5号館を出て

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2009年 07月 06日 ( 1 )

 おもしろいというか、税金を使ってこんな仕事をやっているのでは、存在価値なしと言われるようなニュースでした。

 介護サービス事故、国が集計断念 自治体で報告基準に差 (朝日コム)

 「厚労省は昨年11月、全国の介護事故の調査に初めて乗り出し、都道府県に事故の報告を求めた」のだそうですが、「全国の介護サービス事業所で起きた事故について、厚生労働省が事故の形態や件数を調べようとしたところ、都道府県によって報告を求める際の事故の基準が異なるなどしており、集計を断念したことがわかった」との記事です。

 開いた口がふさがらないとはこのことです。私たちを監督する文部科学省からも、いろいろな報告書を出すことを求めることがありますが、その際に何をどのように報告したらよいかという指示がないことがよくあるということを感じることも多いので、ここでもそんなアバウトな「報告命令」が出されたのだと思います。

 本来は、事故を報告せよと命令を出すならば、「事故」とはなにか、どういうものを事故と呼ぶのか、どのような事故に対してどのように報告すべきなのかについての定義が必要になりますが、その定義なしに「報告せよ」とだけ命令したことがわかります。(文科省から来るものとしては、例えば「**について卓越した業績があった場合に報告してください」というようなものが良くあります。この場合「卓越した」というものがどういうものかという定義がなければ答えようもないし、集まったデータも解析できないと思います。)

 記事を読むと、都道府県には事故とはなにかについてそれぞれ一定の基準があり、それに基づいて市町村から報告を受けることになっているようです。「ケースが多い」と書いてあります。都道府県毎に基準が違うことは、前からわかっていたことであり、それをチェックもせずに厚労省は報告させようとしたということになります。

 いまさらなのですが、その基準が「『死亡または3カ月以上の入院、加療』(福岡県)、『医療機関での受診』(熊本県)、『緊急性、重大性のあるもの』(大阪府)、『重大なもの』(東京都)などと、都道府県によってまちまち」だということがわかり、さらに「『感染症』を報告対象に含めるかどうかも都道府県で異なって」いたため、厚労省は今年の3月に集計をあきらめた、となっています。

 脱力します。厚労省には科学的にデータを集めるということはどういうことかを理解しており、さらにそれを解析することのできる職員がいないということでしょうか。

 さらに良くわからないのが、厚労省が昨年度三菱総研に調査させており、「47都道府県を対象に調査したところ、回答を得た31自治体のうち2割強にあたる7自治体が基準を定めていなかった。さらに15自治体が『データが均質でなく、集計・分析に値しない』」ということも把握していたようなのです。昨年度というのは今年の3月までなので、ひょっとするとこの調査と都道府県に対する報告書の提出が同時に出てきたので、都道府県から集まったデータを捨てることにしたということなのかもしれません。

 しかし、それはあまりにもひどいです。

 たとえ基準はまちまちでも、各都道府県ではこの報告書を作るためにお金と人的資源を投入して作ったはずです。また、たとえ基準がまちまちでも事故の概要を類推することは可能であり、せっかく集まったものを分析もせずに廃棄というのは税金の無駄遣いです。

 今後、事故の定義づけや調査方法を検討すると厚労省は言っていますが、そのために「今年度も引き続き研究事業の補助を続ける」そうですが、これって今年も三菱総研に補助金を出すということでしょうか。記事を読む限りは昨年度の報告書にその答えが書いてあっても不思議はないように読めるのですが、今年も三菱総研に調査研究の補助金を出し続ける根拠がどうも薄弱のような気がします。

 こうして、お金を無駄遣いしながら、実質的作業が先延ばしされるというやり方は、いかにもお役所の仕事だと感じさせられます。

 とりあえず、集まったデータを解析することと、今年度はとりあえず仮の事故基準を定めて、データの収集を続けるべきだと思います。介護の現場は動き続けており、事故も待ってはくれないのですから。
by stochinai | 2009-07-06 21:09 | つぶやき | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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