2010年 04月 15日 ( 2 )
1
2010年 04月 15日
パブリックドメインという「気高さ」を科学にも
カレントアウェアネス・ポータルに「『Europeanaパブリックドメイン憲章』が公表される」というニュースが出ていました。
パブリックドメインという言葉を始めて聞いたのは、誰でもが自由に使えるコンピューターのプログラムがPDS(パブリックドメインソフトウェア)と呼ばれていた関係からだったと記憶しています。最初は、料金を払わなくてすむのでなんと太っ腹なプログラマーがいるのだろうかと思ったものですが、パブリックドメインのプログラムは自由に複製したり配布したりすることができるので、無料だということ以上に自由に改変することができるということが大きなメリットになると言われていたものです。
ソースも公開されていることが多いパブリックドメインのプログラムは改変されることによってさらに良いものへとバージョンアップされる可能性があります。改変された新しいバージョンもパブリックドメインとして流通し、さらに誰かの手によって改変されるということを繰り返していくという、バケツリレー式の「共同作業」によりどんどんと優れたプログラムへと進化していったものも多く、UNIXから派生したパブリックドメインのOSであるLinuxおよびその上で走るたくさんのソフトウェアはそのようにして作られたもののはずです。
もちろん人の善意という意味もありますが、人類共通の財産としてよりよいものを作り出していくという「文化」の発展にはこのパブリックドメインという考え方がとても重要に思えます。
著作権というと、文学や絵画、音楽などのように個人の力によって作られたものを守るという意味合いが強かったはずで、こうしたものは他人の手によって改変されることによってより良いものになったりするという可能性は少ないものです。しかし、「知的所有権」とか「知的財産権」という言葉で表されるようなものへとその権利が拡大解釈されてきているのが最近の傾向だと思いますが、そういう権利を認めることによって、我々の持つ文化の発展が阻害されてしまうというようなことになるなら、角を矯めて牛を殺すということになってしまいます。
そういう観点から、知的所有権を保護するとともに人類共通の財産としての文化を守るためにも、パブリックドメインという考え方はとても重要だと思います。デジタル化された文化遺産への自由なアクセスにより知識の発展等に寄与することを目的として運営されている Europeana Foundation が出した「Europeanaパブリックドメイン憲章」(Europeana Public Domain Charter)は、その精神を簡潔明快に表現してくれています。

もちろん英語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・スペイン語・ポルトガル語で書かれた憲章の全文がpdfファイルで配布されています。
カレントアウェアネスが概訳しているものがあまりにも素晴らしいので、全文引用させていただきます。
科学研究に大きなお金が投入されるようになってくればくるほど、その成果から利益を回収しようとしう圧力も大きくなるようで、昨今の「役に立つ科学」というかけ声は「お金を稼げる成果」と表裏一体のものに聞こえてきます。
もちろん個人や個々の組織や国だけで可能となることではないと思いますが、まちがいなく過去の遺産の上に築かれつつあるすべての科学の成果はパブリックドメインになるべきだと信じます。
パブリックドメインという言葉を始めて聞いたのは、誰でもが自由に使えるコンピューターのプログラムがPDS(パブリックドメインソフトウェア)と呼ばれていた関係からだったと記憶しています。最初は、料金を払わなくてすむのでなんと太っ腹なプログラマーがいるのだろうかと思ったものですが、パブリックドメインのプログラムは自由に複製したり配布したりすることができるので、無料だということ以上に自由に改変することができるということが大きなメリットになると言われていたものです。
ソースも公開されていることが多いパブリックドメインのプログラムは改変されることによってさらに良いものへとバージョンアップされる可能性があります。改変された新しいバージョンもパブリックドメインとして流通し、さらに誰かの手によって改変されるということを繰り返していくという、バケツリレー式の「共同作業」によりどんどんと優れたプログラムへと進化していったものも多く、UNIXから派生したパブリックドメインのOSであるLinuxおよびその上で走るたくさんのソフトウェアはそのようにして作られたもののはずです。
もちろん人の善意という意味もありますが、人類共通の財産としてよりよいものを作り出していくという「文化」の発展にはこのパブリックドメインという考え方がとても重要に思えます。
著作権というと、文学や絵画、音楽などのように個人の力によって作られたものを守るという意味合いが強かったはずで、こうしたものは他人の手によって改変されることによってより良いものになったりするという可能性は少ないものです。しかし、「知的所有権」とか「知的財産権」という言葉で表されるようなものへとその権利が拡大解釈されてきているのが最近の傾向だと思いますが、そういう権利を認めることによって、我々の持つ文化の発展が阻害されてしまうというようなことになるなら、角を矯めて牛を殺すということになってしまいます。
そういう観点から、知的所有権を保護するとともに人類共通の財産としての文化を守るためにも、パブリックドメインという考え方はとても重要だと思います。デジタル化された文化遺産への自由なアクセスにより知識の発展等に寄与することを目的として運営されている Europeana Foundation が出した「Europeanaパブリックドメイン憲章」(Europeana Public Domain Charter)は、その精神を簡潔明快に表現してくれています。

カレントアウェアネスが概訳しているものがあまりにも素晴らしいので、全文引用させていただきます。
■健全なパブリックドメインのための原則主に個人の力で作られた芸術作品などは、その個人および直近の近親者の生活を守るために保護されるのは適切なことだと思いますが、こうしたものと比べると、最初から過去の成果があって初めて成立しうる科学研究によって得られた成果などは、得られた最初からパブリックドメインにならなければ恥ずかしいような気がしてきます。
1.著作権による保護は一時的なものであり、保護期間終了後は作品はパブリックドメインとなる。有史以来の知識の大部分はパブリックドメインであり、著作権による保護は時限的な例外措置である。
2.パブリックドメイン作品はパブリックドメインにあり続けなければならず、再生産などの際に、排他的権利を主張したり、利用に制限を課すことはできない。アナログでパブリックドメインであったものは、デジタル化されてもパブリックドメインである。
3.パブリックドメイン作品のデジタルコピーの正当な利用者は、自由に利用・複製・改変ができるべきである。
■パブリックドメインの機能を維持するためのガイドライン
1.著作権による保護の範囲のいかなる変更も、パブリックドメインに与える影響を考慮して行う必要がある。
2.著作権以外の知的財産権を用いて、パブリックドメイン作品に対する排他的権利を主張してはならない。
科学研究に大きなお金が投入されるようになってくればくるほど、その成果から利益を回収しようとしう圧力も大きくなるようで、昨今の「役に立つ科学」というかけ声は「お金を稼げる成果」と表裏一体のものに聞こえてきます。
もちろん個人や個々の組織や国だけで可能となることではないと思いますが、まちがいなく過去の遺産の上に築かれつつあるすべての科学の成果はパブリックドメインになるべきだと信じます。
▲
by stochinai
| 2010-04-15 17:49
| コミュニケーション
|
Comments(2)
2010年 04月 15日
4月14日のtwitter
Wed, Apr 14
- 12:50 「文科省28歳職員、窃盗未遂容疑で逮捕」 News i - TBSの動画ニュースサイト 「13日、JR総武線の車内で、女子大学生のバッグに手を入れ金を盗もうとしたとして、警視庁に逮捕されました」 http://ow.ly/1ybp1
- 12:47 【博士問題まで論じています: 必読】 社会科学者の時評: ■ 高等教育の投機化現象 ■ ◎ 元がとれるか,その保証がない「日本の高等(?)教育」 ◎ 【日本で大学にいくことの損得勘定:損を承知で進学するのか?】 http://ow.ly/1ybmf
- 12:19 3億年前のゴキブリの祖先が3Dイメージで再現された Creepy crawly cockroach ancestor revealed in new 3-D model http://ow.ly/1yaZs
- 12:16 ロサンゼルスやソウルのレストランで出されたクジラ肉の遺伝子検査をしたら日本発だということがわかってしまったらしい。 DNA analysis suggests whale meat from sushi restaurants... http://ow.ly/1yaXt
- 08:32 札幌はいきなり本格的に雪が降り出しました。 #tnk (@5goukan live on http://twitcam.com/mlpb)
- 08:31 http://twitcam.com/mlpb - Sapporo April snow #tnk
- 07:02 サイエンスあれこれ : 研究者として成功する術とは? Nature Biotechnologyの4月号の記事を解説してくれています http://ow.ly/1y5Tb
- 06:58 ウミヘビの模様には泳ぐスピードを遅くさせる藻類の付着を防ぐ役割があるらしい How the sea snake got its stripes http://ow.ly/1y5MZ
- 06:52 このYouTube動画はやはり一度見ておいたほうがいいですよ。「アリスfor iPad」 Must See! Alice for iPad (video inside) - My Modern Metropolis http://ow.ly/1y5FB
- 06:45 年間5万人 就職できない有名大学「第3の入学組」の悲劇 AO入試合格組 大手企業人事担当者も要マーク 賢者の知恵 現代ビジネス『そこそこ有名な大学でも、こんなに簡単に入れるんだ』入学後も授業に身が入らず、ダラダラと過ごしてしまい、就活で失敗 http://ow.ly/1y5v2
Powered by twtr2src.
▲
by stochinai
| 2010-04-15 07:35
| コンピューター・ネット
|
Comments(0)
1