5号館を出て

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2014年 03月 28日 ( 2 )

 イソップ童話に「カラスと水差し」という話があるのを覚えていらっしゃるでしょうか。
カラスには水に体積のあるものを沈めると水面が上がることが理解できている_c0025115_20225190.jpg
 Image:Project Gutenberg etext 19994

 喉が乾いたカラスが、水が少ししか入っていない水差しを見つけて水を飲もうとするのですが、くちばしが水まで届きません。そこでカラスは水差しの中にどんどん石を投入し、とうとう水面がカラスのくちばしに届くところまで高くすることに成功しめでたく水が飲めたという、カラスの賢さを描いたお話です。

 この原理を使って、道具を使って虫を捕ることで有名なカレドニアカラス(New Caledonian Crow)が、水中にものを投入すると水面が上がることを「理解」できているかどうかを試すことができる、という実験の論文が一昨日のPLoS ONEに出ていました。

カラスには水に体積のあるものを沈めると水面が上がることが理解できている_c0025115_20263738.jpg
 実験自体はテレビのおもしろ動物実験番組に出てきそうな単純なものなのですが、そこに添えられている動画を見ると楽しめます。

Movie S1.
Example trials for each of the six experiments.
doi:10.1371/journal.pone.0092895.s003
(MP4)


 実験は次の6つの装置を使って行われました。
カラスには水に体積のあるものを沈めると水面が上がることが理解できている_c0025115_2028589.jpg
 Aは砂の入った筒と、水の入った筒のどちらに石を投入するかを見たものです。
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 カラスはまったく迷うことなく水の入った筒にだけ石を投入し続けます。
カラスには水に体積のあるものを沈めると水面が上がることが理解できている_c0025115_20291324.jpg
 そして高くなった水面から難なく餌を獲得しました。

 次は、同じような色と形をしていますが、一方は水に沈むブロックで、もう一方は発泡スチロールのような水に沈まないものが置かれています。
カラスには水に体積のあるものを沈めると水面が上がることが理解できている_c0025115_20314886.jpg
 カラスは重いブロックを加えたら躊躇することなく水中に投入しますが、発泡スチロールの場合は横に捨て去ります。

 比重としては変わらなく、どちらも沈むものであっても、体積があるものとスカスカのものを用意して置いた場合も迷うことなく、体積のあるもの(すわなち、水面を上げるパワーの大きなもの)だけを投入しました。
カラスには水に体積のあるものを沈めると水面が上がることが理解できている_c0025115_20343226.jpg
 投入しやすい太い筒と、しにくい細い筒の場合には悩んで、最初は太い筒に2個ほどブロックを投入しますが水面が上がらないと見るや、細い方の筒に狙いを変えて見事に餌を獲得できました。

 最後は人間でもちょっと迷う、ちょっと見では底がつながっているかどうかがわからない筒の実験です。
カラスには水に体積のあるものを沈めると水面が上がることが理解できている_c0025115_2038369.jpg
 これでも何回か試行錯誤して、底がつながった管に石を入れることで餌を獲得することができました。

 これらのすべてを結果をまとめたグラフがこちらです。
カラスには水に体積のあるものを沈めると水面が上がることが理解できている_c0025115_20384340.jpg
 ごらんのように、4番目と6番目の事件を除くと、カラスはほとんど迷わずにどうしたら(水面を上げて)餌をとることができるか「わかっているよう」に思える行動をとりました。

 人間でもこういうことができるのは5歳から7歳児にならなければダメなのだそうで、改めてカレドニアカラスの「知性」に驚かされました。

 こんなすごい結果なのですが、実はすでに5年も前にヨーロッパのカラスやカケスで同様の実験が行われていることが引用されていました。

Bird CD, Emery NJ (2009) Rooks use stones to raise the water level to reach a floating worm. Current Biology 19: 1410–1414.

Bird CD, Emery NJ (2009) Insightful problem solving and creative tool modification by captive nontool-using rooks. Proceedings of the National Academy of Sciences 106: 10370–10375.

 (解説が日本語でも読めます。)

 おそらく、その方面では超有名な論文なのでしょうが、私は知りませんでした。いずれにせよ、カラスやカケスの仲間の「知性」はあなどれないものがあることは間違いなさそうです。

 もちろん、こうした実験はある程度カラスを訓練して行われるので、カラスがほんとうに水面の上昇と水中への物質投入の因果関係を理解しているかどうかということの判断は慎重に行われなければならないのですが、別々の研究者によって、別種のカラスを使って行われて証明されたということは、確からしさが非常に高まるということになります。

 昨今、議論されている「科学の作法」がこういう実験から学べると良いのですが・・・。





 
by stochinai | 2014-03-28 20:47 | 生物学 | Comments(0)

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by stochinai | 2014-03-28 07:22 | コンピューター・ネット | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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