5号館を出て

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カテゴリ:教育( 184 )

 夕方になって天候が回復してきました。太陽の左側にある連山が光のナイフに切り取られたように、とても美しく見えました。(クリックして拡大して見てください。)
動物たちにまなぶ 「アニマ・ムービー・プロジェクト」_c0025115_2019215.jpg
 今朝は昨夜から続く雨だったのですが、1講目(8時45分開始)から新入1年生を中心とした「北海道大学の『今』を知る」という体験型の授業を履修している学生たちが研究室訪問に来るということで、いつもより早めに大学へやってきました。

 この授業の昨年の成果は、「アニマ・ムービー・プロジェクト 動物たちに学ぶ」という形で、YouTube上に発表されています。この授業のすごいところは学部の1年生がムービーを作るということだけではなく、本格的撮影や録音機材などは一切使わず「デジカメや家庭用のムービー・カメラ,WindowsやMacにおまけで付いているソフトだけで制作されて」いるところでもあります。作品リストをご覧になればわかっていただけるように、2つのバージョンが用意されているものがいくつかありますが、それらは1本が学生が作り上げたもの、もう1本は先生が素材を編集し直したものです。
動物名リスト

ザリガニ
謎のザリガニ ミステリークレイフィッシュを追え!
北大ふしぎ発見 ~謎のザリガニを捕獲せよ~

オマールエビ
オマールエビやザリガニの脳の研究
ザリガニとオマールエビの脳の研究

ヘビ&ミミズ
生き物に学べ! 進化する生物型ロボット
必見! これが生物ロボットだ!

ソングバード(鳴禽類)
鳥のさえずりから脳のメカニズムに迫る
さえずりから脳を知る

マウス
睡眠の謎を探る

ウサギ
狂犬病の治療法開発に挑む

テン(貂)
小さな哺乳類から進化を探求する

ウシ
北大農場で見た畜産研究最前線
北大の牛
 同じ素材を使ったものでは明らかに先生バージョンがはるかに優れているのはあたりまえなのですが、学生の作ったものもそれなりに「楽しく」仕上がっていると思います。

 というわけで、昨年の反省を含めてうちの研究室にリベンジ取材ということかもしれませんが、今年は映像よりも学生たちが「記者」になって研究内容に食らいついてきたところが印象に残りました。

 さすがに今年もミステリークレイフィッシュというわけにはいきませんが、そんなにいろいろな動物がいるわけではありませんので、多少の苦しさはあったと思います。いずれにしても、取材は無事終了。彼らがどんなふうにそれを料理してくれるか、楽しみでもあり、ちょっと怖く(笑)もあります。

 上の写真とほぼ同じ時に撮影したものですが、太陽に露出を合わせるとずいぶんと違った風景になるものです。
動物たちにまなぶ 「アニマ・ムービー・プロジェクト」_c0025115_20374081.jpg
 真っ黒な雲から下向きに日が出てきた時には、天と地がさかさまになったような奇妙な感覚を覚えました。

 そういえば、こんな風に写った宇宙から見た日の出という写真があったような気もします。
by stochinai | 2010-05-20 20:43 | 教育 | Comments(0)
 さきほど気がついて、twitterでもつぶやいたのですが、文科省がネット掲示板を立ち上げました。名前はあまりにも研究者オリエンテッドで、私には古色蒼然に思えるのですが、まあ名前より中身に期待したいと思います。
文科省が立ち上げたネット掲示板_c0025115_23494256.jpg
 文科省政策創造エンジン 熟議カケアイ

 「熟議」という言葉も一般的ではありませんし、若ぶったつもりなのか「掛け合い」を「カケアイ」とカタカナにしたという精一杯の工夫はほとんど成功していないと思います。要するに「キャッチー」ではないと感じます。おまけに、その言葉を聞いても何をするところか思いつかないという意味でも失敗ではないでしょうか。

 説明文を読んで、初めて内容が想像できます。
熟議(じゅくぎ)カケアイ宣言

教育者、保護者、市民、識者、教員をめざす若者たちの声やつぶやきが集まり、自由に議論される場をつくる。議論が議論を呼び、「熟議」されていき、政策形成が確かになっていく。そして、その政策が次の入り口になっていく。

この市民主役のプロセスこそ、今、求められており、実行しなければいけないものだと考えました。

熟議カケアイ。参加してください。
子どもたちの教育が変われば、日本の未来が変わります。
 要するにファシリテーター(モデレーター、議長)のいる掲示板という感じです。(そうなら、そうと説明すればいいのに・・・・)

 だいたい「熟議」などという、一般生活では決して出てこない「学術用語」を使おうとするから、その説明のためにこれだけたくさんの説明や「まんが」を用意しなければならないのです。発案者はその愚かさに気がついているでしょうか。またそれが、参加者を拒絶している雰囲気を醸し出していることもわかっていただけるでしょうか。

 熟議とは
「熟議」とは、多くの当事者による「熟慮」と「討議」を重ねながら政策を形成していくことです。具体的には、政策を形成する際の、下記のようなプロセスのことを言います。
 ごちゃごちゃ書いてありますが、要するに政策決定に「国民の皆さまの声を反省させたいので、是非ご意見をお寄せください」ということです。

 掲示板ですから、当然のごとくに荒らしや炎上などの発生も想定されますので、そのために参加者は登録制をとっています。登録の時に書いた情報が嘘か本当かを確かめることまではしないようですが、個人情報を登録しなければ参加させてくれません。まあ、このくらいの「敷居」はあっても良いだろうとは思いますが、これではあくまでもその敷居を越えてきた人の声しか聞けません。

 参加者として想定しているのは、「教育者、保護者、市民、識者、教員をめざす若者たち」のようですが、私としては、教育を受けている子供たちにも是非とも参加してほしいと思っています。せっかくの機会なのですから、こういうところで子供たちのICT教育もやってしまうという「心の広さ」を文科省には期待したいところです。

 それはさておき、事務局からのお知らせにはなかなか良いことが書いてあります。
「熟議カケアイ」は、教育に関わるあらゆる当事者(教職員、教育政策関係者、保護者、学校支援ボランティア等) が会員登録をして参加できるWebサイトです。
当事者が学びあいながら、責任を持った議論を積み重ねていくことで、よりよい政策を作っていくためのWebサイトを政府が開設することは、政策形成の「見える化」として政府が取り組む国内初の試みです。
まずは「教員の資質向上」などについて4月17日(土)から5月中までを目処に「熟議」を実施し、中央教育審議会での審議と両輪で、政策形成へとつなげていきます。
 こうした試みはお手盛りで教育再生会議を作って次々と思いつき教育政策を打ち出した自民党(自公)政権ではあり得なかったことでしょうから、その点では政権交代してようやくできた「公開討論」の場の誕生を素直に喜びたいところです。

 自公政権がやった類似の活動が、「タウン・ミーティング」でしたが、あそこでは数々のヤラセや誘導があったことが発覚しました。もちろん、こうした掲示板においても様々なしかけを駆使して、ヤラセや誘導も可能ではありますが、一人でもたくさんの人が参加することによって、公平な議論が盛り上がるだけではなく監視をすることにもなります。

 というわけで、見た目の「ダサさ」でちょっと参加をためらってしまう気持ちを押し殺して、早速メンバー登録をさせてもらいました。さすがに、お金をかけているからか、まだまだ参加する人が少なすぎるせいなのか、あっというまに登録は完了しました。

 個人情報を入力させるものの、とりあえず調査をしたりするということはなさそうですので、くどいようですが私としては文科省が想定している対象以外の、高校生や中学生などの参加も期待したいところです。

 あとは、この先投稿が爆発的に増えてきたときに、議長さんが適切に議論を切り回していけるかどうかが心配ではありますが、とりあえずそのくらいに議論が沸騰してきたら、ひとまず成功と言えるのではないでしょうか。

 議論ができるというところで、「パブコメよりはマシ」かなと感じています。
by stochinai | 2010-04-18 23:57 | 教育 | Comments(4)
 前から気になっていた本田由紀の本をようやく手に入れて読みました。
もっとも必要としている人が読まないだろう「教育の職業的意義」_c0025115_20111590.jpg
教育の職業的意義―若者、学校、社会をつなぐ (ちくま新書)


 書かれていることを一言で言い表すことができるほどメッセージはシンプルです。
 教育には若者に職業に対する<適応>と<抵抗>の力を与えることが求められている。
 書かれていることは、きわめて正当で説得力のあることばかりなのですが、はっきり言って読みにくいと感じました。

 私は大学で教職に就いておりますので、読みにくい書籍を読むことは自分の義務みたいなものだと覚悟していますが、この本には私のような人間が読むことよりも若い高校生や大学生あるいは大学院生、さらには中学生などにも読んでもらいたい重要なことがたくさん書かれています。

 しかし残念なことに、この本に書かれている重要な情報が、それをほんとうに必要としている人たちに届かないだろうという悲しさも感じてしまいました。

 本田さんがこのブログを読むことはないだろうと思いますが、もしも彼女に近い方がお読みいただけたのでしたら、是非とも本人にお伝えください。

 高校生くらいでも平易に読めるバージョンのものを是非とも出していただきたいと思います。

 今の社会がどう変わらなければならないかという提案が書かれていることはわかりますが、今職業を選択しなければならない若者達あるいは職業が選択できなくて苦悩している若者達にとっては社会が変わるまで待っている余裕はありません。彼らにとっては、現状を理解し、その上で自分たちがどのように対処していかなければならないのかということを知ることは死活問題なのです。

