5号館を出て

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2008年 08月 18日 ( 1 )

 大手のマスコミなどでも普通に取り上げるようになってきて、「漂流する博士」とか「博士残酷物語」などという話を見聞きしている人も多いようですので、大学生の大学院進学の意欲はかなりトーンダウンしていると思われます。そういう状況の中、さすがに博士後期課程へ進学する人は明らかに減りつつあるとは思いますが、修士課程(博士前期課程)に関しては、その進学がデフォルトになっていると言ってよいほど、理系の大学生の大多数が大学院へとするという状況にそれほど大きな変化は起こっていないようです。

 もちろんプロの研究者になるためには、博士後期課程へ進学し、博士号を取得することが前提になりますが、修士課程に進学しようとしている人の大多数は、博士号をとってポスドクをしてさらに激しい競争を勝ち抜いて企業系ではなく「独立系」の研究者になろうと決意している人ではないように思われます。

 つまり、大学院へ進学しても修士2年間で卒業して、民間や官公庁へと就職することを考えている人が多いのが現状でしょう。そうだとすると、今大学院へ進学する試験を受けて合格し、来年の春から大学院へ進むことになりますが、来年の秋から冬にはもう就職のための活動を開始しなければならないというのが、今の大学院の現実です。つまり、大学院に入っても、ゆっくりと腰を落ち着けて研究をするほどの時間は、ありません。

 そうだとすると、もう今から時間は無駄にできません。大学院の入試が終わったら、来年進学するまではノンビリしようなどと思っていると、何も身につけることができないまま、修士卒の就職活動に突入するということになってしまいます。つまり、ある意味でかなり受験生の売り手市場になっている大学院進学などというものに時間と精力をあまりそそいで、そのあと虚脱状態になってしまたりすると、出遅れてしまうことが予想されるのです。

 というわけで、大学院入試のためにもはや充分に時間と精力を注いでしまったという真面目な人は、そろそろリラックスして「入試以後」のことを考え始めることをオススメします。また、大学院なんて楽勝と思って、充分に手を抜いて来た楽天的な人もそろそろ大学院卒業までのロードマップを考えておくことをオススメします。

 今の大学と大学院の状況を冷静に判断すると、大学時代の勉強をしっかりやっているのであれば、大学院の入学はそれほど難しくないはずです。あるいは、入学するのにそれほど難しくない大学院を選ぶべきとも言えるでしょう。大事なのは、自分が充分に伸びることのできる「場」を与えてくれるところへ入学し、就職活動までの時間を自分の成長のために、自分のペースで教育を受けることのできるところ、あるいは自分自身で自分を鍛える余裕を与えてくれるところを選ぶことでしょう。

 そんなことを考えてもいなかったという人は、試験が終わってからでもかまいませんから、自分が進学しようとしている大学院(研究室)の実態を調査してみましょう。その結果、自分の将来設計(来年の秋からの就活)には不向きな環境であるということがわかったら、とりあえず合格しておくのはかまいませんが、来春に予想されている二次試験でより適切な大学院を選び直すことをオススメします。

 もちろん、博士後期課程まで進学して独立系の研究者を目指そうとしている方もいらっしゃると思います。その場合は、5年後の自分をイメージしてください。博士をとって就職活動も充分あり得る選択肢だと思いますし、これだけ博士の将来に暗雲が立ちこめているという風評が広がると、「競争相手」が減少することも予想されますので、ひょっとすると今は100-200倍くらいの競争率のものが20-30倍くらいにまで落ち着いてくる可能性も考えられます。しかし、さすがに我々の大学院時代のように2-3倍になるということは、ちょっとあり得なさそうです。

 結局、何が言いたいのかというと、大学院へ進学するということは今の社会の状況と仕組みを理解することと、何年か後の社会の状況と仕組みを予測することが必要だということです。もちろん、経済や社会の専門家ではない理系の学生や大学院生にとってはとても難しいことだとは思いますが、そういうことのできる理系人間になるために大学院時代を利用するというスタンスも必要なのではないかと思います。

 大変な時代になってきたと思うかもしれませんが、そういうことを考えずにきたせいで、日本社会において理系が冷や飯を食わされているというふうに考えることもできると思います。

 ここらで、理系の逆襲といきましょう。
by stochinai | 2008-08-18 21:45 | 大学・高等教育 | Comments(31)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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