2011年 02月 07日 ( 2 )
1
2011年 02月 07日
小さなミジンコの小さなゲノムにたくさんの遺伝子
これが世界中にいるミジンコ(Daphnia pulex)です。当研究室のN木さんが、ポプラ並木の横の池から取ってきて、今でも継代飼育されているものです。

先週のサイエンス誌に発表されたこのミジンコのゲノム解読論文では、わずか200メガ塩基対しかないゲノムサイズの中になんと31000ほどもの遺伝子があるという驚きの発表がありました。ヒトのゲノムサイズは3ギガ(3000メガ)塩基対(合ってるかな?)もあるにもかかわらず、その遺伝子は23000くらいと見積もられていますので、ジャンクDNAだらけと言われるヒトのゲノムに比べると、ミジンコのゲノムは「遺伝子だらけ」ということになります。

これがサイエンスに載った論文の冒頭ですが、実際にミジンコの遺伝子解析には、ここに挙がっている著者だけではなくおよそ450名の科学者が協力したということです。
この論文の中に載っている遺伝子の数を比べた棒グラフです。

真ん中にひときわ高くそびえているのがミジンコの遺伝子数のグラフで、その左側にいちするショウジョウバエ、ゴミムシダマシ、シラミなどの節足動物と比べると、白く抜けたミジンコだけにある特殊な遺伝子の数がとても多いことがわかります。また右にほうに位置する比較的遺伝子の多い、ウニ、ヒト、ニワトリ、ツメガエルなどと比べても、同じ色で表された共通な遺伝子が少ないことが特徴になっています。
ミジンコは昔から環境変化に対して、いろいろな反応をすることで有名でした。

たとえば、これは水中の酸素が少なくなってくると、ヘモグロビンの量を何十倍にも増やして赤くなったところですが、ヘモグロビンの遺伝子がなんと11個もあることに示されているように、ミジンコの進化と共に大量の遺伝子が重複して増えたようです。
また、ミジンコとその近縁種のミジンコのあるものは、捕食者がいるとからだの形を変化させて、食べられることから逃れようとすることが知られてきました。

これらは近縁種で、敵がいると、頭を尖らせたり、巨大化させたりする変化を示した図です。
下の写真は我々の研究室のN木さんが研究しているミジンコが彼らを食べるフサカの幼虫(ボウフラ)がいると、背中にneckteethと呼ばれる刺を生やすことを示した写真です。

また、ミジンコは高濃度のカドミウムが含まれた水の中では、カドミウムに対する耐性を発達させることなども知られており、ミジンコの環境に対する対応能力の高さは以前から注目されていたところなのですが、どうやらその謎を解く鍵のひとつが、この大量に増えた「働きが未知の遺伝子」にあるのではないかと考えられています。
遺伝子を大量に増幅することで、速やかに進化しながら同時にいろいろな環境適応能力を獲得していったと考えられるミジンコの進化が明らかになれば、我々の知らなかった生物の生存戦略が明らかになることも期待されます。
また、環境変化に対応して速やかに適応できるというミジンコの能力が遺伝子レベルで解き明かされたならば、ミジンコの遺伝子変化をモニターすることによって、生物に影響をもたらす環境変化をまだ生物への影響が出る前の段階で検出することができるようになるかもしれないということで、ミジンコを環境モニター動物として利用しようという目論見もあるようです。
といわけで、小さな小さなどこにでもいるミジンコの研究が、ひょっとすると将来の人類を救ってくれることになるかもしれないということが、「たかがミジンコ」の論文が世界中でニュースになった理由でもありました。(日本では、それほどのニュースにはならなかったようですが・・・。)
いくつかを下に掲載しておきます。
CBCnews
Tiny water flea, many genes
ScienceDaily
Water Flea: First Crustacean Genome Is Sequenced
EurekAlert!
Massive Daphnia genome leads to understanding gene-environment interactions

先週のサイエンス誌に発表されたこのミジンコのゲノム解読論文では、わずか200メガ塩基対しかないゲノムサイズの中になんと31000ほどもの遺伝子があるという驚きの発表がありました。ヒトのゲノムサイズは3ギガ(3000メガ)塩基対(合ってるかな?)もあるにもかかわらず、その遺伝子は23000くらいと見積もられていますので、ジャンクDNAだらけと言われるヒトのゲノムに比べると、ミジンコのゲノムは「遺伝子だらけ」ということになります。

この論文の中に載っている遺伝子の数を比べた棒グラフです。

ミジンコは昔から環境変化に対して、いろいろな反応をすることで有名でした。

また、ミジンコとその近縁種のミジンコのあるものは、捕食者がいるとからだの形を変化させて、食べられることから逃れようとすることが知られてきました。

下の写真は我々の研究室のN木さんが研究しているミジンコが彼らを食べるフサカの幼虫(ボウフラ)がいると、背中にneckteethと呼ばれる刺を生やすことを示した写真です。

遺伝子を大量に増幅することで、速やかに進化しながら同時にいろいろな環境適応能力を獲得していったと考えられるミジンコの進化が明らかになれば、我々の知らなかった生物の生存戦略が明らかになることも期待されます。
また、環境変化に対応して速やかに適応できるというミジンコの能力が遺伝子レベルで解き明かされたならば、ミジンコの遺伝子変化をモニターすることによって、生物に影響をもたらす環境変化をまだ生物への影響が出る前の段階で検出することができるようになるかもしれないということで、ミジンコを環境モニター動物として利用しようという目論見もあるようです。
といわけで、小さな小さなどこにでもいるミジンコの研究が、ひょっとすると将来の人類を救ってくれることになるかもしれないということが、「たかがミジンコ」の論文が世界中でニュースになった理由でもありました。(日本では、それほどのニュースにはならなかったようですが・・・。)
いくつかを下に掲載しておきます。
CBCnews
Tiny water flea, many genes
ScienceDaily
Water Flea: First Crustacean Genome Is Sequenced
EurekAlert!
Massive Daphnia genome leads to understanding gene-environment interactions
▲
by stochinai
| 2011-02-07 21:03
| 生物学
|
Comments(0)
2011年 02月 07日
2月6日のtwitter
Sun, Feb 06
- 23:30 [exblog] グーグルがやると美術館巡りはこうなる http://bit.ly/evQQEf
- 22:40 「教育を変える」と豪語しながら塾運営を行う大学生の持つ矛盾、あるいは受験産業の傲慢さについて-Thirのノート http://ht.ly/3R8S3 「受験産業・は・学校教育を変える力を持っていない」「塾は学校・が無ければ成立せず・学校・を・批判し続けることによって・成立」
- 22:35 iPad で情報処理している人はタイムシフトが上手? | Lifehacking.jp http://ht.ly/3R8PF 「 iPad を利用しているユーザー・記事を読んでいる時系列・読まれるのは夜に集中・つまり保存された時間と読まれる時間の間にタイムシフトが起こっている」
- 22:31 アリのブログ:NHK最後の楽園:ヒカリコメツキムシが食べてた虫は? http://ht.ly/3R8L2 シロアリではなく「膜翅目アリ科の羽アリであることは一目瞭然・夜間にヒカリコメツキムシの光に誘われてやってくるのはアリの羽アリ。見る目が無いと、現地のガイドでも気付かない」
- 22:27 芸能ジャーナリスト・渡邉裕二のギョウカイヘッドロック » 犯罪でも何でもない大相撲の八百長事件の怪!! 実は天下りを狙う警察、文科省官僚の緻密な戦略かも!? http://ht.ly/3R8Hc 「落としどころとして、これからは官僚の天下りの巣にしてしまうこと」
- 22:22 文系よりまだ有利。でも前年比の落ちこみは大きい。 科学技術のアネクドート http://ht.ly/3R8CA 「単純に文系・理系でくらべてみると、現状ではわずかに理系のほうが有利といえそうです。そのいっぽうで、昨年と今年でくらべてみると、あきらかに理系は厳しい状況になっている」
- 22:20 【コラム】日本の研究者の給与はこれからもっともっと下がります - AMOKの日記 http://ht.ly/3R8xu 「そんな日本の助教の給与・今のところ、現状維持が続いて・実績によって上下・一つの大学でみんなやっていることがバラバラになる一つの理由・公務員人件費2割減」
- 22:14 円山動物園 4月下旬に新「は虫類・両生類館」をオープン BNNプラス北海道365 http://ht.ly/3R8vU 「動物の展示数は「は虫類館」の約10種30点から約60種120点に増える」 http://ht.ly/3R8xg
- 10:35 子ども向け(?)「進化の歌」動画:お子さんと一緒に見てください。「進化がみんなを作ったんだよ」 Evolution Made Us All on Vimeo http://ht.ly/3R27k
- 10:30 札幌市交通局 11、12日に「雪ミク」の共通ウィズユーカードを発売 BNNプラス北海道365 http://ht.ly/3R247 限定4000枚「ノルベサ2階特設会場・大通定期券発売所・1枚1000円・で、1人につき2枚まで・大通会場(西6丁目)に・雪像、すすきの会場に氷像」
- 10:26 【萌えベビーシリーズ】お母さんのお腹の袋から顔を出したワラビーの赤ちゃん Walla-squee! — Cute Overload http://ht.ly/3R23l
- 10:25 【国際ダーウィン・デー、ウィーク】2月12日はダーウィンの誕生日です。 International Darwin Day Foundation http://ht.ly/3R21K
- 10:19 なぜ私は研究者を辞めなかったのか - Take a Risk: 林岳彦の研究メモ http://ht.ly/3R1XJ 「なぜ私が研究者を続けられてきたかというと、辞める勇気がなかったから」「「私は本来ならば研究者を辞めるべきだ」とずっと思いながら、単に辞める勇気がなかった」
- 10:15 【萌えベビーシリーズ】お釜の中のチーター Cat-tast-trophe — Cute Overload http://ht.ly/3R1VD
- 10:12 世界各国の女性の平均的な顔一覧(画像) - 涙目で仕事しないSE http://ht.ly/3R1SA 「各国の女性の顔写真をモーフィングして作り出した平均的な顔の一覧です」拡大画像はこちら http://ht.ly/3R1Tt
- 09:04 [exblog] 2月5日のtwitter http://bit.ly/fBwCqJ
Powered by twtr2src.
▲
by stochinai
| 2011-02-07 07:42
| コンピューター・ネット
|
Comments(0)
1