5号館を出て

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2014年 07月 21日 ( 2 )

 早稲田大学の調査委員会(小林英明委員長)が、たとえどんな内容の博士論文であっても「学位の取り消しは一つの法律行為なので、その要件に合致しなければ、たとえ心情的にはおかしいと思っても、取り消すことができない性質がある」ということで、たとえ疑惑の博士論文に
「不正の方法があったとしても、その『不正の方法』によって『学位の授与』を受けたという要件を満たさなければいけない。つまり、『不正の方法』と『学位の授与』との間に因果関係が必要になる。

因果関係というのは、ある事実があった後にある事実がある、ある事実がなければある事実がない、といった関係のことをいう。つまり、それが学位授与に重大な影響を与えたという場合に、初めて因果関係があるといえるレベルになる。

早稲田大学では、査読付きのジャーナルに受理されているということが学位授与に非常に大きな影響を与えている。それが受理されていれば、あとは指導教員が論文を丁寧に指導すれば、ほとんど学位がとれるということが実態になっている。

今回、小保方さんは査読付きのジャーナルに受理された論文を持っており、それに基づいて博士論文を書いている。そういう状況下で、学位の授与に重大な影響を与えたかを検討した。

最終的には、学位の授与に一定程度の影響を与えたという事実はあるけれど、重要な影響を与えるとまではいかない、科学の論文なので、実験結果の部分で盗用がない以上、重要な影響とまでは言えないという結論になった。

このような議論の末、今回の場合、不正の方法により、学位授与の取り消しにはあたらないという結論に至った」
と発表しました。(いずれも弁護士ドットコム トピックスよりの引用)

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(タカノハススキ・ヤバネススキ)

 弁護士さんでもあるこの委員長の詭弁としては、「早稲田大学では、査読付きのジャーナルに受理されているということが学位授与に非常に大きな影響を与えている。それが受理されていれば、あとは指導教員が論文を丁寧に指導すれば、ほとんど学位がとれるということが実態になっている」ので、今回の件もこの条件に関してはクリアしているので、学位取り消しはしなくてもいいだろうということのようです。

 「査読付きのジャーナル」にもピンからキリまであり、中学生の夏休み自由研究のようなレベルでも「査読をした」とした論文をどんどん出しているジャーナルもあります。実際にはかなりの数の「博士」がそうしたレベルのジャーナルへの出版することで、「条件をクリアした」として授与されているという事実があります。これはひとり早稲田に限らず、どこの大学でもそうした条件を付けているところでは見られることだと思います。さらには、この「査読付きジャーナル」での出版を学位授与の条件にしていない大学が(旧帝大でも)あると聞いていますので、博士の学位授与の条件など「有ってなきがごとし」といえるものだと、私は理解しています。

 それでも、「東大の博士号」とか「早稲田の博士号」などはそれなりの品質保証を伴っているものだという世間的理解もまたあると思っていましたので、今回の調査委員会の結論はその「品質保証」の存在を土足で踏みにじるもののようにも思えて、ちょっとびっくりしました。

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(ノウゼンカズラ)

 もちろん今までだって、某帝大とか某著名私立大学の博士号を持っているからといって、それがそのままその人の学問的レベルの保証にはなっていないということは、我々業界内部の人間にとってはいわば「常識」でした。ルールとしては、どんなに博士号授与の審査に関してキツイ条件が課せられていた研究科であったとしても、それを本人の実力を越えた「何らかの方法」で乗り越えてきた「博士」がいることは、その博士としばらく学問的に付き合ってみればたちどころにわかるものです。

 つまり、どこの大学院で授与された博士号を持っているかということが、「品質保証」と直結しないことは誰でもが感じていたことです。しかし、それを表立って公式に表明した例というものはいまだかつてなかったはずです。それが、今回の調査委員会はあまりにも露骨に、「早稲田の博士ってこんなものです」と言ってしまったのであります。

 アカデミアの外にいる人から見るとこれは、「早稲田の博士」だけにとどまらず、「日本の博士」というものがそういうものなのだと、公式に(国際的に)表明することになってしまった事件になってしまいました。

 なんども言ってきたように、どこの大学の大学院の博士号を持っているからといって、品質保証になっていないということは我々は認識して今日に至っているのですが、社会的にはあまり広く公言されてきてはいなかったことだと思います。それが、こんなにあっさりと公になってしまったのですから、それはもう大騒ぎ、というレベルの衝撃がアカデミアに走っています。

 とはいえ、我々も一部の博士号なんて信用できないものだというふうには思っていたのも事実なのですから、こうなった以上、ここで一旦「日本の博士号」の存在をリセットすることもアリかもしれないと思っています。

 私の博士号も剥奪していただいても構いません。ただし同時に、博士号を必要とする職種というものからすべてその制限を取り除くことも同時に行ってもらわなければ整合性がとれなくなります(失職する可能性もある)ので、それは必須です。

 そうなれば、人事考査の際に博士号を持っているかどうかで安易にふるい分けすることができなくなり、ちょっと面倒くさくなりそうですが、実は今でも博士号を前提とする人事ではあまりにもたくさんの方が博士号を持っているために、事実上それを持っているということでの選抜は機能していないのが現実ですし、逆に博士号を取るなどということの無意味さを知っている「骨のある」人材を最初にふるい落としているというマイナス面がなくなるという意味では、「一害あれども百利あり」くらいの結果になることと思います。

 というわけで、もしも今回の早稲田の調査委員会の報告が早稲田大学の最終結果として世界に発表されるようなことになったならば、いっそのこと日本の博士号はその時点をもってチャラにして、「日本には博士号というものはありませんので実力本位の人事選考をお願いいたします」と世界に発信するのがもっとも現実的で妥当な着地点だと、私は強く思うのですが、どうでしょうか?

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(ラベンダー)

 結構、本気でそう思っています。
by stochinai | 2014-07-21 21:37 | ポスドク・博士 | Comments(16)

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by stochinai | 2014-07-21 07:35 | コンピューター・ネット | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai