2008年 10月 14日
学術雑誌の不採算性
小林・益川両氏も論文発表、伝統の学術誌が赤字で廃刊危機
いかにもという感じの、「ノーベル物理学賞の小林誠さん、益川敏英さんが受賞論文を発表した学術誌が、廃刊の危機に直面している」と、例によってノーベル賞効果で補助金を要求する論調の記事です。
日本発の理論物理学雑誌であり、歴史的意義もあるのだと思いますが、あまりの不採算性に「それはオンライン版にしましょう」と提案したくなりました。
発行部数は800部と少ないが、購読者は欧米など世界中におり、現在は京都大・湯川記念館内の理論物理学刊行会が年12回発行。ノーベル賞効果で、このくらいの補助金はすぐに出るのかもしれませんが、たとえ年に12回発行しているとはいえ、たった800部しか刷られなくて、年間6000万円というのはどうみても不経済です。一冊6250円の月刊誌を誰が買うというのでしょうか。
だが、年間約6000万円かかる出版経費のうち、数年前には約半額を賄っていた日本学術振興会の補助金が年々削減され、現在は1600万円しかない。
編集長の九後(くご)太一・京都大教授は「購読料や投稿料の収入をやりくりしても1年で約100万円の赤字が出る。積立金で穴埋めしているが、助成費が廃止されたら数年で廃刊に追い込まれてしまう」と危機感を募らせる。
益川さんも、受賞決定後の記者会見で、「研究成果が海外で客観的な評価を受けるため、日本人が主となって運営し、世界に通用する学術誌を持つことは非常に重要だ」と強調。安定して発行できる助成制度の必要性を訴えた。
たとえ1600万円でも無駄な印刷費を税金に投入することは、「無駄遣い」だと思います。印刷をやめてオンライン版だけにしたら数百万円ですむでしょうし、世界中の人に無料で閲覧してもらうことも可能になります。
すべてをオンライン版にして、印刷費を浮かせましょうと提案しようと思って、雑誌のホームページを見て、またまたビックリしてしまいました。なななな~んと「現在のところ、オンライン版のみの購読はできません」とのことですが、年会費が2008年で19,320円、2009年は19,680円です。
すぐに、印刷をやめてもらって、オンライン版だけにして欲しいと思います。
そもそも、たとえノーベル賞の対象になった論文で、「紙と鉛筆」だけで行われたものだとしても、税金で雇われた大学教員の研究であるならば、しかも税金からの補助金で出版しているものであるならば、納税者は無料で閲覧する権利があるはずです。しかも、ほとんどの納税者はたとえ興味があったとしても年間2万円も払って、場所を取るだけの印刷された雑誌を欲しいと思うはずもありません。
できるだけ早い機会に紙での印刷をやめ、ウェブでの閲覧を無料でできるオープン・アクセスにすることをおすすめします。
補助金も全廃とまでは思いませんが、この雑誌をオンラインでオープンアクセスできる程度の額にまで減額してもらってかまわないと思います。
たとえノーベル賞を取ったのだとしても、税金の無駄遣いはいけません。
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by stochinai
| 2008-10-14 21:35
| 科学一般
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