5号館を出て

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 こちらこちらこちらは、もっと早かったようですが)で取り上げられていますが、ついにGoogleモデルで無料の年賀状が飛び出しました。

 郵便局でも、はがきの一部に広告が印刷されていて、5円安い45円のエコーはがきが売られていますが、こちらは完全無料になる年賀はがきです。

 もちろん、タダになるには理由があり、はがきは中に広告が印刷されている圧着はがきになっており、そこに見開きで全面広告がはいっているというわけです。圧着をはがさない限り表面には普通の年賀状のように宛名が書け、裏は白紙になっておりますので普通の年賀はがきと同じ感覚で使えます。
160枚まで年賀状が無料_c0025115_2052151.jpg
 しかも写真をご覧になればわかるように、下にはお年玉くじまでもついています。もちろん、郵便局のお年玉とは違うものですが、なんと1等の賞金が現金100万円です。2等10万円、3等が1万円だそうです。しかし、ここにも仕掛けがあって、郵便局のもののように自動的に当たりを引き当てることができるのではなく、はがきを受け取った人が宛名面下部に印刷されたQRコードを携帯電話で読み取り、抽選ページから空メールを送らなければ抽選に参加する権利が得られません。また、たとえこの年賀状を複数枚受け取ったとしても、抽選に参加できる権利は1回だけです。

 とまあ、よくよく考えると、最初に個人情報を送り、コマーシャル入りの年賀状を使い、その年賀状を受け取った人がお年玉くじに参加したければまた携帯メールアドレスを送らなければならないなど、使う側にとってもそこそこの「負担」を強いられることもまた事実です。まさに、Googleモデルで動いているわけです。

 しかし、なんといっても160枚までの年賀状が無料でもらえるというのは、今までにない大きな仕掛けだと思います。若い人が遊び感覚で使うのであれば、充分ではないでしょうか。

 ここにある情報リリースを読むと、どうもスポンサーもこれから集めるという気配も感じられるので、本当に成功するものかどうかはこれからの申し込みの数に依存するような気がします。

 参考までに、プレスリリースの中にあった企業向けの価格表を転載しておきます。高いのか安いのか私には良くわかりませんが・・・・・。
160枚まで年賀状が無料_c0025115_20175481.jpg
 広告主にとってみれば、一枚200円以上払うことによって成立する無料の年賀状(50円)でした。
by stochinai | 2008-10-24 20:21 | コンピューター・ネット | Comments(0)
 スコッチテープを暗闇でリールからはぐ時に光が出るという話は、以前に聞いたことがあります。物理学の分野ではトリボルミネッセンス(摩擦ルミネッセンス)という現象として、400年も前にフランシス・ベーコンが発見していたことだそうです。ベーコンは砂糖のかたまりを爪でひっかくと光るとことを観察したそうです。YouTubeで探すと、水晶を爪でひっかいて(石英の)小石でこすって光らせているものがありました。



 学問的にはプラスとマイナスに分けられた静電気が戻る時に光を発すると説明されています。

 しかし、まさかそこでX線が出ているとは誰も思わなかったと思うでしょうが、実は1953年にロシアの研究者がそういうことを言っていたと、NatureNews の記事には書いてあって、今回 Nature の表紙にもなった論文を書いた研究者達もそのことは知っていながら疑っていたのだそうです。まあ、アイディアは借用したものとは言え、ここまできちんと証明したのですから立派だと思います。

 Nature論文
 Correlation between nanosecond X-ray flashes and stick–slip friction in peeling tape

 この研究のミソは、真空中で実験をしたことで、真空でなければX線は出ませんから、悪くすると大騒ぎになりかねなかったスコッチ・パニックはそれで避けられるでしょう。とは言え、X線の強さは本格的で、歯医者さんで使うレントゲンフィルムを使って、指の骨を透視した写真が撮影されています。関節まではっきりと写っていますから、すごいものです。
スコッチ・テープをはぐ時にX線が出るという大発見_c0025115_20573918.jpg
 どうしてX線が出るのかということは、現時点ではわからないのだそうですが、実験の様子を撮した次のビデオを見れば論文を読む必要はないかもしれません。こちらはNewScientistのサイトからたどりました。



 それにしても、こんな理科実験に毛のはえたような、またとりあえず何の役にもたたないような研究を表紙にまでして大々的に取り上げるところが、Natureのいいところですね。
スコッチ・テープをはぐ時にX線が出るという大発見_c0025115_215171.jpg
 真空を作る機械やX線の測定器を除くと、基本的に身の回りにあるものだけでできる手作り実験ですから、理科少年に夢を与えるような研究だと言えるのではないでしょうか。

 アイディアと Nature の遊び心に敬意を表します。

 WIRED VISION SCIENCE & TECHNOLOGY に日本語に翻訳された解説記事があります。こちも是非ご覧下さい。実験室の内部を撮した写真が興味深いです。

 「真空中で粘着テープを剥がすとX線生成」Nature誌掲載:動画と画像で紹介
by stochinai | 2008-10-23 21:12 | 科学一般 | Comments(11)
 前から噂されていたこととは言え、公式に発表されるとやはりショックです。

 日本語翻訳版 WIRED NEWS 「中国での移植手術、臓器の90%は処刑された囚人から」:『Lancet』が報告

 英語原版 WIRED SCIENCE China Needs to Rein in Out-of-Control Organ Market

 おおもとの情報はイギリスの The LANCET という医学雑誌で、オンライン版の Web focus というところで中国特集をやっています。読むためには、無料ですが登録が必要です。

 Government policy and organ transplantation in China

 それを見ると、中国は臓器移植の先進国であることがわかります。この図をごらんください。腎臓と肝臓移植の件数の年次推移です。
中国での臓器移植90%のドナーは処刑囚_c0025115_214812100.jpg
 腎臓は万に届く数、肝臓も千を軽く越えています。日本では、臓器移植法がありますが、せいぜい年に10数例です。

 世界一の移植大国アメリカには及ばないようですが、あっさりと世界第2位になって、アメリカに肉薄する勢いになっています。あまり報道されることはないようですが、これを受けて中国で臓器移植を受けようと外国からの「移植ツアー」が大きなビジネスになっていたこともニュースで流れていた記憶があります。

 ところが、この移植臓器のドナーのなんと90%以上が処刑された死刑囚だというところで、大きな国際的非難を浴びています。さすがに、中国でもそれではマズイとおもったのか、2006年頃からドナーの同意を取ったり、脳死の診断をしっかりするようにという規制がかかるようになったようです。グラフを見ると、確かにそのあたりから臓器移植の例数が減ってきています。2007年にはようやく法律もできたようです。逆にいうと、それまでは法規制もなしに移植をしていたというのですから、考えるだけでかなり恐ろしいことです。

 規制がかかる前には600以上あった移植をする病院が今では、正式に許可されたものが87にまで減り、77が「仮免」で営業中だそうですが、1年間に4分の1にまで減ったのは歓迎すべきことでしょう。移植ツアーも公式には禁止されたようです。

 こういう倫理のグローバリゼーションは大歓迎です。
by stochinai | 2008-10-22 22:15 | 医療・健康 | Comments(0)
 抗生物質耐性菌の話は有名になり認識も広まっていますので抗生物質の不必要な使用や、菌に対する対処方などもいろいろと工夫されているので、不必要に恐れることはないと思うのですが、開発されてからそれほど時間のたっていないタミフルに耐性のあるインフルエンザウイルスが増えているという話は、なんとも不気味です。

 今までは、外国の話だと思っていたのですが、世界一のタミフル使用実績だと言われている我が国に耐性ウイルスが登場するのは、インフルエンザウイルスの進化速度を考えると意外なことではないと思われます。

 治療薬タミフル効かない 今冬の拡大警戒
 耐性インフルエンザウイルスが昨冬、鳥取県で突出
 治療薬「タミフル」が効かないインフルエンザウイルスが昨冬、鳥取県で30%以上という高頻度で見つかっていることが20日、国立感染症研究所の緊急調査で判明した。

 同研究所では昨冬、欧州を中心に耐性ウイルスが急速に広まっているため緊急調査を実施。全国の地方衛生研究所から送られてきたソ連型ウイルス(H1N1)1544株について、耐性株かどうかを調べた。

 その結果、全体では2・8%にあたる44株が耐性株だったが、鳥取県だけは68株のうち22株(32%)と、耐性ウイルスの割合が特に高かった。隣接している島根県(1・2%)や兵庫県(7・5%)では1割以下だった。

 タミフル耐性ウイルスは昨年11月以降、欧州を中心に世界中に流行が拡大。ノルウェーの67%をはじめ、欧州諸国全体で20%以上を占め、南アフリカなどではソ連型ウイルスのほぼすべてが耐性ウイルスになっている。
 「今後、ソ連型ウイルスが流行した際には、タミフル投与が必ずしも有効な治療でなくなる可能性もある」ということですから、タミフルにたよらずにインフルエンザに対処する作戦を立てておく必要があると思います。

 インフルエンザは対処を誤ると、普通の風邪と違って重篤な症状になるので恐ろしいこともあるのですが、ある程度症状を抑え込んで時間稼ぎをすれば、我々の身体にある免疫システムが発動してきます。

 インフルエンザに限らず、感染症(伝染病)一般に言えることですが、一番最初にすべきことが人から人への感染を防ぐということです。ですから、インフルエンザになったと思ったら、他人にうつさないために、まず外出を控えることが社会的義務だと思います。無理をしなくてすむように、会社・学校そして社会全体が協力できる体制があれば良いのですが・・・。

 もちろん、人からからインフルエンザ・ウイルスをもらわないように、手洗いやうがいを頻繁に行うことが推奨されます。また、複数の人が出入りする場所では、ドアノブや電話、共通でさわる道具や機器の消毒(塩素やアルコール)を励行したいものです。

 人から人への感染が阻止されると、病原体はその毒性が下がるように進化するという説もあるようですから、人間社会全体としてみると、感染の遮断は薬で治療するよりもはるかに効果的な作戦になると思います。

 感染症に対処する人間の英知こそ「科学」なのだと思います。とりあえず、病原体に対しては(思想信条を越えて)人間として団結しましょう。
by stochinai | 2008-10-21 22:44 | 医療・健康 | Comments(1)

100万突破

 あっさりと越えてしまいました。
100万突破_c0025115_951391.jpg

 2008年10月21日午前8時頃と記録しておきたいと思います。
by stochinai | 2008-10-21 09:52 | コンピューター・ネット | Comments(0)
 9時のNHKニュースで、いきなりあちこちの国立大学法人で交通費として支給されているJRの定期券代が、お得な6ヶ月定期ではなく割高な1ヶ月定期代が支給されていたとして問題にされていました。税金の無駄遣いだという調子でした。

 確かに、6ヶ月定期を買えば安くなるとしても、国立大学法人の給与体系では半年分の交通費を前払いするなどということはできないのではないでしょうか。もしも1ヶ月定期が2万円くらいだったとすると、6ヶ月だと10万円を超えることになります(あまり良く知らないので、数字はあまりあてになりません)。つまり、定期を買う時に交通費を前払いしてもらえないのだとしたら、10万円以上の定期を買うことがつらいという教職員もいて不思議はありません。そういう教職員の経済状況を思ん図って、1ヶ月定期代を支給するのが犯罪とまで言えることなのでしょうか。

 小泉改革による国の方針で交通費は6ヶ月定期を基準にして払うこととなっていたのだそうですが、その時に6ヶ月分の交通費を前払いするということも決まっていたのでしょうか。もしも、それができることになっていたにもかかわらず、遵守していなかったというのであれば一方的に国立大学法人が悪いということになるのかもしれませんが、定期券は6ヶ月分の購入を前提にして支給するのはそれを6で割った分ということになるのでしたら、必ずしもそれを守っていなかったからといって、単純に「税金の無駄遣い」と断言することには違和感を感じます。

 そもそも、法人化してからは国立大学に渡される運営交付金は一定になっており、無駄遣いをした場合に、損をするのはまず第一に当該の国立大学法人ということになります。毎年、1%ずつ予算を削減され、来年は一気に3%の削減がくるということも言われている中、各大学では言われなくても交通費などの削減をしたいと思っているはずです。

 現状で交通費の節約をしたとしても、大学に配分される運営交付金は削減される訳ではないので、大学に交付される「税金」は変わらないのです。つまり、6ヶ月定期にしようが1ヶ月定期であろうか、税金から支出される額は変わらないのです。それなのに、今日のニュースでことさらに国立大学における税金の無駄遣いが強調されたのはどうしてなのでしょう。

 しかも、各大学で数千万円から数億円です。それぞれの大学にとってみたら小さな割合で、年金や医療費関連での税金の無駄遣いから見たら、誤差範囲になるくらいの小さな額です。

 もちろん、たとえ1円でも税金を無駄に使うのは良くないというのは正論ですが、方や何十億・何百億、時には何兆円という税金の無駄遣いをやっているところから比べたら、国立大学の交通費で支給されている定期代が1ヶ月分か6ヶ月分ということをトップに近いニュースとして扱うべきものなのでしょうか。

 非常にうさんくさい、政治的意図が感じられるニュースだと思いました。

 こんなことを続けるのだとしたら、NHKの視聴をやめようかとも思います。
by stochinai | 2008-10-20 21:37 | 大学・高等教育 | Comments(24)

ようやく100万人

 訪問者というのはユニークユーザー数(重複しないブログ来訪者数)のことだと思いますが、もうすぐ100万人に達します。
ようやく100万人_c0025115_650186.jpg
 長かったんだか短かったんだか良くわかりませんが、こんなにたくさんの方にご訪問いただいたということは感慨深いものがあります。

 読んでいただき、まことにありがとうございました。

 とはいえ、100万人を区切りに何かしようという気にはなりません。「今日まで、そして明日から」という感じです。

 今後とも、よろしくお願いできれば、と思います。
by stochinai | 2008-10-20 18:48 | コンピューター・ネット | Comments(2)
【冒頭に追記】
 この件に関連して、非常に重要なエントリーが lanzentraeger さんによって書かれています。是非ともご参照ください。

 (25) 博士課程に進むメリット ~博士の株も暴落するのか?~

 もうひとつ、ありました。ktatchy さんです。

 ”うすっぺら日記”に啓発されて

 いずれも博士後期課程まで進学されて、ノンアカデミックなキャリアへと進んだ若手の方です。

 それから、ちょっと前のものになりますが、これも重要論考です。

 18年も前にポスドク問題の帰趨は見えていた:基礎研究を「益なきもの」と蔑む国に博士とアカデミアの未来などない

 こちらは、アカデミアの viking さんです。

【以下、本論】
 5日ほど前の、ブログ・アクション・デーへの参加エントリー「Blog Action Day :テーマは貧困」に対して、久しぶりにたくさんのコメントをいただきました。ありがとうございます。

 しかし、状況が変わっていないという現実を反映して、なかなか新しい局面へと議論が進まないこともまた事実なのかもしれません。

> 何か再燃してしまいましたね。

> 同じような議論が何度繰り返されたことか。

> そういう方針は何度となくいろんな人が言ってきたことで、でも実現するための行動がとれないからぐるぐる回っているわけで、

> これらはずいぶん前から繰り返し言われてきたことだと思います。

 と、古くからこの問題の議論に参加し、あるいはウォッチしてきた人にとっては、非常に歯がゆいことになっています。引用した上記最後のコメントをお書きになったSRさんの疑問は当然のことだと思います。
私が興味があるのは、このポスドク問題が大学内の会議(教授会とか??)でどのような議論のされ方をされてきたのか(あるいはされていないのか)です。ポスドク問題が社会的に認知されて大学院が敬遠されるようになってきていますが、大学内の実際の会議では人事の公正化や大学院定員やその他の問題に関して、どう話し合われているのでしょうか?外にいるとわからないのですが、興味があります。
 この点に関して、大学の内側にいるalchemistさんから、お返事がありました。私よりもalchemistさんの方が、大学の運営側に近いところにおられるようですので、私がそれ以上に何かを知っているということはありませんが、何か書いてみます。

 大学再編時代ということもひしひしと感じられるようになってきており、各教員は研究費の枯渇、教員定員の削減、教育負担の増加、点検評価疲れ、中期目標という名の永続的改革圧力などに追いまくられているのが現状で、研究する金も暇もなくなっているのが大多数の教員の現実なのではないかと思われます。ポスドク問題どころか自分が生き残ることで精一杯の方もたくさんおられます。研究者の選択・生き残り問題として考えるなら、ポスドク問題と教員のキャリア問題は共通部分も多いと思えます。

 初期の段階において、ポスドク問題は大学の問題だと考える教員は少なかったように思います。ポスドクは大学院の博士課程を修了してからなるものですから、ポスト大学院の存在であるというような意識があったのかもしれません。さらに、大学院重点化とポスドク1万人計画が連動しており、重点化によって大量に増えた博士課程修了者がフリーター化するのを、1万人計画で(たとえ一時的にでも)食い止めるという効果がありましたし、それ以前にはポスドクというのは研究職へと続く王道だったこともあって、政府・文科省がポスドクを1万人に増やすのだから、ポスドクを終えた時にはそれだけの数の研究職が増えているに違いないという(希望的)観測を、政府・文科省・大学がともに夢見ていたのだろうと思います。もちろん、一部の冷静な大学教員はポスドクが終わり研究職につけなかったポスドク達のポスト・ポスドク問題が起こるであろうということを予測し、警告を発していたのもまた事実です。しかし、そうした声はポスドク増産の熱気の中にかき消されました。

 しかし、ここへきて大学院博士後期課程へ進学する学生が激減しています。博士課程へ進学してくる学生が減ってくれば、その理由としてポスドク問題・博士問題があるということは、さすがに鈍感な研究一筋の教員でも気がつき始めているように思われます。しかし、それに対して出てきたのが、授業料無料化などの博士後期課程進学者を増やすための方策でした。これは、問題の論点をそらすものだという批判も多いと思います。やるなら、全国一律に制度としてやるべきでしょう。そういう議論を経たあとで、お金をもっている学部・大学が実施に踏み切ったのだと思います。

 ポスドク問題と一緒に考えられているとは思えませんが、人事の公正化については、会議で話し合われるまでもなく、本来公正に行われなければならないものですので、それまでは見逃されてきた「不正」をどのように防止するのかという点がポイントになっています。既得権を持っているボスの側では、いかにして監視をすり抜けるかの工夫をするのかもしれませんが、問題点が公になってマスコミなどが取り上げてくれるとともに、どんどん監視がきつくなってきていると感じられます。しかし、一時期はやった機械的な業績比較だけによる人事では、採用後に教育能力や社会性に問題が発覚したりということがあちこちで見られたということもあって、現在では一部数値化されない状況も勘案しながら選抜を行うというあたりに落ち着いているところも多く、それでは万人の納得できる「公平性」が確保できていないかもしれないという疑念を消し去ることは難しそうです。人事に関しては、まだまだ透明性が低く、同じ学科内でもどのような人事が行われているのかを知ることは難しいようです。事務に人事係はありますが、教員人事を関係教員が行うというやり方はなかなか変わりそうもありません。

 そして大学院定員のことについては、定員削減が大学内で多数意見になることはあまり期待できません。そもそも、大学院の定員は文科省との折衝で決まっているものであり、教員定員と連動しているとも聞きます(しかし、大学院定員が減らないのに教員定員はじわじわと減っていますので、それも嘘かもしれません)。文科省は入学定員を満たさないということに対して非常に厳しく監督をしているらしく、大学院の定員を満たすために最近では夏・秋・春と3回の入試をするところも多くなってきました。これほどセンシティブに大学院定員でしばってきますので、その定員を減らすなどと提案したら、即座に教員定員を削減されるのではないかという恐怖感を持っている先生が多いのが今の大学です。私は教員定員を減らしてもいいから、大学院生の定員を減らそうと提案するのですが、今でさえ減りすぎて頭が痛いと思っている先生が多い現状では、その意見は小さな会議の中でさえ通りません。仮定の話として、もしも大学内で合意が形成されたとしても、それを認めるかどうかは文科省が決めることです。大学が法人化する時に、各大学は文科省の一律な管理を離れて・・・などという嘘が流布されたこともありますが、法人化後は予算や競争的資金を通しての管理が大成功しており、大学は文科省にまったく逆らえなくなっています。

 ですから、大学や大学院に問題があると思われたら、各大学ではなく文科省を攻める方がはるかに実現の可能性は高いと思います。とは言っても、文科省はそういうことは各大学の自主性に任せてあるから、意見はそちらの方へ持っていってくれと言うと思いますが、大学を通じて出てきたそんな意見などは相手にしないだろうとも思います。もちろん、ノーベル賞を取った小柴さんや益川さんがおっしゃってくれても、まったく通らないだろうと思います。

 つまり文科省の支配下にある限り、大学は文科省が考える以外の方向に変わることはないのだと思いますが、大学・大学院に関しては乱暴な「改革」の連続ですでに崩壊を起こし始めています。文科省は、その崩壊を利用してさらにねらい通りに大学を変えようと思っているのだと感じますが、私は逆にその崩壊を利用して良い方に改革できる可能性はあるのかもしれないと思ってます。

 いずれにしても、大学や大学院が穏やかに変わるということはなさそうですが。
by stochinai | 2008-10-19 23:59 | 大学・高等教育 | Comments(56)
 昨年は元気に花を咲かせてくれたオジギソウですが、家の中で冬越しをさせたところ元気がなくなりました。夏からは外に出していたのですが、秋になってようやく蕾をつけました。最近は、朝晩の冷え込みがかなりきつくなり、南国育ちのオジギソウにはちょっとかわいそうになってきたので、数日前からまた室内の取り込んでいたところ、今日になっていきなり4輪の花を咲かせました。
オジギソウの開花とイチョウ並木の様子_c0025115_14153742.jpg
 何度見ても、きれいな花です。
オジギソウの開花とイチョウ並木の様子_c0025115_14165595.jpg

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 北大のイチョウ並木も先週と比べると、ずいぶん色づいてきました。
オジギソウの開花とイチョウ並木の様子_c0025115_14211097.jpg
 現時点で、もっとも美しいのはイチョウ並木の一番奥にある電子科学研究所の前あたりだと思います。
オジギソウの開花とイチョウ並木の様子_c0025115_14222211.jpg
 天気もあまり良くなく肌寒いのですが、そのせいで逆に人影が少なくゆっくりと黄葉や紅葉を楽しめます。

 今年のイチョウの黄葉は、去年よりも1週間くらい早そうですから、来週末にはたくさんの人でごった返しそうです。

 こちらが今年の速報です。
by stochinai | 2008-10-18 14:30 | 札幌・北海道 | Comments(6)
 記憶は定かではないのですが、昔見た映画で竜巻を追いかける研究者達を描いた「Twister」のはじめの方に出てくる、いかにもという感じで描かれているちょっとおかしな大学院生っぽい研究者が、地面に電極をさして地中のミミズを大量に地表に追い出すシーンが頭に残っています。

 その時は、地中に電気を流すことでミミズが地面に逃げ出してくるというようなことがあるのかと思ったのですが、それが本当にあることなのかどうかは確認することができませんでした。

 ところが、それときわめて似たような感じで、地面に棒を突き刺して、その棒の頭をザラザラの棒のような器具ででこすって震動させ音を出すと、そこらあたりから大きなミミズが地面の上に飛び出してくることを利用して、釣りに使う大型のミミズを採集する「職業」があるのだそうです。

 場所はフロリダのアパラチコラ国立公園周辺で、代々そういう仕事をしている家系があるらしく、そうした方法を“worm grunting”と呼ぶのだそうです。変な音を出してミミズを取るというような意味でしょうか。

 この度、PLos One でその採集方法の生物学的意味を解析した論文が出ました。もちろんオープンアクセスですから、どなたでも音声やムービーファイル満載のこの論文の全文を読むことができます。

 Worm Grunting, Fiddling, and Charming—Humans Unknowingly Mimic a Predator to Harvest Bait

 論文の要旨は次のYouTubeビデオを見るだけで、すべてわかります(笑)。



 要するに、ミミズを採集する人達が立てていた音は、ミミズがもっとも怖れるモグラが穴を掘って近づいてくる音にそっくりで、その音を聞いてパニックになったミミズが、モグラにもっとも襲われ難い地上に飛び出してくると言うことだそうです。

 ある種のカメやカモメが値面を震動させて地上にミミズを追い出して食べるということも知られているのそうですが、ヒトも彼らと同じようにミミズを捕るためにミミズの恐れる音を利用しているというのは、とてもおもしろい現象だと結ばれています。

 日本では、あまりこうしたことを聞いたことはありません。北海道にはモグラがいないので、北海道のミミズではダメかもしれませんが、モグラの多い地方のミミズはこの方法で地上仁追い出すことができるかもしれませんね。

 どなたか、試してレポートしてくれませんでしょうか?

#論文には、音声ファイルや動画がたくさんあるのですが、原著論文はちょっとという方は、こちらの解説記事をどうぞ。

 Florida's 'Worm Grunters' Collect Bait Worms By Inadvertently Imitating Mole Sounds

 How bad vibes can catch you a worm
by stochinai | 2008-10-17 22:51 | 生物学 | Comments(5)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai