5号館を出て

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 エコブームの時代ですから、「気持ち悪い」という感想を除くと、ミミズのことを悪くいう論調に出会うことは少ないのですが、Scientific American Magazine にアメリカ5大湖地域で、ミミズによって森林が破壊されているというショッキングなニュースが載っていました。

March, 2009
Invasive Earthworms Denude Forests in U.S. Great Lakes Region

 この地域では1万年前の氷河期にミミズが絶滅してしまったのだそうで、森林地帯がミミズなしに形成されました。しかし、ヒトが入り込むようになって、余った釣りエサのミミズを捨てたり、車のタイアに付いて運ばれたり、さらには園芸や農業のために導入された堆肥に混じって、あげくのはてには土質改良のために意図的にミミズが入れられたりということでどんどんミミズが増えてきた結果、この地域の家庭の庭は「草木も生えない症候群」(‘nothing grows here syndrome’)と呼ばれる状況に陥っているようです。

 被害は庭だけにとどまらず、森林地帯では森林の再生が起こらない状態になっているようです。森林再生には厚く敷き詰められた落ち葉の層が必要らしいのですが、ミミズがあっというまにその落ち葉を分解してしまい、結果として木が生えず森林が草地に変わってきているのだそうです。

 もちろん、ミミズのすべてが悪いわけではなく、どうも大型のミミズが悪さをしているようで、そういう大型のミミズが増えると小形のミミズが減り、植物相に大きな影響を与えているばかりではなく、小形のミミズをエサにしていたサンショウウオの子どもなどのエサ不足に陥り、数が減っているという結果も出ていると書いてありました。そうすると、サンショウウオを食べるヘビや小形哺乳類、シチメンチョウなどにも影響が出るだろうと予測されています。

 ミミズを減らすなどということはあまり考えられてこなかったことですが、この状況を受けて農林省では40万ドル近い研究費を出して研究を開始しました。

 たとえミミズと言えども、みだりに生息地を人為的に広げると予想外の結果を生むことがあるという教訓になりますね。

 気をつけたいものです。
by stochinai | 2009-03-11 20:28 | 生物学 | Comments(2)
 すでにぜのぱすさんが解説し、その危険性についても言及されていますので、特に私が付け加えるべきこともないのですが、3月9日のnaturenews に遺伝子を調べるだけで、目(虹彩)の色をほぼ間違いなく予言できるという方法が紹介されています。写真はウィキペディアから引用した「青い目」の虹彩の拡大図です。
遺伝子をちょっと調べれば目の色がわかる_c0025115_2025092.jpg

 皮膚や髪そして虹彩の色を決めるのはメラニン(黒色のユーメラニンと黄色のフェオメラニン)の量と分布様式なのですが、それを支配するということがわかっている8つの遺伝子の中の特定の37部位を調べ、その組み合わせパターンを解析することによって、ロッテルダムに住むオランダ系のヨーロッパ人ならば、目の色が青か茶色かを90%以上の正解率で言い当てることができるということです。他の色だと正解率は70%くらいになるというので、日本を始めヨーロッパ以外の国では使えないかもしれません。(下の図で示されたAUCという値が正解率と考えてよいように思います。)

 元論文は、Current Biology Volume 19, Issue 5, R192-R193, 10 March 2009 です。

Eye color and the prediction of complex phenotypes from genotypes
遺伝子をちょっと調べれば目の色がわかる_c0025115_19533421.jpg
 この手法を使うと、犯罪現場に残された犯人の遺留遺伝子(髪の毛、フケ、唾液、精液)などから予め犯人の目の色が推定できるので、犯罪捜査に威力を発揮することが期待されているのだそうですが、ほとんどのヒトの目の色が黒か茶色の日本ではいまひとつピンとこない話です。

 それよりも、遺伝子がちょっとだけ手にはいると、その持ち主の髪や目の色がわかるということになると、受精卵診断に使われて、金髪で目の青い女の子だけを妊娠したいという希望を持った「親」の希望にどのように対処することになるのか予測可能な気がして、なんとも不安な気持ちになります。これが、ぜのぱすさんが言及している「デザイナーベビー」です。