 その死活問題について、社会がまだ動き出してはいなさそうなこと、そうである以上、自分が動き出さなければならないこと、そのメッセージを彼らに一刻も早く届けなければならないと思います。

 とても重要なことが指摘されている本だと思いますが、もっとも大きな影響を受ける人たちに届く形でメッセージを届けることも求められているのだと思います。

 私は本田さんのファンですが、そこのところを考えていただけるとうれしいと、逆に言うならちょっと残念な気持ちになった本でした。
by stochinai | 2010-03-30 20:29 | 教育 | Comments(0)

春よ来い

 先日、ひょんなことからひょんなところへ行き、見かけた掲示です。ここはどこでしょう。
春よ来い_c0025115_1941756.jpg
 二つ目は席取りするなという警告ですが、一つ目が面白いと思いました。

 「授業中の教室における自習は禁止します」というのは、いわゆる「内職」の禁止です。内職はダメというのは高校を出て以来、見聞きしたことがなかったのでなんだか懐かしい気持ちになりました。

 もうお分かりの方もいると思いますが、さらに懐かしい檄文がありました。
春よ来い_c0025115_1971298.jpg
 大学全入時代を迎え、いま時はもうこういうことを言う時代ではなくなっているのかと思いましたが、まだこういう標語が生きていたのですね。

 私たちの青春時代には、「四当五落」という言葉もあったのですが、意味がわかりますか?睡眠時間を5時間とったら目指す大学には入れない、4時間で我慢せよという意味です。そうなると、これが出てこないといけません。動画はナシですが、高石ともやの「受験生ブルース」の歌詞を味わってみてください。このまんまのことを要求されていたのが、我々の時代の受験生でした。

 高石友也 / 受験生ブルース

 昨日は、国公立の前期二次試験がありました。なんだかんだ言われても受験生にとっては、やはり苦しい時期だと思います。なんとかサクラサク春を迎えて欲しいものですが、受験生ブルースの最後にあるように「予備校のブルース」になってしまった人は、こういうところにお世話になると良いのかもしれません。
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 私は経験がないのですが、予備校という経験も人生には大きな糧になるはずです。

 Good luck!
by stochinai | 2010-02-26 19:20 | 教育 | Comments(2)

成績評価終了

 ようやく1年生の生物学(後期「生物多様性」)の成績を付け終わりました。私の講義の成績は全回出席を前提としてつけることになっており、理由の如何に関わらず欠席した場合には代替のレポートを要求しております。

 そして、毎回の講義のあとでミニテストをやります。テストはその日に話したことの内容を前提に次週の話につなげるものが多く、知識を問うものではないので、最初のうち学生はかなりとまどうようです。そもそもテストで知識以外のことを問われるということ自体、あまり経験していない人が多いようです。

 それでも、毎回のテストを評価して成績に反映させるために評点をつけております。それと、欠席レポートおよび成績に反映してもらいたい人が自由に出しても良いレポートの締切が昨日でしたので、昨日まではパラパラとレポートが届いていました。

 それらの成績と、最後の授業時間を全部使ってやった3題の試験問題の採点をすべてエクセルに入力して、ようやく先ほど集計が終わったというわけです。こちらが最後の試験風景です。
成績評価終了_c0025115_21233937.jpg
 少なくともこの試験に取り組む姿勢を見る限り、みんな一所懸命なのでなるべくたくさんの人に良い成績をあげたいとは思うのですが、残念ながら昔と違って、全員に優をあげることなどはできなくなっております。もちろん、全員を不可にすることもできません。

 このクラスは62人ですが、そのようにある程度の人数が含まれるクラスの場合には秀・優・良・可の割合が ほぼ15% 30% 40% 15% になるように採点することが生物学全体で決められており、それに近づくように相対評価しなければならないのです。

 それが良いことはどうかはさておき、50人を越えるようなクラスの場合には不思議なことに成績が特に優秀な秀の学生と、あまりにもひどい可(あるいは問題外の不可)の学生の比率が同じくらいいて、その間にまあまあできる優とふつうくらいの良の学生がたくさんいるという分布を示すことが多いことは、経験的に納得できる数値なのです。

 しかし、せっかく毎回のテストのデータをエクセルに入力したので、ちょっとだけ解析してみました。そうしてみると確かにすごく優秀な秀の学生と、明らかにやる気が見られない可の学生は最初から一貫して優秀かやる気がないかの両極端に別れたまま、あまり動かないという傾向がありました。

 ところが、その間にいる学生を個々に調べてみると、非常に面白い成績の変化を示す学生がいることがわかりました。ひとつは、最初はそれほどではない順位にいた学生が試験のたびにどんどん良い答案を書けるようになって、優の上位あるいは秀の領域にまで飛び込むケースと、それとはまったく逆に最初のうちはそこそこの答案を書いていたにもかかわらず、どんどんと答案が痩せていき、最後には良の下位あるいは可の領域にまで落ち込んでしまうケースです。そのどちらも、(不謹慎な言い方ですが)面白いほど直線的に変化する人がいました。

 これは、どういうことなのでしょうか。ぐんぐんと伸びて来た学生は私の講義に「合った」ということで生物学のおもしろさに目覚めたのかもしれません。それjは、大変に喜ばしいことなのですが、どんどんと低迷していった学生は私の講義が気に入らず失望していったということだとしたら、大いに反省しなければならないところです。

 もちろん、回ごとに上がったり下がったりと特別の傾向を示さない学生が大多数なのですが、講義期間内に大きな低迷を示す学生に対しては、普通の講義だけではない様々なサポートが必要なのかもしれません。ところが、その傾向は講義の後半になってようやくわかるので、今になって判明しても時すでに遅しです。

 このあたりにキメの細かい指導をしようとすると、少人数教育でなければ無理だという気もしますが、せっかく少子化になってきたので、教員を増やしてもいいんじゃないかというのが、いつもの私の意見です。

 学生にとってはこの後の学部学科移行にこれらの成績がものをいうので、いい加減にはできません。そう思うだけでも成績付けは疲れる作業です。

 さてと、本日はこれまでとしましょう。
by stochinai | 2010-02-16 21:52 | 教育 | Comments(0)
 気象庁のレーダー像です。
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 一日中強い北西の風が吹き、時折上空に雲がかかると吹雪になるという北海道らしい厳しい天気です。積雪量は少ないのですが、気温がとても低く、最低気温は-9.1℃、最高気温も-5.1℃というこの冬一番の寒さに襲われた中、センター試験が始まりました。

 北国ですから、よほどの大雪にならない限り、交通機関が混乱することはありませんので、北海道ではどこも予定通りにセンター試験が開始されたようです。

 私は受験生の入室の混乱に巻き込まれたくないこともあり、昼休みが終わった後でゆっくりと登校しました。もちろん理学部5号館も試験会場になっています。
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 昨年は試験監督でへとへとになったこともあり、試験会場の教室の前を通る時には、中で監督をしている先生達に心のなかで「敬礼」をして通り過ぎました。(「お疲れさまでございます」)

 廊下や建物の内外で監督されているのは事務職員の方々が多いのですが、今日の寒さではそちらもかなり厳しい日になりました。

 もちろん、一番大変なのは受験生であることはわかるのですが、国を挙げてこれほどまでのエネルギーと経費をかけてやるほどの成果が得られているのだろうかと、毎年毎年同じ思いがこみ上げてきます。

 何度も言っているような気がしますが、高校を卒業した人は誰でも好きな大学に仮入学できるようにし、入ってから1年あるいは2年をかけて、どんどん試験などでふるい落とす制度にすれば、こんな全国一斉の入試などというおおげさなことをしなくても選抜はできますし、大学に入ると急に勉強しなくなるなどという弊害もなくなると思います。

 もちろん、その制度で大学から振り落とされた人は、別の大学に簡単に移ることができる受け皿も用意して置く必要があります。

 このシステムだと、最初のうちは多くの人が無理をして東大を志望したとしても、結局落とされてしまうことがわかれば、だんだんと適切なレベルへと終息することが期待されます。

 もちろん、このシステムを実現するためには、大学制度そのものの大改革が前提になるとともに、大学の授業と成績評価のシステムを根本的に改めなければなりません。そのためには大学教員もかなり増員しなければならなくなりますが、たくさんいるポスドクを吸収することにもなるし、大学教育も充実するのですから十分に割にあう改革だと、私は信じています。

 というようなことを受験生に言っても仕方がないので、とりあえず「がんばれ、受験生」と今年も言っておきます。
by stochinai | 2010-01-16 18:10 | 教育 | Comments(0)

リテラシーが多すぎる

 そらのさんは今朝の初詣ダダ漏れから今年度の活動を開始しました。先程からはMIAU新春特別対談 「どーなる!?2010年のネット界」がダダ漏れされています。これは、ニコニコ動画との合同同時放送ということのようですが、前半の時には楽屋カメラもUstreamされていて、(画像はかなり汚かったのですが)そらのさんとニコニコ動画のカメラマンを撮すという、革命的なダダ漏れも行われました。

 これは、先日行った我々の忘年会ダダ漏れと基本的に異なるものではなく、レベルは違いますが酒を飲みながらの宴会での放談を流しっぱなしにしたものと言っても良いものですが、お正月らしい乱れ方でそれなりにおもしろいものでした。この対談の中でも、リテラシーという言葉がなんどか出てきました。

 昨年末に参加した「科学技術と人間」研究総括領域全体会議合宿でも、リテラシーという言葉が何度も何度も出てきて、正直言って「リテラシーはもうたくさん」という感想を持っている今日この頃の私です。

 とは言え、私もついつい便利なので日常会話において頭に特定の単語をつけてこの「リテラシー」という言葉を良く使ってしまいます。どんな言葉にでもリテラシーを付けさえすれば、「それっぽく」なるところが魔力です。

 情報リテラシー
 コンピューターリテラシー
 民主主義リテラシー
 (インター)ネットリテラシー
 携帯リテラシー
 コミュニケーションリテラシー
 メディアリテラシー
 検索リテラシー
 科学リテラシー
 消費リテラシー
 学術情報リテラシー
 医療リテラシー
 セキュリティリテラシー
 グローバルリテラシー
 起業リテラシー
 図書館情報リテラシー
 旅行リテラシー
 健康リテラシー・ヘルスリテラシー
 リスクリテラシー
 ITリテラシー
 ICTリテラシー
 数学的リテラシー
 文学リテラシー
 投資リテラシー
 金融リテラシー
 経済リテラシー
 科学技術リテラシー
 技術リテラシー
 研究者リテラシー
 サイバーリテラシー
 データ(解析)リテラシー
 知財リテラシー
 外国語リテラシー
 法務リテラシー
 経営リテラシー
 交渉リテラシー
 日本語リテラシー
 ゲノムリテラシー
 数理リテラシー
 災害リテラシー
 新聞リテラシー
 環境リテラシー
 電気リテラシー
 外国語リテラシー
 デジタルリテラシー

 思いつくまま上げたものと、ネットでちょっとだけ探してみたものを書き連ねただけで、たちまちこれくらいの「リテラシー」が集まりました。中には怪しげなものもあり、探せばまだまだいくらでもありそうなのですが、根が尽きました。

 リテラシーというのは「常識的教養」というようなニュアンスで、知的社会人ならば当然身につけていることが期待されるものというくらいの意味だと思うのですが、こうして挙げてみると今の時代にはあまりにも身につけることが期待される「リテラシー」が氾濫していることがわかります。

 そこで先日の合宿の時にも悲鳴のように、「私は、そしておそらく多くの人も、こんなにたくさんのリテラシーを要求されて、それに応えることなどもとても無理です。すべてのリテラシーが『各論』とするならば、『基礎』あるいは『概論』的なリテラシーを与えてくれないでしょうか」と叫んでしまいました。ここ数年、あらゆる分野から「普通の人々」に対して出された「リテラシーを持て」という要求が、ここまで来ていかに途方もないことかが良く分かると思います。

 というわけで、今年は最初から「基礎リテラシーとはなにか」という大きな問題を抱えることになっています。難問ではありますが、この「基礎リテラシー」というものが確立できたら、上にあるような有象無象のリテラシー各論などは蹴散らして、「これだけ押さえておけばOK」ということになるかもしれません。

 「この15か条だけであらゆるリテラシーが押さえられる」というような新書が書けそうですね(笑)。
by stochinai | 2010-01-04 21:32 | 教育 | Comments(10)
 12月11日のScienceにあった本の紹介記事を見落としていました。Scienceには毎週書評が載っていたと思うのですが、基本的に専門家あるいはせいぜいが大人向けの科学本のようです。

 この週に紹介されたのは、子供達へのクリスマスプレゼントにどうですか、ということで幼児向け(4年生まで)、それよりちょっと大きな子向け(5-8年生)、そしてヤングアダルト向け(高校生)のものです。
Scienceが推薦していた子供から若者向けの科学本 (日本語のものも!)_c0025115_19321726.jpg
 (C) photoXpress

 推薦しているのは 2010 Science Books and Films Prizes for Excellence in Science Books (2010年度の「優れた科学に関する本と映画に与えられる賞」)の最終選考に残ったものだということです。

幼児向け

Living Sunlight: How Plants Bring the Earth to Life. Molly Bang and Penny Chisholm. Blue Sky (Scholastic), New York, 2009. 36 pp. $16.99, C$18.99, £10.31. ISBN 9780545044226.

 太陽エネルギーを地球生物が利用できる栄養に変える植物の話

Moonshot: The Flight of Apollo 11. Brian Floca. Athenium (Simon and Schuster), New York, 2009. 44 pp. $17.99, C$19.99, £10.92. ISBN 9781416950462.

 月へ行ったアポロ計画の話

Redwoods. Jason Chin. Roaring Brook, New York, 2009. 36 pp. $16.95, C$18.95, £10.21. ISBN 9781596434301

 レッドウッドの森の秘密

What Bluebirds Do. Pamela S. Kirby. Boyds Mills, Honesdale, PA, 2009. 48 pp. $18.95, £11.50. ISBN 9781590786147.

 北アメリカに住むブルーバードの生活

中級向け

Bodies from the Ice: Melting Glaciers and the Recovery of the Past. James M. Deem. Houghton Mifflin, Boston, 2008. 64 pp. $17. ISBN 9780618800452.

 氷河の中から発見されたアイスマンの死体が教えてくれる我々の祖先の暮らし

Cars on Mars: Roving the Red Planet. Alexandra Siy. Charlesbridge, Watertown, MA, 2009. 64 pp. $18.95, £12.99. ISBN 9781570914621.

 火星を走り回る探査車

The Frog Scientist. Pamela S. Turner, photographs by Andy Comins. Houghton Mifflin, Boston, 2009. 64 pp. $18, £10.92. ISBN 9780618717163. Scientists in the Field.

 カエルの研究者は何をやっているのか

Lucy Long Ago: Uncovering the Mystery of Where We Came From. Catherine Thimmesh. Houghton Mifflin, Boston, 2009. 64 pp. $18, £10.92. ISBN 9780547051994.

 人類の祖先の骨が語るヒトの起源

Mission Control, This Is Apollo: The Story of the First Voyages to the Moon. Andrew Chaikin and Alan Bean. Viking, New York, 2009. 128 pp. Paper, $23.99, C$30, £14.56. ISBN 9780670011568.

 アポロ計画の話

ヤングアダルト向け

Confessions of an Alien Hunter: A Scientist's Search for Extraterrestrial Intelligence. Seth Shostak. National Geographic, Washington, DC, 2008. 319 pp. $27, C$32, £14.99. ISBN 9781426203923.

 地球外知的生命体探索者の告白

The Invisible Kingdom: From the Tips of Our Fingers to the Tops of Our Trash, Inside the Curious World of Microbes. Idan Ben-Barak, Basic, New York, 2009. 214 pp. $24, C$30.50. ISBN 9780465018871. Small Wonders: How Microbes Rule Our World. Scribe, Carlton North, Australia, 2008. Paper, 240 pp. $A26.95. ISBN 9781921372179.

 細菌の世界

The Survivors Club: The Secrets and Science That Could Save Your Life. Ben Sherwood. Grand Central, New York, 2009. 399 pp. $25.95, C$28.99. ISBN 9780446580243. Michael Joseph (Penguin), London. £15.99. ISBN 9780718153106.

 災害に生き残る人はどこが違うのか

Why Sh*t Happens: The Science of a Really Bad Day. Peter J. Bentley. Rodale, New York, 2009. 320 pp. $16.95. ISBN 9781594869563. The Undercover Scientist: Investigating the Mishaps of Everyday Life. Paper, Arrow (Random House), London, 2009. £8.99. ISBN 9780099522423.

 科学者の悲惨な実態(笑)

 購入されたい場合には、署名などをコピペして、アマゾンなどで簡単に探せると思います。ご照会したかったのは実は、この後にあった「日本の子供向けの日本語の本」なのです。
Scienceが推薦していた子供から若者向けの科学本 (日本語のものも!)_c0025115_1915749.jpg
 もちろんアメリカの書評家が自力でこうした本を見つけたわけではなく、日本子どもの本研究会というNPOのマツモトヒロエさんという方が推薦なさったものだそうです。

 写真絵本 ヘビのひみつ

ヘビのひみつ (ふしぎいっぱい写真絵本)

 絵本 里山百年図鑑

野遊びを楽しむ里山百年図鑑

 なんで Science で日本の絵本が?と思いましたが、今回の賞のスポンサーが AAAS と Subaru と書いてありました。Subaru (スバル)というのはおそらく日本の富士重工業のことだと思い、納得しました。

 この記事を読んで日本の本を取り寄せて呼んでくれる外国人は何人いるでしょうか。考えてみると、絵本のほうが語学の壁は低そうなので、手にしてもらえさえすれば中身は意外と簡単に伝わりそうです。

 実は今某 ****** で絵本作り実習をしている方に進展具合を見せていただいたりしているところですが、科学の中身を絵本にするという作業は、科学コミュニケーションとしての難度はウルトラCのレベルだということがよくわかります。一方、絵本だと言葉を越えたコミュニケーションになるかもしれないという意味では、できたもののコミュニケーション力は言葉だけの科学本よりもはるかに高いのかもしれません。

 いずれにせよ、絵本による科学コミュニケーション。いいものに仕上がって欲しいものです。
by stochinai | 2009-12-18 19:27 | 教育 | Comments(2)
 今朝の朝日新聞に、不況とも相まってどんどん早期化する大学生の就職活動のことが特集として取り上げられていました。学部卒業で就職を希望する人が3年生のうちに就職活動を開始するのは最近では当たり前で、2年生のうちから説明会に行く学生も増えているようです。さらには、大学1年生のうちから説明会に潜り込むという例も出始めているということです。(大学院修士課程だと、1年の秋~冬から始まります。)

 もちろん、大学を卒業して就職しようとする学生が、できるだけ早く就職を内定させてしまいたいと思うのは当然のことですし、採用する会社にとってみると、できるだけ早く優秀な学生を確保しておきたいと思うのもまた当然といえば言えます。
お金を使わずに大学教育を大きく改善させる方法_c0025115_20105179.jpg
from 写真素材 足成

 しかし、早期から始まる就職活動が長期にわたって続くと、もちろん学生は大学で教育を受ける機会がどんどんと削られますので、教養の涵養という意味での成長が阻害されます。これは、学生にとって不利なことです。

 また、採用する側でもあまりに早期に採用を内定してしまうと、その後に伸びるはずだった学生の向上心を削ぐことににもなりますし(将来が決まってしまうと、どうしても一所懸命学業に打ち込まなくなる傾向があるものです)、その後で伸びが止まったり、採用しなかった学生が意外なことにその後でぐんぐん伸びるということも実際にあり得ることです。

 つまり現行の人事採用システムは、採用される学生にとっても、採用する企業にとってもも、ともにあまり良いシステムではなくなっています。

 昔は、就職協定というものがあって、大学生の場合には4年の10月までは、企業は採用活動をしてはいけないし、学生も就職活動をしてはいけないという「決まり」と慣習が厳然と存在していました。

 これは、1952年に企業と学校(大学・短大)との間で結ばれたということですが、バブル崩壊後の不況で方向を見失い後先を考えることのできなくなった企業および自信をうしなった大学側が1996年に協定を廃止するに至り、その後はチキン・レースのように徐々に採用開始の時期が早まってきたのだと思います。

 今朝の新聞には、就職活動は大学卒業するまでは行わず、卒業後に1年かけて行えば良いという提言が出てきました。悪い案ではないと思いますが、さすがに経済的に困難な人もいるでしょうから、とりあえずは14年前のように、卒業年次の10月までは採用活動及び就職活動を禁止するということを、文科省が政府ととともに強いリーダーシップをとって「命令」してみてはどうでしょう。

 これで、4年生大学で学生が急速に伸びる3年生から4年生の時期に、ほぼ1年近くじっくり勉学に集中できる時間が確保できます。それは、学生にとっても企業にとっても、間違いなく良いことであり、大学教育の質を格段に増大させることが期待されます。

 おまけに、このことで新たに必要となる予算はほとんどありません。

 どうでしょう。今回の事業仕分けで、かなり評価を下げてしまった文科省ですが、この提案を政府に認めてもらうと、9回裏のヒットとなり、その後の教育改革がしやすくなること請け合いだと思います。

 もちろん、一般的には教育はお金がかかることであり、お金をかければかけるだけ良くなることが多いと思いますが、まだまだ工夫次第でお金をかけずにできることはたくさんあると思います。省庁などでは、財務省から予算をとってくることが「業績」だとされる風潮があるようですが、そんな呪縛からもそろそろ解き放される時代が来つつあるとも思います。

 まじめに検討していただけると幸いです。 > 文科省、政府関係の皆さま
by stochinai | 2009-11-18 20:40 | 教育 | Comments(12)
 なんだかんだ言っても、そこそこコンピューターを使いこなすことのできる人が多いネット周辺には、「科学」の重要性を理解している人が多いと思いますので、そこで今回仕分けされてしまった科学技術関係予算の減額に対する失望感が高いように見えてしまいがちなのですが、おそらく世論調査をしてみればあの「査定」には賛成する国民の数の方が、大型研究予算を温存するという意見よりははるかに多くなるのではないかと感じています。

 民主党には、自民党(自公政権)の推し進めていた科学技術政策に対する反発があり、いわゆる彼らの科学技術政策の目玉だったものをつぶしてしまいたいという気持ちがあるのかもしれません。しかし、たとえそういう深層心理があったとしても、今回の仕分けにおいては膨大にふくれあがった国家予算の削減という「大義名分」があり、あの程度のせこい仕分けではほとんど意味のある削減にはならないとしても、たとえ1億円でもいいから国民注視の中で削減するというパフォーマンスを止めるだけの強い説得力を持った概算要求の提案と、それに対する「素朴な疑問」に対する明快な回答ができなかったのだとしたら、それはある意味政争の中で敗北していく運命だとあきらめるしかないかもしれません。

 しかし、「某科学史家の暴言録」さんがおっしゃっているように、仕方がないと片付けられないこともあると思います。
私が一番気になるのは、人材育成関係の事業の予算縮減である。人材育成・若手支援で道を誤れば、一世代の人材が欠落し、長い期間にわたって悪影響を与えることになる。
 実はこの人材育成に関しては、今回の仕分けとはまったく関係なく、少なくとも私の関係する理系分野では、すでにもう崩壊しつつあるという現実を認識しておかなければなりません。

 大学院重点化とポスドク等1万人計画などで、毎年のように膨大な数の博士が生み出されるとともに、そのうちのかなりの部分がポスドクという短期雇用の研究者になるというシステムは、それが作られた最初のうちは大学院などにおける研究業績の急速な増加という形で成果を生み出していったことは事実だと思います(研究が大学院生とポスドクによって担われているので、それが増えれば当然業績は増します)。ところが、しばらくたっていくうちに、おおむね3年任期のポスドクを2回・3回と繰り返しても、ほとんどの人が大学教員や研究所の常勤研究員として就職できないという現実が明らかになってきました。

 このあたりの事情の解説については、ネットをちょっと巡回するだけでいくらでも手にはいりますが、研究者が増える一方で、大学などは縮小を始めたこともあり、要するにそれらの人材を受け入れる受け皿が社会全体として用意されていなかったことが大きな理由だと思います(これに関しては、博士やポスドクが研究職にこだわりすぎるという声もありますが、研究者として育成された人材が研究職にこだわるのはあまりにも当然のことです)。

 その状況が大学院を目指す大学生や、博士課程を目指そうと思っていた修士課程の学生にも認識され始めた結果、数年前から大学院では博士課程への進学率が低下してきており、定員を満たしていない大学のほうが多くなってきているのではないかと思います。ここへきて、文科省も博士課程の定員削減を認めるような発言をするようになりました。しかし、理由はよくわかりませんが、意外なほど実際に定員を減らしている大学院は少ないようです。

 理系の大学生は、さすがに最近の科学を身につけるのは大学4年では足りないと思っている人が多いのか、修士課程までは行こうという意識は非常に高いものの、そのほとんどが博士課程への進学をためらっているのが現実です。その結果、研究者として期待できる人材が必ずしも博士課程へ進学しないということが実際に起こっていると思います。あるいは、自分は研究者になりたいと強く思っている学生は、特定の旧帝大のトップ数大学の大学院博士課程へ集中するということになっているのかもしれません。

 そういうリスクの中を博士課程に進学する、いわば研究後継者になりうる「金の卵」である大学院生への経済的支援として非常に重要な学術振興会の特別研究員制度を廃止するというのは、まさに研究者を育てるという教育に対する暴挙と言わざるを得ません。博士課程の学生やポスドクを今後減らしていくということ自体は間違いではないと思いますが、逆に今後は博士課程の学生ややポスドクは後継研究者として全員に生活費を国が補償していくという制度があってしかるべきものでもあります。

 もちろん、税金で生活費も支給され、次世代を担う研究者として教育された人材に関しては、見返りとして日本の科学にそれなりの大きな貢献をしてもらわなければなりませんが、研究者を目指す若者に研究者あるいは教育者としての職を与えたならば、彼らは喜んで身を粉にして研究教育に励んでくれるでしょう。

 蓮舫さんのおっしゃる、税金に対する見返りが数年のうちに間違いなく実現される確実な方法のひとつだと思います。

 とりあえず、今回は話をここに絞っておきたいと思います。民主党政権の皆さん、次世代の研究者を育てる政策に投入するお金は短期的に見ても長期的に見ても、重要で十分に見返りのある投資になります。自民党は失敗しましたが、これが未来を見据えた科学技術政策の最重要課題として、お願いしたいポイントのひとつです。

 是非とも、ご検討をお願いいたします。
by stochinai | 2009-11-15 23:23 | 教育 | Comments(15)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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