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 週に缶ビール11本も飲む「お酒に弱いヒト」はあまり多くないと思いますが、統計的にはそれ以上飲むと食道がんの発生率が急増するというデータがあります。この話は、日本を含む東洋人に関係の深いことなので、日本で研究が進んでいることもあり、日本では結構有名な話です。

 2003年に Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention という学術雑誌に日本人だけが著者の論文が掲載されています。(Vol. 12, 1227-1233, November 2003
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 非常に衝撃的な内容で、クローズアップ現代をはじめテレビなどでも取り上げられたので、記憶にある方もいらっしゃるかもしれません。ところが、この論文をごらんになればわかりますが、写真や図が一枚もなくデータのすべてが数字の並んだ表だけで示されています。

 「内容が重要なのだからそれでいいじゃないか」というご意見もあろうかと思いますが、この論文はもっと広く読まれるべき内容だという判断からか、データはほとんど同じものを使っているのですが最新のPlosMedicineに主に医療者向けの解説記事(Research in Translation)として再び取り上げられました。解説記事ですから、いわゆる学術論文よりははるかに読みやすく、医師だけではなく一般の読者向けにも適したリーダーフレンドリーなものに仕上がっています。フリージャーナルですので、是非とも全文を入手してご覧下さい。
お酒を飲んで赤くなる人は週に缶ビール11本までで我慢_c0025115_21264673.jpg
 ヒトがアルコールを飲むと、アルコール脱水素酵素(ADH)の働きでアセトアルデヒドになります。このアセトアルデヒドが悪酔いや二日酔いの原因になるのですが、発がん性があることもわかってきました。体内にはアセトアルデヒドを分解するアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)があり、酵素がきちんと働けばアセトアルデヒドは速やかに無害な酢酸へと分解されるのですが、東洋人では2つあるこの酵素の遺伝子のひとつまたはふたつが変異型になって働きを失っているヒトがかなりたくさんいるのです。両方の遺伝子が変異型の場合には、いわゆるお酒を飲めないヒトということであまり問題にならないのですが、片方の遺伝子が変異型の場合には約1/16と言えども代謝能力があるので、お酒を飲めるヒトもあるいは好きなヒトもたくさんいます。

 しかし、変異型のALDH2遺伝子を持っているヒトの場合は、お酒を飲むとすぐに「赤くなる」という特徴があります。こんな感じですね。
お酒を飲んで赤くなる人は週に缶ビール11本までで我慢_c0025115_9314636.jpg
 こういうヒトは遺伝子を調べるまでもなく、少なくとも片方の遺伝子に変異が起こっていることが90%くらいの確率で言えるのだそうです。もちろん、最近大学の新入生に対して行われるようになっているアルコールパッチテストでも同様に判定できます。

 顔が赤くなるくらいならご愛敬なのですが、アセトアルデヒドは遺伝子DNAを構成するデオキシグアノシンと反応して下図のように変化させてしまうことが発がんの原因になると疑われています。
お酒を飲んで赤くなる人は週に缶ビール11本までで我慢_c0025115_2135348.jpg
 というわけで、変異したALDH2遺伝子を持つヒト(つまり赤くなるヒト)はアセトアルデヒドには特に注意しなければならないということになりますが、お酒の中のアルコールがどのくらい発がんと関係しているかを示した下の図が衝撃的です。
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 お酒をほとんど飲まないヒトの食道がんの発生率を1として、あまり飲まないヒト、適度に飲むヒト、たくさん飲むヒトと分けてグラフを描くとこうなります。青がお酒を飲んでも赤くならないヒト、赤がお酒を飲むと赤くなるヒトです。いずれもアルコールの消費量に応じて発がん率が高まるのですが、赤くならないヒトに比べ、赤くなるヒトが大酒を飲むとなんと7-8倍くらいがんになりやすくなるということを示しています。

 では、安全そうに見える「あまり飲まない」という量はどのくらいなのでしょうか。図の説明に描いてあるのですが、1ユニットをアルコール22グラムとすると、あまり飲まないヒトは1週間に1から8.9ユニットまでということになっています。つまりアルコールを5%含むビールならば、1週間に3900ml以下ということになります。つまり、それが350mlの缶ビール11本というわけです。

 毎週缶ビール11本というと、日本人としては「かなり飲む」っていう感じかもしれませんね。ちなみに、中くらいは9から17.9ユニット、大酒のみは18ユニット以上です。18ユニットというと缶ビールならば毎週22本以上ということになります。

 グラフをよく見て、赤くならないヒトもアルコール摂取量に応じて食道がんの発生率が上がっていることに注意しましょう。またタバコや濃いアルコール摂取ががんの発生率を上げることや、果物や緑黄色野菜が下げることもあるようですから、この話だけで振り回されないようにもしたいものです。

 先日書いたように、適度のアルコールは脳に快感をもたらす効果もありますので、功罪を理解した上で楽しもうというメッセージとして受け止めたいと思います。

(論文の中には、食道がんのかたまりを生で撮した、ちょっと衝撃的な写真もありますので、ご注意ください。)
by stochinai | 2009-03-24 22:02 | 医療・健康 | Comments(1)
 CoSTEPの修了式のコメンテーターのおひとりである松田さんから受けた刺激に対して、それが新鮮なうちに書いてしまおうと思っていささか(というか、かなり)未熟な考えを書いてしまったために、多くの方を混乱に陥れてしまったことを反省しております。

 科学技術コミュニケーション: 解説から批評へ (stochinai)

 その結果、あちこちで不必要な反発や議論を巻き起こしてしまったという責任も感じているのですが、まあこういうことは議論されないよりは、多少の誤解や間違いを出発点としていたとしても、議論があること自体が良いことだと自分に言い聞かせております(^^;)。

 そんな中で、はななだ未熟な私のエントリーに対して、ktatchyさんとhiroichiさんが非常に誠実なご意見を書いてくださり、とても感謝しています。また、関連した有益なコメントもあちこちでたくさん頂きました。

 コミュニケーターブームが科学批評を阻んできた!? (K_Tachibana さん)

 評論と解説のあいだに (ktatchyさん)

 「科学評論家」が不要な社会に (hiroichiさん)

 お二人の意見は一見まったく逆の結論に至っているようにも見えますが、良く読むとそれほど違ったことをおっしゃっているわけではなく、こう言うとずるいと言われそうですが、私の考えていることもお二人の気持ちとそう変わらないとも感じております。

 また、私のエントリーとはまったく関係ない独立した動きなのですが、科学を担う博士を中心とした人達が国の科学技術政策を批判あるいは補完しようという活動も立ち上がり、個々の科学を越えた壮大な議論というものの必要性を感じている人も多くなってきているということが感じられる今日この頃です。

 科学技術基本計画/補完計画はじめました (sivadさん)

 さて、本題に入ります。

 現在の日本に、なぜ科学に批評家や評論家あるいはそれを自称する人すらあまりいないのかというと、そもそもが科学という「客観性」を扱う学問では、「理解」してもらえさえすればその評価は自ずから明らかなので、その意味や価値を評価するための批評家や評論家などというものは必要ないのだ、という根強い思い込みがあったからではないでしょうか。

 その結果、最近に至るまで考えられていたのは人々の科学に対する理解が深まりさえすれば、科学をめぐる問題は解決するだろうということで、啓蒙から理解増進そして科学コミュニケーションへと、誰でもが理解できるやり方で科学を理解させる試みが続けられてきたのだと思います。そして今では、お金や時間や人材をふんだんにつぎ込んで、オーディオビジュアルをはじめ現在手に入れられる限りのあらゆるテクノロジーを駆使したならば、我々が手にしている科学技術のほとんどすべてのものが誰にでも理解してもらう形で解説することが可能な時代になったと思います。(このことは、ネットを使ってさまざまな科学技術について検索してみると、簡単に実感できます。)

 ところが、そんな時代になっているにもかかわらず、未だに日本人のかなりの多くが血液型性格判断を信じ、怪しげな健康食品にだまされ、半年と持たないダイエット法が現れては消えるということを繰り返しています。

 もちろん、それらに対してたくさんの「コメンテーター」と言われる方が否定したり、反対したりということをしているのですが、同じくらいの数の「コメンテーター」がまったく逆のことを言っているという現実もあり、その状況では本来はどちらかが正しくもう一方は間違っていると判断することが可能であるはずのものが「客観」という名の非科学状態に置かれた結果、人々は自分の気に入った「意見」を採用するという感覚で「科学」をとらえてしまうという悲しむべき現実があるのだと思います。

 こうした状況の中で、たとえノーベル賞クラスの科学者でも、ちょっと専門をはなれると「トンデモ科学」と言われてしまいかねないような発言をされることも多いですし、ちょっと前までは科学者というものは「専門バカ」と呼ばれるくらい専門以外のことには疎く、さらには下界で戦争が起こって終わったことも知らなかった大学者がいたなどという伝説が生まれるくらい、科学者には社会性や批評性などがないのがあたりまえで、むしろそういう変な科学者こそが天才的な雰囲気があるとしてある種の尊敬を受けていたことすらあったのだと思います。

 ところが、今や我々の生活には深く科学技術が入り込んでいます。科学技術の理解だけではなく、そうした技術を使うことがローカルに、グローバルに、そして人間の未来にとってどういう意味を持つのかということを冷静に評価し、判断し、そしてここが体節ですが語ることのできる人が必要になっているのだと思います。もちろん、現役あるいは引退した科学者の中にもそのようなことをできる能力を持った人が少数いることは事実ですが、これだけ科学の前線が拡がっている現在、少数の科学批評家・評論家ではとても対応できません。広い科学知識と、特定の狭い領域に特化した深い科学知識を両方兼ね備えて、現役の科学者とも丁々発止の議論のできる存在があらゆる領域にたくさん必要だ、というのが私が考えていたことでした。

 もちろん、科学の解説をわかりやすく行うコミュニケーターの存在も必要ですし、コミュニケーターが批評活動を行うこともありだと思います。現役の科学者がコミュニケーターとして活躍しても良いですし、また評論活動をしてもいいでしょう。ただし、現役の科学者の多くが研究教育活動に忙殺されているという現実もありますし、上にも書いたように科学者が必ずしもコミュニケーターや批評家・評論家に適していないことも多いのですから、彼らのすべてにそれを要求しても酷なだけでなく、無理だと思います。

 そういう意味で、科学批評家・評論家としては現場を離れた博士や、引退した科学者などの中から出てくるのがもっともありそうなことだと思っています。実を言うと、私自身が科学批評家という職業にあこがれていたりするというあたりが本音なのかもしれませんが。

 次のテーマは、「科学批評家はどうやって食っていけるか」でしょうか(笑)。
by stochinai | 2009-03-23 20:13 | 科学一般 | Comments(11)

飛べ宇宙コウモリ!

 先日、ディスカバリー打ち上げの犠牲になったコウモリのことを書きました。

 ディスカバリー発射成功の陰で

 その後、あのコウモリの話題はずっと尾を引いており、ついに宇宙へ行った英雄として追悼ビデオまでが作られました。



 文化の違いをまざまざと感じさせられるエピソードでもあります。

 ソースはこちらです。

 ギズモード・ジャパン: ウィ・アー・ザ・ワールドのように泣ける、宇宙コウモリ追悼ビデオ(動画)
by stochinai | 2009-03-23 12:59 | コンピューター・ネット | Comments(0)
 経産省の調査で「ときには命を奪うこともある重大製品事故のうち、およそ2割が消費者の誤った使い方や不注意で起きていることが」わかったというニュースが出ていたのですが、それは消費者という存在を過大評価していないだろうかという気がしました。

 重大製品事故の2割、消費者の誤使用・不注意 経産省 (朝日コム)
 重大製品事故は、死亡▽重傷(全治30日以上)▽後遺障害▽一酸化炭素(CO)中毒▽火災――のいずれかの被害が出た事故。07年5月に経産省への報告がメーカーと輸入事業者に課され、昨年末までに約2100件報告された。
使用説明書通りに使わないことで起こった事故の責任は消費者だけのものなのか_c0025115_23231499.jpg
 そのうち、経産省が昨年度調査を終えた440件を原因別にみたところ、誤使用や不注意など消費者に非があるとされた事故は、43製品で計91件(21%)あった。
 といいますが、消費者の中には使用説明書も読まず、作って売る側が想像すらしていないような使い方をする人がいることを想定せずにものを売って商売してもいいものなのでしょうか、と思ってしまいます。というか、ものを売るということは、その値段の中にそうした「異常な使い方」をすることを想定したリスク回避の費用が入っているというのが消費者の期待だと考えてはいけないのでしょうか。

 上の表を見ても、火の消し忘れや石油ストーブに洗濯物や布団が付いて火事になるとか、給油時に油が漏れて引火したなどというものはさておき、掃除不足や電動自転車の片足乗り、衣類乾燥機にオイルの付いたタオルを入れて乾燥させる、汚れた電子レンジを使うなどということまで消費者の責任にしてしまうのはちょっと酷だと感じました。

 もちろん、そうした製品には使用説明書というものが添付されており、そこに書いている注意を守らずに使って起きた事故に関しては販売者側は免責されるということになるのでしょうが、「人間はミスをする」という前提に立つならば、免責うんぬんを越えたフェイルセーフな製品を作っていくのが企業の責任というものだと思います。
 経産省製品事故対策室は「消費者の側に、製品の安全性に対する過信や危険性への意識の低下があるのではないか。注意書きや取り扱い説明書をよく読んで使ってほしい」と話している。
 このようにおっしゃいますが、私から見ると「経産省や企業の側に、消費者の使用行動に対する過信や危険性への意識の低下があるのではないか」と思ってしまいます。

 政府は国民から税金を集めているのですし、企業はものを売ってお金を集めているのですから、経産省には国民の教育と、企業にはどんな使い方をしても事故が起こらない製品の開発にもっとお金を投入していただきたいと考えます。
by stochinai | 2009-03-22 23:42 | つぶやき | Comments(4)

熱烈絶賛しろくまブログ

 円山動物園のしろくまツインズは、その性別のわからなさも何のその、世界中にそのどうしようもない「かわいらしさの波紋」を広げています。

 もちろんオフィシャルには、円山動物園で「ホッキョクグマ特集」のページが用意されているのですが、その存在が霞の彼方に消え去るほどのインパクトを持ったブログが誕生、刻々としろくまツインズの成長記録が配信されています。

 双子の白クマ赤ちゃん通信

 3月12日から始まったこのブログを読んで、私はいっぺんにこのブログのファンになってしまいました。作者は「円山の綾瀬はるかこと樋泉」さんです。その軽妙な関西風の語り口の素晴らしさに私は魅了されております。

 私を虜にした3月12日の「長いあいさつ」です。
このたび、当園で2008年12月9日に生まれたホッキョクグマの双子の成長日記を綴ることになりました、経営管理課経営係の樋泉と申します。

このようなお役目を仰せ付かり、当方、いささか緊張しております。
皆様が心待ちにしてくださっているホッキョクグマの双子さんの情報を発信するブログを私などが書いて、本当にすみません・・・

ホッキョクグマをこよなく愛しており、薄給を仕事用のカメラとレンズに使ってしまったバカモノですから、当ブログを書くには適任であるのかもしれません。どうだか。
 素晴らしいです。給料(以上?)をホッキョクグマ撮影用のカメラとレンズにつぎこんだあなたは、我々札幌市民からみても最適なしろくまブログ人です。期待しています。

 この時点では、まだホッキョクグマの子ども達は母親とともに巣ごもり中で、関係者といえども画像を出せる状態ではなかったのですが、なんと昔生まれたピリカの写真を使って双子をコラージュしてしまうという荒技のサービスでデビューしたのが樋泉さんです。(「ひいずみ」さんと読むらしいです。)

 3日後の3月15日には、期待通り「円山の綾瀬はるかこと樋泉です」と登場してくれました。
私事で恐縮なのですが、昨日は映画「チェンジリング」を観て来ました。
ホワイトデーですから、もちろんデートです。

エア彼氏とね。
概ねエアギター的なものと考えていただければ結構です。
 このノリは、私の親友のM姫に通じるものを感じます。二人は出会いさえすれば、きっと一生分かれられない無二の友になるものと確信します。

 この時もまだホッキョクグマの写真は解禁になっておらず、ライオンの双子でお茶を濁しておりました。このセンスも素晴らしいと思いました。

 3月17日には「公開日決定!! 」です。円山動物園とホッキョクグマの広報としては、最高の文章で引きつけてくれます。
さて、現在の日本には50頭のホッキョクグマがいますが、赤ちゃんがいるのは円山動物園だけですから、ぜひ一度お越し下さい。
一度と言わず何度でもどうぞ。
年間パスポートは1,000円です。2回で元が取れてしまいます。

個人的には雪が残っているうちに見ていただきたいです。
雪の中のホッキョクグマはとんでもなく美しいものです。フォトジェニックです。
双子が堀に落ちて怪我をしないように展示場には雪を入れておりますが、どんどん溶けてしまいますから、お早めにどうぞ。

可愛いだの美しいだの、そんなこと個人の主観の問題ですが、ホッキョクグマの赤ちゃんに関しては、動物がお好きでない方でも可愛いと仰います。

ピースさん(愛媛)、クヌートにフロッケ(ドイツ)、そしてピリカとツヨシなどなど、ホッキョクグマの子の魅力に取り憑かれた方はたくさんいらっしゃいます。よね?
ゴーゴ君や豪太君、ロッシー君(ロシア生まれの若いクマたち。それぞれ大阪、秋田、静岡にいます)も大変な人気ですね。

さぁ。みんなで一緒に双子の魅力に取り憑かれましょう!
 この時点でもまだ、写真は出てきません。オスだと判断されて、後にメスに訂正された双子のお姉さんであるツヨシピリカの初公開の頃の写真ですが、十二分にかわいいです。

 そしていよいよ、19日「画像解禁です」です。

 これはもう、サイトに飛んでもらうしかないので、どうこういう必要はないのですが、そこで同じ月生まれのオランダの双子も紹介されています。一枚だけ、こちらでも表示されるようにしておきます。

 きたなくても、めちゃめちゃかわいいですね。

 さて、3月19日の「はちきれそうな思い」あたりから、大量に資本投下して入手したカメラの腕前もさえてきているようです。この写真は世界に配信しても良いくらいの母子愛あふれる良いものだと思います。

 そして、20日「公開初日の双子たち。」21日「円山ツインズ公開2日目」には、子ども達の写真がたくさんあります。

 これを見ていると、樋泉さんの投資は決して無駄にはなっていないことが良くわかります。何百万円の価値を感じられる写真ばかりです。その中でも、私が一番気に入った写真を見えるようにしておきましょう。これです。

 この写真に添えられた文章です。
楽しそうです。私も混ぜてほしいです。
が、たとえ赤ちゃんでもホッキョクグマはものすごくパワフル。
大人の男性でも彼らを捕まえたり、抱え上げたりすることは困難です。
私なんぞズタボロにされてしまいます。
まして彼らは人間には懐いていません。

その野性味がいいところ。
 樋泉さん、期待しています。次もよろしく、お願いします。RSSして待ち受けています(笑)。
by stochinai | 2009-03-22 22:55 | つぶやき | Comments(2)
 アルコールが脳に影響を与えることはほとんどのヒトが経験していることだと思います。適度な量のアルコールを飲むと、気分が良くなったり楽しくなったりすることを経験したヒトも、少なくないでしょう。しかし、時としてヒトはアルコール依存症になり、アルコールが切れると病的な症状を示すようになったりもします。

 脳に不要やものや危険なものがはいっていかないように、血液と脳の間には関所(脳血液関門)があって、そこをくぐり抜けたものだけが脳内に到達します。アルコールはこの関門を簡単に通過するので、脳の神経細胞にアルコールが作用することが、(直接・間接はさておき)上に書いたようなアルコールの効果を生み出すのではないかと考えられていました。しかし、アルコールがどうしてそのような効果を生み出すかについては、はっきりしていなかったのです。(拙著『進化から見た病気』 105ページ「アルコール依存」参照

 3月19日に公開されたAlcoholism: Clinical and Experimental Research という雑誌のオンライン早出し版に、その謎の答となる論文が出ました。

Effect of Acute Ethanol Administration on the Release of Opioid Peptides From the Midbrain Including the Ventral Tegmental Area
(急性のアルコール投与による腹側被蓋部位を含む中脳でのオピオイド・ペプチド放出に及ぼす効果)

Samuel Jarjour, Li Bai, and Christina Gianoulakis

 AAASによる3月19日のパブリック・リリース EurekAlert! に紹介記事が載っています。

Low to moderate, not heavy, drinking releases 'feel-good' endorphins in the brain
(少量あるいは適量の飲酒によって、脳内に「気持ちよく感じさせる」麻薬(エンドルフィン)が放出される)
* Scientists know that alcohol affects the brain, but the specifics are unclear.
(アルコールが脳に影響を与えることはわかっていたが、その理由ははっきりしていなかった。)

* New findings show that low and moderate but not high doses of alcohol increase the release of beta-endorphin.
(今回の発見で、少量あるいは適量のアルコールがβエンドルフィンを放出させることが明らかになった。しかし、大量のアルコールではその放出は起こらない。)

* Beta-endorphin release produces a general feeling of well-being that reinforces the desire to drink.
(βエンドルフィンの放出によって一般的快感が得られることが、飲酒への欲求を強める原因となる。)
 アルコールが神経を麻痺させる作用は古くから知られており、脳への作用もそういうことではないかと考える人もいたのですが、それだけではたくさんの人を依存症にしてしまうほどの強い習慣性を説明するのは困難だとも考えられていました。

 この度の実験ではラットを使って、アルコールを注射した後、脳内から直接細胞を浸している外液を採取するという方法で、連続して3種の麻薬物質(エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィン)の分泌量を測定することに成功しました。測定したのは、薬物やアルコール依存症に強く関係していると考えられている脳の部位である中脳のVTA(腹側被蓋部)と呼ばれる場所です。

 その結果、βエンドルフィンだけが、低濃度と中濃度(1.2, 1.6, 2.0 g ethanol ⁄ kg体重)のアルコールに対して有意な増加を見せましたが、エンケファリンはまったく変化がなく、ダイノルフィンに関しては低濃度(1.2 g ethanol ⁄ kg)のところで遅い時間に少しだけ増加が見られました。図は、βエンドルフィンの結果です。
適度な量のアルコールは脳内エンドルフィンを放出させる_c0025115_17212815.jpg
 ラットで得られたこの結果は、おそらくヒトにもあてはまるだろうと考えられ、適量のアルコールは脳に高揚感を与え、不安感を取り除く「報酬」効果をもたらすことが予想されます。ところがアルコールの量が増えると、麻酔・鎮静・睡眠作用が強くなってしまうようです。つまり、酩酊して寝てしまうということでしょう。

 この研究は、今まで経験的にアルコール依存症治療に使われてきて、ある患者には効果が認められてきたnaltrexoneという脳内麻薬受容体の拮抗阻害薬がどうして効くのかということの説明にもなるということで、かなり説得力があるものです。

 最後に、紹介記事に載っている研究者のアドバイスを紹介しておきます。「今回の結果で、アルコールを飲むことでエンドルフィンが出て幸せな気分になることはわかったと思うが、もし1杯か2杯飲んでも幸せにならなかったら飲むのを止めなさい。それ以上飲んでも、エンドルフィンは出ないし、他の影響が出て不安やうつを感じることになるかもしれないのだから」とのことです。

 いずれにしても、お酒は控えめにということで(笑)。
by stochinai | 2009-03-21 18:00 | 医療・健康 | Comments(0)
 この2つの記事は、この国がいろいろな意味において極めて貧困であるという状況を如実に示していると思います。

死者2人増え9人に 群馬・老人施設火災
 群馬県渋川市北橘町八崎の高齢者向け住宅「静養ホームたまゆら」の火災で、県警渋川署は21日、負傷して救急搬送されていた入所者2人が死亡したと発表した。これで今回の火災で亡くなった入所者は計9人になった。
群馬、施設火災の死者10人に 男性、墨田区に紹介中止要請
 群馬県渋川市の老人施設「たまゆら」の火災で、群馬県警は21日、病院に搬送されていた****さん(77)が死亡したと発表した。死者は計10人になった。
 また東京都墨田区に対し、たまゆらの近隣住民の男性が2006年、「介護状況は問題が多い」として、入所者の紹介をやめるよう区役所のホームページにメールで求めていたことが分かった。

 墨田区によると、死亡した10人のうち、身元が確認された3人は区が入所を紹介。所在不明となっている7人のうち3人も紹介した。
寝たきり患者6人相次ぎ肋骨骨折 兵庫の病院、県警調査
 兵庫県佐用町の佐用共立病院(90床)で、昨年12月から今年1月にかけて、寝たきりの高齢入院患者6人が相次いで肋骨(ろっこつ)を骨折し、県が立ち入り検査した。患者はいずれも肺炎で入院し、会話ができない状態で原因はわかっていない。

 病院は病室に防犯カメラを増設し、夜勤の看護師を増やすなどした。
 動けなくなる前に死なないと、どんな目に遭わされるものやら。
by stochinai | 2009-03-21 14:53 | つぶやき | Comments(1)

アルビノのゾウ

 英語で「ピンクのゾウ pink elephant」というと、あり得ないものの代表のようで、ピンクのゾウが見えたら泥酔も本物だといわれるようです。

 もちろん、そんなあり得ないものを発見したらニュースになるわけで、BBCNewsが報道しています。
アルビノのゾウ_c0025115_2050238.jpg
 アフリカ、ボツワナのオカヴァンゴ・デルタにいた80頭ほどの群れの中に、ピンクの子象がいてカメラにおさめられています。
アルビノのゾウ_c0025115_20533049.jpg
 ピンクというよりは、肌色という感じですが、どうやら黒色素を欠いたアルビノ(白色変異)のようです。

 動物のアルビノは目が赤いかどうかで見分けられるのですが、他の写真に写っている子象を拡大して見ると、確かに目は赤いようです。
アルビノのゾウ_c0025115_20573597.jpg
 記事にもアルビノだと書いてあるので、おそらくそうなのでしょう。アフリカゾウでアルビノはとても珍しく、しかも過去にも子象でしか見つけられたことはないとのことで、アフリカという強い太陽とたくさんの肉食の捕食者のいる環境では、紫外線によるダメージと捕食者に見つけられやすいということから、成体になるまで生き残るのは難しいようです。

 ただし、この子象のいる群れは捕食者から隔離された、樹木も多く、いつでも泥浴びのできるデルタ地帯の中に住んでおり、さらに子象はいつも母親の作る影の下にいるように行動していることから、運が良ければ大人になれるかもしれないと書いてあります。そう簡単なことではないでしょうが、せっかく生まれたのですから無事に育って欲しいと願うばかりです。

 アフリカゾウではとても珍しい一方、アジアゾウでは成体を含めアルビノが時々見つかるのだそうで、アフリカとアジアという環境の違いがアルビノの生存を左右している証拠の一つと考えられています。

 BBCはピンクのゾウが好きなようで、昨年もニュースでスリランカのアルビノゾウを取り上げています
アルビノのゾウ_c0025115_2155615.jpg
 ヒンズー教や仏教では「白い象」が神聖なものとして出てくることがしばしばあるようです。アルビノは白いというよりはピンクですが、それが神格化される時に「白」になった可能性はありそうです。

 スリランカなどでは、ゾウは農家にとっては害獣で憎まれる対象ですが、実際には4000頭くらいに減ってしまって絶滅が危惧されている動物でもあります。保護派は12年に一度くらい出現すると言われるアルビノが人々に与えるインパクトをゾウの保護に利用しようとしていますが、貧困な農民の生活が脅かされている限りはゾウどころではないというのが、住民の本音でしょうね。

 難しいところです。
by stochinai | 2009-03-20 21:29 | 生物学 | Comments(2)

春分の日 【午後の雪】

 春ってことでしょうか?
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 札幌の積雪は、例年の4月初めから半ばのあたりの状態まで低くなっています。
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 この後、降雪の予報が出てはいますが、もはや積もることはほとんどないでしょう。

 と思っていたら、午後3時過ぎにかなり激しく降っています。
春分の日 【午後の雪】_c0025115_1527386.jpg
 「春の淡雪」だと思いたいのですが・・・。

 そして、午後6時頃です。
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 路面がオレンジ色に見えるのは夕焼けではなく、街灯のせいです。
by stochinai | 2009-03-20 10:30 | コンピューター・ネット | Comments(4)

転ばぬ先のKNOPPIX

 WindowsやMacのOSは、一頃に比べると随分と安定してきてはいるというものの、コンピューターを使っている限り、ソフト・ハードのトラブルをゼロにすることはできません。バックアップなどの安全対策は今は基本中の基本として誰でもが実行していると思いますが、そうした対策をあざ笑うかのように起こるのが事故の事故たる所以です。

 そうしたコンピューター事故の中でも最悪のものが、OSが起動しなくなり作成したファイルすら読み出すことができなくなるというものかもしれません。そうした事故のために、何日も書けて作成した書類を一瞬のうちに失った経験などないという人の方が少ないのではないでしょうか。

 Windowsが起動しなくなっても、リカバリーCDがあればでシステムを再構築することはできますが、それまでに作成したファイルを回復できるとは限りません。そういう時に、LinuxなどのOSを立ち上げてファイルだけを救うことで、私も2度ほど命拾いしたことがあります。その時にお世話になったのが、CD1枚で立ち上がるLinuxであるKNOPPIXだったものですから、私の脳には「困った時はKNOPPIX」という言葉が刷り込まされています。

 もちろん、KNOPPIXが立ち上がっても、ハードディスクの重要部分がクラッシュしたなど、ハードに近いところで起きた救いようのない事故もあるのですが、最後の望みをKNOPPIXにかけるという気持は今でも持ち続けています。

 というわけで、今のような年度の変わり目の時期に、リカバリー用のKNOPPIXのシステムディスクでも作っておこうかと思っておりましたところ、今月初めにKNOPPIXが最新版の6.0.1になったというニュースに接しました。

 最新版KNOPPIX 6.0.1の日本語版が公開

 「KNOPPIXはドイツのKlaus Knopper氏がDebian GNU/Linuxをベースに開発したディストリビューション」で、本家のサイトには、こんなかわいいマスコットがいます。
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 日本語化された、KNOPPIXは産業技術総合研究所で配布しています。
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 こちらから、CD-ROMイメージであるisoファイルをダウンロードして、CDのライティング・ソフトを使って「コピーではなく、イメージを焼く」という作業を行うだけで、簡単にKNOPPIXの起動CDができあがります。これが、一枚あると、いざという時に役に立ってくれるかもしれません。
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 KNOPPIXのもう一つの特徴として、この写真に写っているようにUSBメモリーから起動することができるということがあります。私の使っている Let's Note R や最近はやっているネットブックなど、CD-DVDドライブがついていないものの場合でも、USBメモリーから起動できて中のハードディスクにアクセスできるということになると、とても便利です。

  ネット検索するとKNOPPIX起動USBを作るための、かなり面倒な方法が見つかりますが、あまりにも面倒くさくて市販の数千円もするUSBを買おうかという気にもなりますが、簡単に作る方法が用意されています。KNOPPIXをCDで立ち上げると、USBメモリーなどのフラッシュディスクから起動することを可能にする Install KNOPPIX to flash disk というプログラムがあります。それを使うと、クリックひとつでUSBメモリーにも起動プログラムができあがります。

 準備万端にしておいたとしても、こうしたものが必要になる機会など来ないに越したことはないのですが、転ばぬ先のKNOPPIXということで、お守りのつもりでひとつ用意しておいてはどうでしょうか。
転ばぬ先のKNOPPIX_c0025115_20215339.jpg
 新しいノートだと、BIOSを設定するだけで、CDやUSBメモリーからOSを起動するようにできますが、USB-CDと違ってUSBメモリやUSB-HDDはデフォルトではOSは起動できないようになってる場合があります。そういうものでもBIOS設定画面の説明を丁寧に読むと、設定できるやり方が書いてあるかもしれませんので、予め練習しておきましょう。Let's Note の場合には、設定の時にxキーを使います。(最初はそれがわからず、Let's Note ではUSBメモリーからの起動はできないのかと思っていました^^;。もちろん、不可能な機種もあります。)
by stochinai | 2009-03-19 20:35 | コンピューター・ネット | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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