5号館を出て

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ミヤコワスレ

 盛りはちょっと過ぎてしまったのですが、ミヤコワスレです。
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by stochinai | 2005-06-25 13:22 | 趣味 | Comments(0)
 昔(といっても20年くらい前)、「おばあさん細胞」仮説というものがありました。

 何かを見て、それが何かを判断するのは脳の仕事であるのは誰でもわかるのですが、その判断を脳内のたくさんの細胞が一緒に働いて行っているのか、それとも少数の細胞がそれをやっているのかということが議論されていた時に、「手」のようなものにだけ強く反応する「手細胞」という神経細胞があるらしいということが発見されました。

 その後、「おばあさん」とわかる写真や絵にだけ反応する細胞もあるらしいという実験結果から、おばあさんであるということを判断するのは単一あるいはごく少数の細胞であるという説のことを、「おばあさん細胞」仮説とか、「黄色いフォルクスワーゲン細胞」仮説と読んでいます。

 いちおう、それは仮説にすぎず証明されているわけではないということになっていたのでしょうが、今日のNatureには、女優のジェニファー・アニストンやハル・ベリーを見せると活発に活動するユニット(神経細胞)や、シドニーのオペラハウスにのみ反応する細胞があることを示して、おばあさん細胞仮説を支持する論文(おばあさん細胞を主張していた同じ人も著者にはいっていますが)が載っています。

 しかも、それらの写真に反応した細胞は「ハル・ベリー」とか「シドニー・オペラ・ハウス」という文字にも反応したということなので、なかなかおもしろい結果だと思います。

 「おばあさん細胞」では、なかなか話題になりにくくても「ジェニファー・アニストン細胞」だと、ワイドショー・ネタにもなりやすいのか欧米ではかなりの話題になっているということです。ジェニファー・アニストンって誰?という方も、今年の1月まであのブラッド・ピットの奥さんだった人と言えば納得されませんか。

 極東ブログさんが早々に取り上げておられますが、科学論文にもキャッチフレーズが必要な時代になってきたのかもしれません。
by stochinai | 2005-06-24 20:48 | 生物学 | Comments(4)

メスだけの島

 私たちの研究室で飼っているミジンコ(Daphnia pulex)は、メスしかいません。メスが産んだ卵が発生してメスのミジンコになります。このようにオスなしで卵が発生して殖えることを、単為生殖といいます。ミジンコでは、秋になるとオスが出現して普通の有性生殖をして、有精卵を作ると言われていますが、地球上にはもう何千年もオスなしで殖えている動物もいるようです。

 単為生殖なんて、ワムシ、ミジンコやアブラムシなどといった「下等な」動物だけがするものだと思われるかも知れませんが、アメリカには単為生殖するトカゲもいます。「赤の女王」という本の中にはシチメンチョウもたまに単為発生すると書いてあります。ヒトでは唯一イエスキリストが単為発生したということになっていますが、生物学的には信じられていないと思います。

 昆虫でも、ミツバチの雄が単為発生してできることなどが良く知られていますし、単為生殖で有名なアブラムシも昆虫です。しかし、トンボやイトトンボを含むグループ(Odonata)では、今まで単為生殖は知られていませんでした。

 今日読めるようになったNatureには、アゾレス諸島というところで見つかった単為生殖するイトトンボの話が出ています。

 Ischnura hastataというイトトンボは、南北アメリカでごく普通に見られるものだそうですが、どこでもオスとメスがいて普通の有性生殖をしています。ところが、アゾレス諸島にいるこのイトトンボは採集された330匹以上の個体に、オスが見つからなかったのだそうです。また、そのメスが産んだ卵をそだててみたところ、発生してきた1900匹以上のイトトンボがすべてメスになったのだそうです。

 つまり、この島ではこのイトトンボは無性生殖で繁殖しているということになります。なぜでしょう。

 不思議なことに、例のガラパゴス諸島にもこのイトトンボがいるそうなのですが、そちらでは普通の有性生殖をしているとこのと、いろいろなことが考えられているそうですが、わからないというのが現状のようです。

 おもしろい発見は、現代でもまだまだ続きます。
by stochinai | 2005-06-24 19:45 | 生物学 | Comments(6)

タンポポモドキ

 札幌は東京より一足お先に昨日、真夏日になっていたようです。今日は、東京がこの夏初めての真夏日とのことですね。お暑うございます。

 炎天下にタンポポモドキ(ブタナ)が真っ盛りです。
タンポポモドキ_c0025115_13481165.jpg

 花はタンポポ似てなくもないですが、花茎が長く枝分かれしているのが特徴です。
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by stochinai | 2005-06-24 13:49 | つぶやき | Comments(0)
 カリフォルニア大学バークリー校では理系の入門講義をウェブ配信しています。実際に見ていただくとわかるのですが、多くは普通の黒板を使った「ただの講義」を写したものを流しているだけです。

 しかし、その中でも化学の講義 Chem 1A Introduction to Chemistry はデモ実験を取り入れたりして、意欲的な講義をしているとして有名なのだそうです。とは言えこれを見る限り、それほどでもないと思っていたのですが、おそらく去年からPRISMというソフトウェアを駆使したデジタル・ケミストリー(Digital Chemistry)というハイテク講義へと脱皮していました。これは、いろいろと学ぶべきところがあります。

 今日は北海道大学高等教育機能開発総合センター創立10周年記念国際ワークショップの関連行事として、そのデジタル・ケミストリーで活躍している Mark Kubinec という教授が配信しているものと同じ講義を実際にデモしてくれるということで見に行きました。

 ウェブで見ることのできる第15講の Mon (9/29) Molecular Structure, VSEPR Theory を実演してくれる予定だったそうなのですが、なんと残念なことにKubinecさんが急病で倒れてしまい、札幌には来られなくなってしまいました。

 そのことが数日前にわかったのだそうで、大学としては中止にするのではなく急遽2人の代役を立ててデジタル・ケミストリーの講義を再演することにしたのだそうです。準備などは大変だったと思いますが、今日は日本人講師2人によるコピー講義が行われました。

 コピーといっても実際の講義はウェブで配信されておりますので、本物を見ることもできるのですが、実際に数百人のが学生を前にして実演をしたり、クイズを出して答えさせたりということは実演でなければできません。そういったことを含めて臨時の講師の方々が熱演してくれました。

 実験や実演、学生とのやりとりはかなりオリジナルの講義に忠実に(しかも日本語で)やってくれましたので、それなりのインパクトはあったのだと思いますが、正直な感想を言わせていただくと「役者が違う」と感じさせられてしまいました。

 たとえ講義の内容やシナリオが同じでも、教室は劇場であり、教壇は舞台であり、講師は役者なのです。数百人の学生の心をとらえ、ぐいぐいと引き込みながら、講義内容を的確に理解させるためには、付け焼き刃の練習ではどうにもならない「何か」が必要だということを思い知らされました。ウェブをご覧になると、それが少しは感じていただけると思います。Kubinecさんはかなりの役者なのです。

 もちろん、本日の講師の方やそれをサポートしていた方々の努力もわかりますし、たった3日ほどの訓練でこれだけの内容を再演することができたのは、講義シナリオがしっかりしていることが大前提であることはもちろんです。

 そうであるにもかかわらず、特に今回のように数百人の学生を相手にする場合などに講義が本当に魅力あるものになるためには、講師には人気俳優並みの「力」が求められていることが良くわかりました。

 教育の世界にも、名優が求められる時代がやって来たのでしょう。
by stochinai | 2005-06-23 23:07 | 大学・高等教育 | Comments(0)
 昨年の7月31日に私が書いた「つぶやき」の一部を再掲したいと思います。その数日前に行われた教育改革タウンミーティングで語られたことに対するコメントです。

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 さて、数日前からイヤなニュースが飛び交っております。「子どもの早期選別に『ヒトゲノム』の活用も語られ始めた」のだそうです。例えば東京新聞の記事をごらんください(すでにリンク切れしています)。

 脳を使うある種の能力と遺伝子には関係がありそうだという研究報告は古くからあります。遺伝子というものが発見される前から、知性というものも遺伝しそうだということは語られ続けてきました。それが、人種ごとに知性や人間性に差があり、それは遺伝を通じて変わらないのだから優秀な人種だけが生き残れば良いというのが、ヒトラーの率いたナチスドイツの思想だったのです。その結果、劣等民族としてのユダヤ人の虐殺が正当化されました。

 それとまったく同じ発想からなる思想が今の日本でよみがえってきたようです。ナチスドイツの優生思想に手を貸したのは、生物学者のヘッケルだと言われています。「個体発生は系統発生を繰り返す」という、生物学に関係のない人でさえ知っている有名なキャッチ・フレーズの産みの親と言われているヘッケルは、ユダヤ人は進化の途中で止まってしまった未完成の人種であり、さらに進化したものが優秀なアーリア人種のドイツ人であると決めつけたということです。

 個体発生が系統発生を繰り返す、という理論から言うとユダヤ人は未完成なドイツ人に過ぎないということになるようです。

 しかし、ヘッケルの思想に救いがあるとすれば、たとえユダヤ人でもこの先進化していけばドイツ人に追いつけるということかもしれません。

 それに比べると、生物学者ですらない江崎玲於奈や毛利衛のゲノムとヒトの知能に関する発言は、政治的に利用されているという点ではヘッケルのものと同等だとしても、その無責任さ加減においては、より犯罪性が高いと言わざるを得ません。「昨年、ヒトゲノム、(すなわち)私たちの体をつくっている遺伝子情報がすべて読みとられた。それは一人ひとり違う。その差は残念ながら持って生まれた遺伝子の組み合わせの差だ。(中略)そこをどう埋めていくのかが習熟度別学習であり、もっと伸びる子を伸ばす、それから今のままではついていけない子をどう救うか、が重要だ」(この議論は東京新聞の記事をもとにしておりますので、もしその記事が間違っているとしたらお詫びいたします。)

 遺伝子(ゲノム)のことや、知能や知性がどのようにできあがってくるかを少しでも知っている生物学者であれば、知能や知性が遺伝子とはそれほど簡単に対応していないことや、遺伝子を調べてその個体(子ども)の将来がわかるわけはないことなどは、常識です。だから、生物学者ではなくトランジスター学者や化学系の大学院を卒業した素人にゲノムをことを語らせた政府の政治的犯罪性は極めて高いと言わざるを得ません。

 文学者である三浦朱門が「限りなくできない非才、無才には、せめて実直な精神だけを養っておいてもらえればいいんです」とほざいているうちは、無視していればすむのですが、「科学者」という名の下に専門外の生物学・遺伝学に対して物理学・化学者があたかも専門家のように語るということを許しておくわけにはいかないと思います。

 ただの一市民として、そのような発言をしたいということならそれはかまいませんが、市民に政府の政策を説明するタウンミーティングのような場で、政府側パネリストとして科学者として登場する時には、うかつな発言は許されないと思います。

 江崎玲於奈さんと毛利衛さんには、深く反省していただいて発言を取り消していただくことと、政府の政策を支援するために学問的に間違った発言をするようなことは二度としないで頂きたいと思います。

 あなた達は、科学者としては失格です。

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 ちょっと言葉がきついので恐縮ですが、あえて直さないでおきます。
by stochinai | 2005-06-22 17:36 | つぶやき | Comments(5)

アクセス禁止

 北海道大学のネットワークは、運営係の人の超人的な奮闘にもかかわらず、内部に巣くうウイルスやスパイウェアに翻弄されています。

 また、安全を確保するためにメールやウェブもすべてプロキシ・サーバーを通して行っているようで、それが逆に外から見ると学内のどのコンピューターが問題を起こした場合でも「北大」が悪さをしているように見える結果になっています。

 そのせいで、以下のようないろいろな問題が発生しています。

・ 北大アドレス宛てのメールが届かない場合がある。
・ 北大外へのwebアクセスが不調になることが多い。
・ 北大内から goo blog(http://blog.goo.ne.jp/) へのアクセスが出来なくなっている。
・ googleの検索エンジンが北大からのアクセスを拒否する。

 そして、とうとう本日は我々の命でもある、専門科学雑誌のひとつ PNAS (Proceedings of National Academy of Sciences) サイトへのアクセスもできなくなってしまいました。
アクセス禁止_c0025115_1561392.jpg

 つい先ほどまでは、このエラーを返していたのですがいまやアクセスそのものをはじいてしまっています。

 大学から学術雑誌のアクセスができなくなったら、完全に機能不全状態に陥ります。

 困った。
by stochinai | 2005-06-22 15:09 | コンピューター・ネット | Comments(6)

アイイロニワゼキショウ

 庭に生えていた雑草だと思ったものが意外なほどきれいな花を咲かせたので、名前を知りたいと思いました。
アイイロニワゼキショウ_c0025115_1150960.jpg

 北海道が誇る先生達の理科サークルwisdom96が主催する画像掲示板で問い合わせたところ、アイイロニワゼキショウ(藍色庭石菖)という素晴らしい名前の花であるらしいことがわかりました。古典的な名前にもかかわらず、 北アメリカ原産の帰化植物だそうです。
アイイロニワゼキショウ_c0025115_11541455.jpg

 いろんな意味でいい気分です。
by stochinai | 2005-06-22 11:55 | 趣味 | Comments(0)

デフォルトがいじめ

 今日のニュースで公立学校でのいじめ8年ぶりに増加(毎日)と出ていました。

 そこにトラックバックした方達のブログを読んでみると、いじめなんてどこにでもあった、減ったなどということこそが信じられない、増えてきたなんてあえて言うことか、いじめなんてなくなりはしない、今までは隠していただけなんじゃない、などなどこいういうニュースこそが信じられないという声が多いようです。

 私も、いじめがここに来て増えてきたという調査結果にはなんとなく納得できないものを感じました。

 あえて言うならば、今の世の中の人間関係はおたがいにいじめ合いの状態が基本(デフォルト)で、親切だったり思いやりがあったりするほうが珍しいという状況になっていると思います。

 それが、いつからそうなったのかと言われてもはっきりとは言えませんが、少なくとも30年前とは明らかに違うと感じられます。

 たとえば、教室で学生に「突然で悪いけど、来週は****ですから」などとアナウンスします。我々が学生の頃なら、今ならおせっかいと言われるかも知れませんが、そのような情報は別のいくつかのルートを通じてたとえしばらく学校へ来ていなかった人間にも伝えられたものだったように思います。

 それが、最近はその情報が学生同士で横に広がっていくということがほとんど期待できなくなっています。全員にプリントにして配布するか、ウェブで公示するか、どうしても知らせたい場合には全員にメールでもしないと伝わらないというのが今の状況です。

 学生は、教室で全員の前で質問をすることも少なくなり、知りたいことがある場合には講義の後で個人的に聞きにきます。その質問と答えはみんなに役に立つから、是非とも公開の場で質問して欲しいと思うようなことでも、個人的に聞きにきます。それが、一人ずつ何人も繰り返されることもあります。

 この横のつながりのなさというものが、「意地悪」あるいは「いじめ」につながっていないか、といつも心配に思っていました。もちろん、情報を得られなかった学生は休んでいたり、話を聞いていなかったという自業自得の結果を、自己責任で受け取っているわけで、だれも悪いわけではないのですが、結果的にはいじめになっていないだろうか、と常々考えています。

 つまり、いじめようなどとは誰も思ってはいないけれども、結果的にいじめているのと同じことになっているという状態が、一般的=デフォルトなのが今の社会だというのが私の感想です。

 そして、それが日本に特異的なことだとも思えないのは、数日前に韓国の軍人が上官や同僚多数を手投げ弾や小銃で殺したという事件の原因がいじめだったということや、もちろん山口県で自作の爆弾を同級生に投げつけた事件の原因もいじめだったという事件と似たようなことが、世界的にたくさん起こるようになっていると思われるからなのです。

 最近は欧米でもいじめということが意識されてきたのか、映画を見てもブリング bullying といういじめを意味する言葉が良く出てくるようになりましたし、数ヶ月前には小学生の net bullying に関する番組まであったと記憶しています。

 6月18日に配信された第203回JMM [Japan Mail Media]で、冷泉彰彦さんが『from 911/USAレポート』 で、「『いじめ』との戦い」という記事を書かれています。その中で、アメリカでもいじめが大きな問題になっている理由のなかで、アメリカの日本化という興味深い分析をなさっています。ちょっと長いですが、引用させてもらいます。

「では、どうして2000年あたりから突然「いじめ」が流行し出したのでしょうか。私には、日本の状況と似ているように思えてなりません。日本では80年代の好況に拝金主義が流行する一方で、親の労働時間が長くなり、家族はすれ違いになって行きました。同時に共通テストなどによる学歴の序列化が進み、いわば、物質的な価値観の流行、親の子供への保護の総量の低下、更に単純すぎる競争システムによる若年層へのプレッシャーが一気に押し寄せたと見ることができます。更に、90年代不況は、この三つの問題を更に深刻化させながら子供を含めた社会に不安感を与え、事態を悪化させたように思います。

 アメリカの場合は、それがずれています。90年代の好況が拝金主義をもたらす一方で、進学熱も高まりました。一方で、親の労働時間は長くなり、子供への保護の総量は低下、こうした問題を抱えたまま2000年のITバブル崩壊により社会不安が拡大、更にテロや戦争による不安感や社会の分裂が追い討ちをかけている、時系列で整理するとそういうことになるのではないでしょうか。こう考えると、アメリカで起きつつあることと、日本で起きたことはほとんど重なってきて見えるのです。」

 アメリカで起こっていることが10年後には日本でも起こると言われてきましたが、こといじめに関する限りは日本がアメリカの10年先を行っていたということでしょうか。

 この件に関しては、先行していることを喜べませんね。
by stochinai | 2005-06-21 20:42 | つぶやき | Comments(5)

ニセアカシア

 札幌はニセアカシアが満開です。昼間はこうしてあでやかに咲いていますが、夜になるととても良い香りをふりまいてくれますので、この花を楽しむのは実は夜のほうが楽しむにはベターかもしれません。
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by stochinai | 2005-06-21 15:22 | つぶやき | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai