切りによって達成されていたとしても、財務省などから見るとまだ余力があると見えるに違いありません。

 ひょっとすると、先日の来年度の運営交付金3%削減案というのはこうした実態から導き出された結論なのかもしれないという気もしてきました。記事にも、文科省の不安げなコメントが載っています。
 また、政府は09年度予算で国立大運営費交付金の削減幅を年3%に拡大しようとしているが、文科省は「削減目標を超過しているから『もっと削ってよい』とみるのは妥当でない」としている。
 個人レベルや研究室レベルでは、入ってくるお金がなくなったらなんとかやりくりして支出を抑えようと努力しますが、それは結局個人や研究室の活動の低下につながります。もしも、いままで大学が必要以上に無駄をしていて、それを節約した結果こんなに節約できたということならば歓迎されるべきだと思いますが、教育・研究活動を低下させつつの節約だったとしたら、かなり絶望的な状況に思えます。(どこかで、犠牲になっている部分が必ずあるはずです。)

 常勤教職員を減らして非常勤教職員に置き換えていくことで、最低限(見た目?)の教育サービスは守ることはできるのかもしれませんが、次世代を担う研究者や大学を良くしたいという若い職員の安定した受け皿がなくなっていくのだとしたら、この先大学はどんどん細っていくだけになってしまいます。

 このニュースを読んで、空腹のあまり自分の足を食べてしまうというタコの逸話を思い出しました(生物学的には疑問な話だと思いますが)。もはや大学は、タコになってしまったのでしょうか。
by stochinai | 2008-07-29 18:16 | 大学・高等教育 | Comments(42)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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