5号館を出て

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杉浦日向子さん

 NHKテレビなどで何回かお見かけしたくらいで、著作は読んだことはありませんが、見てきたように江戸を語る語り口はなんとなく気になっていました。そのうちに、まとまった本なども読んでみたいと思っていましたが、まだまだ若く見えるししばらく先でいいかな、などと思っていたのですが、なんと22日に亡くなられていたとのこと、ショックを受けました。見た目よりは遙かにお年を召しておられたようで、46歳とのことです。

 1988年にあの怪しげな趣味人、荒俣宏と結婚していますが、半年で離婚したことは強く印象に残っています。

 もともとは漫画家だったようですが、そちらはかなり前から引退していたとのこと、私にとってはテレビで江戸を語る不思議なお嬢さんという印象でした。

 下咽頭がんだったとのことですが、まったく惜しい方を失ってしまったものです。

 今年はじめに亡くなられた中尊寺ゆつこさん(享年42歳)とイメージが重なります。

 お二方とものご冥福を心からお祈りいたします。

追記:
 杉浦さん追悼の文章が続々と書かれていますが、とりあえず次の3つは読んでおいていただければと思います。

 極東ブログさん
 余丁町さん
 Suzieさん

追記2:
 いろいろと考えさせられることが多いのですが、言いたいことはすでに言い尽くされつつあります。

 BigBangさん
 深夜のNewsさん
 ハミングバードさん
# by stochinai | 2005-07-25 17:19 | つぶやき | Comments(8)

結婚とダイエット

 明日のゼミの勉強をしながら、横で流れているテレビの内容に時々反応していました。

 どちらも女性が主人公のお話でした。

 ひとつは、30代後半から40歳くらいの独身女性が、婚期は逸したかもしれないけれども、やっぱり結婚がしたいと様々な出会いの機会にチャレンジするというお話でした。

 まあ、番組にするという関係もあるのでしょうが、出てくる女性達はいずれもそこそこあるいはかなりの美貌を持ち、十分な経済的自立を成し遂げておられるキャリア・ウーマンと呼ばれる方々だったような気がします。

 無責任なことを言わせていただくと、その方々は何も無理して結婚しなくても人生を楽しめる環境におられるように見えるのですが、それでも老後などを考えると結婚しておきたいというようなことを言っているふうに聞こえました。

 もちろん今の日本の社会が女性に厳しく、特に中堅から管理職へと至る年齢層になってくると、様々な差別や偏見から堅実な未来像を描くことが難しいという状況は理解できないこともありあません。

 しかし、今の日本では女性でなくとも多くの人が同じような状況に置かれているのではないかと思います。男の場合にだって、同じように結婚するチャンスに巡り会えないまま40代や50代になっている人もたくさんいますが、あるところまで行くと(どこまでかは人によって異なるでしょうが)結婚のことはそれほどの優先順位を持ったテーマにならなくなるような気がしますが、今日テレビに出ていた女性達は私から見ると「無理して結婚するのはもったいない」ような方々ばかりだったような気がします。

 まあ、単なるテレビのニュースショー番組ですから、その内容が現在の日本の女性の代表的意見かどうかはかなり疑わしいとは思うのですが、きちんと独立して生活している彼女たちに「それでも、やっぱり結婚はしたい」と言わせる裏には何があるのか気になります。

 機会があれば、現実にそのような状況におられる方の話をじっくりと聞いてみたい気がします。

 もうひとつのダイエットの話も、何回聞いてもわかるようなわからないような話です。
 私のようなデブが、健康に悪いのでダイエットをしなければならないということなら、それは生命に関わることですから、多くの人が同じような関心を持つのは当たり前かもしれません。

 ところが、そういうデブに限ってまじめにダイエットしようとしないということはさておき、(これもテレビの番組作りの方針というものがあるのでしょうが)真剣にダイエットしようと頑張っている女性の多くが、どう見てもすでに十分スリムだったり、場合によってはすでにやせすぎではないかと思われるような人ですら、ダイエットのことを話題にするのが最近の傾向のような気がします。

 これはいったい何なのでしょう。

 もちろん、人によってはやせて美しく見える人もいますが、小太りが魅力的だったり、筋肉質が格好良かったり、かなりの体格でも十分に美しい方がたくさんいらっしゃいます。つまり、太っているか痩せているかと、美しさにはまったく直接的関係がないと思われるのに、なぜにみんなダイエットには逆らえないのでしょうか。

 結婚とダイエット、どちらも自分だけの問題として考えると、どうしても必要なものとは思われないのに、社会の中で生きる女性にとってはかなり深刻でプライオリティの高いテーマになっているということの理由がわからないうちは、私は日本の女性というものが理解できていないということなのだろう、と再確認した今夜でした。
# by stochinai | 2005-07-24 22:53 | つぶやき | Comments(4)
 6月30日のNature 435, (30 June 2005)に有性生殖に関する新しい発見が載っています。

 元のいわゆる原著論文Nature 435, 1230-1234 (30 June 2005)よりも、解説記事Nature 435, 1167-1168の方が、読みやすく内容に関しても十分盛り込まれているので、専門家以外のかたならそちらを読めば十分だと思います。

 今回、論文になったアリ(Wasmannia auropunctata、和名はコカミアリ)は、もともとは南米のアリだったようですが、今はアメリカ合衆国南部へもたくさん侵入しています。このアリの英語名がlittle fire antといい、その大きさにもかかわらず針で刺されると火傷をしたように痛いのだそうで、害虫として非常に嫌われています。

 普通のハチやアリが、ちょっと特殊な生殖と性決定様式を持っていることは広く知られていることだと思います。女王だけが卵を産むこと、多くのワーカー(働き蜂や働き蟻)は女王と同じメスだけれども卵を産まないこと、普通巣にはオスはいないけれども新しい女王が生まれるとオスも生まれて交尾をして新しい巣を作ること、でもオスはその後で殺されてしまうことが多いこと、など不思議ではありますが、意外と多くの人が知っていることです。

 卵と精子が受精するとメスができますが、メスの中で特定のものが女王になり、その他のものはワーカーになります。そして、受精をしない無精卵が半分の遺伝子のまま発生するとオスになるというのが一般的に見られる、ハチやアリの生活史です。

 今回、仏領ギアナとニューカレドニアで採集した個体のオス、女王、ワーカーの遺伝子で親子関係を調査したところ、とんでもないことがわかりました。

 ある巣の中で女王とワーカー、そして女王の体の中に交尾後ためられている精子、そしてその巣でうまれたオスと次代の女王の遺伝子を調べてみると、ワーカーは他のアリやハチと同じく、女王の遺伝子と精子の遺伝子を持っていました。つまり、ワーカーは普通に受精して生まれていたのです。

 ところが、オスを調べてみるとどのオスにも女王の遺伝子が受け継がれていません。オスには精子が持っている遺伝子しか見つからないのです。つまり、オスは精子の遺伝子だけで発生したと考えられます。つまり、オスは精子を提供したオスのクローンと言うことになります。さらに驚くことに、次世代の女王にはオスつまり精子が持っている遺伝子が含まれておらず、女王と全く同じ遺伝子を持つクローンであることがわかりました。

 女王から生まれる女王にはオスの遺伝子が受け継がれておらず、オスには女王からの遺伝子が受け継がれていないということは、このアリでは形だけは有性生殖のやり方を採用していながら、オスもメスもそれぞれが独自のクローンとして子孫が作られていっているということです。

 種の定義として代表的なものに、「有性生殖をして遺伝子を混ぜ合わせながら子孫を作ることのできる集団」というものがあります。簡単にいうと、この定義では父親と母親の遺伝子が半分ずつ子供に受け継がれていくことができるものが種で、遺伝子の交換ができなくなる(つまり、生殖ができなくなる)とそれは「別種」になったと判断されるということです。

 今回発見された、行動的には卵と精子を使った有性生殖をしていながら、発生する卵の中で両親からの遺伝子が受け継がれているのは次世代の子供を産まないワーカーだけで、次世代を作るオスと女王はクローン的に子孫を作っているということが間違いのない事実だとすると、このオスと女王は交尾をする「別種」の動物と言うことになってしまいます。

 我々の日常感覚からすると、この判断はとても奇妙に聞こえますが、もしもこうした遺伝子の混ざらない状態が何千年・何万年も続くとするとそれぞれの遺伝子のセット(ゲノム)の差がどんどん大きくなっていくことが予想されますので、見た目にもかなり違ったものになってくる可能性があるのです。

 この「有性生殖」する「別種のアリ」の将来はどうなるのか想像もつきません。

 生物を研究しているとしばしば例外が発見されておもしろいのですが、今回の発見は超のつく大例外だと思います。想定外の発見こそが、まちがいなく科学のおもしろさのひとつだと、改めてかみしめさせられる論文でした。

#月曜日にゼミの発表があるということを忘れていて、今頃になってあわてて読んでいますが。なかなかおもしろいです。
# by stochinai | 2005-07-23 18:00 | 生物学 | Comments(5)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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