昔(といっても20年くらい前)、「おばあさん細胞」仮説というものがありました。
何かを見て、それが何かを判断するのは脳の仕事であるのは誰でもわかるのですが、その判断を脳内のたくさんの細胞が一緒に働いて行っているのか、それとも少数の細胞がそれをやっているのかということが議論されていた時に、「手」のようなものにだけ強く反応する「手細胞」という神経細胞があるらしいということが発見されました。
その後、「おばあさん」とわかる写真や絵にだけ反応する細胞もあるらしいという実験結果から、おばあさんであるということを判断するのは単一あるいはごく少数の細胞であるという説のことを、「おばあさん細胞」仮説とか、「黄色いフォルクスワーゲン細胞」仮説と読んでいます。
いちおう、それは仮説にすぎず証明されているわけではないということになっていたのでしょうが、
今日のNatureには、女優のジェニファー・アニストンやハル・ベリーを見せると活発に活動するユニット(神経細胞)や、シドニーのオペラハウスにのみ反応する細胞があることを示して、
おばあさん細胞仮説を支持する論文(おばあさん細胞を主張していた同じ人も著者にはいっていますが)が載っています。
しかも、それらの写真に反応した細胞は「ハル・ベリー」とか「シドニー・オペラ・ハウス」という文字にも反応したということなので、なかなかおもしろい結果だと思います。
「おばあさん細胞」では、なかなか話題になりにくくても「ジェニファー・アニストン細胞」だと、ワイドショー・ネタにもなりやすいのか欧米ではかなりの話題になっているということです。ジェニファー・アニストンって誰?という方も、今年の1月まであのブラッド・ピットの奥さんだった人と言えば納得されませんか。
極東ブログさんが早々に取り上げておられますが、科学論文にもキャッチフレーズが必要な時代になってきたのかもしれません。