5号館を出て

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2008年 10月 02日 ( 1 )

 前回の環境サスペンスカフェから、約半年。主催者側はひそかにリベンジを狙っていたと伝え聞きましたが、今日のカフェは素晴らしいものでした。
環境サスペンス第2弾 「川をたずねて三千海里」_c0025115_21162380.jpg
 平日の夕方という悪条件ではありましたがそこそこの参加者があり、参加者の数にくらべると質問カードがとても多く出てきていたのを見ると、意識の高いお客さんが集まっていたようでした。
環境サスペンス第2弾 「川をたずねて三千海里」_c0025115_21184978.jpg
 最初はいつものようにピエールFマが、「寒くなってきましたねえ」と言いながら登場した時には、おもわずこちらも寒くなってしまい、大丈夫かいなと心配になったのですが、杞憂でした。

 ピエールはもっぱら狂言回しの裏方に徹していたところが成功の鍵だったと思います。それにお二人のゲストの組み合わせが最高でした。

 豊平川にサケを呼び戻そうという「カムバックサーモン運動」の話をからめながらされた、豊平川では毎年15万匹くらいの稚魚が自然孵化しているということや、産卵しているところが札幌の市街地の中心部の流域であるという話は、札幌に長く住んでいる私にもとても新鮮でした。話してくれたゲストは、札幌市豊平川さけ科学館有賀望さん。柔らかな語り口で科学的な話をわかりやすく伝えてくれました。

 もう1人のゲストは、サケの母川回帰のメカニズムの先端研究をしている北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの上田宏さん。こちらの話は何度か専門家を対象にした講演会でも聞いたことがあるのですが、今日はもっともおいしいところをとてもわかりやすく話してくれました。上田さんは、とても真面目な性格の方で、あえておもしろおかしく話したりするようなことはしない方なのですが、研究内容そのものが充分におもしろいので、わかりやすく伝えていただくだけで充分でした。

 お若い有賀さんと、最先端研究をリードする上田さんの組み合わせは素晴らしいコンビネーションで参加者を飽きさせることなくひきつけ続けました。

 狂言回しのピエール、最高のゲストに加えて成功をもたらしたもの、それはサケです。まだまだわからないことがたくさんあるにもかかわらず、ベーリング海から確実に戻ってくるサケは食のみならず、産業や教育などにとって欠くことができない存在として、多くの日本人に愛されているのではないでしょうか。

 ピエールが出しゃばらなかったことが成功の鍵だというと、あまりにもピエールがかわいそうに思えますが、今日のカフェの「落ち」は秀逸だったと思います。カフェの最初のところで語られた、いかにも不自然な「海に家出していった奥さん」が、カフェの最後のところで、「もっと良い川を見つけました。さようなら」と言って戻ってこないことになったのを聞いて、「それじゃ、カラフトマスと一緒か」と嘆いたところは、今日のカフェに参加した人には大いに笑える見事な「サイエンス落ち」でした。

#専門家以外にはなんのことがわからないと思いますが、シロザケ、サクラマス、ヒメマスが高い母川回帰率を持つのにたいして、カラフトマスの母川回帰率はとても低いのだそうです。

 また、母川に回帰し損ねたサケが、出来の良くない子というわけではなく、新しい川を開拓するフロンティアになりうる素晴らしい存在なのだという話は、新しい時代を拓くのは時代の流れにうまく乗れずにはじかれている若者なのかもしれないという人間社会のことを思い起こされるいい話でした。

 いずれにしても、良いお点前でした。楽しませてもらいました。

 関係者の皆さん、お疲れさまでした。
by stochinai | 2008-10-02 22:02 | CoSTEP | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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