 生まれて見るまで男女がわからなかった時代は新生児の死亡率が高かったこともあり、「生まれて、無事育ってさえくれれば、それ以上のことは何も望まない」という感じだったのですが、だんだんとそうでもなくなるのかもしれませんね。
by stochinai | 2009-03-11 20:01 | 生物学 | Comments(2)
 植物は雌雄同体のものが多いですし、さらには1つの花の中に雌しべと雄しべという雌雄の器官があるものも珍しくありませんが、もちろん雌雄異株のものもあります。動物は逆に雌雄異体のものが多いですし、雌雄を決める遺伝子もいろいろとわかってきていますが、それがわかるはるかに前から、染色体の組み合わせでオスメスが決まるという性染色体というものの存在が知られていました。ヒトでは、女性がXX型ホモの性染色体を持ち、男性がXY型ヘテロを持っていますが、鳥類や爬虫類の多くはオスがホモでメスがヘテロの性染色体を持っているZW型です。もちろん、ミミズやカタツムリのような雌雄同体のものもいますが、圧倒的に雌雄異体が多いのが動物の特徴のひとつです。

 植物に雌雄異株がそれほど多くないとはいっても、我々になじみの深いイチョウが雌雄異株なのは有名ですし、最近では良く食卓に上がるようになったキウイフルーツが雌雄異株です。
キウイフルーツの性染色体_c0025115_20342796.jpg
 いつものようにウィキペディアからお借りした写真ですが、キウイフルーツの写真というとどうしても果実の断面を示したものになってしまいますね。

 で、このキウイフルーツの性染色体が確定されたという論文がもうすぐ出るそうです。
Lena G Fraser, Gianna K Tsang, Paul M Datson, H NIHAL De Silva, Catherine F Harvey, Geoffrey P Gill, Ross N Crowhurst and Mark A McNeilage.
A gene-rich linkage map in the dioecious species Actinidia chinensis (kiwifruit) reveals putative X/Y sex-determining chromosomes. BMC Genomics, (in press)
 BMC Genomics はオープンアクセスジャーナルですから、どなたでも無料で全文にアクセスできますので、興味のある方はぜひともチェックしてください。

 キウイフルーツの染色体は1ミクロン以下という小さいもので、雄でも雌でも29対58本の染色体があるため、交配実験でXY型(雌がXX,雄がXY)だろうと推測されていたものの、染色体の観察からだけでは性染色体というものが今ひとつはっきりしなかったのだそうですが、昨年の夏頃に遺伝子(ESTs)がある程度解析されたという報告もあったので、ここに至るのは時間の問題だったと思います。

 さまざまな染色体を特徴づけるマイクロサテライトという塩基配列をもとに、各々の染色体の特徴(遺伝子組成図)を明らかにし、性染色体と思われるものを追いつめたのでした。その結果、2本ずつある染色体の中に花粉形成の時にしっかりとペアにならないものがあり、そのうまくペアにならない染色体の領域に雄特有の遺伝子配列があることを見つけたという論文のようです。

 そこには、雌しべの形成を抑制する遺伝子と花粉形成を促進する遺伝子があったということですから、その領域がまさに雄株を作らせるために働いていると考えられますので、それを持った染色体がY染色体ということが結論できたというわけでしょう。
キウイフルーツの性染色体_c0025115_2052504.jpg
 雌しべのない雄花(左)と花粉のできていなさそうな雌花(雌花)がならんだこの写真をみると、確かにその2つの遺伝子が働いていることがわかります。(雌雄異株なのに、こんなに近く雄花と雌花があるのは一瞬不思議に思われますが、なんのことはない、別の株のツルが絡み合っているだけでしょう。)

 この先、長い時間が経てば、ヒトの性染色体と同じように、X染色体とY染色体はまったく異なるものへと進化する可能性もあり、まさに性染色体が進化しつつあるところを見ているといっても良いのかもしれません。

 ヒトなどの動物のオスメスを決める遺伝子と、植物の雄株雌株を決める遺伝子は随分と違うものだと思いますし、現在ではそのほとんどが雌雄同株の植物とそのほとんどが雌雄異体の動物を比べると、性染色体はその共通祖先が持っていたものではなく、動物と植物が分かれたずっと後になってから別々に現れたものだと思われます。それにもかかわらず、性染色体という共通の構造が出現したのは収斂進化(収束進化)と言えるでしょう。

 雌雄異体の状態が長く続くと性染色体が進化してくる必然があったということだとすると、性染色体がどうしてあるのかを考える時に、大きなヒントを与えてくれるものだと思います。

 自然はいつも偉大な先生です。
by stochinai | 2009-03-10 21:07 | 生物学 | Comments(0)
 CoSTEPが発行する科学技術コミュニケーション専門誌JJSCの第5号が出ました。杉山代表から、「CoSTEPの受講生や修了生のほか,科学技術コミュニケーション活動に取り組む各地の方々からの寄稿,あわせて12編が掲載されています。ぜひご一読ください」とのメッセージをいただいています。

 この雑誌は誰でもが無料で全文にアクセスできるオープンジャーナルで、北大が誇る機関リポジトリHUSCAPを通じて全世界に配信されています。

 メイン・アドレスはこちらですが、以下のすべてのタイトルにHUSCAPへのリンクが張られていますので、クリックするだけですぐにアクセスできます。

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Japanese Journal of Science Communication
第5号
2009年3月発行

論文

相互交流と情報交換の場の創生によるサイエンスコミュニケーションの活性化 ~サイエンスアゴラ2006から2007,2008へ~

長神風二 谷村優太

トキ野生復帰に関するサイエンスカフェの企画・準備・実施の記録と分析 ~理系研究者による対話活動を支援するための手法の検討~

川本思心 浅羽雅晴 大石麻美 武山智博 関島恒夫 島谷幸宏 西條美紀

食品安全政策に関する社会的意思決定への市民参加の意義

白田 茜

日本のマス・メディアと生命科学情報 ~生命科学研究者の意見から~

東島仁 高橋可江 加藤和人

報告

科学系博物館と大学の連携による人材養成プログラムの課題と展望 ~米国の科学系博物館における教員養成・研修プログラムを事例に~

小川義和

理系大学院生・研究者のための科学コミュニケーション教育

横山広美

CoSTEPにおけるプロジェクト型学習プログラムの開発・運用・評価 ~プロジェクト実習「環境学習の場のデザインと評価」を事例として~

石村源生

サイエンスコミュニケーションネットワーク横串会 ~組織や地域の垣根を越えたプラットフォームの試み~

中澤木聖 竹田 寛 立花浩司 藤田 剛 畑谷成郎 笠原 勉 松田健太郎

テレビ映像と様々なメディアをクロスさせた科学教育コミュニケーションの新手法の開発 ~NHK「理科教育クロスメディア」の取り組みから~

村松 秀 林 一輝 岡本美津子 朴 正義 田中謙一郎 軸屋亮太 植木 豊 田中瑞人

ゲノム科学への導入のためのポスター『一家に1枚ヒトゲノムマップ』

加納 圭 川上雅弘 室井かおり 加藤和人

インターナショナル・サイエンス・カフェ実施報告

村上正剛

フィールド・ノート

TV番組制作の中で見つけた科学技術コミュニケーションの芽

早岡英介

by stochinai | 2009-03-09 20:42 | CoSTEP | Comments(0)
 このところ、我が家の餌場にはヒヨドリやツグミなどの中型のトリもやってきて、スズメを蹴散らして餌を食べています。たまにシジュウカラやシメも来ることもありますが、写真を撮れるほどゆっくりしていってくれたことはありません。

 今日は珍しく、珍客が写真を撮らせてくれました。
おめかしした珍客とクンシラン_c0025115_21513597.jpg
 大きさは、スズメと同じくらいですが、色や模様で一目で違いがわかりました。
おめかしした珍客とクンシラン_c0025115_21514942.jpg
 なんだか、頭のてっぺんが赤いようにも見えます。背中にある縦縞が特徴的です。

 ちょっと驚いて飛び立ち、近くのモクレンの木に留まったところです。
おめかしした珍客とクンシラン_c0025115_21522100.jpg
 胸がスプレーをかけたように赤くなっているのは、遠目にも鮮やかに見えます。調べてみると、どうやらベニヒワの雄のようです。北海道では珍しくない鳥のようですが、我が家に来たのは初めて見ました。

 珍客が留まっている屋外のモクレンの蕾はまだまだふくらんできませんが、室内ではクンシランが真っ盛りです。クンシランは、北国の室内では暖かすぎるのか、人が快適に過ごすことのできる同じ部屋に置いておくと、花茎が伸びる前に花が開いてしまうということがよく起こります。

 今シーズンは低い温度で管理できて日の当たる場所を屋内に確保できたので、屋外でじっくりと寒さにあててから、霜の降りる前に取り込みました。その結果、ご覧のとおりの大成功です。
おめかしした珍客とクンシラン_c0025115_2213101.jpg
 逆光での花の接写も試みてみました。
おめかしした珍客とクンシラン_c0025115_22142673.jpg
 さすがにゴージャスな花は違いますね。
by stochinai | 2009-03-08 22:19 | 札幌・北海道 | Comments(3)
 カレーに黄色い色をつけるスパイスとして有名なウコン(ターメリック)の主成分は、ウコンの学名Curcuma longaからクルクミン (curcumin) と名付けられたポリフェノールで、こんな構造をしています。
万能薬ウコンの謎が解けた_c0025115_1675784.jpg
 ウコンは、お酒を飲む前に飲むと劇的な二日酔い防止効果があるというなかば伝説的な話は有名ですが、その他にもたくさんの薬理作用を持っていることが知られており、Wikipediaによると「抗腫瘍作用や抗酸化作用、抗アミロイド作用、抗炎症作用」があるそうです。つまり、がんにも老化にも傷などにも効く万能薬というわけです。

 一方、あまりにもいろいろなことに効くと言われているので、その効果がいったいどういう科学的基礎に基づくのか不審に思われ、疑いの目を持たれていることもあるようで、私もどちらかというと「そんなになんにでも効く薬があるのか」という感想を持っていたひとりです。

 ところが、3月3日に出た J. Am. Chem. Soc. の論文では、クルクミンが細胞膜の構造を変えるという結果が示されており、これならば今までに示されていたたくさんの薬理作用を一気に説明できるかもしれないという説得力を持つものでした。

Determining the Effects of Lipophilic Drugs on Membrane Structure by Solid-State NMR Spectroscopy: The Case of the Antioxidant Curcumin

 例によってScienceDailyの解説記事からたどりつきました。

Turmeric Ingredient Makes Membranes Behave For Better Health

 化学に弱い私ですので、うまく説明できるかどうかわかりませんが、細胞膜のことをご存じの方ならば、この図を見ただけでパッと納得できるかもしれません。緑で描かれているのがリン脂質で、オレンジ色がクルクミンです。
万能薬ウコンの謎が解けた_c0025115_1623113.jpg
 これを見て、クルクミンがコレステロールのような働きをしているのではないかと思った人もいらっしゃるかもしれません。

 論文で示された実験では、さまざまな条件でクルクミンを添加した細胞膜の性質をSolid-State NMR(固体核磁気共鳴)という方法で解析ているようです。残念ながら私は、NMRに関してはまったく説明することはできませんが、それを使うと分子の状態が推測できるということくらいはわかります。

 それでわかったことは下の図に示されたように、細胞膜にクルクミンが含まれない時、ちょっと含まれる時、比較的多く含まれる時で、細胞膜の厚さ(および流動性などの性質)が変わるということのようです。
万能薬ウコンの謎が解けた_c0025115_16361751.jpg
 このことから、細胞膜にクルクミンが含まれることで、その濃度によっては細胞がなにかを分泌したり取り込んだり、分裂したり融合したりすることに大きな影響を与えることが推測されます。

 また細胞膜には、細胞が持つたくさんの機能を担うタンパク質などが埋め込まれていますので、細胞膜の物理的な性質が変わるだけでも、細胞膜の中のそうした分子の働きに大きな影響が出ます。こういうことが明らかになってくるとなぜクルクミン(ウコン)が万能薬としてさまざまな働きを発揮することができるのかということが不思議ではなくなってきます。

 今回得られた知見をもとに、今後はクルクミンがどのようにさまざまな薬理作用を示すのかが、続々と明らかになってくることが期待されます。

 すごい発見だと思います。
by stochinai | 2009-03-07 16:48 | 医療・健康 | Comments(4)
 知らなかったのですが、カザフスタンでは今でもウマの乳を飲んでいるのだそうです。

 もうひとつSCienceネタです。

The Earliest Horse Harnessing and Milking

 そんなにすごい論文だとも思えないのですが、紀元前3500年頃と同定されたウマの骨や同じ場所から出た陶器に付いていた脂肪酸を分析した結果、当時すでに野生のウマとは骨格の異なる家畜化されたウマがいたことや、歯を調べると特有の摩耗が見出され、ほぼ間違いなく乗馬するために口に噛ませる馬具が使われていたこと、さらに陶器に残っていた脂肪酸を分析すると、ウマの脂肪組織だけではなくウマの乳成分が検出されたことから、ウマがすでに家畜化されていたばかりでなく、ウマの乳を利用していたことも推測されるという結果が提示されています。

 Wikipediaでも、ウマが家畜化されたのは紀元前3000年から4000年と書いてありますので、そういう意味では新発見と言うことはないのでしょうが、現在のカザフスタンでウマの乳が飲まれているという習慣がすでに5500年前には始まっていたという事実は、なかなか壮大でおもしろい発見だと思いました。

 これも例によって、National Geographic News に解説記事があります。

Horse Taming, Milking Started in Kazakhstan

 いつものように詳細な日本語訳もあります。

馬の家畜化と搾乳は5500年前から

 ナショナルジオグラフィックに掲載されている、 珍しいウマの乳搾りの写真です。

by stochinai | 2009-03-06 21:05 | 生物学 | Comments(0)
 今日出たScienceの表紙には、普通のハイイロオオカミと黒いハイイロオオカミが遠吠えしている写真が出ています。「シートン動物記」に収録されている「オオカミ王ロボ」に出てくるオオカミはハイイロオオカミだそうですが、今や絶滅が心配されている種でもあります。
黒いハイイロオオカミはイヌから遺伝子を受け継いだ_c0025115_19232288.jpg
 イヌの毛の色を黒くする遺伝子は、defensinという免疫関連タンパク質の変異によって起こるという論文が2007年の11月30日号のScienceに載っていて、ゼミで紹介したので覚えていました。
黒いハイイロオオカミはイヌから遺伝子を受け継いだ_c0025115_19305839.jpg
 今回Scienceの表紙になった論文では、色の黒いハイイロオオカミや黒いコヨーテを調べてみたところ、イヌと同じ変異遺伝子を持っていることがわかったということが述べられています。

Molecular and Evolutionary History of Melanism in North American Gray Wolves

 イヌもコヨーテもオオカミも40000年くらい前はまだひとつの種でしたが、この毛の色を黒くする変異は、イヌとオオカミが分かれてからイヌという種の中で起こった変異であり、オオカミやコヨーテではその変異は発生しなかったと考えられるので、黒いオオカミやコヨーテが持っている変異遺伝子はイヌとの交雑によって起こったと結論されています。

 オオカミの一部が家畜化されることによってイヌに進化したのは15000年から40000年くらい前ということになっており、黒いイヌとオオカミやコヨーテの交雑が起こったのは、その後14000年くらい前から、ひょっとすると500年前くらい前(かなり大ざっぱですが)かもしれないと書いてありました。

 なんか、このニュースはしばらく前に見たことがあるような気がして検索してみたら、National Geographic News の2月5日付けの記事がありました。

Wolf-Dog Mating Led to Darker Wolves

 日本語の翻訳もこちらにあります。

黒いオオカミはイヌとの交雑で誕生か?

 最近は、「遺伝子汚染」とかいう恐ろしげな言葉で野生生物の遺伝子の「純粋性」を守ろうとかいう動きもあるようですが、こんな論文を読むと交雑するのは生物側の勝手じゃないのだろうかということも感じます。
by stochinai | 2009-03-06 19:46 | 生物学 | Comments(2)

本の在処が見えるマップ

 いつも新鮮な情報を教えていただいている「新潟県立大ブログ」さんのところで、またまたおもしろいものを発見しました。

 エントリーは:[本間]書籍全文はすべてクラウドへ?

 記事の最後に、大学図書館などの所蔵を可視化してくれる所蔵図書館マップというものが、さりげなく紹介されています。

 所蔵図書館マップ

 説明によるとベータ版のようですが、非常にインスパイアされるものがあります。
* 本サービスは試験的なものです。予告なく停止および変更することがあります。ご了承ください。
* 現在はWebcat Plus(国立情報学研究所提供。大学図書館等対象) ・総合目録ネットワークシステム(国立国会図書館提供。都道府県立図書館等対象) ・ALIS WebOPAC(農林水産研究情報センター提供。農林水産関係機関対象)の3つの総合目録が対象です。
* いずれの所蔵データも勝手に利用しています。正式に利用させてもらっているものではありません。
* 所蔵館の位置情報の取得には,一部を除き東京大学空間情報科学研究センター提供のCSVアドレスマッチングサービスを利用しました。
* このページを作成したのはmyrmecoleonというものです。何かあれば,だいたいこのへんにいますので声かけてください。
 調べたい本のISBNをフォームに入力するだけで、Googleマップに表示されます。

 早速、試してみました。(クリックすると画像が大きくなって字も読めるようになります。)
本の在処が見えるマップ_c0025115_1393269.jpg
 色の違うスポットがあります。別のものでやってみましょう。
本の在処が見えるマップ_c0025115_13111173.jpg
 検索している目録が3種類ということなので、その結果が色分けされているのかもしれません。それにしても、こうしてみると本(和書)というものは図書館にいけば必ず見つかりそうな気がしてきます。

 洋書はどうでしょう。これは、最近我々の研究室で見あたらなくなって困っている本です。
本の在処が見えるマップ_c0025115_13125715.jpg
 ありゃりゃ、この本は北海道・東北にあった、たった1冊だったということかもしれません。どなたか心当たりのある方は至急返却してください。よろしくお願いします。

 すでにあるサービスを組み合わせるだけで、こんなものができてしまうというのもWeb2.0のすごさというものなのかもしれません。

 図書館に興味のあるかたは、是非ともお試しください。
by stochinai | 2009-03-06 13:18 | 大学・高等教育 | Comments(1)
 とりあえず秘書を拉致して締め上げて自白を取ろうという作戦なのだと思いますが、もしも自白あるいは(おそらく出てこないと思いますが)なんらかの証拠が取れなければ、今回の小沢金脈問題に検察側が勝利することはできないと思います。また、たとえ逮捕されている秘書が白状したところで、政府が行う公共工事の受注に対する野党党首の力というものは、たとえ現実的にはかなりのものがあったとしても、公式なルートでは行われなかったでしょうから、献金と便宜供与というセットが揃わない以上、この金脈問題が汚職へとつながることは難しく、そうであるならば単なる政治資金規正法違反にしかなりません。自民党議員がお得意としている方法で、「訂正して誤れば済む」というようなレベルだと思います。

 今日になってゴソゴソと西松建設に数百万円のパーティ券を買ってもらっていた自民党代議士が返金策動を始めているようですが、たとえ返したとしても小沢さんの秘書が逮捕されたのと同じ政治資金規正法違反に関しては限りなく同罪だと、国民の多くは感じているのではないでしょうか。

 小沢さんも主張しているし、あちこちで言われているように、自民党が下野することがほぼ確実になっている次の衆議院選挙を目前にして、次期政権を担うことが予想される第1党の党首に対して、明らかに選挙戦へのイメージダウンが予想される検察活動をこれだけ大々的にやれば、背後で自民党が糸を引いていようといまいと、選挙に対する牽制を意図してやってものだと取られるのが普通です。

 それを敢えてやったのですから、検察としてはほぼ間違いなく意識的に行ったものでしょう。そんなことは考えてもいなかったということならば、それはそれで恐るべき政治音痴を責められるべきでもあります。

 ただ、それが反民主党ということだけを意識してやったのか、同時に自民党でも同じようなことをやっている多数の代議士も同時に網をかけて、「日本の政治をきれいにする」ためにやったのかは、現時点では判断がつきません。この後、次々と自民党を中心とした代議士に捜査の手が伸びていくとしたら、特に民主党だけを狙い打ちにして、自民党政権の延命を目指したものというわけではないのかもしれません。

 しかし、もしも今回の摘発がそうした公平な立場から行われているとしても、本来ならばそれは選挙が終わり、国民がどういう政権を選ぶのかがはっきりした時点で、そうしたこととは独立に「犯罪者」を粛々と検挙していくという順序を踏むべきだったと思います。

 まあ、小沢さんが昔自民党にいた時と同じやり方でゼネコンから政治資金を得ていたことはおそらく間違いのないことで、それを嫌悪する国民もたくさんおられるでしょうから、これから行われる選挙ではそうしたことが反映して小沢民主党からは票がいくぶんか逃げていくということにはなると思いますが、そうした泥の部分を民主党などの野党政治家も自民党と同様に持っていることは認識した上で、ともかく今の政治体制を変えるのだという民意が、この程度のことでそう簡単に消えるとは思えません。

 小沢さんは徹底的に戦うといっているようですが、政治資金に関してはそれほど偉そうなことは言えないとしても、ともかく一度自民党には下野してもらいたいという国民の意識の流れは動かないと、私は見ています。つまり、小沢おろしは強まらないのではないかと感じます。

 そして、それはおそらくもうすぐ行われるであろう、今のマスコミがもっとも得意として力をいれている世論調査の結果で明らかになると思います。

 その結果、やはり国民の大多数が自民党にNoをつきつけ、とりあえず次回の選挙では政権交代を望むという結果が出たならば、検察当局もこの件からは手を引かざるを得なくなるような気がします。

 ともかく、今の日本はそんな政治資金規正法などという「小さな」ところにこだわっているほどのんきな状況ではありません。

 検察も顔を洗って出直して欲しいところです。
by stochinai | 2009-03-05 21:12 | つぶやき | Comments(4)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai