5号館を出て

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非科学的な説明

 国内で初めて感染が確認され、変異型ヤコブ病によって死亡したとされる男性が90年に24日間だけイギリスに滞在していたことが確認されたというニュースが出ました。

 そりゃあ、イギリスに24日間も滞在していれば、ハンバーガーも食べれば、ウシのエキスを含んだソースで味付けした料理も食べていたことは間違いないと思います。たったそれだけの理由で、日本の厚労省は「イギリスで感染した可能性」が、今回の結果から「より強く裏付けられた」と言っているようですが、本当にそれでいいんでしょうか。もちろん、厚労省といっても関係の医学・生物学の専門家がそのような判断を下したということなのですが、結論を急ぎすぎているような気がします。

 一般的に、科学者は結論を急がないとされていますので、今回のように結論を急いでいると、その背後になんらかの政治的意図があるように感じられてなりません。

 確かに、この男性がイギリスでBSEのウシから得られた臓器を食べることによって変異型ヤコブ病になった可能性は否定できないと思います。しかし、「否定できない」ということと、「より強く裏付けられた」ということの間には、天と地ほどの開きがあります。

 もしも、100歩譲って今回の厚労省の結論が正しいとしたならば、同じ時期にイギリスでハンバーガーを食べた日本の方達の不安は想像を絶するものがあります。急いで、その方達の診察をすべきだと思いますが、それはやっているのでしょうか。

 たった24日間の滞在で感染するというのなら、1週間の滞在や数日の滞在でも十分に危険だと推測されます。そうしたことを充分考えた上での、今回の報道発表だったでしょうか。

 どうも、日本のお役所というものは「自分の責任さえなければ問題なし。対処する必要なし」というふるまいをすることが多いように思われて困ります。

 もしも今回の発表に自信を持っているということであるならば、BSE騒動のイギリスへ渡航した経歴のある日本人すべてを検査する義務が生じると思います。そういうことも、きちんとする体勢を整えた上での発表だったのでしょうか。私には、ただ単に「日本で感染したのではない」ということを強調するための政治的駆け引きだったように思えてなりません。

 今まで、何度となく引き起こされて来た薬害や病人の差別騒動をもう引き起こしたくないという気持ちがあるならば、発表によって幕引きを目指すのではなく、国民全部の協力を得ながら病気と闘うという気持ちを持って行動して欲しいと思います。

 そういう姿勢になってくれれば、国民だってもっともっと協力的になってくれると思います。いつになっても相変わらず、「国民は無知だから、我々がすべてを仕切らなければならないのだ」などという気持ちでいるのではないことを、心から願っております。

 (追加:3月8日)
 厚生労働省は、1980~1996年に英仏両国に1日以上滞在した人の献血を中止する暫定措置を決めたようですが、なんとその数が推計で数十万人だそうです。
# by stochinai | 2005-03-07 21:46 | 生物学 | Comments(8)

米軍の誤射?

 イラクの抵抗勢力から解放されたイタリア人記者が、帰国のために空港へ向かう途上、アメリカ軍によって銃撃されるという事件が起こりました。

 幸いにして、解放されたスグレナさんらは殺されなかったものの、一名のイタリア情報局員が射殺されてしまいました。

 アメリカは誤射を認め謝罪したと言うことですが、もし生存者がいなかったら、米軍の誤射ということが報道されたかどうか疑問に思えます。

 この事件の報道で、真っ先に思い出したのが、イラクで殺された日本の外交官、奥克彦さんと井ノ上正盛さんのことです。二人とも殺されてしまったため、誰が撃ったのかの結論を出すことができていないと思います。

 2例とも、近距離から嵐のような銃弾を浴びせられているというところが、似ていると思いました。

 戦争の中で起こったことの真実を明らかにする報道の必要性を強く感じています。
# by stochinai | 2005-03-07 14:13 | つぶやき | Comments(0)

あるMLの閉鎖

 ガ島通信さんの撤退宣言の余波が収まらない本日の午後6時頃、衝撃のメールが飛び込んできました。

 「突然の事で申し訳ありませんが,いろいろな事情を勘案して,月末(3月28日昼頃)をもって,本MLを廃止する事を決めました.・・・・・・本年の1月頃から,廃止にしようと考えてきました.理由はたくさんありますが,10年一区切りと思っています.」

 私がそのMLに参加したのが4-5年前のことですので、MLはその時にはもう5-6年の歴史を持っていたと言うことになります。

 「現在の配信アドレスは,1300です.延べでは3500程度でした.専用のサーバになって今の機械で3台目です.過去には,学生でお金がなく,寄付を受けてサーバを構築したこともありました.」

 何となく感じてはいたのですが、これほど大規模に運営されているMLであるのにもかかわらず、基本的にはたった一人のボランティアと、その人のプライベートなサーバー・マシンによって運営されていたようです。(ほとんど意識せずに、使わせていただいていました。ありがとうございました。)

 そのMLは「理科教育メーリングリスト(http://rika.org/)」という名で、理科教育関係の教員を中心に、学生、生徒の父母、研究者などが、理科教育に関係した(あるいは関係しない)様々な話題について、かなり精力的にやりとりがなされているMLでした。

 そんなMLが、たった一人の、しかも始めた頃はおそらく学生だった人の活動に支えられて10年も続いていたとは、その方のボランティア精神に感謝すると同時に、インターネットの持つ信じられないほどのコスト・パフォーマンスに感動しています。

 しかし、その方が今や理科教育とは離れた分野に職を得ておられるらしく、さらには「個人情報保護法への対応で作業が発生し,その作業負荷に耐えられない」という状況はかなり深刻な現実なのだと思います。個人情報保護法がそうした、中規模のコミュニケーションの破壊につながるということも再認識しました。何千人でも何万人でもが参加するMLでも、技術的には個人の持つパソコンで運用は可能なのでしょうが、法的な対応が必要になってくるとなると話はガラッと変わってくると思います。これについては、いずれまた改めて考えてみなければならないと思っています。

 それと、もうひとつの大きな理由はネット環境の変化です。少数の大きなMLが力を持っていた時代から、たくさんの多様なMLへと分化が進んでいることと、ブログやホームページによる個人を中心とする情報交換の手段だどんどん進化していること、などから1000人以上の参加者を持つメガMLの存在意義は、10年前と比べるとずいぶんと小さくなってきていることも、また事実だと思います。

 日本で3月というのは、旧年度の最後の月ですから、人が身の振り方を考え、大きな動きをする時期ではあります。大学でも、卒業生を送り出し、来月に入ってくる新入生を迎える準備をしなければならない、一年でもっとも落ち着かない時期です。新たな希望に心が弾み始める時期でもありますが、新年度に向けて新しい動きのできない自分を見つけて、心が乱れる時期でもあるのです。

 いろんな人のいろんな動きを見るにつけても、さて自分はどうするのかと問いかけられているような気もするこの時期が、日本では春という季節で本当に良かったと思うこともあります。これが、欧米のように冬を迎える直前の秋だったら、精神の落ち込みに耐えられない人が増えてしまうことが心配にもなる今日この頃です。

 日本の新年度が春なのには、そういう意味もあるのだとしたら、国際化という名の下に検討されている、新学期の秋開始というアイディアをそう簡単に受け入れない方が良いのかもしれないですね。
# by stochinai | 2005-03-06 23:59 | つぶやき | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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