5号館を出て

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風力発電の大きな可能性

 地球環境問題にとってのひさびさに明るいニュースです。

 Hotwired Japan から、世界のエネルギー需要の何倍もの電力を、風力でまかなえるかもしれないというニュースが配信されています。

 世界風力地図の画像を見ると、地球上にはとてもつもない風が吹いているところがたくさんあり、適切な場所に風力発電装置を取り付ければ、72テラワットの電力を供給できるということです。

 2002年に世界で使われた電気は、約たったの(?)14テラワットということですので、なんと風力発電で世界の全ての電力が簡単にまかなえてしまうという計算が成り立つのだそうです。さらに、アフリカなどの未探索地を加えるともっと多くなることも予測されているのだそうです。

 これは、なんとも頼もしいことです。

 もちろん計算と実際とは異なるので、そんなにうまくはいかないのでしょうが、計算された場所の20%に風力発電所が設置できればOKというのは、とても安心できる数値ではないでしょうか。

 現時点で風力発電は鳥などに対する危険や、騒音などが否定的な点であると指摘されていますが、排気ガスや廃棄物を出さないという点では、太陽光発電に勝るクリーンなエネルギー源と見て良いのではないでしょうか。

 単なる夢物語に終わらせずに、本気で考えて良いデータだと思いました。
by stochinai | 2005-05-26 22:55 | 科学一般 | Comments(0)

星の王子さま解禁

 「星の王子さま」といえば、私が中学生の頃にヒットしたような記憶がありますが、1953年に内藤濯さんが翻訳したものが岩波から出ていたのだそうですから、それはすでに何度目かのブームだったのかもしれません。

 その「星の王子さま」の著作権が、今年の1月で切れたというニュース(共同)が出ています。

  著作権に関しては、いろいろと難しいことがあるらしいのですが、ここに「星の王子さま」と原作「Le Petit Prince 」の著作権に関する詳細な検討が書かれています。

 このサイトの記述によると、いろいろと法的な解釈があるのですが、そういったものを勘案しても「2004年1月下旬(25日前後)までが(日本における)Le Petit Prince の保護期間となります」とのこと、それが発効(著作権の失効?)したもののようです。

 著作権が切れると、誰でもが勝手に訳して出版できることになりますので、新しい企画で新訳本が続々と出てきて“星の王子さま戦争”が勃発しそうなのだそうです。

 それとともにオリジナルもまたブームになるでしょうから、今年のクリスマスに向けてまた「星の王子さま」がはやるのは必至でしょう。

 オリジナルの絵も解禁になるということになると、本ではなくネットでも公開可能になるということになるのでしょうから、我々も勝手に使って良いのかな?

 それにしても、懐かしい話です。
by stochinai | 2005-05-26 13:31 | つぶやき | Comments(6)

また給料が下がる

 今日はニュースコメント3連発といきます。

 前から給料が下がる下がると脅されていましたが、やはりそうなりそうです。

 基本給、最大で7%下げ 国家公務員給与で人事院 (共同通信)によると、人事院は国家公務員の俸給(基本給)を30代半ば以降で最大7%、全体で5%程度引き下げることを正式に決めたようです。

 私たちは、去年の春から国家公務員を首になって、国立大学法人職員になったのですが、給与体系に関してはほぼ100%国家公務員に準ずる扱いになっていると聞きます(実際に、調べたわけではないので確信はないですが、間違いないと思います)。というわけで、もしも国家公務員の給料が下がったら、我々の給料も下がると思います。

 地元の民間給与と比較して補正するというのも変な話ですが、そういう補正があるのだそうで、とりあえず東京は「地域手当」で給料の減額が少なくて済むということのようです。札幌は大都市ですが、北海道経済の冷え込みで給与水準は低いと思われますので、地域手当などはつかないんでしょうね。残念。

 大学が法人化しても、給与体系や職務体系が全然変わらないのでは、なんのための法人化かわからないという声も強いのですが、予算の削減だけはやりやすくなったみたいで、毎年運営予算が1%減るだけではなく、授業料を値上げさせられてその分の交付金も減って、と税金の分配額を減らすことには貢献しているようです。

