2008年 12月 11日
「抗体マスク」に対するいくつかの疑問
新型インフルエンザパンデミックの恐怖が繰り返し報道されており、不安に思っている人も多いことと思います。報道を見聞きしていると、非常に恐ろしいということが強調されており、個人としてどうすれば良いのかという点に関しては、安心できるアドバイスがなかなか得られません。
そんな中、マスクの中にインフルエンザウイルスに対する抗体を封入した「抗体マスク」というものの存在が繰り返し報道されています。
私の知る限りでは、抗体というものはタンパク質ですから水溶液の中でしか働かないので、空気を通すマスクの機能と両立することがどうしてもイメージできませんでしたので、最近テレビで見た記憶のあるダチョウの卵の中に蓄積された抗体を使ったマスクというキーワードを頼りに、ちょっと調べてみました。
古いものですが、おそらくこれあたりが最初の「学術的」報道のようです。
日経メディカルオンライン 2008.1.18
【学会トピックス】
ダチョウの卵から生まれた鳥インフルエンザ抗体マスク
要するにメスのダチョウに「3種のインフルエンザウイルスワクチン株(A/H1N1、A/H3N2、B/マレーシア)のHA抗原混合液や高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1由来のH5リコンビナント蛋白」を注射して免役すると、抗体が産卵されたダチョウの卵黄の中に大量に蓄積するということのようです。
ここまでは何の疑問もありませんが、それをどうやってマスクに装備するのかというところが、まだわかりません。探してみると京都府立大学のホームページに発表がありました。上の記事では、「大阪府立大生命環境科学研究科の塚本康浩氏ら」となっている研究者が、こちらでは「本学大学院生命環境科学研究科塚本康浩教授」となっていますが同一人物でしょう。それはさておき、この抗体を使って「H5N1ウイルスの感染を防ぐ抗体マスクの商品化を可能」にしたとのプレスリリースです。
それを見ると(図が小さくて良く分からないのですが)、どうやら抗体を保持するための「保水相層」というものがあるので、やはり抗体は水溶液で使うようです。「製品に関するお問い合わせ」は「CROSSEED(クロシード)株式会社」へとなっているので、そちらを調べてみるとありました、ありました。
抗体マスクのメカニズム
文章はわかりにくいのですが、図を見るとだいたいわかりました。
保水相層を通して空気が出入りすると考えるとその時に水の中にある抗体とウイルスが反応すると可能性はありそうですが、少し呼吸を続けるとこの保水相層の水が飛んでしまって乾燥するのではないかと気になりました。
グリセリンなどで、まさに「保水」するような工夫がされているのでしょうが、息を出し入れすることを妨害せずに、すべてのウイルスを保水相層にトラップして抗体と反応させることを、長時間続けるのはかなり難しそうに思えました。読んでいるだけで、息が苦しくなってくる感覚があります。
そういう意見があったのか、今年の10月に発売されたという新製品の「抗体ff〈フォルテシモ〉」の説明には、「呼吸が楽なため長時間の使用を可能にしました」と書いてあります。
医薬品ではないので、ウイルスのブロック率などのデータを出すことができないということなのかもしれませんが、会社のホームページには「ウイルスからのリスクが低減すると検証されて」いるという以上の情報は書いていないようです。本当に新型インフルエンザを効果的にブロックできるのでしょうか。
これくらいすごいマスクだと、そこに抗体が封入されていてもいなくても粒子ブロックによる効果でインフルエンザに限らず、空気感染するウイルスや細菌などいろいろなものに効きそうな気はします。
ネットには、抗体マスクに関する不正確な情報が膨大にコピペされていますけれども、こんな「ブログ」の存在は、ちょっと逆効果にも思えました。
本当に絶大な効果があるのなら、タミフルを備蓄するよりも、これを備蓄しておいたほうが良いかもしれませんね。
#私としては、まだ半信半疑なのですが・・・。
そんな中、マスクの中にインフルエンザウイルスに対する抗体を封入した「抗体マスク」というものの存在が繰り返し報道されています。
私の知る限りでは、抗体というものはタンパク質ですから水溶液の中でしか働かないので、空気を通すマスクの機能と両立することがどうしてもイメージできませんでしたので、最近テレビで見た記憶のあるダチョウの卵の中に蓄積された抗体を使ったマスクというキーワードを頼りに、ちょっと調べてみました。
古いものですが、おそらくこれあたりが最初の「学術的」報道のようです。
日経メディカルオンライン 2008.1.18
【学会トピックス】
ダチョウの卵から生まれた鳥インフルエンザ抗体マスク
要するにメスのダチョウに「3種のインフルエンザウイルスワクチン株(A/H1N1、A/H3N2、B/マレーシア)のHA抗原混合液や高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1由来のH5リコンビナント蛋白」を注射して免役すると、抗体が産卵されたダチョウの卵黄の中に大量に蓄積するということのようです。
ここまでは何の疑問もありませんが、それをどうやってマスクに装備するのかというところが、まだわかりません。探してみると京都府立大学のホームページに発表がありました。上の記事では、「大阪府立大生命環境科学研究科の塚本康浩氏ら」となっている研究者が、こちらでは「本学大学院生命環境科学研究科塚本康浩教授」となっていますが同一人物でしょう。それはさておき、この抗体を使って「H5N1ウイルスの感染を防ぐ抗体マスクの商品化を可能」にしたとのプレスリリースです。
それを見ると(図が小さくて良く分からないのですが)、どうやら抗体を保持するための「保水
抗体マスクのメカニズム
文章はわかりにくいのですが、図を見るとだいたいわかりました。
グリセリンなどで、まさに「保水」するような工夫がされているのでしょうが、息を出し入れすることを妨害せずに、すべてのウイルスを保水
そういう意見があったのか、今年の10月に発売されたという新製品の「抗体ff〈フォルテシモ〉」の説明には、「呼吸が楽なため長時間の使用を可能にしました」と書いてあります。
医薬品ではないので、ウイルスのブロック率などのデータを出すことができないということなのかもしれませんが、会社のホームページには「ウイルスからのリスクが低減すると検証されて」いるという以上の情報は書いていないようです。本当に新型インフルエンザを効果的にブロックできるのでしょうか。
これくらいすごいマスクだと、そこに抗体が封入されていてもいなくても粒子ブロックによる効果でインフルエンザに限らず、空気感染するウイルスや細菌などいろいろなものに効きそうな気はします。
ネットには、抗体マスクに関する不正確な情報が膨大にコピペされていますけれども、こんな「ブログ」の存在は、ちょっと逆効果にも思えました。
本当に絶大な効果があるのなら、タミフルを備蓄するよりも、これを備蓄しておいたほうが良いかもしれませんね。
#私としては、まだ半信半疑なのですが・・・。
#
by stochinai
| 2008-12-11 20:06
| 医療・健康
|
Comments(32)