5号館を出て

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 何気なくニュース・サーフィンしていたら、えっ!?というニュースに出会いました。

 「ニッポン放送の役員を除く238人の社員のうち217人が3日、『社員一同」として「フジサンケイグループに残るという現経営陣の意思に賛同し、ライブドアの経営参画に反対します』とする声明を発表した」とのことです。

 たとえば「人を殺してはいけない」とか「自然を大切にしましょう」とかについて、238人に意見を聞いたところ、217人が賛成したというのならわかります。あり得ることだと思います。

 しかし、今回の問題のように世論でも意見が割れていることに関して、ある集団で90%以上の人が同じ意見というのは、どう考えても気持ちが悪いと思います。

 しかも、その会社の社長が特定の意見を持っていて、今回の「社員の総意」がその社長の意見と同じというのがますます気持ちが悪いです。

 最後のところに事実の見える文章がありました。(記者の良心でしょうか?)「ニッポン放送には労働組合がなく、50年を超える同社の歴史で初めての社員総会を2日午後6時から開き、全会一致で声明の発表を決めた」というところです。

 つまり238人のうち、賛成しなかったのはこの社員総会に(たまたま?)出ていなかった人だけということなのでしょう。つまり、反対意見はゼロということです。

 この総会では反対の声がでなかったということになります。冷静に考えると、出せなかったということでもあると思います。

 投票をしたとは書いてありませんので、この「全会一致」も「反対意見はありませんか」とか「こういうことで良いですか」と訊いて拍手かなんかで賛意を問うたか、あるいはそれすらなく「異議なしと認めます。よって全会一致で可決します。ありがとうございました」という、我々が良くお目にかかる典型的な「シャンシャンと手打ちをする日本の会議」だったのではないかと想像されます。

 誰が見ても、これは会社によるやらせと思えるでしょう。だいたいが、200人を越える従業員がすべて社長と同じ意見を持っている会社なんてあるはずがないと思います。

 いわば踏み絵の形で反対を封じた上で、「社員の総意」をでっち上げるために行われたと思われる大政翼賛の「社員総会」は、不当労働行為にならないんでしょうか。弁護士さんの意見を聞きたいものです。
# by stochinai | 2005-03-03 20:17 | つぶやき | Comments(10)

生物の合目性

 ばかぼん父さんのエントリー「生物」の原則で、「生物」についての感想を述べておられます。

 「生物分野は、なじみの少ないモノの名前が多く出てくるので、暗記モノと思われがちだが、実は一貫した大原則が存在している」という視点は、生物学をやっているものとしては、とてもありがたいものです。

 暗記物などと言われていたのは、生物学をきちんと理解していない受験生と、生物学を理解していない出題者がたくさんいた過去の物語だと思っています。

 もちろん今でも、そうした過去を引きずっている例はたくさんあるのだと思いますが、少なくとも生物学の学問の現場では、進化の原則はかなり普遍的なものとして理解されるようになってきています。

 「生物の身体は環境に適応するように長い時間をかけて進化してきているから、合目的にできている」という感想は、そんなに間違っているとは思わないのですが、合目的にできているはずの生物のからだがいろいろな不都合を持っていることもまた事実です。

 たとえば、直立して2足歩行するようになったヒトが、そのために腰痛や難産を抱えるようになったのは、どうみても良いことばかりの「合目性」だけでは説明できません。同様に言葉を話すようになったヒトが、喉の奥で気道と食道を共有しているために、お年寄りが餅を喉につまらせてしまう事故が起こるようになっていることも困ったことです。(言葉を話せないチンパンジーや赤ちゃんはものを食べながら息をすることができます。)

 「その仕組みがいつ頃出来たのかによって違うので、ややこしいことになる。そのややこしさが『面白い』」という指摘はまさに生物学のおもしろさを言い当てているのだと思いますが、そのおもしろさを楽しむことと、試験で正しく答えることが同義ではないことが悲しいことです。

 技術的には「素直にありのままを見て、どうしてだろうと考えれば、正解になるようにできている」という現実の試験問題に対する対策もそこそ事実でしょうから、まずは試験をクリアしてもらってから、その先で生物学を楽しんでもらえれば文句はありません。

 でも、やっぱり試験が学問をゆがめていることは否定できませんね。困ったもんだ。
# by stochinai | 2005-03-02 22:35 | 教育 | Comments(2)

なんのための中教審

 「おしえるしごと。」でばろっくさんが、「中教審を信じ難い理由」というエントリーを書かれておられます。

 ばろっくさんが中教審のメンバーを調べてみたところ、「ほとんどが『私立関係者』だ」ということで、「分かりやすいのは、今就いておられる仕事が私立学校関係である人。またそれ以外の方々も学歴をちょっと調べさせてもらうと、大抵が私立出身者なんですね。それもとっても高名な」とのことです。

 私立学校の出身者ばかりを集めて公立学校の今後の方針を検討するというのも、確かに偏ったことになるかもしれません。しかし、政府系の審議会にはそれ以上の根深い問題点があると思います。

 それは、審議会は政府の意向に許諾を与えるために組織されるものであるということです。ですから、メンバーが政府の意向を反映するようなものになっているのは当たり前で、場合によっては最初に選ばれた委員が邪魔になりそうなことがわかって外されるというような話も良く聞きます。逆に、いつでも選ばれる(政府から見て)「優等生」の常連委員もいるようです。

 結局、中教審を始めとする政府が組織する各種の審議会の任務は、「政府の方針にお墨付きを与える」という任務だけが与えられているのだと思います。

 つまり、政府が政策立案に困って審議会に諮問しているわけではなく、あらかじめ持っているやりたいことにOKのゴーサインを出すことが期待されているのが審議会なのです。

 私は委員になったことなどありませんが、審議会の中味の想像は容易につきます。いろいろな「雑談」をすることは許されているでしょうが、次回に提供されるその会議の議事録は、「優秀な」官僚によって作られた、政府の政策を支持する巧妙な作文になっています。もちろん、その議事録に異議を唱えて修正を要求することはできるのですが、そのようになることは稀なことでしょう。

 そして毎回のように議事録に異議を唱える委員は、次の審議会の時には選ばれなくなっているこでしょう。

 というわけで、私もばろっくさんのおっしゃるように、中教審を信じるわけにはいきません。いままでもずっと、その時の政府=文科省(文部省)がやろうとしたことを承認することしかしてこなかった中教審そのものを否定することから始めなければ、これからも日本の教育がまともになることは、とうてい期待できないと思います。

 中教審の委員に私学の方が多いということは、政府が自分自身の行っている公教育を否定しようとしていることになるのかもしれないとも思えるのですが、実は郵政民営化などと同じく、教育も民営化しようとしている政府=自民党の深謀遠慮の結果、公営の教育システムを崩壊させようとしている結果なのだとしたら、自民党もなかなかしたたかな作戦を遂行しつつあると言えるのかも知れません。

 本当に、そうなんでしょうか。
# by stochinai | 2005-03-02 22:04 | 教育 | Comments(4)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai