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[ 2008-10 -15 19:50 ]
2008年 10月 15日 ( 1 )
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2008年 10月 15日
Blog Action Day :テーマは貧困
右下にバナーを貼っておりますが、本日がブログ・アクション・デーです。昨日はオープン・アクセス・デーでしたが、ウェブのおかげでこうした国際的なイベントが簡単に開催できるようになったのは喜ばしい限りです。現時点で9394サイトが賛同の登録をしているとのことで、すでに10000以上のアクション(ブログ・エントリー)などがあったとされています。読者はなんと1000万人以上!

さて、そのブログ・クション・デーですが、基本的にはブログで「貧困」に関するエントリーを書いてくださいということなので、書いて私もアクションを1つ追加したいと思います。
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「高学歴ワーキング・プア」という言葉が市民権を持ち始めた日本ですが、いわゆるポスドク問題で注目を集めているポスドクの実態調査が先週くらいに発表されてニュースになっていました。
ポスドク満足度、雇用待遇で二分-文科省が実態調査
そうなのでしょうか。
この調査の報告が概要とともに、文部科学省科学技術政策研究所のサイトで公開されています。(情報は、Science and Communication さんに教えていただきました。)
プレス発表資料
ポストドクター等の研究活動及び生活実態に関する分析
中を見るといろいろと考えさせられることはたくさんあるのですが、第一に挙げなければならないのは、その不安定性でしょう。「現在の任期期間中の所属年数」というグラフがあります。

それがポスドクというものだと言ってしまえばそれだけですが、同じ場所に4年以上続けて居る人がほとんどいません。ポスドクの側でも3年くらいで良いと思っている人が多いことも事実ですが、5年以上勤めたいという人がその次に多いという結果も出ています(図3-8)ので、その間にギャップがあると思います。
さて、本題の給料です。

60万円以上もらっている人がいるのにはびっくりですが、いわゆるスーパー・ポスドクでしょうか。報道では平均が30万円となっていますが、約半数は30万円未満です。20万円以下だと、プアの領域にはいるかもしれません。いずれにせよ、平均値というのは印象をぼかしてしまいますね。
また、平均年齢は33歳くらいなのですが、配偶者ありが420名なのに対して、無しが615名です。さらに、配偶者ありのうち、子どもありが197名と半数以下です。ここらあたりにも、ポスドクの置かれた環境を推測させるものが感じられます。
さらに、ちょっと恐ろしいデータがあります。ポスドクを長く続けていると、論文ならびにファースト著者での論文作成効率にリニアに落ちてくるのです。

常勤のPIになっていれば、その頃には自分で後進を育てながら論文を書き始めるので、この低下は問題にならないのかもしれませんが、これから職(特に研究職)を探そうという立場に立ったら、これは先へ行くほどだんだんと競争力が落ちるということを意味しているかもしれないと思うと、ちょっとつらいデータです。研究というものは、最初はグーンと進み、深くつっこもうとすると段々と時間がかかるようになるものです。そして、体力も落ちてきますから、このグラフには現実味を感じます。
さて、この調査結果から読みとることができなかったことは、ポスドクを終わった後に、彼ら・彼女らはどうなるのか、ということです。
ポスドク時代には、確かに苦労はしているのでしょうが、それなりの給料をもらい、それなりに充実した研究生活を送れており、とてもワーキング・プアなどとは比べものにならないことは明らかに示されているとは思いますが、彼ら・彼女らの将来像が浮かび上がってこないということはどう考えたら良いのでしょうか。
多少、こじつけになってしまいますが、現在職を得ているいるポスドクは貧困とはいえないものの、彼ら・彼女らが描くことのできる「夢」について考えた時、それはまさしく貧困な未来図しか思い浮かばないという状況ではないのでしょうか。
彼ら・彼女らに必要なのは、今日の生活費ではなく、明日の夢なのです。

さて、そのブログ・クション・デーですが、基本的にはブログで「貧困」に関するエントリーを書いてくださいということなので、書いて私もアクションを1つ追加したいと思います。
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「高学歴ワーキング・プア」という言葉が市民権を持ち始めた日本ですが、いわゆるポスドク問題で注目を集めているポスドクの実態調査が先週くらいに発表されてニュースになっていました。
ポスドク満足度、雇用待遇で二分-文科省が実態調査
「ポスドク(博士研究員)の任期は平均2・7年で、研究活動には大部分が満足し、平均月給は約30万6000円」―。文部科学省の科学技術政策研究所が国内のポスドクに対し、インターネットを通じて研究活動と生活実態調査を行い、こんな結果が明らかになった。この記事を読む限りは、貧困とはほど遠いリッチなポスドク像が浮かび上がってきます。
そうなのでしょうか。
この調査の報告が概要とともに、文部科学省科学技術政策研究所のサイトで公開されています。(情報は、Science and Communication さんに教えていただきました。)
プレス発表資料
ポストドクター等の研究活動及び生活実態に関する分析
中を見るといろいろと考えさせられることはたくさんあるのですが、第一に挙げなければならないのは、その不安定性でしょう。「現在の任期期間中の所属年数」というグラフがあります。

さて、本題の給料です。

また、平均年齢は33歳くらいなのですが、配偶者ありが420名なのに対して、無しが615名です。さらに、配偶者ありのうち、子どもありが197名と半数以下です。ここらあたりにも、ポスドクの置かれた環境を推測させるものが感じられます。
さらに、ちょっと恐ろしいデータがあります。ポスドクを長く続けていると、論文ならびにファースト著者での論文作成効率にリニアに落ちてくるのです。

さて、この調査結果から読みとることができなかったことは、ポスドクを終わった後に、彼ら・彼女らはどうなるのか、ということです。
ポスドク時代には、確かに苦労はしているのでしょうが、それなりの給料をもらい、それなりに充実した研究生活を送れており、とてもワーキング・プアなどとは比べものにならないことは明らかに示されているとは思いますが、彼ら・彼女らの将来像が浮かび上がってこないということはどう考えたら良いのでしょうか。
多少、こじつけになってしまいますが、現在職を得ているいるポスドクは貧困とはいえないものの、彼ら・彼女らが描くことのできる「夢」について考えた時、それはまさしく貧困な未来図しか思い浮かばないという状況ではないのでしょうか。
彼ら・彼女らに必要なのは、今日の生活費ではなく、明日の夢なのです。

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by stochinai
| 2008-10-15 19:50
| コンピューター・ネット
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