5号館を出て

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カテゴリ:生物学( 366 )

 Facebookページで知り、National Geographicのサイトで読みました。

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 190年間も探し続けていたというだけあって、手稿本といってもノートのようなものではなく手書きの原稿であるとはいえ、見た目は立派な図鑑と言えるようなものです。中身はアメリカの女性科学者Wollstonecraftさんがキューバの植物(花や果物)を描いたみごとな植物画と植物学的解説です。しかも立派な表紙がついた3巻本で、原稿なので1セットしかありません。

 Specimens of the Plants & Fruits of the Island of Cuba by Mrs. A.K. Wollstonecraft

 現代の研究者が190年間も探し求めていたものがどこにあるのかわからなかったものなのですが、このたびニューヨークのコーネル大学の書庫で見つかりました。

 これを見つけた人は震えたと思います。それがこんなメジャーな大学の書庫にありながら190年間も誰の目にも触れなかったという事実にも驚きます。

 それよりなにより驚くのはその中に描かれた植物画です。

 そしてさらに嬉しいことに、この手稿のすべてがデジタル化されて世界中の誰でもが自由に見ることができるようになっているのです。こちらからアクセスできます。


 せっかくですので、いくつか馴染みのある植物を再掲させていただきましょう。

 これはトケイソウですね。

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 チョウセンアサガオです。

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 最近は日本の園芸屋さんでも買うことができるクレオメ。

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 ルピナスです。

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 園芸植物としては定番のナスタチウム。

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 そして、なんとナスもありました。

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 最近、日本で栽培されている植物のかなりのものが200年前のキューバにもあった(むしろ、そこから伝来してきた?)ということに改めて不思議な感覚を覚える出会いでした。

 本にすらなっていない手稿本がこうしてデジタルで公開できる現代のテクノロジーにも感謝です。









by STOCHINAI | 2019-04-24 21:32 | 生物学 | Comments(0)
 新聞などでも報道されたのでご存知の方も多いかと思いますが、鹿児島大学の博士課程の学生がおもしろい現象を発見して、世界的なオープンアクセス雑誌に論文を発表しました。

 こちらが原著論文ページです。

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 このくらいの英語なら和訳する必要もないかと思いますが、Chromeに翻訳してもらうとこうなります。

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 ついでに要約も翻訳してもらいましたが、このくらいできれば合格レベルだと思います。

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 実験自体は非常に簡単で、メダカの子どもを孵化直後から白色と緑色のLEDライトの環境で飼育し、2ヶ月後にオスメスの判定をするだけです。メダカのオス・メスは外から見ても比較的簡単に判断できますが、そこは生物学論文ですから、解剖して生殖巣がどうなっているかと性転換したオスの精子で受精した子どもがオス・メスどうなるかをチェックしています。下は白色光と緑色光のLEDライトの波長を比較したAと、光を当てたのが孵化直後から60日ということを示す図です。

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 今どきの論文なので、白色光でも緑色光でも遺伝的にオス(性染色体がXY)ならばそのまま、遺伝的なメス(性染色体がXX)が性転換してオスになった場合でも性を決める遺伝子は変わらないことも示していますが、性転換したメスの生殖巣は精巣に変化していることを示しているずです。

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 この性転換メスは外見でもオスっぽいですし、もちろん精子も作ります。

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 オスの作る精子は正常ならばX精子とY精子ができますので、X染色体だけを持った卵と受精すると普通は1:1でオスとメスが生まれてきますが、この性転換メスの作る精子はすべてがX精子なので、普通のメスと交配するとその子どもはすべてがメスになることも確かめています。

 ただし、緑色効果で飼育してもすべてのメスがオスに性転換するわけではなく16%程度です。現時点ではこの性転換がどうして起こるのかの原因についてはまったく不明のようです。

 最初この論文のニュースを聞いた時に、分化しつつある生殖巣に強い緑色の光でも当てるという実験をしたのかと思っていましたが、ローカルニュースで取り上げられた研究室の様子を見て、それはないということがわかりました。まあ、鹿児島のローカルニュースを保存したYouTubeの映像をご覧ください。驚くほど簡単な飼育設備での快挙だということがわかります。



 これを見て、私が今考えているのは緑色の環境に置かれたメダカの子どもが視覚・神経・内分泌系などに混乱を生じて性転換したという可能性ですが、メカニズムはどうあれこうした前人未到の現象を発見したということは非常に大きな生物学に対する貢献だと思います。

 性転換が16%程度しか起こらないということから、この先の解析には困難が予想されますがひとまず素晴らしい発見に称賛の拍手を送ります。

 このような発見をしてくれた研究グループのみなさんが、これからも楽しい研究生活を送ってくれることを期待します。









by STOCHINAI | 2019-03-04 22:23 | 生物学 | Comments(0)
 以前、北海道大学にいらっしゃって、今は東京に異動された知り合いの先生から、来週末に東京で動物学会関東支部大会が開かれ、そこで一般向けの公開シンポジウムがあるので宣伝をしてもらえませんかという問い合わせがありましたので、お知らせさせていただきます。

 こちらがその公開シンポジウムのポスターです。

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 動物学の領域では古くから両生類を使って発生や再生の研究が行われてきました。もともとは卵が大きくて観察しやすいとか、いつでも実験ができるとか、ヒトではあまり顕著ではない再生が簡単に起こるなどという理由から使われてきた両生類ですが、研究が進んできていろいろなことがわかってきてみると、実は両生類とヒトは生物としてはそれほど違わないということと、それにもかかわらず再生という点から見るとなんでこんなにも違うのだろうかというほどの差があることがわかってきました。逆に言うと両生類で再生ができるのならヒトでも実はちょっとした刺激を与えてやるだけで大々的に再生ができるのではないだろうかという問題意識から、古くから使われてきた両生類を使った研究がまたちょっと盛んになってきているという面もあります。また、近年絶滅が心配されている両生類ですが、実は意外とタフな側面もあり水温40℃を越える温泉の中で生活できるものが発見されたりしているそうです。俗に「ゆでガエル」と言われるように温度には弱いと思われていたカエルがどのように高い温度に適応できたのかなどがわかると我々ヒトがどうして恒温動物になったのかとか、どうして熱がでると調子が悪くなるのかなどということもわかってくるかもしれません。このように両生類を研究することでヒトの謎に迫ることもできるということがわかってきたのが新しい生物学の成果でもあります。そうした最先端の生物学の話を馴染み深いカエルやイモリを使った研究から解き明かしているバリバリの若い研究者の話を聞ける貴重な機会に是非ともでかけてみていただきたいと思います。

 もちろん、動物学会員以外の方々から参加費をとったりはしませんし、事前の申込みも必要ありません。当日、時間と距離の制約がない方はふらりと参加してみてくださればありがたいとの主催者の方々が希望しておられます。

 また、最近の専門学会では若者の教育という面にも力をいれており、今回の支部大会でも高校生や中学生の科学研究のポスター発表も行われますので、お時間のある方は是非ともそちらものぞいてみてください。

 公開シンポジウムは10:00-12:00ですがポスター発表は14:00-16:00です。

 私個人としては、高校生や中学生のポスター発表のほうが魅力的な題材を扱っているように思えたりします(笑)。

 プログラムも公開されているので、こちらからご覧になれますが、中高生のポスターのタイトルを再掲してみましょう。

・砂の隙間のミクロな世界!? ~間隙性貝形虫の未記載種と思われる種の発見~
  都立科学技術高等学校
・農業をする細胞性粘菌の好き嫌い
  長野県屋代高等学校理数科
・プロテインが蚕に与える影響
  横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校
・都立林試の森公園における昆虫相の調査
  攻玉社高等学校生物部
・珪藻群集から見る都市河川と赤潮の関連 ~アンケート調査と珪藻群集調査に基づいて~
  世田谷学園高等学校生物部
・異なる光質環境下で生育したシソの形態変化
  玉川学園高等部 SSH リサーチ
・七転び八起き?乾眠と蘇生どっちが大変?
  横浜市立サイエンスフロンティア高等学校
・ミズクラゲの大量発生と富栄養化の関係
  横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校
・微小部蛍光X線分析方法を用いたプラナリアの元素分布
  都立富士高等学校附属中学校
・X 線分析顕微鏡(XGT)を用いた甲虫のオオアゴに蓄積する金属元素の測定
  明大中野高等学校、淑徳巣鴨高等学校、都立小山台高等学校、都立富士高等学校附属中学校
・カイコの幼虫期における赤色光 LED ライトによる成長促進の追究
  茨城県立並木中等教育学校
・セミの鳴き声から学校環境を理解できるか?(Part 2)~ 生息環境と緑被率の関係 ~
  都立富士高等学校附属中学校
・ニワトリ胚を用いた発生初期の仕組みについての研究
  茨城県立水戸第二高等学校
・塩ストレスによるブラッター細胞の活性化
  玉川学園高等部 SSH リサーチ
・養液栽培リーフレタスに及ぼす栄養濃度の影響
  玉川学園高等部 SSH リサーチ
・プラナリアの移動速度が速くなる面はあるのか
  埼玉県立浦和第一女子高等学校
・プラナリアはどの程度面の粗さを見分けられるのか
  埼玉県立浦和第一女子高等学校
・ミジンコの光走性は、集団になると変わるのか
  栃木県立宇都宮女子高等学校
・コオロギの求愛行動
  東京大学教育学部附属中等教育学校
・古典的条件付けを用いたゼブラフィッシュの学習
  埼玉県立浦和第一女子高等学校
・マウスにおける二個体間のコミュニケーションについて
  東京大学教育学部附属中等教育学校
・粘菌の走行性と摂食行動における研究
  法政大学国際高校

 もちろん、先生ばかりではなく専門の研究者や技術者からの指導を受けながらの研究も多いとは思いますが、専門家ではない若者の新鮮な問題意識から新しい研究が育ってくる可能性を感じさせられるタイトルもたくさんあるのがよくわかります。

 当日のプログラムはこちらです。

プログラム
9:30~ 受付開始・ポスター掲示
10:00~12:00 公開シンポジウム(5 号館5 階5534 号室)
12:10~13:00 関東支部総会(5 号館5 階5534 号室)
13:00~14:00 昼休み
14:00~16:00 ポスター発表(5 号館1 階5134・5136・5138 号室)
P-001~P-040 5138 号室、P-041~P-080 5136 号室
P-081~P-122 5134 号室(中・高校生ポスターはP-101 以降です)
奇数番号発表時間 14:00~15:00
偶数番号発表時間 15:00~16:00
16:00~16:30 表彰式(5134 号室)
17:00~19:00 懇親会(5 号館地階食堂)

2019 年 3 月 9 日(土曜日)
中央大学理工学部
後楽園キャンパス
東京都文京区春日 1-13-27

 興味のある方は是非とも当日会場においでください、との主催者からのメッセージです。









by STOCHINAI | 2019-02-25 23:23 | 生物学 | Comments(0)
 タイトルだけ見てtwitterで「単為発生のトゲウオ発見」とつぶやいてしまいましたが、大間違いでした(汗)。


 返信で訂正してありますが、改めてお詫びして訂正させていただきます。

 元論文はオープンアクセスなので実際にご覧になっていただけばわかりますが、こちらです。

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 Chromeに翻訳してもらうとこうなります。そんなに悪くはないと思います。

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 要するに「普通は交尾をせずに産卵をするタイプのトゲウオ(和名はイトヨ)のメス胎内で仔魚が発生しているのが観察された」というタイトルです。

 交尾をしないタイプのサカナはオスが精子をメスの胎内に注入する器官(penis)を持っていないので、精子がメスの胎内に入るということは想定できないので、メスの胎内で発生が起こるのは、1)単為発生か、2)雌雄同体か、3)なんらかの方法で精子が胎内に注入されたか、というケースが考えられるので、この論文ではそれを検討したということです。

 論文の要旨は英語ですが、それを読めばだいたい内容はわかります。

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 こちらも訳してもらってみましたが、これはちょっとお笑いにしかなりませんでした。(とここで震度4の揺れがありました。震源は胆振地方中東部。最大震度6弱。幸いなことに今のところ、停電は起こっていません。)

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 これは無視して上の英文を読んでいただきたいのですが、「たくさんのサカナで卵生から胎生への進化が起こっていますが、その中間型である卵生のサカナが胎内で仔魚を発生している例はほとんど見つかっておらず、今までに2例の報告があるだけなので、今回の報告が世界で3番目ということになります」という序文から始まり、今回のイトヨ(英語では三本のトゲをもつトゲウオ)の例が書かれています。

 メスの卵巣で発達する仔魚を手術で取り出して体外で育ててみると成体にまで成長したので、親や子の解剖学的・遺伝学的特徴を調べてみると、まず親は完全なメスで卵巣しか持たず、精巣も持っている雌雄同体ではなかったこと、仔魚にはオスとメスがいたこと、また仔魚には母親にはない遺伝子が見つかったことなどから、メスだけの単為発生も否定され、オスによって精子がもたらされたが故の発生であることが結論された。

 おそらくなかなか産卵せずにいるメスの存在が、胎内に精子をとりこみ胎内で発生するという卵胎生へと進化する途上にあると考えることもできる珍しい観察だと思われます。

 こちらが論文で示された卵巣内で発生する仔魚です。

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 筋子のように束になっている卵の中に発眼している仔魚が見えます。拡大してみると、脊索・心臓・眼ができている仔魚も確認されます。

 謎なのは精子がどうやって卵巣にまで入ってきたかということです。はっきりしたことはわかりませんが、今回調べたメスは野生から採集してきたもので、オスの作った巣に入って産卵行動をとっていた可能性があるので、巣の中ですでに生み出されて精子をかけられ受精しつつある卵のまわりにあった生き残りの精子がメスの輸卵管を通って卵巣にまで入ってきた可能性を考えているようです。

 それにしても卵胎生のトゲウオはまだ発見されていないので、このまま行くと何万年か後には卵胎生のイトヨが進化してくる可能性があるということになるのかもしれません。それまで待って観察することはできませんので、一所懸命に探してすでに卵胎生になったトゲウオを見つけるほうが早いと思います。おそらくいるぞ!









by STOCHINAI | 2019-02-21 22:17 | 生物学 | Comments(0)
 昨日は真冬日でも太陽が出ていたので雪がとけるのはそれほど不思議でもなかったのですが、今日は真冬日で太陽も見えなかったのに昼過ぎに雪がとけているのを見るのはちょっと不思議な感覚でした。春が近づいてきたということなのでしょうか。

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 昨日だったかウェブ公開になった論文におもしろいものがありました。

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 赤ちゃんなどをあやしているときに揺すっているといつの間にか眠り込んでしまうことはよく経験することで、泣いているときなども思わず揺すってしまいますが、そういう時でもうまくいくと泣き止むとともに眠ってくれることも多いものです。子供に限らず大人でも車中などで揺すられていると眠くなってくることはよく経験することなので当たり前のことだと思っていましたが、ヒト以外の動物で揺すられることで眠りやすくなることは知られていなかったのだそうですが、この論文ではネズミ(マウス)をリズミカルに揺すると眠りやすくなるということが証明されたという論文です。

 これが論文の実験装置の概略図です。

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 脳波や運動の様子を見るための筋肉運動を記録するためのケーブルをつながれたマウスをユラユラと揺れるかごにいれて、脳波や筋肉運動を記録しながらカゴをリズミカルに揺らします。この揺れが速いとダメなのですがゆっくりと揺らすとネズミは眠ることが多くなることが示されました。

 どうしてゆっくりと揺すられると眠るのかを知るために、内耳の前庭器官にある平衡石が突然変異で働かなくなっているネズミも実験に参加させたところ、その変異ネズミは揺することによっても眠りが促進されることがなかったため、この揺すりの影響は平衡石からの刺激だと推測されています。それを模式的に示したものがこちらの図です。

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 図の左下に描かれたようにネズミをリズミカルに揺すると、ネズミの内耳の前庭器官にある平衡石もリズミカルに揺れて脳内にその情報を伝えると正常なネズミは眠たくなりますが、その耳石器官に以上がある変異ネズミは揺すられても眠くなることはなく起き続けることが示されました。

 おそらくヒトでもこれと同じ原理でリズミカルに揺すられると眠たくなるのだと考えられます。

 これだけでもとてもおもしろいのですが、同じ雑誌の次の論文がなんと寝ているヒトをリズミカルにゆすり続けると、眠りの質が良くなるとともに記憶の増強にも役立つということを示しているものでした。

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 こちらはヒトを使った実験なので、あまり過激なことはできません。

 実験装置は揺れるベッドだけです。

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 18人のボランティアに参加してもらい、まずは1週間毎晩ベッドに慣れてもらうためにただ寝てもらいます。そして一晩、なにもなしに寝てもらって睡眠の質と記憶の固定に関する実験をします。次に15日目にまた来てもらって3日間ベッドに慣れてもらうためにただ寝てもらいます。それから一晩、本来ならばベッドを揺するために使うモーターをベッドにつながずにスイッチを入れて(音だけ聞いてもらって)睡眠の質と記憶の固定に関する実験をします。さらに23日目にまた来てもらって3日間ベッドに慣れてもらうためにただ寝てもらいます。それから一晩、今度はベッドを揺するために使うモーターをベッドにつないでスイッチを入れて、本来の実験として睡眠の質と記憶の固定に関する実験をします。

 なかなかややこしい実験ですが、この実験の結果ヒトは寝ている間にゆっくりと揺すられると睡眠の質もよくなるだけでなく、記憶の固定が揺すられないときよりもよくなるというのです。

 これは将来のベッドのあり方に変化を与える可能性のあるすごい結果だと思いました。布団よりも少しユラユラとするベッドのほうがいいのかもしれませんね。

 おもしろいことにネズミもヒトも揺すられる速度は同じくらいゆっくりとはいってもネズミは1.0Hzがよくて、ヒトは0.25Hzがいいというのもおもしろい結果だと思います。動物としてのサイズは1000倍以上も違うのに適切な揺すられる速度はそんなに違わないんですね(笑)。

 どちらも実験としては簡単なものですが、日常的な疑問を解いてくれるという意味で素人向きとも言えるものかもしれません。

 生物学的にはどうして揺れるといいのか、進化的に見るとどういう意味があるのか気になってきました。








by STOCHINAI | 2019-02-06 22:56 | 生物学 | Comments(0)
 500年ほど前に絶滅したマダガスカルに住む身長が3メートルほどもある地球上で最大の飛べないトリ「エレファントバード」はその生態すらまったく知られずにいる謎のトリでしたが、このたび残された頭蓋骨を調べることでこのトリが夜行性で視力はほとんどなく(というか盲目に近く)、逆に鋭い嗅覚で餌を探していたことがわかったという論文が出ました。

 解説記事がこちらにあるのでご覧ください。想像生態図もあります。

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 論文はオープンアクセスなのでアクセスしてご覧になるといいと思いますが、こちらにあります。

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 話は簡単で500年位前までマダガスカルで生きていたトリで、骨格などはたくさん残されているのでそれを現存のトリと比較すると、その視覚や嗅覚の能力がだいたい想像できるということです。

 こちらがいろいろな種類の脳の構造です。

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 上の4つが2種類のエレファントバードの脳の図で、その下が近縁と考えられているニュージーランドに住むキイウィと南米に住むレアの、下の4つが近縁で飛べる2種のシギダチョウ(ティナモウ)というトリの脳です。赤い点々で囲まれたところが視覚に関係した領域で広ければ広いほど視力が優れていると考えられています。キイウィは夜行性でほとんど目が見えないということですがエレファントバードの脳の視覚に関係した領域はキイウィと同じくらい狭いので、このことからエレファントバードもキイウィと同じように夜行性で目が見えなかったと考えられるそうです。もちろん昼行性のシギダチョウの視覚に関係した領域はとても広いことがわかります。

 この脳の解析から次のような進化の道筋が考えられているというのがこの論文の要旨です。

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 系統図が2本ずつになっていますが、上側が視覚能力に、下側が嗅覚能力に関係した脳の領域の大きさで、視覚に関しては色が濃いほど小さくて視力が弱く夜行性、嗅覚に関しては色が濃いほど大きくて能力が高いということを示しています。エレファントバードは視覚が弱く嗅覚が強いので夜行性なのだろうと想像されるということです。これは現存のキイウィと同じ性質です。

 この巨大なトリは500年位前まで人間と一緒に生活していたはずなのですが、ほとんど伝説も残っていないのはおそらく彼らが夜行性だったということも関係しているのかもしれません。

 人間のせいで滅びたことがじゅうぶんに想像されるエレファントバードですが、その生態についてほとんど情報が残っていなかった謎のトリでした。最新の解析技術で頭蓋骨を調べることでその生態までも推測できるというのはとてもおもしろいと思いご紹介してみました。

 それにしてもドードーなどを代表とする巨大なトリは次々と人間に滅ぼされてしまって残念なことこの上もありませんね。








by STOCHINAI | 2018-11-02 00:08 | 生物学 | Comments(0)
 空を滑空するという性質はそっくりでなのですが、南半球に住む有袋類のフクロモモンガは収斂進化によって生じたまったく類縁のないグループです。一方、北半球に住むムササビ・モモンガの類は共通祖先を持つリスに近縁の哺乳類で(ネズミ目(齧歯目)リス科リス亜科)、大型のモモンガが15属、約45種、小型のムササビ属は8種類が原生種として知られています(Wikipedia)。

 バルセロナの近郊で発掘された1160万年前の化石は尾と大腿骨が大きかったために最初は空飛ぶ霊長類ではないかと研究者たちは期待したそうですが、残念ながら(?)その後の調査でこれはげっ歯類の骨であり、手首の骨の特徴から絶滅したモモンガのものだとわかったということで論文が発表されました。オープンアクセスのeLIFEでの発表なのでどなたでも読むことができます。

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 基本的には骨格を解析した解剖学による分類学論文なので、細かく議論されている骨のことはよくわからなかったのですが、この写真を見るだけで論文で主張されていることはほぼ尽きると言ってもいいのかもしれません。

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 上の3Dの骨格再現図のうち白い部分が発掘された化石で、青い部分は現存のムササビの骨格から類推された「想像図」です。それをもとに下の整体再現図が描かれました。着地(着木?)寸前の姿です。

 骨格の解析から新しいムササビとして Miopetaurista neogrivensis と名付けられました。

 論文の中では手足の骨と頭蓋骨の詳しい検討がされていますが、要するに現存のムササビとよく似ているということで、現存のムササビは生きた化石と言っても過言ではないほど当時とほとんど姿が変わっていないのだそうです。この再現図がムービーとなってYouTubeにありますので、こちらも引用して貼っておきます。



 もうこのムービーを見るだけで論文の内容は素人にもだいたいわかってしまいます。良い時代になったと思います。

 というわけで、このムササビが現在のムササビ・モモンガなどの系統図の中に位置づけられることになりました。こちらが論文の中にあった系統図です。

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 右端の色分けで、大きな青がリス科で、その次の緑がリス亜科、そしてその左のオレンジ色がムササビ・モモンガの「飛行リス類」です。そのうち上の半分がムササビ類で、下半分がモモンガ類ということになり今回の化石種はムササビ類の根本のところに出現して絶滅したということがわかります。

 それでこの系統図の下に書き込まれた年代図と比べると、ムササビ・モモンガ類は普通のリスと2千5百万年から3千百万年前頃あるいはもっと古くに分岐したことが示されており、今まで考えられていた2千3百万年前よりは古いというこことがわかってきたといいます。ところが現在までに発見されている最古のムササビ・モモンガ類の化石は3千6百万年前のものだと言われているのですが、その化石に関しては歯だけが発掘されているものなのだそうで、手や足の化石が出てこないと結論が出せないようです。

 というわけで、手や足の骨格も含めた間違いのないムササビの祖先としては現在のところ、今回の Miopetaurista neogrivensis が最古のものとして最有力といっていいようです。

 それにしても、論文を専門的には深く読み解けなくても、図や動画でだいたいわかるようになってきたのは専門家も素人に対してうまく説明することが必要になってきた時代なのでしょうね。

 ありがたいことです。








by STOCHINAI | 2018-10-10 23:25 | 生物学 | Comments(0)
 ツイン台風がツイン温帯低気圧に変わって北海道にやってきました。風はほとんどなく雨だけが降り続いていたのですが、今朝には雨もほとんどあがっていました。 11時過ぎにはちょっとだけ日も差し、一瞬の太陽に感動して庭の写真も撮りました。

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 このまま晴れるのかと思いましたが、残念ながら一日中どんよりとしていたばかりではなく、午後からは強い風も吹き出してきました。

 午後からは気温も20℃くらいしかない上に強い風が吹いていて、体感気温ははっきり言って「寒い」と言う感じだったので、室内で勉強をしていました。

 テーマは昨日配信されたNatureに載っていたカメの進化の話題です。

 カメの進化は最近、急速にいろいろと明らかになってきています。こちらに去年くらいまでのよくまとまったストーリーが載っています。カメといえば甲羅が大きな特徴ですが、もちろん脊椎動物で甲羅を持っているものはほとんどいないのでカメ類が進化の過程で甲羅を獲得したことは間違いありません。

 カメの祖先でまだ甲羅を持っていない頃のもの(Eunotosaurus)はこんな姿かたちをしていたと考えられています。

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https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Eunotosaurus_africanus_life_restoration.jpg#/media/File:Eunotosaurus_africanus_life_restoration.jpg

 現在でも見られる平べったいトカゲのような姿かたちですね。

 それがさらにカメに近づく進化を遂げたものがこちら(Pappochelys)だそうです。これはまだ甲羅とはいえないものの、お腹にちょっとだけ甲羅のできかけのようなものがあるそうです。

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https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/af/Bild2_Ur-Schildkr%C3%B6te_Zeichnung.jpg/1024px-Bild2_Ur-Schildkr%C3%B6te_Zeichnung.jpg

 この想像図から受ける印象としては、よりトカゲに近く戻った感じもしますが、それがいきなりほぼ今のカメに近いかたちになった先祖の化石は古くから知られており、それがこちら(Proganochelys)です。

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By Ghedoghedo - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=49647107

 これは我々素人がみても間違いなく「カメ」であると言える立派な甲羅をもっています。進化的に見てもこれはカメの仲間に分類されるそうです。

 しかし、このカメと上の「先祖」だというトカゲのような生き物の間はどうなっているか気になります。2008年になんとお腹にだけははっきりとした甲羅をもったカメの先祖の化石が発見され、「トカゲとカメ」の進化の隙間が少し埋まりました。

 それがこちら(Odontochelys)です。

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By Nobu Tamura (http://spinops.blogspot.com) - Own work, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19462661

 このカメが出現したあとに背中にも甲羅を持ったものへと進化しただろうことを想像するのは困難ではありませんが、このお腹だけ甲羅を持ったカメは、もう一つのカメの特徴である歯のない「クチバシ」はもっていないのでした。

 そして昨日Natureで配信された最新の論文では、このお腹にだけ甲羅をもったカメの先祖と、甲羅のまったくないカメの先祖の間を埋めるような、甲羅はもっていないものの口の構造(歯のない「くちばし」)をもったカメの先祖の化石が中国で発見されたということが報じられていました。

 それがこちら(Eorhynchochelys)です。

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https://www.inverse.com/article/48353-turtle-fossil-shell-missing-piece

 「くちばし」の構造はこんなふうだったようです。

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Picture Credit: Institute of Vertebrate Palaeontology and Palaeoanthropology

 NatureのNewsも載っていた、このカメの生態想像図がこちらです。

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Picture Credit: Yu Chen (Institute of Vertebrate Palaeontology and Palaeoanthropology)

 というわけで、カメの進化が一直線で示されたわけではありませんが、今までのカメを系統図で並べるとこういうふうになるのだそうで、これならなんとなく、カメの進化がわかったような気になります。

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 昨日、配信されたNature論文はこちらです。有料ページですので購読していないと要約しか見られないのですが、あちらこちらに科学ニュースとして記事が配信されていますので、中身はだいたいわかると思います。

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 化石はほんとうにどんどん出てきておもしろくなってきますね。








by STOCHINAI | 2018-08-25 22:43 | 生物学 | Comments(0)
 本日、一般誌にいっせいに取り上げられていた記事の一つが「恐竜の仲間から進化した現在のトリはいつどうして歯を失ったか」というものです。始祖鳥のような初期のトリはすべて恐竜と同じように歯の生えたくちばしをもっていたのですが、現在のトリにはほぼ例外なく歯がありません。恐竜の仲間から進化してきたというのなら、トリはいつどのように歯を失ったのかが長年の謎となってきたなのだそうです。

 なぜ、そんなに大騒ぎになっているのでしょうか。例えばこちらがBBCの記事です。

 How birds got their beaks - new fossil evidence (トリはどうやってくちばしを進化させたか -- 新しい化石からわかったこと)

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 他のサイトでも似たり寄ったりの記事が出ています。

 


 内容はすべてが似たりよったりなのは、記事のソースが本日のNatureに載ったこの論文だからです。

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 Natureとしては珍しくこの論文は全文のpdfを読むことができます。こちらにアクセスするととりあえず上のページに飛びますが、すぐに自動的にpdfファイルページに転送されます。オンラインで読むことは可能ですが、普通の方法ではこのpdfファイルをダウンロードすることも印刷することもできないという、いかにもNatureらしい意地悪も仕込まれていますが、読めるだけでもありがたいと思っておきましょう(笑)。

 上の写真でもすぐにわかりますが、8600万年前に北米にいた恐竜からトリへと進化しつつあった動物イクチオルニスのほぼ完璧な頭部の化石が解析されて、この動物は恐竜のような歯の生えたくちばしをもっていただけではなく、上のくちばしの先端部分は現在のトリと同じように歯のないくちばしになっていたことがわかったというものです。

 わかりやすいのがナショジオの記事なので、主にその記事にそって説明していきます。

 上の写真ではちょっとわかりにくいのですがこの動物の最初の化石が発掘されたのはカンサス州で1870年のことでした。それから何度も同じ種と思われる化石が100体くらいも発掘されているのですが、トリの骨は壊れやすいので掘るたびに出てくるのはペチャンコになってなかなか元の姿を想像しにくいものばかりでした。それで今まではこのトリの「想像図」はこんな程度のものに過ぎませんでした。

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 それでもくちばしには歯が生えていて、魚を食べていた水鳥の仲間だということはわかっていたそうです。

 それが比較的最近掘り出されたものはほぼ完璧な頭部が発見されたのと、それを旧来の手法で岩から掘り出すのではなくX線のCTスキャンで解析してみると驚くほど完璧な立体に再現された像が浮かび上がってきて、それが今回のNature論文になったというわけです。

 その3DのCG画像がこちらです。

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 わかりやすいように色分けされています。

 この3D像でもっとも注目すべきは赤く塗られたくちばしの先の構造です。なんとこの部分には歯がなく、現生のトリと同じようにケラチンでできたトリのくちばしと同じ構造になっているのです。他の部分は歯が生えた恐竜と同じくちばしで、頭骨も恐竜と同じような発達した筋肉を支えるための穴だらけの構造をしています。つまり、この恐竜からトリへと進化する途上の動物はトリと恐竜のモザイク的な骨格をもっていることがわかったのです。

 Nature論文に掲載された系統図を引用しておきます。

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 細かいことはひつようないと思いますが、一番下に2つ並んでいるのは現生のトリのくちばし部分で、その上にあるのは北米から出てきた化石の海鳥のくちばしで、その上が今回解析されたイクチオルニスです。一見してわかるように、イクチオルニスで初めて出現した歯のないくちばしがだんだんと発達して上のくちばしを覆いはじめ、さらに進化した状況ではすべてのくちばしから歯がなくなって現在のトリになったというストーリーが明快に示されていると思います。

 新しい化石で小さなものは昔のようにコツコツと岩から掘り出すというようなことをしないでも、はるかに精密な状況を再現できる時代になってきたので、過去に掘り出された化石の骨格も細かいところはこれからどんどん修正されてくる可能性がありそうです。

 今後の研究者の方々のチャレンジに期待しつつ、新しい情報の提供を楽しみに待ちたいと思います。








by STOCHINAI | 2018-05-03 21:18 | 生物学 | Comments(0)
 1996年にドリーという名のクローン・ヒツジが誕生してから、それまで難しいとされていた哺乳類のクローンが続々と誕生しています。すぐにできたのはマウス、ウシ、ブタ、ウサギ、ネコなどです。いずれもヒトの生活に身近な家畜やペットです。意外なことにイヌのクローンはなかなかできませんでしたが、2005年に韓国のソウル大学のファン・ウソク(ヒトのクローン論文捏造で話題になったあのファン・ウソク)に率いられた研究グループがアフガンハウンドで成功させました。

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 これは、その時にプレスリリースされた記念写真ですが、中央にいるのがクローン犬のSnuppy(オス)で左がクローンのもとになる細胞(核)を提供したオスイヌのTai、右にいるのがSnuppyを妊娠した代理母のイヌです。

 その時の研究チームでアドバイザーをしていた CheMyong Jay Ko 教授が今はイリノイ大学で研究室を構えていて、アメリカでイヌのクローン作りの権威として活躍しているそうです。

 というわけで、今でもKo教授のところには「今、交通事故でうちのイヌが死んじゃったんだけど、クローンを作ってくれないか」という依頼が飛び込んでくるそうで、そういう時には彼は学生と一緒に現場に駆けつけ、死んだイヌから生きた細胞を取り出して研究室で培養して、そのイヌのクローンを作るということをしているそうです。

 クローン動物に関してはほんとうに元の動物の正確なコピーなのかどうかの論争もあったのですが、不思議なことにSnuppyがTaiと同じ12歳という年齢でTaiと同じがんによって死んでしまうということがあったり、Snuppyの脂肪幹細胞から新たに3匹のクローンが作られたりということから今やクローンは本当にもとの動物の遺伝子(ゲノム)を正確に受け継いだものだということを疑う人は少ないと思います。こちらがSnuppyの3匹のクローンです。



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 ところがところがなのであります。比較的簡単にペットのクローンを作れる時代になったとはいうものの問題があります。一つは値段です。

 今やこの技術を使ってペットのクローンを作ってくれる業者が韓国を中心にたくさんあり、クローンを作る値段はアメリカのViagenという会社では一匹税抜きで5万ドルだそうです。ネコなら2万5千ドルという価格はどうでしょう。どんなに高くても新しいイヌやネコを買うのにこれほど高くはないですよね。

 でもまあ、お金持ちにとったら5万ドルや10万ドルは出せないお金ではありません。有名な歌手で女優のバーバラ・ストレイサンド Barbara Streisand がインターネットの衝撃のインタビュー記事に答えていました。

 なんと彼女は飼っていたメスのイヌ(コトン・ド・テュレアールという白いフワフワの種類)が去年の5月に死んだので、そのイヌから2匹のクローンを作ってもらっていたのでした。さすが金持ちは違いますね。1000万円払ったということでしょうか(笑)。

 彼女はニューヨーク・タイムズ紙のインタビューに答えて、14年間も一緒に暮らした大好きなイヌが死んでしまったのでなんとかならないかと思った時、彼女の友人がペットのクローンを作ったのを思い出して同じようにクローンを作ってもらったそうです。

 クローンを作るプロセスは生物学の実験そのもので、卵の核を死んだイヌから得た生きた核と交換して代理母の子宮で育てるということなのですが、成功率はそれほど高くありませんので、1000のオーダーの卵と100のオーダーの代理母による妊娠の中から数例の成功が得られるというものです。というわけで5千ドルというのはそれほどの暴利ではないのかもしれませんが、この膨大な卵と代理母のコストは倫理的にどうなのか、という意見は当然出てくると思います。

 とまあ、膨大なイヌの犠牲のもとにクローンを作るわけですが、なんとか成功にこぎつけることができるので商売としては成り立つのですが、最後にとんでもない「落ち」があります。

 莫大なお金を出してでもペットを復活させたいという思いがクローンづくりへと人を導くのでしょうが、そのくらいペットのイヌやネコと深く付き合う人ならばペットの性格が一匹一匹ずいぶん違うことも知っていますし、見た目がどんなに似ていてもその性格が違うとすぐにわかるのものです。

 バーバラ・ストレイサンドのもとに届けられた2匹のクローンも見た目は驚くほどよく似た2匹でした。(下の写真を良く見ると明らかに捏造したものだと後で気がつきましたが、そのままにしておきます。2018年3月28日に追記)

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 でも、バーバラはイヌを受け取ってすぐにわかったそうです。この2匹はもとのイヌとはまったく「性格」が違うということが。しかも、2匹ともがそれぞれまた異なる性格の持ち主だったということもわかりました。「『魂』はクローンにならないのよね」というのがバーバラの感想だったようですが、けだし生物学的真理でもあります(笑)。

 そうなのです。遺伝子は100%同じイヌでも性格は一匹一匹が違うものになるのは、同じ遺伝子を持つヒトの一卵性双生児でも性格などはまったく異なることが多いことは誰でもが知っていることです。高い授業料を払ってクローンを作ってみたお金持ちの先駆者のおかげで我々貧乏人はクローンを作っても死んだペットは復活してこないという「生物学的真理」を再確認することができました。

 理屈ではわかっていることでもやっぱり実際にやってみると説得力のある結果が得られるものですね。

(今日の記事はこちらの記事 The Real Reasons You Shouldn’t Clone Your Dogを中心にして書きました。)








by STOCHINAI | 2018-03-26 21:16 | 生物学 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai