5号館を出て

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2009年 05月 31日 ( 1 )

 発生生物学会で行われる男女共同参画ワークショップも今回で3回目を迎え、ちょっと視点を変えようということでしょうか、今年はちょっと不思議なタイトルのもとで行われました。
男女共同参画ワークショップ_c0025115_2350349.jpg
 結婚して共働きを続けている3組のケースの報告が男性研究者の側からあり、それに対して2人の既婚女性研究者がコメントを述べるというスタイルで行われましたが、なにせ昼休みの一時間という制約があったため、議論をする前に時間切れになってしまったという感じが、ちょっと残念でした。

 3名の男性研究者の報告はやはりある意味で「壮絶」な生活の報告であり、男性研究者の側が血のにじむような努力をしていることも報告されましたが、それを聞いていて私が感じたことは、おそらく相手の女性研究者(あるいはワーキング・ウーマン)の側はそれに輪をかけたくらいの苦労をした(あるいはしている)に違いないということでした。

 確かに、今回のワークショップのタイトルにあるように、女性研究者を支えるパートナーの男性研究者の理解と協力なしには、女性研究者が「生き残って」いくことができなかったに違いないということは事実だと思いますが、逆にそれを聞いていて感じたことは「パートナーに恵まれなかった女性研究者は生き残れなかったに違いない」という、複雑な思いでもありました。さらに、子育てをしながら2人で苦しい思いと壮絶や努力をしてきたことは間違いのない事実だとは思いますし、皆さんがすべて優秀な研究者であったことはすぐに見て取れるのですが、それに加えて少なくともここに来ることのできた人には、幸運の女神のほほえみが必要だったのではないかということも感じました。

 世の中の大多数の人は、ずば抜けた能力もなく、血のにじむような努力もできず、さらには宝くじが当たるような幸運に巡り会えることはないのだと思います。大量に増えた大学院生や博士の人達には、そこそこの能力を持っていて、それなりの努力をすることもできる人達が多いとは思いますが、こと幸運に関しては本人の努力でなんとかなるというものではないように思われます。

 そういう現実を前にして、今日のような話を聞いた「普通の人々」はどこまでがんばろうと思えるものでしょうか。若い人はあまりたくさん参加していなかったと思いますが、私が若い学生だったとしたら「自分はこの世界から織りよう」と思うのではないかと、ちょっと心配になりました。

 普通の大学院生の男女が普通に努力して、普通の就職活動をしても、研究者になれるのか、それともやはり、並はずれた能力を持った人が、人一倍の努力をし、想像を絶する就職活動をして、信じられない運に巡り会えた人だけが研究者になれるのかどうか、ということを考えさせられたという意味では、私にとっては意義深いワークショップではありました。

 ワークショップの後で、ポスドクの方々とちょっと話したのですが、シングルマザーでも研究者を続けられる環境ができるようなところまでいかない限り、男女共同参画も絵に描いた餅と言われてしまうのかもしれません。

 日本は、そこまで行けるでしょうか。
by stochinai | 2009-05-31 23:45 | 科学一般 | Comments(3)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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