5号館を出て

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カテゴリ:生物学( 370 )

ついにNo1!

隠れた宝石?

 記念の一枚というところでしょうか。

 7位、4位と動いてしまうと気になるもので、ついついまた覗いてしまいましたところ、なんとあっさりと1位になっていました。

 K倉先生が「そのうち1位になるんじゃないの」と言われた時には、「まっさか~」と大笑いしていたのですが、まさかが現実となりました。

 この先、何があっても「世界一」なんぞという称号を頂くことはないでしょうから、大事にとっておくことにします(^^;)。
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 でも、何だか自分達のことのような気がしないのはどうしてでしょう。
by stochinai | 2005-01-24 18:17 | 生物学 | Comments(0)

隠れた宝石?

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 東北大学のN先生からメールをいただいて、「F1000にコメントを書かせて頂いたところ、非常に好評のようです」とのことでした。ゲストでログインしてみたところ、今はなんと上の写真のようにTop4にランクされていました。

 F1000とはFaculty of 1000というウェブサイトのことのようで、新しい論文評価システムだと書いてあります。

 生物学者による生物学者のためのページということで、専門家が論文を推薦し専門家がそれを評価するというシステムで、毎日のランキングも「売り」のようです。

 推薦していただいたN先生は知り合いのよしみで出してくださったのかもしれませんが、それでも上位にランクされるというのは悪い気がするものではありません。

 ただし私も知らなかったように、このシステムはまだまだ日本では無名のようです。さすがにインパクトファクターのように雑誌のランクで比較するのではなく、単独の論文ごとにランクをつけるので、より直接的なものと言えるかもしれません。

 もうひとつ気に入っているのは、ランクされたのが「hidden jewels top 10 (隠れた宝石トップ10)」という、有名雑誌(どこのラボにもある雑誌だそうで、Nature, Cell, Science, PNAS, くらい?)以外の雑誌に載ったもののコーナーです。有名ではない雑誌とっても、我々発生学をやっている人間には超有名な Development でさえ、ここに分類されてしまっているのが微笑ましいですが、ともかくマイナーな雑誌を特に取り上げるというあたりが西欧風の民主主義を感じさせます(^^)。
by stochinai | 2005-01-22 17:25 | 生物学 | Comments(0)

ノロウイルス

 「ノロウイルス」とローマ字入力して最初に出たのが「呪う居留守」と出てしまいました。本当にノロウイルスは呪われた恐怖の疫病なのでしょうか。

 広島県の特別養護老人ホームでの老人集団死亡事件の調査の中で、発症した入所者と職員からノロウイルスが検出されて、どうやら集団死亡の原因がそれらしいということになるや、日本中でノロウイルスが検出され大騒ぎになっています。

 北海道では、去年くらいから冬になるとはやる「お腹に来る風邪」というのが、実はノロウイルスによるものであるということが知れ渡っておりまして、冬にはごく普通に見られる軽い症状の感染症であると言われてきました。

 つまり、それは普通の風邪と同じウイルスによる感染症で、下痢や吐き気を訴えて苦しいものではあるけれども、まさか死に至るものだという感覚はまったくと言って良いほどありませんでした。

 確かに老人や乳幼児は、普通の風邪やインフルエンザでも重篤な症状になることがあり、風邪と言ってもバカにしてはいけないと言われてはいましたが、昨日今日のニュースでは、老人がノロウイルスに感染されるとかなりの確率で死んでしまうと思わせるような報道がなされているように聞こえます。

 報道の皆さん、少し冷静になってください。

 もちろん、全国の高齢者施設でノロウイルスが原因と見られる感染性胃腸炎が蔓延しており、あちこちでお年寄りが亡くなっているのは事実かもしれません。

 しかし、まずはノロウイルス感染が今年になっていきなり増加したのかどうかの検討が必要です。上にも書いたように、昔から「お腹に来る風邪」というものがはやることは何度もあったはずで、その頃のものも単に特定されていなかっただけで、実はノロウイルスだったということはないのでしょうか。

 それと、もう一点。ちょっと不謹慎な発言になることを許していただきたいのですが、かなりご高齢のお年寄りは昔から冬になると単なる「風邪」が原因で亡くなられるケースがままあったと思います。

 そう考えると、そうした高齢の方がたくさん入っておられる高齢者施設で、冬になると亡くなられる方がある数増えるのは、大事件ではないかもしれません。

 特定の施設で7人も相次いで亡くなったということは事件かもしれませんが、その原因はノロウイルスであるというよりも、その施設におけるご老人の扱い方のほうにあったと考える方が自然ではないでしょうか。

 もちろん、今年のノロウイルスが昔のものよりも毒性が高くなっており危険であるという可能性は捨て切れませんが、私にはどうも必要以上のフレームアップに見えて仕方がありません。

 この冬は、昨年のようにSARSやトリインフルエンザで事件が起こらないので、その代わりに恐ろしげな名前を持つノロウイルスをターゲットにしてマスコミが騒ごうとしているように思えるのですが、考えすぎでしょうか。
by stochinai | 2005-01-11 23:09 | 生物学 | Comments(0)

論文ねつ造

 すでに昨日の夕刊に載っていたようですが、理研の研究者による「論文ねつ造事件」が発覚しました。共同通信の記事は「研究者2人がデータ改ざん 理研、実験の写真を加工」となっていますが、今回問題となった問題の論文は6人の共著論文で、2003年に出版されています。

 しかも、同様なデータ改竄によってねつ造された論文は1998年から3本も出されたことになっています。いちおう理研による報道発表が出されていますので、それをもとに考えてみたいと思います。

 まず、今回の事件が内部告発によって発覚したことがわかります。「平成16年8月4日、内部研究者より、研究論文の不正発表疑惑について指摘があった」と書かれています。告発できるくらい近くにいた人というのは、同じ研究グループの中にいたのかもしれません。調査委員会を作って検討した結果 、2003年論文、1999年論文(理研が元記事を削除しているため、論文書誌データを削除しました:2010/5/29)および1998年に発表された他の1篇の研究論文にデータねつ造があったとされています。(最後の1件は、可能性が高いとされており、断定はされていません。)

 理研として恥ずかしいのは、1年前に問題の2003年論文が出たに記者会見をしていることです。「**********」(理化学研究所及び科学技術振興機構の共同発表)という新聞記事が出ているはずですが、今回の発表と同時にその記事を取り下げると発表しています。

 理研としては、今回の問題を科学研究者のモラルの問題だけに矮小化したいのだと思います。もちろん、不正を働いた科学者がもっとも悪いことは事実ですが、高等教育を受けた科学研究者が不正を働くということは、ある意味で「確信犯」ですから、なぜそのような行動に出たのかを考えると、現在の科学研究および科学研究者の置かれた状況が見えてくると思います。そうした状況を作っている、日本の科学政策の問題点が明らかになってきます。

 理研といえば間違いなく日本の科学研究をリードしている先端研究所であり、研究者にとってはふんだんな研究費とたくさんの研究支援者を使って思った通りの研究ができる夢のような場所であり、各地の大学院で博士を取った若者にとっては比較的高額な給料をもらって博士研究員を続け、場合によってはそこで業績をあげることでステップアップを図ることのできるチャンスが得られる場所です。

 しかし、裏返すと研究費に応じたあるいはそれ以上の「社会的にインパクトのある研究」を要求されるシビアな職場でもあります。今回の事件にも出てくる「新聞に載るような研究」が強く求められる場ということもできるでしょう。

 新聞に載るような研究をすることが、新たな研究費獲得や自分の昇格(あるいは昇級?)に直接響いてくるというようなことがあるかどうかははっきりしませんが、なんとなく関係があるのではないか、という暗黙の了解はあるのだと思います。今回「事件」を起こした主な2人の肩書きが、副主任研究員と5年時限で採用されていた独立主幹研究員であるということは、決してたまたまそうだったのだとは思えません。

 副主任研究員は、主任研究員あるいはどこかの大学の教授になりたかったのかも知れません。時限の研究員は、もう1回の5年契約の更改を控えていたのかも知れませんし、どこかの大学か研究所に応募したかったということもあるでしょう。いずれにしても、研究者の評価およびその人の将来が「新聞に載るような研究発表」によって大きく左右される現実があるとするならば、今回のような事件はこれからも起こり続けると確信します。

 こうした問題の原因の一つに、研究における歪んだ「競争」のあり方があるのだと思います。日本では、最近になって急に大学や研究社会周辺に「競争」というシステムが導入されて来ましたが、競争をする前提となる「フェアな精神」というものは幼い子どもの頃から時間をかけて教え込まれなければ身に付かないものでしょう。

 競争自身が間違っていることだとは思いませんが、競争をする人間がフェアに戦うとはどういうことかを理解しておらず、競争させて選抜させる側(行政など)がしっかりとした判断力を持っていない場合には、往々にして現実の日本で起こっているように評価基準が素人であるマスコミに取り上げられるかどうかなどということが大きな力を持ってしまうことが起こるのだと思います。

 そうなると、どんな方法を使ってでも新聞に載るような研究論文および発表をすることが、勝利への手段だと勘違いされるようなことが起こりうると思います。そして、ポスドクの非常勤研究員、昇格を望む常勤の研究員、政府から評価されたい研究所そのもの、などなどが全員同じ土俵の上で踊りを踊り始めることになります。

 たとえ、最初の一歩が嘘だったとしても踊りは始まることがあり得るのです。特に、科学研究などという恐ろしくプライベートな行為の上に成り立っている作業では、ほんのちょっとした悪魔の囁きに一瞬だけ負けただけで、周りの全員が踊りを始めてしまったら、翌朝夢から覚めたとしても動き始めた状況を止めることなど出来なくなってしまうのでしょう。

 今回の事件で「処分」された人たちは、ひょっとするとこれでようやく楽になれるとホッとしているのかもしれません。

 最大の犯人は政治なのだということを、どのくらいの人が理解してくれるか、今の私は大いに懐疑的です。
by stochinai | 2004-12-25 00:00 | 生物学 | Comments(1)

DNA鑑定

 あまり書きたいというわけでもなかったのですが、「書かないのですか」と言われたことと、日本中のニュースがあまりにも同一色に染まっているように見えることがちょっと気持ち悪いので、コメントしておきます。

 もちろん、北朝鮮に拉致されて自殺したとされる横田めぐみさんの、「遺骨」の鑑定結果のことです。

 昨日のニュースでは、帝京大の法医学研究室が、両親から提供された横田めぐみさんのへその緒から得られたDNAと照合して、遺骨がめぐみさんのものではないと断定したと報道されています。

 しかし、同様の鑑定を試みた警察庁科学警察研究所では、結果を出せなかったという報道もありました。

 「両機関とも『鑑定能力は国内屈指』(警察庁幹部)だが帝京大はミトコンドリア、警察庁は核のDNAを鑑定したといい、このため差が出たとみられる」と書いたものもあります。

 私も帝京大の出したの判定結果は、おそらく正しいだろうと思っていて、北朝鮮が嘘をついているのは間違いないと思うのですが、科学的判定をする場合にしなければならない最低のルールは、今回も守るべきだと思いました。

 そのルールとは、二つの研究機関(帝京大と科学警察研究所)が異なる結果(否定的な結果と、結果を出せないという結果)を出した場合には、さらに第3者に判断を依頼するということです。

 また、帝京大が成功したのなら、その方法を使って科学警察研究所および(あるいは)他の機関が追試するということです。それで、同じ結果が出ることを確認できれば、信憑性は高まります。

 このようなニュースによって私たちに知らされるのは鑑定結果だけであり、今回のように場合によっては国際紛争の原因にもなる可能性もある重要な事案の場合には、利害関係のある日本でだけ鑑定をするのはいろいろと疑念を提出された場合に弱みがあると思います。

 もちろん、最初の鑑定を日本でやることに問題はないのですが、そこである結果が出たら第3国(たとえば、ドイツとかフランス、あるいは中国やアメリカに加わってもらっても良いでしょう)の第3者機関に同じ方法および別の方法で再鑑定を依頼すると良いと思います。

 自然科学というものは、誰がやっても同じ結果を出せるものですから、無駄な論争をする必要はありません。

 特に今回のようなケースでは、日本中が一丸となって熱くなっているように見え、それはそれで無理はないと思いますが、北朝鮮のような国と交渉する場合には、向こうの友好国(中国やロシア?)にも科学的真理という点において、日本と同じ立場に立ってもらうことができると、ずいぶん交渉がしやすくなるのではないでしょうか。

 今回の鑑定結果で、北朝鮮が嘘をついていることがはっきりしたので経済制裁を加えるという意見も理解できますが、横田めぐみさんをはじめ拉致されている人たちを救い出し、北朝鮮を開かれた国にしていくことを目指すのならば、直線的に攻めるだけではうまくいかないでしょうから、外堀を埋めることも考えた方が良いと思います。今回のDNA鑑定のような「科学」を使うことで、中国やロシアが北朝鮮を説得する側についてくれるならば、交渉はしやすくなるのではないかと思います。

 そういうのを「大人の外交」というのではないでしょうか。
by stochinai | 2004-12-09 00:00 | 生物学 | Comments(0)
 昨日、一日中降り続いた雪もようやく止みました。除雪車は昨夜、夜半過ぎに来ました。除雪の方はご苦労様ですが、しっかりと湿気を含んだ重い雪を玄関先にどっさりと積んでいかれてしまうと、感謝の気持ちも鈍りがちになります。

 今朝もまた、早起きして1時間くらいかけて除雪。北海道ではこんな重たい雪は珍しいのですが、除雪しながら新潟の被災地の皆さんのことが頭に浮かんで、仕方がありませんでした。地震で揺すられた家の屋根にこんな重い雪がどっさりと積もったらと、想像するだけで恐ろしさを感じます。せめて、補強工事だけでも国の責任で何とかしておかないと、(また)取り返しのつかないことになった後から大騒ぎすることになります。

 予想される事故は、起こる前に阻止しましょう。よろしくお願いします。そう言えば、防衛予算の削減と関連して財務省の主計官である片山さんという方が「災害派遣は警察と消防に任せればいい」とおっしゃっているらしいという
ニュース
がありました。雪祭りから撤退するくらいなら良いでしょうが、自衛隊が災害派遣から撤退したら、たちまち国民の支持率が下がるんじゃないでしょうか。

 まあ、小泉政権はどんどん強気の政策を出して、国民を試しているんでしょう。「北海道、試される大地」というキャッチフレーズがありますが、「日本、試される国民」というところかもしれません。さて、試されている我々はどうしましょう。

 話変わって、新生児に脳死判定が行われたというニュースが飛び込んできました。

 例によって、これも古い話が掘り起こされてきたものなのですが、昨年の9月に生後18日の男児新生児が「脳死状態」と診断され、病院側と両親が話し合ったうえ人工呼吸器を外していたという「事件」です。

 日本での脳死判定は、臓器移植を前提として行われることになっています。また、臓器移植のドナーになれるのは15歳以上のドナーカード所持者に限られるはずですので、それに該当しないケースで、脳死判定をしてさらに人工呼吸器を外すという行為は、法律をきちんと解釈すると「殺人罪」を構成する可能性があるのではないかと思います。

 公表されたケースでは、男児は仮死状態で生まれ、家族や医師の数回にわたる話し合いの結果、延命措置を取りやめたということのようなので、倫理的な問題があるとは思いませんが、法律は倫理とは別のところにある約束事ですから、法律の番人である検察庁と裁判所は、やはり起訴あるいは書類送検をした上で、今回行われたことの法的判断を示しておくべきだと思います。

 その上で、再度脳死と臓器移植について、広く議論をし直すのが良いのではないでしょうか。

 私はそうはおもいませんが、脳死の新生児は場合によっては「貴重な臓器資源」であるという見方もできます。同じような新生児で移植を望んでいる患者さんもいらっしゃいます。どうしたらよいのか、医師だけではなく普通の市民の意見も吸い上げて議論すべきだと思います。

 我々が行っているように、教育の現場で意見を闘わせるのも良いことだと思います。簡単に結論がでないことこそ、まさに教育的な題材だと思います。難しすぎるなどといわずに、どんどんと若く柔軟な頭脳にチャレンジさせてやることで、この国の未来はダイナミックに動き出すような気がします。
by stochinai | 2004-12-06 00:00 | 生物学 | Comments(0)
 今朝の朝日新聞に、スギヒラタケの毒性がマウスのを使った実験で確かめられたと出ていました。朝日コムにもスギヒラタケに毒性 静岡大教授らマウスで確認 とあります。

 google newsでも、現時点で7件の同様のニュースが出ています。産経新聞、毎日新聞、朝日新聞、熊本日々新聞、静岡新聞、TBSなどです。

 ところが、googleに載っていない読売オンラインでは、「スギヒラタケ、毒性ない動物実験結果も…研究班初会合」と興味深い記事になっています。

 他の新聞社で無視されたのは「脳症患者の発生地域で採れたキノコは毒性があったが、患者報告がない地域で採れたキノコは毒性が認められないという結果」の報告についてです。

 読売の記事によると「高崎健康福祉大の江口文陽教授(健康栄養学科)は、群馬県や長野県などから採取したスギヒラタケからエキスを抽出し、健康なマウスに投与したが、変化はなかった。また、腎機能を低下させたラットにエキスを投与したり、キノコそのものを食べさせたが、発症しなかった。群馬、長野両県は、これまで患者の発生が報告されていない」となっています。

 読売のサイトを良く見てみると、この記事は午後9時21分のもので、1時50分の記事では他社とおなじ内容のものも発信されていました。スギヒラタケに毒性、静岡大教授らがマウス実験で確認がそれです。

 ということは、今後他社の記事もこれを追いかけることになるのでしょうか。もしそうなら良いのですが、これが例によってセンセーションだけを追い求めるジャーナリズムの悪い側面を示しているもので、あとは野となれとほったらかされるのだとしたら、とても残念なことだと思います。

 だいたい、このネット時代に横並びに同じ記事を出すこと自体が意味を失いつつあるというのに、googleの画面でずらずらと同じ記事が並んでいるだけではなく、それが読売に抜かれているとしたらこんなに間抜けな話はありません。

 だいたいが、毒性を「証明した」とされる実験そのものがかなり初歩的なレベルにとどまっているものであり、それに対する批判的な記事が書かれても不思議はないはずなのに、記者会見の発表をそのまま記事にしてしまったような雁首を並べた今回の記事に関しては、読売以外の新聞社は総懺悔してしかるべきだと思います。

 心配なのは、各新聞社にサイエンス研究の訓練を受けた専門の記者がいないのではないかと思われることです。

 新聞が生き残りたいのなら、科学部の記者としてしっかりとした科学の教育を受けた大学院出の博士や修士をどんどん採用してください。今や、たくさんの優秀な人材が巷にあふれているのですから。

(今わかったのですが、前回のスギヒラタケの記事は10月29日で、ちょうど一ヶ月ぶりでした。)
by stochinai | 2004-11-29 17:18 | 生物学 | Comments(0)

豚が原因でE型肝炎

 食を巡る事件です。ウシのBSE、ニワトリのインフルエンザに続いて、ついにブタでも死者が出る「事件」が発生してしまいました。日曜の午後のニュースでは、各社ともかなり大きく扱っています。

 朝日コムでも豚内臓でE型肝炎に感染か 北海道で6人感染、1人死亡 と出ています。

 食物を介した感染症は、原因が細菌(バクテリア)の場合には、いわゆる食中毒と言われ、食べた食物にすでに大量の細菌が繁殖していて、その毒素によって病状が出るものが多く、症状がでるのも食後それほど時間がたたないうちに出ます。

 それに対して、細菌のあるものやウイルスの場合には、食べた食物の中に含まれる菌やウイルスが少量であったとしても、からだの中で増殖してから症状が出ますから、潜伏期が長く、数日から場合にはよっては数週間というものもあり、食べたものとの因果関係がはっきりしないことも多いのです。

 今回の「事件」も、北見の焼肉店で豚の内臓を食べたのが8月だったことが原因ではないかということが、ようやく今になってわかってきたのでしょう。その時、一緒に会食した14人のうち、60代の男性が10月に劇症肝炎で死亡したため、さかのぼって調べたところ6人がE型肝炎ウイルス(HEV)に感染していたことがわかったので、北見の焼肉店での会食が原因ではないかと疑われているということです。

 E型肝炎は劇症になること自体が珍しく、発症しても軽症のことが多いため、それほど問題になったことはないようなのですが、今回は死亡者が出たことと、感染者のうちのひとりが献血をし、その血液の輸血を受けた患者が(2名?)E型感染ウイルスに感染したことがわかったことも、事態が深刻に受け止められている原因のひとつだと思われます。

 今回の原因と言われている豚のレバーなどの内臓は、北海道産のものなのかどうなのかは明らかにされていませんが、食品として流通しているものなので、いずれ販売業者などが特定され発表されると、また大騒ぎになる可能性があります。

 牛肉などはBSE騒動のおかげで、牛の個体ごとに番号をつけて、最終的に小売りされるまでの間、どこから来た牛の肉や内臓なのかが追跡できるシステムができています。問題が起こった動物や農作物でだけ、後追い的にそのような制度をつくるのではなく、今やあらゆる商品を追跡することが技術的(および経済的に)に可能になってきているのですから、この際そのようにしてしまってはどうでしょう。

 すべてのものに番号をつけたとしても、おそらく商品1点に対して数円というような負担ですむような気がしますので、反対する理由はあまり見あたりません。もちろん商品一つに1円の負担増でも、1億点の品があれば1億円かかることにはなります。しかし、売れ行きが落ちてしまうこととの差し引きで考えると利益につながる投資になると思います。それ以外に反対の理由があるとすれば、問題が起こった時にすぐに原因箇所が特定されてしまうことくらいでしょうか。

 昔から豚肉には、ヒトと共通の感染症の原因となるマイコプラズムがあるので、良く火を通すようにと言われて育ってきた我々としては、生焼けのレバーとかましてやレバー刺しなどは言語道断の食べ物だと思っていたのですが、SPF豚などが流通するようになってからは、却って油断するようになってきていたのかもしれません。責任を流通側に押しつけるだけでは、自分の身を守ることはできないということでもありましょう。

 食に関しては、これからも新しい危険が次々と出てきそうで、イヤな予感がする事件でした。
by stochinai | 2004-11-28 17:19 | 生物学 | Comments(0)

お客さん

 今日は、カリフォルニアのアーバイン(Irvine)からお客さんが来たので、歓迎会をしています。

 お客さんは、日本人なのですが東北大を出て、広島でポスドク(博士を持っている非常勤研究員)をした後、カリフォルニアでポスドクをやっている人です。

 東北大での大学院生時代に、カエルの再生研究をやっていたので知り合いになった人なのですが、アメリカで研究者として働くには時々国外に出て(日本に戻って)、ビザの更新をしなければならないということで、東京のアメリカ大使館に出頭するついでに北海道にも寄ってくれたというわけです。

 セミナーをお願いして、主に今やっている再生研究の話をしてもらいました。ついでに、つい最近カリフォルニアで住民投票の結果、賛成多数で成立した「再生研究推進」の話もしてくれました。シュワルツネガー州知事の下、先頃亡くなったスーパーマン・クリストファー・リーブや、パーキンソン病で苦しむマイケル・J・フォックスの話などが出てくると、「さすがアメリカ」という気がします。 

 アメリカには日本から行っているポスドクの人がたくさんいるのですが、そういう人たちが集まると、必ず最後はどうやって日本に帰ったら良いかの話になるそうです。

 日本政府の大学院生・ポスドク大量生産政策の結果、優秀なポスドクの人がたくさん海外に出ているのですが、向こうでたくさんの業績を上げたとしても、なかなか日本で定職に就くことのできない人が多いという現状があります。

 非常に優秀な彼ら・彼女らをこのまま、外国流民にしてしまっては国家的大損害です。せっかく育った彼らをなんとかして日本に呼び戻して、きちんとしたポジションを与えることは、日本の将来にとっても非常に重要なことであると思いますので、政府にはそこのところをしっかりと把握した上で、長い目で見たしっかりとした政策の立案をお願いしたいと思います。

 内閣や国会議員の継続年数以内の政策しか出てこないような、今の政策立案システムでは国の将来を担うであろう、若手研究者の未来を切り開くことはとても難しいと思います。

 そこで、政府だけにまかせておかず、全国の大学関係者においても、自分たちが育てた、最良の頭脳である彼らを日本に呼び戻し、次世代の研究および研究者養成に携わるべきポジションを与えるよう声を上げて頂きたいと思います。

 微力ながら、私も頑張りたいと思います。

 逆に、そのような境遇に置かれたポスドクの皆さんにも、声を挙げて頂きたいと思います。

 黙っていても、国は動いてくれないものです。一緒に頑張りましょう。
by stochinai | 2004-11-17 17:43 | 生物学 | Comments(0)

自分で起こす突然変異

 気温はどんどん下がってきています。おそらく、真夜中の外気温は1℃か2℃だと思います。時折、空から降ってきているものは、雨ではなく雪です。風もかなり強くなってきました。

 今日の講義の後は、明日のゼミで紹介する論文を読んでいました。

 9月頃に出た論文なのですが、ウイルスのおもしろい生き方についての研究です。

 百日咳のバクテリア(細菌)に感染して、内部で増殖し百日咳を破壊してしまう、正義の味方(?)ウイルスの話です。

 百日咳は免疫ができやすく、乳幼児期に一度かかるか、そうでなくてもワクチンが非常に効果的に効くので、それほど問題になっていることもないのですが、ヒトに悪さをする細菌を殺してくれるウイルスは、納税者にも説明しやすい研究対象かもしれません。研究が進んでいるようです。

 そのウイルスが、百日咳菌に感染する時には、細菌の表面にある毒素に結合して侵入します。一方、百日咳菌はときどき毒素を作らないタイプに変異してしまうので、その時には毒素を介したウイルスの感染も起こらなくなると思われていました。

 ところが敵もさるもので、毒素を作らなくなった百日咳菌に感染できるようにウイルスも変異することがわかりました。

 それだけなら、自然界に良くある進化競争のひとつとして片づけられるのですが、そのウイルスの変異の仕方がなんと驚くことに、自分で自分の遺伝子を変異させるカセット遺伝子を用意していて、時に応じてそのカセットから遺伝子を呼び出して、それまで使っていた遺伝子の部品を交換して変化させているということがわかりました。

 毒のない百日咳菌に感染できるようになったウイルスは毒のある菌に感染する力はなくなってしまうのですが、百日咳菌が毒性を回復すると、また例のカセット遺伝子を呼び出して自分の遺伝子を組み換えて、毒性菌に感染できるように復帰もできるというのです。

 現代の進化論は、突然変異はランダムにしか起こらず、ランダムな突然変異の中から適応的な遺伝子を持った個体が自然の力で選択させることで進化が起こると説明しています。

 ところが、ウイルスの研究から、特定の場所に特定の突然変異を引き起こすことがあり得ることが示されるようになってきました。つまり、生物に都合の良い突然変異を起こしうるということです。

 しかも、今回ウイルスで発見された突然変異を引き起こすカセット遺伝子が、ウイルスのみならず、もう少し高等なシアノバクテリアという光合成細菌にあることもわかってきました。

 長い間不思議に思われてきた、合目的な進化というものを期待させてくれる発見なのかも知れません。

 生物というものは、本当に底知れない存在です。
by stochinai | 2004-11-15 17:45 | 生物学 | Comments(3)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai