5号館を出て

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2009年 07月 14日 ( 1 )

 爬虫類の性が、染色体だけではなく孵卵される時の温度によって変わるというのは、すでにかなり有名になっている話です。
トカゲで発見された3番目の性決定機構_c0025115_20311941.jpg
 ミスジトカゲ?(three-lined skink (Bassiana duperreyi): Wikipedia)「普通」のトカゲですね。

 今日発行になったCurrent Biologyで、第3の性決定機構が発表になりました。卵の中に蓄えられる黄身(卵黄)の量が多いとメスになり、少ないとオスになるというメカニズムがあることがわかったのです。

Current Biology
Volume 19, Issue 13, 14 July 2009, Pages 1102-1105
doi:10.1016/j.cub.2009.05.027
Offspring Sex in a Lizard Depends on Egg Size
Rajkumar S. Radder, David A. Pike, Alexander E. Quinn and Richard Shine


 実はこの論文は今月の4日にオンライン版が出ていたのですが、その時には下の解説も目にとまっていたのですが、単に「大きな卵からはメスが生まれる」ということを観察した論文だと思っていたのですが、実験的に卵黄を出し入れするという重要な実験をして、それを証明していたのでした。不覚にも見落としておりました。

The Scientist
Egg size matters for lizard sex


 著者らは2002年に出した論文で、このトカゲがXY型の性決定をする(XXがメス、XYがオス)にもかかわらず、低温で孵卵するとXX染色体を持ったオスが生じることを報告しています。その時すでに、メスが生まれる卵が大きい傾向があることを見つけていたようです。

 おもしろいことに、22℃で孵卵した時には、卵から注射器を用いて卵黄を抜いても足しても性転換を起こすことができなかったのですが、16℃で孵卵したときには卵黄を抜いた卵の88%からはオスが生まれ、卵黄を足した卵からはたった7%しかオスが生まれてこなかったのです。
トカゲで発見された3番目の性決定機構_c0025115_20571172.jpg
 卵黄を足す実験は低い温度でのみ実験しているので、高い温度での結果は表示されていないので注意してください。もちろん、卵黄の代わりにシリコンオイルを入れた場合には何の変化も起こりませんでした。卵黄の中にメス化ホルモンでもあるのではないかというのが著者らの意見です。しかし、私にはもっと単純なメカニズムがありそうに思えます。

 いずれにしても、低い温度ではオスが生まれやすいという性質と、大きな卵はメスになりやすいという性質、それに性決定遺伝子による遺伝的な性決定の3つが複雑に組み合わさって、彼らの生活環境ではオスとメスがちょうど良く出現するように進化してきたのだと思います。

 まったくおもしろい連中です。
by stochinai | 2009-07-14 20:59 | 生物学 | Comments(4)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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