 ということは、もしも景気が良くなって国家公務員の給料が上がるということになっても、今度はあなた達は国家公務員ではないのだから、人事院の勧告には従う必要がないんですよ、と切り捨てられそうな予感がします。

 やられっぱなしですか。
by stochinai | 2005-05-25 20:48 | つぶやき | Comments(5)
 とても愉快なウイルスが出現しました。

 ファイルを「人質」にとる新種ウイルス (Hotwired Japan)だそうです。

 インターネットエクスプローラーで、特定のウェブサイトにアクセスするだけで、こちらのコンピューターに進入し、ハードディスクにあるテキスト・ファイルなどを勝手に暗号化し、復元したければ200ドルのソフトを買えと脅す表示をするのだそうです。

 まあウイルスですから、遅かれ早かれ対応されてしまうのでしょうが、この商売のやり方がおもしろいと思いました。

 人間社会で言えば、相手の持っている書類を勝手に絶対に開かない金庫にしまった上で、「金庫を開けたければこの鍵を買って下さい。2万円です」と請求するようなものでしょうか。

 この場合、金庫はただで差し上げますので、鍵を買って下さいと言われたら、書類が盗まれたわけではないので窃盗罪は成立しなさそうです。

 ファイルも元にもどせるのだから、器物破損罪も成立しにくそうで、適用できるとしたら威力業務妨害というところでしょうか。

 いずれにせよ、なんだかほのぼのとした感じのするところがいいですね。
by stochinai | 2005-05-25 20:32 | コンピューター・ネット | Comments(0)

北の家族で食材偽装?

 そう言えば、地元では見たことがないのに、本州の盛り場でやたらと目に付く居酒屋がありました。その名も北の家族。

 そこは、いちおう北海道の食材を食べさせるという店のようなのですが、なんと「北の家族」で食材偽装 外国産を北海道産と(共同通信)という事件を起こしていました。

 北海道関係の店かと思っていましたが、名古屋に本部があるみたいですね。初めて知りました。

 犯行は北海道産の食材は高価なので「『知床地鶏のサラダ仕立て』に、ブラジルや中国産の鶏肉を使用したり『十勝牛の火山噴火焼』に米国産牛肉を使っていた」とのことです。メニューはおいしそうな名前だけに惜しいですね。

 北海道人としては、北海道ブランドを利用されたことを、喜んで良いんだか、悲しんで良いんだかという複雑な心境になります。
by stochinai | 2005-05-25 20:20 | つぶやき | Comments(0)
 交通事故の半数以上が交差点で起こっているといいます。車輌相互の衝突事故は圧倒的に信号のない交差点で起こることが多いのですが、人対車輌の人身事故は信号の有無にほとんど関係なく起こっているようです。(埼玉での実例がここにあります。)

 先日、宮城県でウオークラリーで青信号の横断歩道を渡っていた仙台育英学園高校の生徒の列に、酔っぱらった上居眠り運転をしていたRV車がブレーキもかけずに突っ込み、高校生3人が亡くなり、22人が重軽傷を負うという事故がありました。

 まったく痛ましい事故で、亡くなられたり怪我をされた生徒さんには何とも申し上げようもありません。また、殺人者となった男には同情の余地もありません。死亡者1人に対し100年で350年くらいの懲役刑に処してもらいたいものです。それができない日本の司法制度にも言いたいことはたくさんありますが、ここでは触れないでおきます。

 事故(というより犯罪)の現場はT字路交差点で、生徒さん達と並行に進んで国道に入ってきた乗用車が青信号で左折しようとしますが、たくさんの生徒さん達が横断歩道を渡っていたので停車していたところに、右手から国道をまっすぐに走ってきたRV車が乗用車の右側面に衝突し、押し出されたその車と暴走RV車が横断歩道に突っ込んで、大惨事になったようです。

 先生でもあるらしい「風のたより」さんがこの事故が学校行事の中で起こったことから「学校の責任も問われなくてはならないと思う。悪いのはドライバーに決まっているが、そんなことを決めても亡くなった若者たちの命を取り戻すことはできない」と、(おそらくは同僚としての自戒の気持ちも込めて)おっしゃっています。

 事故の時には、横断歩道の両側には二人ずつの教職員の方々が生徒を指導していたということですので、事故は教職員の力では防ぎようがなかったと思われます。学校にとっては不可抗力だったでしょう。私としては、早朝4時過ぎという時間に行事をしたということまでは責めたくはない気がします。恒例の行事だったようですし、それなりの意義や楽しさがあったことのほうを積極的に評価したいと思います。

 風のたよりさんは、免許証更新の講習会で担当者の言った「交差点の信号は、どちらが信号無視したから悪いというような、どちらが悪いかを決めるためについているのではなく、信号をつけなければ危ない場所であることを示しているのです」という言葉を引用しておられ、私もまったくその通りだと思いますが、自転車に乗っている私としては、さらに「信号を信用するのはあまりにも危険」だとも言いたいです。

 逆説的な言い方になりますが、青信号で渡る時が一番危険な気がします。まさか、相手が赤で進入して来るとは思わないで油断しているからです。しかし、現実には青になった瞬間まではかなりの高い確率で突入してくる車が多いものです。

 複数の人数で横断する時には、さらに危険度が高まります。ビートたけしではありませんが「赤信号、みんなで渡れば恐くない」という感じで、多人数が一斉に青信号を渡っている時には、ほとんどの人は車が進入してくるなどとは考えもしないでいると思います。一方、一人で渡る時には、青信号でも注意することが多いように思います。

 また逆に、人や自転車などが赤信号を無視して渡る時には、最大限注意をしながら渡りますので、意外と事故は起こらないように思います。(ただし、年を取ってきたり、飲酒をしている時は絶対にダメです。信号無視あるいは、信号のないところの横断での事故が確実に多くなります。身体が俊敏に動かないと悟ったら、決して信号無視をしてはいけません。)

 学校の行事などで、引率の先生がおられていろいろと注意してくれるし、仲間達と楽しく談笑しながら歩いている時には、高校生はまわりからの攻撃にほとんど無防備になっていたと思います。ましてや青信号だったのです。

 「ドライバーに100 %の責任がある、といくら言ってみても、死んだ命はもう戻ってはこない」という点には、私もまったく同意見です。

 だからこそ、横断歩道は青信号でも安全とは言えないという現実を、小学生くらいの頃から教えておくことが必要なのではないでしょうか。私たちが小学校の頃は車を信用するなという意味かどうかはわかりませんが「さあ青だ いやもう一度 右左」と教わったものです。

 交通事故の責任を重くすることも大切だと思いますが、人間が運用している限り交通事故は根絶できるものではないということを前提に、信号などを安易に信用せずに自分の命を守る指導というものも必要なのではないでしょうか。

 改めて、亡くなられた生徒さん達のご冥福をお祈りいたします。
by stochinai | 2005-05-24 17:36 | 教育 | Comments(2)

新緑のイチョウ並木

 イチョウ並木の新緑がとてもきれいです。
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 理学部前のクロフネツツジも咲き始め、
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 理学部横のしだれ桜が満開です。
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by stochinai | 2005-05-24 12:03 | 大学・高等教育 | Comments(2)
 大学の広報活動の一環として、高校生の大学訪問(Campus visit)という制度があるらしく、今日は頼まれて4名の高校生に研究室をお見せしました。

 午後1時20分頃、理学部旧館(博物館)の正面玄関まで迎えに出て欲しいという依頼があったので、出かけてみると高校生が何人かたむろして、守衛さんと押し問答をしています。守衛さんは高校生が来るなどということはいっさい知らされていないらしく、高校生の質問に「で、誰、何先生に会いに来たの」などと質問をしています。高校生達も、こちらの受け入れ態勢などは全然知らないらしく、まったく話が通じていない感じです。

 博物館の入り口に生徒さん達を迎えに行く途中で、たまたま理学部の窓口になっているはずの教務係長のTさんにお会いしたので、話はきちんと進んでいるのだと思って、高校生に「岐阜のT高校の生徒さん達ですか。理学部訪問ですよね」と訊くと、そうですということだったので守衛さんに事情を説明して、一件落着。

 ところが、予定の1時半になっても教務係長が現れず、生物と同じく受け入れを頼まれている物理の先生が、係長を呼びに行ってくださるということなのでお願いして、待っていましたがミイラ取りがミイラになったみたいで、ふたりともなかなか来ません。

 なんだか、悪い予感のする始まりでした。

 しらばくすると、係長さんと物理の先生が高校生に渡す資料を持って登場。係長さんからは「特に何も決まっていないので、適当にお願いします」とのことで、生徒さん達を任されてしまいました。

 う~ん、これはかなりいい加減だぞ、と思いながらも生物科学科でもう一人受け入れを頼まれているN先生と二人で、4名の生徒さんをつれて、研究室へと戻りました。

 途中、歩きながらいろいろと訊いてみました。

 「今日の予定はどうなってるの。この後、何時までにどこに行けばいいの。」

 「たぶん、来る前に集まったところに行けばいいんだと思いますが、何時かは訊いていません」

 高校側も、かなりいい加減と見えます。

 「君たちの高校から北大を受ける人ってどのくらいいるの」

 「全然いないと思います。今までも、北大に来た人がいるとは聞いたことがありません」

 「君たちは、北大に興味があるの」

 「特に、そういうこともないんですけど、、、」

 「北大を受けようとか思ってないの」

 「思っていません」

 おいおい、いったい君たちは何をしに来たんだい。

 「何か訊きたいこととかある。入試のこととか、AOのこととか、、、」

 「別にありません」

 「生物とか好きなの」

 「特にそういうこともありません」

 研究室を案内しても、特に強い興味を示すわけでもなく、いろんな動物を見せたり、実験の話をしてあげても、なんだか反応がにぶいのです。夏に行われる高校生の体験入学の生徒さん達とのエライ違いに、こちらもだんだんとエネルギーを失って行きます。

 どうも、いろいろと話を聞いて推測してみるに(私の勝手な想像も多いのですが)、この岐阜県のT高校では、北海道の修学旅行に来たものの自由行動をさせて問題が起こるよりは、大学の見学でもさせておけば、とりあえず事故も起こらないだろうし、あわよくばそこで何か刺激を受けて大学への情熱でもいてくれれば儲けもの、というような程度の軽い気持ちで彼らを送り込んで来たことは、ほぼ間違いないと思われました。

 体の良い、手抜きですね。

 それでなければ、これほどの予備知識も情熱もない高校生を、引率する先生もなしに理学部へ送り込んでくるなどという無責任なことはできないと思いました。

 こういう時代ですから、大学としては広報活動という名のサービスをすることで文科省の覚えを良くしておきたいという気持ちも強いですから、高校から要望があればなかなか断れないのだと思います。

 しかし、大学側も特に一所懸命やる気もないし(我々に丸投げです)、高校側もなんの準備もしてこないという状況の中、間に立って実際に何かをやらされる我々がたまったものではありません。

 これでは高校生にも大学にも何にも良いことがないと思いました。

 どうせやるんならもっとしっかりとやりたいし、そうでないならやめませんか > 学長

 こんなことをやっている間も、もっともっと意味のある生産的教育研究活動が阻害されているということはわかりますよね。

 結局、教務のT係長だって通常業務だけでもメチャメチャ忙しい上に、こんなことにまでつきあわされてかなわんと思っておられるに違いないと思います。私たちも、充実感のないサービス業務をさせられては徒労感しか残りません。結局、喜んだのは生徒達から解放された修学旅行引率の先生達と、大学の広報担当だけじゃないんでしょうか。これを、大学の業績として認めるなんぞということだと、文科省の監督責任も問われかねません。

 困ったものです。

追記:トラックバックをしていただいた「医学教育のひろば」さんによると、気持ち悪いくらい同じことが東大でも行われているようです。そうすると、そういうことをさせている原因はその上の文科省あたりにあると推測するのが「科学的推論」ということになりますか。
by stochinai | 2005-05-23 20:54 | 大学・高等教育 | Comments(9)

カメラ眼を持つクラゲ

 明日、セミナーで論文を紹介するのでクラゲの眼の勉強をしていました。先週のNature(VOL 435, 12 MAY 2005, pp201-205)に出ていたものです。

 我々と同じようなレンズを持った「カメラ眼」を持っている動物としては、軟体動物(貝の仲間ですね)のイカやタコが有名ですが、実はクラゲにもきちんとしたレンズを持ったカメラ眼を持ったものがいるのだそうです。(これは、意外と古くから知られていることらしいのですが、無知な私は知りませんでした。^^;)

 そもそもこうしたカメラ眼で取り込まれた画像情報は、それを処理する優秀なコンピューターである発達した中枢神経系(脳)がないと意味がないと考えられていますので、中枢神経系を持たないクラゲがカメラ眼を持っていても使いこなせないのではないか、というのがこれまでの「常識」です。しかし、この先研究が進むとこの常識はひっくり返る可能性があるかもしれません。

 クラゲの中でも、かなり強い毒を持つことで有名なハコクラゲ(箱水母:box jellyfish)の仲間がこのカメラ眼を持っています。沖縄などで非常に恐れられているハブクラゲというのも、このハコクラゲ類です。オーストラリアでは、毎年死者が出るほどの強い毒を持つウミスズメバチ(sea wasp)はハブクラゲと近縁です。

(余談ですが、これほどの強い毒なのに研究がほとんど進んでおらず、その実体が明らかになっていないようです。きちんと調べると、間違いなくNatureに載る論文が書けるテーマだと思うのですが、よほど難しいのかあるいは大穴です。ここに書いてしまったので、となたかが早速研究を開始するかもしれませんが、私はアイディアの優先権など主張しませんので、どんどんやってください。)

 さて余談が長くなりすぎましたが、ハコクラゲの仲間はクラゲに似合わずサカナのような速さでスイスイと泳げることも知られており、その能力と発達した眼とになんらかの関係があるのではないかと考えられて来ました。

 今回の論文では、クラゲの持っている8個の眼のレンズ(このクラゲには、レンズのない眼も16個あります)が、はっきりと像を結ぶことができることを示したことが大きい成果だと思います。ところが不思議なことに、その像は網膜よりもかなり後ろに結ばれてしまうので、おそらくかなりの「遠視」状態で、はっきり見えてはいないのではないかと著者は考えているようです。その件に関しては、クラゲのすんでいるマングローブの浅瀬には細かなゴミがたくさん漂っているので、まわりの環境を大まかに把握するにはむしろはっきり見えない方が良いのではないかとのことです。

 でも私はちょっと違った考えを持っていて、このクラゲにはやはり外界がかなりはっきりと見えているのかも知れないという可能性を考えています。確かに、このクラゲの眼の網膜には焦点の合った像が結ばれないというのは「光学的事実」だとは思います。しかし、そのぼんやりとした像の情報が網膜で受け取られたあと、計8個のレンズを持った眼とレンズを持たない16個のレンズから入力された情報を総合して処理することができれば、クラゲにとっては非常に有益な外界の様子がかなりの精度を持って「見えてくる」可能性があるような気がするのです。

 しかも、その情報処理が散在神経系というような、比較的単純な回路でできてしまうとしたらスゴイと思いませんか。コンピューターの世界にも衝撃を与えることになるでしょう。

 このクラゲには、光学的収差が完全に解消されたとても優秀なレンズがあるのだそうで、そこまで完全な像を結ぶことのできるレンズを進化させたということは、やはりものを見るということと関係がないとはどうしても思えないというのが私の感想です。

 実は、レンズを持った眼というのは動物界に広く存在しています。昆虫を含む節足動物の複眼や個眼にもレンズがあります。ホタテなど2枚貝の中にもレンズを持ったものが多いですし、レンズ付きの複眼を持っているものさえいます。

 驚いたことに、渦鞭毛藻類という単細胞生物にさえ、レンズを持った「眼」を持っているものがいます。視覚的に外界の情報を取り込もうとする時にはレンズが進化するのはよくあったことのようで、いろいろな動物群のあちこちで、お互いに関係なくレンズを持った眼が出現しているます。しかし、それらの動物が外界の像をどのように見ているかということについては、まだ余りよくわかっていないようで、これからの研究に期待されます。

 私はこれらの研究から、レンズを使ってものを見るといっても、我々の脳やカメラのようなやり方以外の方法が見つかってくれるとおもしろいと期待しています。そんな知見をもとにして、今までは想像も付かなかったようなまったく新しいロジックを持ったカメラが出てくるとしたら、とても楽しいと思います。

 技術開発に息詰まったら生物に学べ、が古くから言い伝えられている生物学から工学への提案です。
by stochinai | 2005-05-22 23:59 | 生物学 | Comments(0)

禁酒の北大祭

 大学生(=おとな)になった自覚というものが、あまりないのかもしれません。

 今年の北大祭はアルコール抜きで行うこということで、実行委員会と大学当局との間で合意が成立したようです。大学側からの公式な説明をウェブ上で見つけることはできませんでしたが、実行委員会からの説明はここにpdfファイルがあります。

 それを読んでみると、大学当局の担当者が強硬だったらしく、実行委員会は「酒類の販売・構内での飲酒の禁止、営業時間の22時までの切り上げ、保健管理センターの協力撤廃」を申し渡されたようです。さらに、もし酒類販売などを強行した場合は、北大祭への物資援助の減少・打ち切り、教室・区画の使用許可取り消し、北大祭期間中の特別休講阻止の取り消しなどをするという、対抗策(明らかな脅しですよね)も示唆してきたようです。

 実行委員会の方針としては、このまま酒類販売等を強行しようとすると、北大祭自体の開催があやぶまれるということで、大学の要求を全部呑んでしまったと書いてあります。

 まあ、自主的に北大祭を運営する主体である実行委員会が決めたことですから、とやかくいうつもりもないのですが、なかなかおとなしく素直な学生さんだというふうに感じました。

 北大生も、北大祭も変わってきているのでしょう。

 最近は学生と酒を飲んでも、飲む量もすくなければ、食べる量もお上品なものだというふうに思います。私らの年代のほうが、いい年をしてメチャメチャ飲んで学生の残した分までガシガシと食べてしまうのは、(私の個人的な状況も大きいのかも知れませんが)世代による違いかもしれないと思うことも多々あります。

 北大祭自体への思い入れも、わりとあっさりしたものなのではないでしょうか。あるいは、そんなものはほとんどないのかも知れません。お酒が飲めないのなら、北大でのお遊びは適当に切り上げて街に飲みにでかければ済むことですし、大学当局と闘ってまで得るものがあるとは思えないのなら、この決定も納得できる気がします。

 大学当局としては、前から思っていたことをちょっとだけ強く言ってみただけなのでしょうが、おそらく「こんなに簡単に通るとは思っていなかった」というのが、担当の先生方の感想のような気がします。

 同じような感想を文科省が大学に対して持ったことがあるという話を聞いたことがあります。国立大学の法人化とか、教員の任期制とか、一昔前なら絶対に大学側が受け入れるはずのないことが、今なら何でもするすると通るのだという話です。

 もちろん、私が文科省の方から直接聞いた話ではありませんから、情報源の信頼性はないのですが、なんとなく本当にように聞こえる話です。

 社会全体の変化というものが、我々おやじ世代が思っていたよりも速いスピードで起こってしまっているというのが、今の時代なのかもしれません。
by stochinai | 2005-05-21 18:17 | 大学・高等教育 | Comments(10)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai