5号館を出て

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 レジ袋が有料化されるというニュースをやっていました。レジ袋を有料化すると、ゴミが減るということだそうです。

 もちろん、不必要にたくさんレジ袋をもらってゴミとして出すのは無駄なことだと思いますが、各家庭から毎日出ていくゴミのうちで、レジ袋がどのくらいの比率だというのでしょうか。NHKのニュースでもレジ袋がこんなにたくさん出ていますという説明で出ていた映像は、中にゴミがたくさんはいってふくらんだレジ袋の山でした。

 おそらく、ほとんどの人がレジ袋をゴミ袋として使って捨てているのではないでしょうか。つまり、レジ袋はただ捨てられているのではなく、ゴミ袋として立派にリサイクルされているプラスチックの優等生ではないかと、私は常日頃思っております。

 私のうちでも、燃えるゴミを入れる45リットルのゴミ袋以外、すべてのゴミはスーパーのレジ袋に入れて出しています。

 毎日出るネコのトイレの砂は、コンビニなどでもらってくる小さなレジ袋に入れています。ほとんど出ない不燃ゴミも、小さな袋で間に合います。ネコ砂がなかったらコンビニのレジ袋はあまり利用価値がないかもしれませんので、それはなるべくもらわないようにした方が良いかもしれません。しかし、コンビニのレジ袋は当面、有料化しないそうです。

 紙類を中心とする燃えるゴミを除くと、我が家で出る最大のゴミはプラスチックゴミ(発泡スチロールとラップ類、ヨーグルトなどのプラスチックケース)および飲み物の缶とビン・ペットボトルです。それにネコ餌の空き缶が1日か2日に1つずつ出ます。こうした、プラスチック類・ビン・缶類を分別してゴミステーションに出すのに、スーパーのレジ袋が大活躍してくれます。

 プラスチック類として出すゴミおよびペットボトルなどと比べると、スーパーのレジ袋の重さはおそらく何十分の一あるいは100分の1程度ではないかと思います。つまり、ゴミを減量化したいのならば、発泡スチロールとラップ類、それにペットボトルなどの容器を有料化した方がはるかにはるかに効果的だと思うのですが、なぜレジ袋の有料化がゴミ減量に有効だとして大宣伝されるのか不思議でなりません。

 レジ袋が有料化されても、ゴミを捨てる時には袋が必要ですから、わざわざ購入してゴミとして出さなければなりません。つまりゴミ袋として使われている「ゴミ」を減量することはできないのです。

 もちろんゴミを減らすことには大賛成なのですが、レジ袋を有料化するとゴミが減るという論理は、風が吹くと桶屋が儲かる程度の関連性しか感じられません。

 私の思考のどこかに大きな欠陥があるのでしょうか。なんか、巨悪を見逃す一方で雑魚をびしびし取り締まる、どこかの国の検察制度のようにも見える、レジ袋の有料化騒ぎです。
by stochinai | 2007-01-15 22:00 | つぶやき | Comments(27)
 昨夜はこ~すてっぱ~ずサロンと新年会があり、お酒の勢いに助けられながらも今年の北海道の科学技術コミュニケーションの展望を勝手に吹きまくり合ってきました。こういうのって、時々やると元気がでます。

 終わって帰路についたのは、例によって午前さまでしたが、それほど雪も降っておらず、そんなに積もるとは思っていませんでした。これは、今日の夜の風景ですが、朝起きたときにはすでにかなり積もっており、さらに昼過ぎまで結構降って、ようやく札幌らしい深雪の風景になってきました。
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 しかし、去年の今頃と比べてみると、今年は全然雪がすくないことが良くわかります。

 というわけで、今日もまた雪かきサンデーだったのですが、この程度の雪ですから少々もの足りないくらいでした。軽く終わってしまったので、カーポートの屋根の雪も下ろせました。このくらいなら、雪との闘いというよりは雪とのおつきあいという感じです。気温はプラスにならなくても、非常に過ごしやすい1月という印象の今年です。

 最初に書いた科学技術コミュニケーションの話題でいつも問題になることのひとつが、どういうモデルでコストを回収するのかということです。それと関係がないわけではない話題として、ついにマンガのフリーペーパーが出たという記事が気になりました。

 無料マンガ週刊誌:首都圏30駅で10万部 16日から
 10万部を発行し、16日から毎週火、水曜に山手線を中心とした東京都内と横浜、千葉、大宮など30駅の付近で手渡し配布する(午前8~11時ごろと、午後5~8時ごろ)。手軽に持ち運べるようにページ数は一般の青年マンガ誌の半分程度の230ページ。うち、26ページ分がフリーペーパーを支える広告になっている。
 タダなら読みたい、タダなら聞きたいという市民はたくさんいるはずです。そして、たくさんの市民が読んでくれるのなら、そこに広告を出そうという企業もたくさんあります。両者をうまくマッチングさせることができれば、いろいろなものが無料にできるということは商業放送およびインターネットが証明してきたことです。

 ただし、やはりそのマッチングがうまくいかなければ採算が取れないわけで、そこが悩みどころなのでしょう。

 このフリーのマンガ週刊誌、札幌などでは配布されないようなのですが、16日からはネットでも無料配信されるようなので、是非ともチェックしておきたいと思います(http://gumbo.jp)。
by stochinai | 2007-01-15 00:36 | 札幌・北海道 | Comments(4)

女神のスリッパ

 毎年、この時期になると窓際にあるパフィオペディルムがきちんと咲いてくれます。
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 色から察するとかなり原種に近いのではないかと思われますが、種名や品種名はふめいです。昨年までは1輪しか咲かなかったのですが、今年は2輪に増えました。
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 英語では女性のスリッパ (Ladyslipper) というのだそうですが、ラテン語の「女神のスリッパ」のほうが響きがよさそうです。ちょっと横からみると、わかるのですが中央下にある唇弁という花びらが、スリッパに見えるということでしょう。
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 エレベーター前の踊り場の窓際の気温は結構低いのですが、キャットテールも元気に咲いていて春爛漫です。
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by stochinai | 2007-01-13 16:41 | 趣味 | Comments(3)
 論文のねつ造と似て非なるものに、研究者の不正経理問題があります。

 今日、北大の地震火山研究観測センター長だった島村さんが、地震計をノルウェーに売却して現金化したことが詐欺罪にあたるとして、懲役3年、執行猶予4年の有罪判決を受けました。

 その「代金」が約2030万円だったということですが、その後島村さんは北大に約1850万円を支払い和解しているそうです。さらに、告訴されたときに所長だった国立極地研も辞職して社会的制裁を受けているということで、執行猶予がついたようです。

 私はこの件について、ニュースで報道される以上には、まったく何の内部情報も持ち合わせていないのですが、ひょっとすると島村さんが北大から極地研に移る時に、お金を北大地震火山研究観測センターのプール金として置いていっていたならば、この騒ぎが起こらなかったような気もしております。

 まあ、ものを売って換金するということは、めったに見られないことですが、昔の大学では今ならば絶対に許されない不正経理は組織ぐるみでやっておりました。そもそも、研究費が単年度決算で、旅費は旅費、研究費は研究費で、それらの間で融通することすら許されず、さらにお金を余すことも許されなかったのです。使い切れないから返還したいということも許されなかったと思います。

 お金が残りそうな時にどうするかというと、もっとも「安全な」使い方が、近くにいる他の研究者に使ってもらうということです。実際にそういうケースはたくさん見聞きしました。しかし、もともと少ないお金ですから、なんとか翌年の研究に使えないかと考えた結果なのか、もっとも普遍的に行われていた方法が「カラ出張」と「預かり金」という方法です。

 カラ出張は文字通り、出張せずに出張届だけ出して旅費を現金で受け取ることです。現金になってしまえば、研究に使おうと私的に流用しようとわからなくなりますが、大学では大多数のお金は公金として、研究や教育に使われていたと思います。私も大学院生の頃、学会発表の旅費を現金で頂いたことがありますが、おそらく先生のポケットマネーから出ていたのではなかったと思います。

 それから、預かり金というのは、業者から実際には何も買わずに、形だけものを買ったことにして請求書をもらい、それに対してまずお金を支払ってしまい、翌年以降にゆっくりとそのお金を研究費として使うというものです。こちらは、業者がお金を預かっていますので、結果的には研究に使う試薬や消耗品、備品などを買わざるを得ないため、ほとんどの場合、「正しい」研究費になっていたと思います。

 もちろん、どちらも完全な不正経理ですので、今ではまず行われているところはないと思いますが、こんな頭の良い単年度決算の予算の使い方を研究者が思いつくはずはありません。

 すべては、大学の事務系の官僚に教わったものだと思います。事務系の職場では、研究者に負けず劣らず柔軟に利用できるお金がありませんので、事務職員の福利厚生や自主学習などにかかるお金を捻出するために、カラ出張、購入品の品名替え、預かり金などのテクニックが日本中の国家・地方の役所で行われていたと思います。私企業でもやっていたのかもしれませんが、柔軟に使える予算がある場合には、そんなややこしいことをする必要はないでしょう。

 もちろん、今ではカラ出張や預かり金などはほとんどまったくと言って良いほどなくなっていると思いますが、場合によっては同じような手法で自由に使えるお金(もちろんほとんどの場合、研究費です)を手に入れたくなる誘惑はあちこちにあるのではないでしょうか。

 特に、今回の島村さんの場合や、早稲田の先生の場合などは、そのままにしておくと寄付になったり、返還しなければならなくなかったはずのものが、ちょっと「頭を使う」ことで、翌年以降の研究費として使える1000万単位のお金が手に入るという誘惑に負けたのではないかという気もします。

 もちろん、そのように正しい経理からはずれてしまったお金は、しばるものがありませんので、研究以外の私的流用へとささやきかける誘惑もあるでしょうし、人によってはその誘惑に負けて研究費の一部で、飲み食いしたり、異性とおつきあいしたりというような結果になってしまった方もいるかもしれません。

 弾さんが使った意味とは違うのかもしれませんが、持ちつけたことのないお金を持ってしまった時のお金の使い方に関して、「商人の目で見ると学者の脇というのはずいぶんと甘く感じる」ということになってしまうのかもしれません。

 もともと、研究者にそれを教えてくれた官僚はもっと賢く、やばくなりそうになる前に、いつの間にかカラ出張や預かり金などということはやらなくなっているようで、気がついてみたら教えられた研究者の一部の社会の動きに疎い連中が血祭りに挙げられているように見えることもあり、なんだか哀れにも見えてきます。
by stochinai | 2007-01-12 22:59 | 大学・高等教育 | Comments(9)
 不二家は今日記者会見を開き、昨年11月8日に消費期限切れの牛乳を使用したシュークリームを出荷したと発表するとともに、ほかにも期限切れ原料を使用していたケースが判明したと公表したとのことです。

 今、ネットで一番詳しく書かれているのは、ロイターなので(ということは、世界に配信されたということでしょうか)、引用させてもらいます。
 問題があったのは、同社の埼玉工場。昨年11月8日、前日が消費期限切れの牛乳を使ってシュークリーム2000個を製造し、関東や新潟、福島、静岡の1都9県に出荷していた。調査を進めた結果、同工場ではこのほかにも消費期限切れ牛乳を7回使用していたことが判明。最大で1万6000個のシュークリームを出荷した可能性があるという。さらに、アップルパイなどに使うりんごの加工品の賞味期限切れのものを4回使用していたこと、細菌検査で出荷基準に満たない「シューロール」と呼ばれる洋菓子を出荷していたことも判明した。また、同工場内でねずみが捕獲されたことも確認されており、2004年には1カ月で50匹が捕獲されたこともあったという。
 昨年の11月に問題が発覚したのは、おそらく内部告発だと思います。公益通報者保護法がありますので、内部のトップへと通報があったのでしょう。また、同じ法律により、会社が事実をもみ消したり告発した社員に不利になるような扱いをしようとした場合には、通報者が外部へ通報することの正当な理由になりますので、内部で検討した結果隠し通すことはできないと判断して、今日の会見になったのだと思います。

 しかし、残念ながら発覚から2ヶ月も公表せずに、問題が起こったものと同じ製品の販売が続けられていたようですので、おそらく不二家はこれでアウトだと思います。

 雪印乳業の食中毒事件の記憶がそれほど古いものではないだけに、今回の不二家の対応は非常に不思議な気がします。雪印乳業がこんなにがんばっても、まだ元の状態にまでは戻れていないという現実が目の前にあるというのに、不二家の経営陣はいったいどこに目をつけているのでしょう。

 ロイターの記事によると、「不二家の洋菓子事業は、2003年3月期から4年連続で営業赤字に陥るなど再建途上にある」ということなので、消費期限切れの材料を使ってお菓子を作ったということは、あるいは会社ぐるみの節約作戦だった疑いもあります。

 昨今の、いろいろなニュースを見聞きしているならば、今の日本の消費者は少し過剰ではないかと思われるくらい、安全とか健康にこだわっているのがわかるはずなのに、そうしたものに対処できなかったとしたら、会社としての寿命はすでに尽きていたと判断しても良いのかもしれません。

 それにしても、不二家という老舗がこのような形で破綻しそうな雰囲気を見ると、戦後の日本の社会そのものが同じように劣化して破綻しつつあることを感じさせられます。

 ペコちゃん・ポコちゃんにはかわいそうですが、不二家はこれで食品業界から引退することにならざるを得ないと思います。
by stochinai | 2007-01-11 23:10 | つぶやき | Comments(14)
 今日のクローズアップ現代は「揺らぐ科学の信頼~東大・論文ねつ造疑惑~」でした。見ていて、とても居心地の悪い気分だったのですが、この番組のどこを見ても、今後論文ねつ造などの不正行為がなくなるであろうとは思えなかったのは私だけではないと思います。

 JSTの北澤さんが出ていらして、ねつ造の原因として現在の研究費配分システムに問題があるとあまりにもあっさりと認めていらっしゃったことも、この先大規模な改革が起こらないだろうということを予感させるものでした。つまり、現在のような方法で研究費を配分したらこうなるだろことなどは、ずっと前から(そういう制度にする前から)わかっていたというふうなおっしゃりようなのです。

 私が感じた「雰囲気」は、一握りの悪人が出てきたとしても、それは厳罰に処することでだんだんと減って行くであろうから、現在の研究費配分システムを変えることにはならないだろう。北澤さんは、決してそうはおっしゃっていなかったのですが、そのようにしか聞こえなかったのは私の空耳なのでしょうか。

 それと、もうひとつ。マスコミはネタとして論文ねつ造疑惑もおもしろいから書き立てることをしますが、騒ぎがおもしろくて書いているだけで、科学の世界を良くしようとか、大学を良くしようなどという高い志がちっとも伝わってきません。おそらく、そんなことはどうでも良いのでしょう。

 そして、おそらくそれは、この国全体を覆っている雰囲気なのではないでしょうか。大学とか研究所とか、税金を不正に使うのは許せないけど、だからと言って大学や研究所がどうなろうと国民にとってはどうでも良いことなのではないでしょうか。

 実は、私が科学技術コミュニケーションをしっかりとやななければならないと感じているもっとも大きな理由はここにあります。国民が、自分たちの生命や暮らしを守るために科学技術が必要になっているこの時代こそ、税金で運営している大学や研究所を自分たちのために利用するべきだということに気がついて欲しいと思っています。

 税金で運用されている限り、それは納税者である国民のもので、政府のものでもありませんし、ましてや税金をほとんど払っていないくせに、産官学共同研究などと言って大学を私的利益のために使おうとしている企業のものでもありません。

 先日のエントリー「科学技術コミュニケーター利用のすすめ」に引用した文章の前にあったものを転載します。

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市民のための大学

 このように大学が市民社会から無視されているという状況は、大学における教育と研究の危機であるだけではなく、納税者である国民にとっても大きな損失です。そもそも国立大学はその運営の大部分が税金によってまかなわれていますので、そこで行われている活動の成果は納税者に還元されるべきものです。もちろん、大学へ進学した学生はそうした恩恵を直接に受けるのですが、すべての国民が大学における研究や教育活動の恩恵を享受する権利があるはずです。

 たとえば、巷に氾濫している健康食品や健康器具などが、科学的に有効だと判断されるのかどうかなどについて、専門家である研究者が判断してくれるとしたらどうでしょう。あるいは、小学生のお子さんが、水が凍る時に「ありがとう」と声をかけたらきれいな結晶ができて、「ばかやろう」と声をかけたら汚い結晶ができるということを学校で習ってきた時に、それがほんとうかどうかについて大学で氷の研究をしている専門家が相談に乗ってくれるとしたらどうでしょう。さらには、ある川にダムを作るという計画が持ち上がった時に、そのことの是非について工学、理学、農学、水産学、経済学、法学などの見地から専門的に調査・研究をしてくれる大学があったらどうでしょう。そのような問いに納税者の立場に立って適切に対応してくれる研究者を確保するためには、やはり税金でサポートされた大学や研究所が必要なのではないでしょうか。

 しかし現実は、大部分の市民は「大学や研究所は自分たちとは関係のないところだ」と感じており、大学側の人間は「市民ではなく政府や官庁が自分たちを支えてくれる存在だ」と思い込んでいるという不幸な関係にあります。

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 科学者と幸福な関係を築き上げることができれば、市民は大学を自分たちのものであると感じて利用してくれるようになるような気がします。そして、それは大学にとっても素晴らしいことなのです。

 私の科学技術コミュニケーションの出発点は、ここにあります。
by stochinai | 2007-01-10 23:29 | 科学一般 | Comments(11)

帰路(雪化粧の街)

 ひさびさに深雪になりました。地下鉄とバスを乗り継いでの帰路です。

 北大構内
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 大学を出たところにあるコンビニ
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 北大前の住宅街
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 地下鉄駅構内
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 バス乗り場近辺
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 空いたバス車内
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 バス乗り場
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 ETC横を疾走するバス
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 バスを降りるとまた雪が
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by stochinai | 2007-01-09 23:56 | 札幌・北海道 | Comments(3)
 先ほどから、本格的に雪が降り始めました。久々に、世界が真っ白の銀世界になっています。なんだか、ようやくクリスマスが来たような気分です。

 今日は原稿を書いておりました。その一部で、理系の研究者がどうやって科学技術コミュニケーションをしたらよいのかということを書いていたら、結果的に「科学技術コミュニケーター利用のすすめ」みたいな文章ができあがってしまいましたので、ご参考までに転載しておきます。

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 では、理系研究者は具体的にどんな科学技術コミュニケーションを行っていけば良いのでしょうか。ほとんどの理系研究者は専門家かあるいはその卵である学生・大学院生を相手にしたコミュニケーションの経験しかないと思います。研究者同士の場合には、共有しているものが多いのでコミュニケーションに技術はほとんど必要ありません。場合によっては、データの数値を示すだけで相手が理解してくれることさえあります。また、相手が専門の学生の場合にも、伝わらない場合には理解できない側に責任があるという態度に出ることも可能ですから、これまたコミュニケーションのための努力を怠りがちです。

 大学教員の多くが最初にコミュニケーションの難しさを実感するのが、高校を出たての初年度学生を相手に講義する時だと思います。自分が研究の現場で使っている言葉がことごとく通じないという事態を前に、専門家以外の人に話をするといことの難しさに打ちひしがれた経験を持っていない研究者は珍しいのではないでしょうか。その状態から、いきなり流行の科学技術コミュニケーションである「サイエンスカフェ」とか「小学校に出前授業」とかができるわけがありません。普通の人々に科学技術を伝えるということは、決して簡単なことではありません。本書の第2部には、コミュニケーションのための具体的な手法がふんだんに紹介されていますが、ただでさえ研究・教育で繁忙な現場の研究者が、そうした手法をマスターして、市民と科学技術コミュニケーションするということもなかなか難しいことです。しかし、だからといってコミュニケーションを拒否することは科学者として自滅行為であることは上に述べたとおりです。

 では、ほんの一握りのコミュニケーション能力に長けた「歌って踊れる研究者」を除く大多数の研究者は、どうしたら良いのでしょうか。幸いなことに、我々研究者と普通の人々をつないでくれる「科学技術コミュニケーター」というものが誕生しました。科学技術コミュニケーターは、研究者と市民の間に立って、最新の科学技術を科学者から市民へと伝え、また逆に市民が科学技術に対して持っている疑問や希望を研究者へと伝えるという役割をはたす、新しく出現した人材です。場合によっては、研究者自身がコミュニケーターを演じることも可能ですが、特定の専門領域に囚われることなく市民と交流するには、より市民に近いポジションにいて科学技術に対する広い興味を持っているコミュニケーターの力を借りるべきでしょう。今では、北大の科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)などで教育を受けた、プロフェッショナルなコミュニケーターも育ち初めています。

プロデューサーとしての科学技術コミュニケーター

 科学技術コミュニケーターは、一般の市民に比べるとはるかに高い科学技術リテラシーを持っているのみならず、ある程度最新の科学技術に関する知識も持っており、市民の目線を持ちつつも研究者の専門の話を理解できる存在です。専門家はコミュニケーターと会話することによって、自分の話がなぜ市民に通じないのかを知ることもできるはずです。さらに、彼らはウェブや印刷物を含めた各種のメディアコミュニケーションの訓練も受けているため、研究者と市民の双方を満足させながら、納得のいくコミュニケーションを媒介するスキルを持っています。例えば、現在でも研究者自身の手によって多くのウェブサイトが作られていますが、その多くはデザイン的にも洗練されておらず、普通の市民が簡単に理解できる文章で説明されてはいないものがほとんどです。そのようなサイトも専門のコミュニケーターの助けを借りると、専門性を失うことなく市民にも理解され、しかもビジュアルにアピールするものに生まれ変わることでしょう。同じように、広報誌やポスターなども、単なる宣伝を越えたコミュニケーション・メディアとして生き返ります。さらに、彼らはサイエンスカフェやサイエンス・ギャラリーといった、対面型コミュニケーションにおいても、研究者と市民の間に立って双方が納得できる場を作る技法を身に付けています。いわば、科学技術コミュニケーターは科学技術コミュニケーションを演出するプロデューサーです。そうしたコミュニケーターを積極的に利用することによって、研究者と市民の双方にとって望ましい科学技術コミュニケーションが、比較的簡単に実現できることになったのです。

 科学技術コミュニケーターとともに努力を続けることによって、研究者と市民からなる真の科学技術コミュニティを形成することができると思います。そして、その時に初めて研究者と大学が日本という社会において市民権を得ることができるような気がします。先は長いかもしれませんが、持続的なコミュニケーションの向こうに市民と科学の幸福な未来が期待できるのではないでしょうか。
by stochinai | 2007-01-08 23:55 | CoSTEP | Comments(7)
 ニュースで見ると、あちこちで暴風や大雪の被害が出ているようですが、札幌に関してのみ言うと、今朝起きた時はびっくりするくらい昨日と同じ景色でした。Salsaさんのブログを見てみると、夜中3時頃にかなり雪が降っていたようなのですが、朝までには雨に変わりすべてが融けてしまったようです。

 夕方まで、どんよりと曇ったままでしたが、風もそれほど強くならずに、このまま通り過ぎてくれるのかと思っていたら、さすがに「爆弾低気圧」。それほど、甘いものではありません。

 夜半にむかってだんだんと風が強くなってきました。雪も降ってはいますが、それほど多くはないので風に吹かれて舞い踊っているという感じです。外の気温はただいま0.0℃。この時期、この時間としては暖かいです。

 テレビで、日本海の巻き網漁で未成熟のマグロを獲りまくっているという話が放送されています。それほど真面目に見て(聞いて)いなかったのですが、また例によって漁法の発達によって、獲れるものはどんどんとってしまうという、日本漁業の伝統がここでもいかんなく発揮され、このままだとマグロが絶滅してしまうかもしれないという話だったと思います。

 大学に入り立ての頃、生物の先生が「獲れるものなら資源の枯渇など気にもせずに獲り尽くすのが漁師というものだ」とおっしゃっていた言葉をいまでも時々思い出します。

 成熟するまでに何年もかかる野生動物の未成熟個体を獲るということの意味を理解していないあるいは無視しているのだと思いますが、マグロに関しては世界の漁獲量の4分の1を消費しているという日本の消費者である我々にも責任がないとは言えません。

 スーパーマーケットなどで大量に売られているマグロの切り身を見ても、それが若い個体なのか何回か産卵した個体なのかを見分けることができませんが、未成熟の個体はおいしいと言っていましたので、高いものなのかもしれません。

 家畜などのように、自分たちが殖やしているものならば、子牛のフィレ肉だとか、子羊の胸腺だとか、若鶏の唐揚げだとかを食べるのも否定はしませんが、自分で殖やしているわけではない野生動物の子どもまでを食べることはないと強く思います。

 自分の欲望を満たすためならば、何をしてもいいのだという思想があるのだとしたら、遅かれ早かれこの国は滅びますね。そういう国の一員として、一緒に滅びなさいと言われたら返す言葉もありません。

 美しい国なんて、口が裂けても言えないんじゃないでしょうか。
by stochinai | 2007-01-07 23:57 | 札幌・北海道 | Comments(4)

降り続く雨

 今日は午後から雨になりました。明るいうちはパラパラという感じで、フードをかぶる程度でなんとかなるという感じだったのですが、夜になってからは傘なしでは無理という感じでコンスタントな振り方になっています。

 元日に雨が降ってから、雪はほとんど降らず、今日また本格的な雨が降っているのですが、お正月にこれほど何度も雨が降ったというのは、私の記憶にある限りでは初めてのことのような気がします。
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 雨はずっと降り続いているのですが、気温が微妙に低いせいもあってか、意外なほど雪が融けるのが遅いと感じられます。モミジの枝には、氷もできているようですので、降った雨水の温度は0℃付近にあるのでしょう。ちなみにデジタル温度計で計った外気温は0.9℃でした。
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 昨日から、天気予報で脅かされている「爆弾低気圧」に成長する恐れのある低気圧による雨の中心は、現在津軽海峡付近にあるようですが、今の札幌は驚くほどの無風状態です。

 二つの低気圧はまだ融合していないようなのですが、これが融合すると爆発的に発達することになるという予報なのでしょうか。まあ、こういう場合は最悪の事態を発表する傾向にあるのではないかと思いつつも、予報がはずれて明日になってもそれほどひどくなることなく通り過ぎてくれることを願っております。

 それにしても今年は雪が少なく、このままでは来年の春以降に使う水が不足するのではないかと心配になるほどです。明日明後日と連休ですので、多少の荒れも社会生活にそれほど大きな影響を与えることもなかろうと思い、少しの雪なら積もって欲しいなどと矛盾した気持ちを抱えながら窓の外の雨を眺めたりしております。
by stochinai | 2007-01-06 23:46 | 札幌・北海道 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai