2005年 06月 22日
「科学者」の語る優生思想
昨年の7月31日に私が書いた「つぶやき」の一部を再掲したいと思います。その数日前に行われた教育改革タウンミーティングで語られたことに対するコメントです。
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さて、数日前からイヤなニュースが飛び交っております。「子どもの早期選別に『ヒトゲノム』の活用も語られ始めた」のだそうです。例えば東京新聞の記事をごらんください(すでにリンク切れしています)。
脳を使うある種の能力と遺伝子には関係がありそうだという研究報告は古くからあります。遺伝子というものが発見される前から、知性というものも遺伝しそうだということは語られ続けてきました。それが、人種ごとに知性や人間性に差があり、それは遺伝を通じて変わらないのだから優秀な人種だけが生き残れば良いというのが、ヒトラーの率いたナチスドイツの思想だったのです。その結果、劣等民族としてのユダヤ人の虐殺が正当化されました。
それとまったく同じ発想からなる思想が今の日本でよみがえってきたようです。ナチスドイツの優生思想に手を貸したのは、生物学者のヘッケルだと言われています。「個体発生は系統発生を繰り返す」という、生物学に関係のない人でさえ知っている有名なキャッチ・フレーズの産みの親と言われているヘッケルは、ユダヤ人は進化の途中で止まってしまった未完成の人種であり、さらに進化したものが優秀なアーリア人種のドイツ人であると決めつけたということです。
個体発生が系統発生を繰り返す、という理論から言うとユダヤ人は未完成なドイツ人に過ぎないということになるようです。
しかし、ヘッケルの思想に救いがあるとすれば、たとえユダヤ人でもこの先進化していけばドイツ人に追いつけるということかもしれません。
それに比べると、生物学者ですらない江崎玲於奈や毛利衛のゲノムとヒトの知能に関する発言は、政治的に利用されているという点ではヘッケルのものと同等だとしても、その無責任さ加減においては、より犯罪性が高いと言わざるを得ません。「昨年、ヒトゲノム、(すなわち)私たちの体をつくっている遺伝子情報がすべて読みとられた。それは一人ひとり違う。その差は残念ながら持って生まれた遺伝子の組み合わせの差だ。(中略)そこをどう埋めていくのかが習熟度別学習であり、もっと伸びる子を伸ばす、それから今のままではついていけない子をどう救うか、が重要だ」(この議論は東京新聞の記事をもとにしておりますので、もしその記事が間違っているとしたらお詫びいたします。)
遺伝子(ゲノム)のことや、知能や知性がどのようにできあがってくるかを少しでも知っている生物学者であれば、知能や知性が遺伝子とはそれほど簡単に対応していないことや、遺伝子を調べてその個体(子ども)の将来がわかるわけはないことなどは、常識です。だから、生物学者ではなくトランジスター学者や化学系の大学院を卒業した素人にゲノムをことを語らせた政府の政治的犯罪性は極めて高いと言わざるを得ません。
文学者である三浦朱門が「限りなくできない非才、無才には、せめて実直な精神だけを養っておいてもらえればいいんです」とほざいているうちは、無視していればすむのですが、「科学者」という名の下に専門外の生物学・遺伝学に対して物理学・化学者があたかも専門家のように語るということを許しておくわけにはいかないと思います。
ただの一市民として、そのような発言をしたいということならそれはかまいませんが、市民に政府の政策を説明するタウンミーティングのような場で、政府側パネリストとして科学者として登場する時には、うかつな発言は許されないと思います。
江崎玲於奈さんと毛利衛さんには、深く反省していただいて発言を取り消していただくことと、政府の政策を支援するために学問的に間違った発言をするようなことは二度としないで頂きたいと思います。
あなた達は、科学者としては失格です。
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ちょっと言葉がきついので恐縮ですが、あえて直さないでおきます。
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さて、数日前からイヤなニュースが飛び交っております。「子どもの早期選別に『ヒトゲノム』の活用も語られ始めた」のだそうです。例えば東京新聞の記事をごらんください(すでにリンク切れしています)。
脳を使うある種の能力と遺伝子には関係がありそうだという研究報告は古くからあります。遺伝子というものが発見される前から、知性というものも遺伝しそうだということは語られ続けてきました。それが、人種ごとに知性や人間性に差があり、それは遺伝を通じて変わらないのだから優秀な人種だけが生き残れば良いというのが、ヒトラーの率いたナチスドイツの思想だったのです。その結果、劣等民族としてのユダヤ人の虐殺が正当化されました。
それとまったく同じ発想からなる思想が今の日本でよみがえってきたようです。ナチスドイツの優生思想に手を貸したのは、生物学者のヘッケルだと言われています。「個体発生は系統発生を繰り返す」という、生物学に関係のない人でさえ知っている有名なキャッチ・フレーズの産みの親と言われているヘッケルは、ユダヤ人は進化の途中で止まってしまった未完成の人種であり、さらに進化したものが優秀なアーリア人種のドイツ人であると決めつけたということです。
個体発生が系統発生を繰り返す、という理論から言うとユダヤ人は未完成なドイツ人に過ぎないということになるようです。
しかし、ヘッケルの思想に救いがあるとすれば、たとえユダヤ人でもこの先進化していけばドイツ人に追いつけるということかもしれません。
それに比べると、生物学者ですらない江崎玲於奈や毛利衛のゲノムとヒトの知能に関する発言は、政治的に利用されているという点ではヘッケルのものと同等だとしても、その無責任さ加減においては、より犯罪性が高いと言わざるを得ません。「昨年、ヒトゲノム、(すなわち)私たちの体をつくっている遺伝子情報がすべて読みとられた。それは一人ひとり違う。その差は残念ながら持って生まれた遺伝子の組み合わせの差だ。(中略)そこをどう埋めていくのかが習熟度別学習であり、もっと伸びる子を伸ばす、それから今のままではついていけない子をどう救うか、が重要だ」(この議論は東京新聞の記事をもとにしておりますので、もしその記事が間違っているとしたらお詫びいたします。)
遺伝子(ゲノム)のことや、知能や知性がどのようにできあがってくるかを少しでも知っている生物学者であれば、知能や知性が遺伝子とはそれほど簡単に対応していないことや、遺伝子を調べてその個体(子ども)の将来がわかるわけはないことなどは、常識です。だから、生物学者ではなくトランジスター学者や化学系の大学院を卒業した素人にゲノムをことを語らせた政府の政治的犯罪性は極めて高いと言わざるを得ません。
文学者である三浦朱門が「限りなくできない非才、無才には、せめて実直な精神だけを養っておいてもらえればいいんです」とほざいているうちは、無視していればすむのですが、「科学者」という名の下に専門外の生物学・遺伝学に対して物理学・化学者があたかも専門家のように語るということを許しておくわけにはいかないと思います。
ただの一市民として、そのような発言をしたいということならそれはかまいませんが、市民に政府の政策を説明するタウンミーティングのような場で、政府側パネリストとして科学者として登場する時には、うかつな発言は許されないと思います。
江崎玲於奈さんと毛利衛さんには、深く反省していただいて発言を取り消していただくことと、政府の政策を支援するために学問的に間違った発言をするようなことは二度としないで頂きたいと思います。
あなた達は、科学者としては失格です。
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ちょっと言葉がきついので恐縮ですが、あえて直さないでおきます。
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by stochinai
| 2005-06-22 17:36
| つぶやき
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Comments(5)